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【響鬼】鬼ストーリー(仮)【SS】

1 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:15:55 ID:Y8PaelJr0
「仮面ライダー響鬼」から発想を得た小説をとりあえず発表するスレです。
舞台は古今東西。オリジナル鬼を絡めてもとりあえずOKです。

番組が終わっても鬼達はとりあえず人知れず戦っている

○色んなな鬼のSSとりあえず募集中
○DA、クグツもおっけ! この際、設定だけもオッケーにしちまえ
○設定を共有する必要なし!俺響鬼もオッケー!

次スレは、950レスか容量470KBを越えた場合に、有志の方が
スレ立ての意思表明をしてから立ててください。
基本sage進行で
スレタイ決まったら落とすかも。

2 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:18:09 ID:Y8PaelJr0
【まとめサイト】
http://olap.s54.xrea.com/hero_ss/index.html

【用語集】
http://www.iiyama-catv.ne.jp/~walachia/index.html
※用語集へはTOPの「響鬼」でたどり着けます



3 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:21:19 ID:Y8PaelJr0
雪風問題は誰かスレたてお願いします。


4 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:24:36 ID:Y8PaelJr0
ageつつ連カキすまん。スレタイは仮です。
良いスレタイが出来たら移動しましょう。
このスレでは黒歴史の話は極力避ける方向で。

5 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:26:18 ID:JMXoJpGIO
スレ立て乙。
雪風の単独スレは別に要らんだろ。少なくとも特撮板でやるのは明らかに周りに迷惑。
絵師ももう何もいいって言ってるし、あとは各自で管理人の動向を監視するって感じで。

6 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:39:46 ID:AlSZhqBRO
VIPでスレたてたのむ。

7 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:41:43 ID:DO4g3Fta0
【仮面ライダー裁鬼まとめサイト】
http://www.geocities.jp/reef_sabaki/
こっちも。

1おつ。
だけど、スレタイの為だけにこのスレ捨てて移動ってのは、鯖資源的に良くない。
きちんと消化してから次スレに行けばいいんじゃないかね?
まだ炎上中の話題だけに、雪風を黒歴史と言って初っ端から封じるのは無理だろ。

雪風単独スレについてだが、俺は賛成。
この話になったら、そこへ誘導するようにして、
こっちではスレ本来の活動を続ければいいと思う。
だが、特撮板で二次創作の個人サイトのヲチスレ立てるのは板違い。
ID出て内容と合う板と言えば、ネトヲチ板くらいか?
前スレで出ていたが、VIPではは三日でスレ落ちするので、
この件で立てるのは向かないと思う。

8 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:46:41 ID:Y8PaelJr0
>>7
確かに。とりあえずこのスレは消化する方向がいいか。
まだ解決したとは言えないから雪風スレはあってもいいかもね。
俺はもうスレ作れないから誰か頼む。

9 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 17:56:09 ID:JMXoJpGIO
今立てても持て余すだけじゃないのか?
今回の絵師はこれで終わりと言ってるし、なんかトップの謝罪も復活したみたいだし、
新しい燃料が投下されない限り、今後はひたすら管理人の厨ぶりを語って笑うだけになる気がする。
VIPPERのサガとしてこんなのすぐ飽きるし。

10 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 18:00:47 ID:AlSZhqBRO
持て余すならそれはそれでいい。
ただ雪風がこれで終わると思えんし、そのとき扱う場がないとまた類焼するだろ。

11 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 18:05:35 ID:EIrW95OI0
雪風問題のまとめってこんな感じでおk?
スレ立てるからまとめが欲しいって言ってる人いたからまとめたけどさ
ttp://www.uploda.org/uporg598278.txt

12 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 18:08:51 ID:JMXoJpGIO
>>10
確かに一理ある
だけど、もう終わりだろうってのも、これで終わるはずないってのも、ただの推測だしな
必要になったらそのとき用意すればいいわけで今は要らんだろ。
特撮板だろうとネトヲチ板だろうと、いかなる板にも無駄なスレは立つべきじゃないし。

13 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 18:17:00 ID:5VSUD/yGO
>>11
前スレで中間部分のまとめ作った者ですが、>>460>>464のミスでした。すみません
以下前スレ464

464:「中四国支部鬼譚」作者sage2006/11/26(日) 10:48:28 ID:IJPgP+Cr0
 友人から件のログが届きましたのでうpします。
 開いたスレは専ブラに全てログが残るのでそこから拾い集めてきたそうです。「好みの〜」スレの住人さん方なら同様に専ブラにログが残ってるんじゃないかと思いますのでそちらから確認してみて下さい。

 http://www.geocities.jp/hibikigaiden/memo.txt

 >>405の「ほとんどの絵師さんのぶんは勝手に載せていた」というのは、やはりというか偽りの発言であったこと。また、絵師さん方は結構好意的に転載許可を下さっていたことなどがわかり正直安心しています。
 今までどの絵師さんともトラブルは起きなかったのに今回に限って突然こういうことになってしまったのは本当に残念です。

 さて、場所を移すとすれば俺は>>460に概ね同意です。絵師さんも本来の居場所であるVIPの方が来られやすいでしょうし。


14 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 18:24:30 ID:XtrVev+r0
雪風(苦笑)

15 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 18:35:43 ID:EIrW95OI0
>>13
把握
まとめ作り手伝ってくれてdwww

とりあえずまとめ用にスペース借りてきた
でも結局スレ立てないからまとめ作った意味ナス\(^o^)/
ttp://www.geocities.jp/soratobi_a/top.html

16 :7:2006/11/29(水) 18:54:27 ID:DO4g3Fta0
>11
>13
ヲチ板に単独スレ立ててきた。
まとめサイト乙。リンクを張らせて貰った。

【無断使用】雪風日和【無断加工】
http://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/

17 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 19:06:39 ID:JMXoJpGIO
結局立てたのかよ。
じゃあこのスレは元々の住人に返還するってことでいいんだな。
雪風について語りたいVIPPERは新スレに移動で。

18 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 19:38:11 ID:CFOLeSXo0
前スレでも、異様に空気の読めない人がいたので、これは忠告として聴いて欲しい。

ここはしばらく、VIPPERのヲチ対象になると思います。

しばらくは、沸点の低いVIPPERを挑発しそうなことを言わない方がいいでしょう。

では。


19 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 20:03:50 ID:A8hM0AxRO
確かに空気読めてないのは申し訳ない。
そのつもりは無かったにせよ煽った形になったのも詫びる。
ただ単にSS読める環境を返して欲しいだけです。

20 :見習いメインストーリー:2006/11/29(水) 21:37:01 ID:q8i8jC5Y0
スレ建て乙です。前回は前スレ>>251から

十七之巻「止める王」

 傷だらけになった純友と大洋が「たちばな」にやってきたのは、その日の夕方だった。
「どうしたの、そのケガは……!」
 香須実が驚いて言った。純友は口の端を少々切った他は、何か所かの打撲だけだったが、
大洋は顔も体もそこら中がアザだらけだった。
 店員用の休憩室に連れて行かれた二人は、香須実によって手当をうけた。手当が済むと、香須実
は「猛士の間に行きなさい」と言い残して、一人で後片付けをしている日菜佳の応援に行った。
 顔や体に絆創膏や湿布をつけた二人が地下への階段を下りていくと、猛士の間に勢地郎とみどり、
それにイブキ・あきら師弟が席に着いて待っていた。
「やあ〜、大変だったみたいだねえ。ま、そこに座って」
 鷹揚に勢地郎が言い、二人も席に着いた。
「ここに帰ってきてから、あきらちゃんのディスクアニマルの中にこれが紛れているのに
気づいたんだけど」
 みどりが、机の上にディスク形態になった消炭鴉を差し出した。
「もしかして二人とも、あきらちゃんが倒れた時そばにいたの?」
 その問いに、大洋が答えた。
「居たっていうか──行ったら、天美が倒れてた。そこには、アヤシイ黒いカッコをした
ヤツもいて──ソイツとやり合ってこうなった」
 大洋は自分と純友を指さして言った。イブキが、純友たちに対して言った。
「君たちがあきらをその男から助けてくれたんだね。師匠としてお礼を言わせてもらうよ」
「アイツはいったい何なんだ? 手からナンか衝撃波みたいのを出して、ディスクアニマルの
動きを止めちまうし。あと、気づいたらおれたちのケータイの電池が切れてやがったし。
……後を追ってったけど、いきなり消え失せちまったし」


21 :見習いメインストーリー:2006/11/29(水) 21:37:58 ID:q8i8jC5Y0
 うなずいてから、勢地郎は純友たちに言った。
「まあまあ、何があったのかその辺り、あとで報告書にまとめてほしいんだけど──
君たちが何故あの場にいたのかも含めて──まあ、それはそれとして、だ」
 普段は絶やさぬ笑みを消して、真顔で勢地郎は言った。
「今後もし、『あれ』を目撃したとしても、二人だけで後を追うのは、絶対に止めて
ほしいんだ。これは、関東支部の『王』としての私からのお願いだ」
 若干の間を置いて、勢地郎は続けた。
「『あれ』は『クグツ』と言ってね、危険な存在だ。もう二度と近づいちゃいかん」
「クグツ」
 大洋は勢地郎の言葉を繰り返した。
「ダンキさんに聞いたことがある。童子と姫を操っている、そういう名前のヤツがいるって」
「約束してくれるね。『あれ』をみつけたら、我々に連絡してくれるだけでいい。
それ以上のことは……危険だ」
 純友が隣を見ると、大洋はだまって下を向いていた。
「──はい」
 と返事をして、純友は大洋にも返事をするよう促した。
「はい」
 大洋の返事を聞くと、勢地郎は満足そうに頷いて、笑顔で言った。
「それじゃあ、報告書をよろしくね。書き方は、みどり君に確認して」
 勢地郎が地上への階段を上がっていくと、みどりは言った。
「ええと〜、純友くん」
 小さくなって前屈み気味に座っていた純友は、か細くハイと返事をした。


22 :見習いメインストーリー:2006/11/29(水) 21:38:30 ID:q8i8jC5Y0
「展示室に行ったら、ディスクアニマルが全部いなくなっていたんだけど……
もしかして、君たち?」
「え? あ、いや、消炭鴉が呼んできてくれたみたいなんですけど、どこから
呼んできたのかは……」
「君たちが帰ってくると同時に、ほとんどのディスクが展示室に帰ってきたから、
消炭鴉が呼んできたのはここに居たディスクアニマルってことになるけど」
 みどりが机の上にすっと始末書用紙を出した。
「持ち出し許可も無しに、しかもあんなに大量のディスクアニマルを使っちゃいけないの。
消炭鴉に始末書を書いてもらうわけにもいかないから、ごめんね純友くん。これ書いて」
 純友は涙目になりながら始末書の記入をはじめた。
「今回はぼくのせいじゃないと思うんですけど……」
 大洋は、現場で回収した、クグツによって動きを止められたディスクアニマルを
みどりに差し出した。あきらは、イブキに促されて席を立った。
 イブキに階段を先に上がらせ、あきらは純友を振り返って言った。
「あの時、意識はほとんどなかったんですけど、須佐先輩の声はかすかに聞こえて
いました。本当に、ありがとうございました」
「え?」
 泣きながら始末書を書いていた純友は、あきらの言葉に顔を上げた。
「『ぼくの友達に、それ以上手を出すな』って、そう言っているのが聞こえました」
 大洋にも、あきらは頭を下げて言った。
「田島先輩も、ありがとうございました。そんなケガまでして、助けていただいて」
「言うだけあって、目上に対する言葉遣いってヤツが丁寧だなオマエ。見習わせてもらうぜ」


23 :見習いメインストーリー:2006/11/29(水) 21:39:08 ID:q8i8jC5Y0
 すっかり気を良くして大洋は言った。そして、純友に向き直ると笑いながら言った。
「ナニ? オマエそんなこっ恥ずかしいこと言ってたの?」
「きみがアイツに痛めつけられていたから、思わず……」
「こっちは必死で、聞いてる余裕なんか全然なかったけどよ。よく言えんな、そんな台詞」
「二度と言うもんか」
 やりあっている二人を見ながら、あきらは顔をほころばせて近くに立つみどりに言った。
「友達って、いいですね」
 みどりが笑顔でうなずくと、あきらは一礼して地上への階段を上がっていった。
「でも──不思議なのよね」
 みどりは腕を組んで首をかしげながら言った。
「純友君、ディスクアニマルどうやって起動したの? 音叉をディスクアニマルに持って
来させるにしても、その前に最初の一枚を起動する必要があるでしょ?」
「ああ……それはたまたまその場にあった天美さんの鬼笛で──」
 あきらが戻ってきて机に両手を叩き付け、えらい剣幕で純友に言った。
「信じられません、他人の鬼笛を勝手に──みどりさん、監督不行き届きです!」
 みどりに向き直って言うと、あきらは走って階段を上がっていった。
「ちょっ……待っ──」
 純友はそれ以上言葉にならず、ただおろおろしているしかなかった。
「とりあえず多美ちゃんにこのこと報告しとくわ。じゃあな〜」
 意地悪く笑い、携帯電話でメールを打ちながら大洋も階段を上がっていった。
 しくしくと泣きながら始末書を書き続ける純友にお茶を出し、みどりはしばらく
気の毒そうに見守っていたが、かける言葉が見つからず、研究室へと戻っていった。

十七之巻「止める王」了


24 :見習いメインストーリー:2006/11/29(水) 21:39:54 ID:q8i8jC5Y0
次回予告

『よくわかんないけど、人助けをしたんでしょ? すっごいね〜』
「鬼になった姿はなかなかカッコいいでしょ? あれ見て」
「うわ。これ、写真だけ新しくなってて、データが先代さんのになってる〜」
「ごめ〜ん、弟子として、師匠の私を助けて」

見習いメインストーリー 十八之巻「誤る履歴」


25 :名無しより愛をこめて:2006/11/29(水) 22:05:40 ID:ruoPdTwj0
>>1スレたて乙。


26 :竜宮:2006/11/30(木) 18:36:50 ID:w+wWOUwn0
スレ立てありがとうございます。もう一つ別に立ててくださっているようですが、
とりあえずこちらの方に投下させていただきます。

27 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:41:14 ID:w+wWOUwn0
明日夢十夜
第六夜「夢の国」
こんな夢を見た。
  自分はかなり年配の立派な髭をたくわえた偉い人のようだ。どうも東京の博物館の館長らしい。
夢なので夢の中の自分が喋るまま感じるままにまかせることにした。

濃い緑の葉が紅葉に変わる季節。奈良は東京よりもやわらかい緑が風に揺れている。
  厳かに正倉院開封の儀式に立ち会っている時、開いた扉から白っぽい守宮(ヤモリ)が這い出てきた。
「あ!」
 叫びに眩しそうに少し止まり、するすると人間たちの足元を通り過ぎると木々の暗がりに消えていった。

「校倉(あぜくら)の中に入っていたんでしょうかね」
「どこから入り込んできたのかな?毎年一匹は入っているんだよな」
 そんな雑談が交わされるのは儀式が終わり、ひとしきり宝物が修復の場に移された頃。
一般開放されるようになった大正の頃。


28 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:42:40 ID:w+wWOUwn0
 宝物を点検する者。修理する者。

螺鈿細工の五弦の琵琶を扱っている若者が目に入った。おとなしそうな色白な。
だが、年に似合わない熟練した扱い方に目をひかれた。
細い、けれど鍛えられた指が無駄なく琵琶の表面を調べ、目がきつく蕩けるような輝きで古えの細工の技巧をなぞっている。
「彼はずいぶん若いようだね」
「螺鈿細工の職人の跡継ぎです。まだ学生ですが、細工師の血筋なので螺鈿細工に関してはかなりの腕です」
 興味がわき、その若者のそばに立った。
風呂敷包みが広げられ、筆のような道具や小刀などが見えた。風呂敷は一見ただの三つ巴のようだったが、
小刀やよく見ると撥のような小物もいくつかあしらわれ、家紋としては珍しい気がした。
 声をかけられると、ほんわりした笑顔が返ってきた。
「はい、母の家系が奏者でした。私の腕はまだまだですが。」
 螺鈿細工は青貝とよばれる夜光貝やあわびの内側の真珠層を削り、漆糊で埋め込んだり貼り付けたりするもの。
職人からすれば、千年あまり昔の技術に目を見張り、使われた道具をあれこれと探りながら、
自分の体の中に技巧と図案を染み込ませてゆくのだろう。
「どうかね」
「南海の夜光貝が使われていて、細工も見事なものですね。夜光貝は屋久島のものが一番良いのですよ。」
 物怖じしない態度ではきはきと答えながら、自分でも気付かぬ内に弦の外された琵琶を愛おしそうに扱っている。
何よりも琵琶を傾ける時の仕草が奏者のようにリズミカルだ。
「君は弾くほうもやるのかね?」
 声をかけられると、ほんわりした笑顔が返ってきた。
「はい、母の家系が奏者でした。私の腕はまだまだですが。」
 
「この楽器を奏でたら面白いだろうな」
「このまま弾くのは無理でしょう。修復しても丁寧に扱わなければ傷めてしまいます。
この見事な技巧に触れられるだけで緊張します」
 少し残念そうな口調を聞きながら、僕は彼の側を離れた。



29 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:45:16 ID:w+wWOUwn0
                               ◆

あちこちに柿の実がなる。雨が柿の葉に黒い漆のような艶を与え、水滴が柿の実をいっそう紅く光らせる。
雨の日は校倉は開かない。着物と下駄の普段着で砂利道をどこということなく散策する。
奈良漬も買った。もう少し散歩を続けたら家に帰ってのんびりやろうか。
木立に入り、茂みの側を通り抜けた時、震えがきた。森のように生い繁る頭上から刃が飛んできた。
転ぶように伏せたが、巨大な爬虫類が腕をのばし、爪を突き立ててくる。
吸盤の付いた鋭い手が目をえぐろうとしてきた。
 キン!
澄んだ音がしたと思ったら稲光が当たり一帯に降り注いだ。伏せながら仰ぎ見ると、
雷に当たり震えているのはヤモリのような姿の異様な生き物。
ヤモリの体液が傷口からこぼれ、こちらにも飛び散った。炭のような匂いがした。
「音撃!一心入魂!(いっしんにゅうこん) 」
 現れた一本角の異様な人が叫び、掲げ持つ楽器を鳴り響かす。人というより鬼だ。
楽器から閃光が走るたびにヤモリは震えるが、目を赤く錆びつかせ、叫びながら角の男に飛び掛った。
男が槍のように弦の楽器を振り回したが、切り裂かれるたびに怒りをました妖怪の方が鬼の足に暗い付いた。
肉を噛み切ると跳び退り、次の攻撃に移る。鬼は倒れるのを踏みとどまり、半歩あまり片足を退き、
腰を落とすと飛び掛ってきたヤモリを引き付けるだけ引き付け、弦楽器の先端で突き上げた。
西洋の楽器に似たその楽器は槍のようにヤモリを突き通し、鬼は片手で腰の円盤状のものを取り出すと、
ヤモリに取り付けた。
「音撃!無為自然(むいじねん)」
 澄んだ音が鳴り響き、光が突き刺したところからこぼれ、激しい爆発が起こった。


30 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:46:53 ID:w+wWOUwn0
「!?」
 だが爆発したはずのヤモリが、かけら同士つながりあい、猛る目のまま元の形に戻った。
「音撃が効かない?!」
 鬼のような目鼻の無い顔から声がもれ、口が開き炎を吹いた。
だが炎よりも早く、ヤモリが鋭い叫びをあげ、頭上の木に跳んだ。枝がたわみあい揺れ、あっという間に逃げ去った。
鬼が腰に下げた円盤型の木細工と油紙の折鶴を取り出した。
「後を追ってくれ!」
 鬼が息を吹きかけると円盤が獣に変り飛び去り、油紙の鶴も雨をぱらぱらとはじきながら舞い上がり、
ヤモリの去った方角に消えた。
切り裂かれた足で立ち上がろうとする鬼を止め、傷口の具合を確かめた。
「大丈夫です。このくらいの傷すぐ治りますから」
 傷口が光りつながりはじめた。
「グッ」
 苦しげにうめくと鬼が膝をついた。小さくはなっているがかなり肉が深くえぐられているようだ。
溶液のようなもので溶かされているが、光が徐々にその傷を消している。
黒光りする金具のような体から肉がのぞき血が流れていることが興味深かった。
異物は入り込んでいないようだ。袂をちぎり包帯のように巻いた。
「送っていこう。肩につかまってくれ」


31 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:50:00 ID:w+wWOUwn0
 ぺしゃりとやわらかいものを踏んだ。足元につぶれた粕漬けが転がっていた。
「すいません」
「助けてくれて、あやまることはないだろう」
 こちらが笑うと鬼はますますしょげて、それからポンと手をたたいた。
「ちょっと待っててください」
 痛そうな足を、それでも意外なほど軽快に動かすと、がそごそと茂みの向こうに消えた。
小さな風呂敷包みを持って現れた。
「わたしもちょうど買ってきたところなんで。美味いですよ。よかったら食べてください」
「君の分は」
「わたしはいつでも買えますから」
そう言うと、ぺこりとお辞儀をして茂みの向こうに消えていった。
 雨はそぼろ雨となって降り続ける。包みを開け、包まれた奈良着けをぽりりとかじってみた。
「美味い」
 さあ、この風呂敷はいつ返そうか。三つ巴に小刀をあしらった変った家紋付の風呂敷を。
だが次の日、彼は来なかった。昨日の雨がうそのようにからりと晴れ、晴天が続いた。


32 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:51:38 ID:w+wWOUwn0
                       ◆

 翌々日、青年が再び校倉に現れた。生々しい記憶は薄れないが、心が平穏さを取り戻してきていた時だった。
職人ならばわずかの時でも触れていたいであろう宝物に向かいながら、考えこむような仕草が返し物を言いそびれさせる。
「先日はありがとう」
 頃合をみはからって、たたんだ風呂敷を差し出した。礼をして受け取りながら、青年の表情がはっと強張った。
おそるおそる目を上げ、それから悪戯を見つけられた子供のようにバツのわるそうな笑顔になった。
「体調を崩していたそうだね。うまくいかないのかい?」
「ええ。でもどこに潜んでいても必ず見つけますから」
 そう折り目正しく礼をすると、古楽器の状態を調べに戻った。だが初日の様子とは違っている。
宝物に触れられるわずかな期間、しかも修行中に身にとっては一日休むことも歯がゆかったことだろう。
だが冷静に見えるその心は、あの妖怪の行方を追いかけているのだろうか?
「他のことを考えているなら、ここには来ない方がいい」
 青年が目をしばたたかせた。
「君が命を護ってくれたことは分かっている。だが、この宝物はこの国の宝だ。
君もプロならば乱れた気持ちで触ってほしくない」
 青ざめて立ち上がる。
「分かりました」


33 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:53:01 ID:w+wWOUwn0
 その時、古裂を保存、整理する者達が通りかかる。塵芥の入った箱を大切そうに持ち、話している。
「このままじゃなく、少しでも元の形に戻してやりたいよな」
「粉になっていても奈良の都の頃からのものだものな。修復して次に伝えなきゃな」
 青年が打たれたように呟いた。
「粉……」
 青年は引き締まった表情で元の位置に座り、螺鈿琵琶を仰ぐように、目を凝らし見、修復すべきところを探し始めた。

 風呂敷にかかった飛沫(ひまつ)。鬼の体にはねた魔化魍の体液。
墨の香り。

 「そういえば、ここには古楽譜もあるそうだね。いずれにせよ許可はこちら(奈良)の管轄だろうがね」
僕の言葉を聞いたかどうかは分からなかった。
 空は晴れ、日は過ぎ、曝涼(ばくりょう[虫干し])の季節も終わろうとしていた。
 肌を刺す風が湿り気を帯び、久しぶりの雨が来る。



34 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:54:06 ID:w+wWOUwn0
                        ◆


  公園の茂みの陰に立ち、僕は何かを待っていた。滝のような土砂降りの中。
耳を澄まし、異国の言葉を聞き分けようとするように、何かが蠢きだす気配を。

「もうじき現れます。絶対にこの茂みから動かないでください」
側に鬼が立っていた。
 どう言って借り出したのか手には五弦の琵琶が握られていた。
鬼の力か、琵琶には薄く光る皮膜がかかり、雨をはじいている。
よりあわされた絹の糸が弦として張られ「ていた。

「よく絹の糸が用意できたね」
「助けてくれる仲間がいますから」
それ以上は聞くなという風情だった。

濡れて光る足元に、ゆっくりと墨の色が流れてきた。


35 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:56:25 ID:w+wWOUwn0
「頭上だ!」
「大丈夫!!」
 鬼の放った式神の鳥達がヤモリの妖怪を取り囲み、飛び掛るヤモリの速度を緩める。
緩慢と落ちてくる妖怪に向け、鬼が琵琶を奏でた。
 それはおそらく古楽譜を読み解いた音。
爪弾かれる音が鳴り響くたびにヤモリの落ちる速度がさらに緩み、弦の糸が一本ずつ切れてゆく。
音が雨粒の中に吸い込まれるような時間。
 最後の弦が切れた時、音の無い爆発が起こり、雨煙の中から、白い小さなヤモリが鬼の手に乗っていた。
きょとんとして、ふるふると頭を振ると、あっという間に鬼の手を滑り降り雨の中に消えていった。
 手に残った墨を式神達に吸い取らせると、鬼はぺこりと頭を下げた。
「助けてやったのかい?」
「とんでもない。先にヤモリの方が護られていただけですよ。
きっと魔化魍に変化させられる前に校倉の宝物に触れたのでしょう。
あそこには私よりもはるかに式神や陰陽の力に長けた方々の思いのこもったものがありますから」
 そうか、そう呟きながら無性に嬉しい気がした。
「ヤモリ(守宮)も毎年一匹ぐらいは校倉に入っているそうです。校倉を守るために入っていてくれるのかもしれない、
ここではそう言われていますから」
 鬼は笑い声をたて、礼をすると雨の中に消えた。

 明日は晴れるだろう。曇りのない青空の中、閉封の儀式が何事も無かったように行われることだろう。



36 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 18:57:30 ID:w+wWOUwn0

  人も鬼も気付いてはいなかった。僕が僕に戻り、彼らのはるか後ろを見ていた。
   去り行く人達を眺めながら、茂みのはるか向こうに男女が立っていた。 着物姿の童子、姫、
「心を込めたものが入れば、魔化魍も強くなるのだね」
「クグツの血でも良いかしら」
「そうだな。我らの想いが継がれてゆくのだから」
 なにか大切なことが彼らの心を通り過ぎた。だがつかめぬまま、その言葉はただ舌の上を通り過ぎ、
人の心の分からぬ生き物達は闇に消えていった。

 式神達の零(こぼ)した墨が雨の中に三十一字を(みそひともじ)を滴(したた)らせる。

夢の国 燃ゆべきものの燃えぬ国 木の校倉の 永久にたつ国(森 ?外)



37 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 19:10:19 ID:w+wWOUwn0
書き込み時に漢字変換がうまくいかなかったようですが、
 夢の国(以下略)の歌は森おう外の実作です。森鴎外なら書き込みできるかな?
 正倉院開封の儀の時にヤモリを見たというエピソードもほんとうですが、
いつどんな風に見たか、歌を詠んだ時はいつか、
その他もろもろ年代も全部空想なので本当にしないでください。
 屋久島の貝が螺鈿細工に良いということを聞いて使ってみたくて作った話です。
せめて正倉院展の開かれた11月中に投下しときたかったので投下させていただきました。


38 :竜宮:第六夜「夢の国」:2006/11/30(木) 19:37:01 ID:w+wWOUwn0
古裂、塵芥は正倉院にある古布のことです。塵芥はほとんど粉状になった
ものだそうです。

39 :名無しより愛をこめて:2006/11/30(木) 20:35:13 ID:4WAmnvG90
旧漢字は「JIS第一・第二水準」に含まれているものしか表示してくれません。
森鴎外の「鴎」の古いほうの字は残念ながらそれに含まれていないのです。

http://yasuda.homeip.net/misima/misima.html
こういう便利なものがありますのでご活用ください。

40 :名無しより愛をこめて:2006/11/30(木) 22:18:23 ID:6f2xoD8Q0
D年マダ?

41 :名無しより愛をこめて:2006/11/30(木) 23:44:07 ID:JJMIb4Zt0
気長に待ちんしゃい。

42 :名無しより愛をこめて:2006/12/01(金) 00:57:56 ID:KpLlP79I0
>>竜宮作者さん
本編中で
「はい、母の家系が奏者でした。私の腕はまだまだですが。」
というのが二回出てくるけど一回目のはミス?
前後の文とかみ合わないので…

43 :竜宮:2006/12/01(金) 01:36:41 ID:R4HC1JGr0
>39さん ありがとうございます。こういう便利なのがあったのですね。
自分のPCでは出ていたので書き込んでみて?マークにありゃ、と思いました。
>42さん うっかりしてました。28部分1回目はミスです。
後に入れたほうがつながりがいいかなと思ってコピーした時に
前の分を消すのを忘れていました。ご指摘ありがとうございます。
 夏目漱石の「夢十夜」の映画が新春ロードショーされるらしいので
自分の近くで公開してくれるかどうかはともかく
年内中に最終夜まで投下してしまいたいなとは思ってます。

44 :名無しより愛をこめて:2006/12/01(金) 23:23:59 ID:l4FagnkR0
まとめサイトさん、いくらVIPと揉めたからって中四国作者さんのサイトをリンクから外すのはどうなん?
ちょっと気にしすぎな気がするけど。

45 :名無しより愛をこめて:2006/12/01(金) 23:39:55 ID:dbK47tYvO
緊急避難として賢明だろ!

46 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 00:23:14 ID:a484Kczf0
>>44
凱鬼作者さんのも消されてますけど?
用語集だって消されてんだから公平じゃないか。

47 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 00:31:53 ID:rajCCox00
>>44
まるまる一スレも進行が止まるほどの騒ぎだったからね。
気にする人がいてもおかしくは無いと思うけど?


48 :DA短編の人(年中行事ではありません):2006/12/02(土) 00:38:01 ID:a484Kczf0
>>見習いSS作者さん
今冬投下予定の「雪ごろも」で、見習いSSの十六話に活躍した消炭鴉の辺りを、
2,3行ほどだけ消炭鴉の視点で書かせていただいても、差し支えないでしょうか?

49 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 01:24:36 ID:eUNpK3kL0
>>44
>>46
あ、本当だ。
どうしてこのタイミングでリンク削除?
このスレの事情を知らないでまとめサイトを見る人もいると思うんだけど混乱しないかな

50 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 07:06:49 ID:9/cSswwu0
まあ、もう少し様子を見てから再開するつもりなんじゃん?
これに対してリンク先が怒鳴り込んでくることもないでしょ。

51 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 09:43:07 ID:5Mylea2MO
このスレに最近来たばかりですが、用語集には全作品入ってないのですか?
入っている作品は何々ですか?またその取捨選択の基準は?


52 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 12:16:08 ID:fJWR1+4w0
>>51
過去ログ見てきなよ。

53 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 12:24:09 ID:eUNpK3kL0
俺はあることに気付いてしまった
中四国支部鬼譚がスレに直接投下されるようになったのは最近のことで
それより以前の話数は投下されていないからまとめサイトにも載っていない
それらの話数を読むためには中四国支部鬼譚のサイトへ行くしかない
だけど現行スレ(ここ)にはそのサイトへのリンクが無い(前スレにはあった)
これだけでも結構な問題なのに、その上まとめサイトからのリンクも消えてしまった
これでは、中四国支部鬼譚には独立したサイトがあることを新参者は知る由もない
まとめサイトに載っていない話はどこで読めるのか全く分からない
これはかなりの大問題だ
中四国支部鬼譚には独立したサイトがあって、まとめサイトに載っていない話数は
そのサイトで読めるのだということは、現行スレのテンプレか、それが無理なら
まとめサイトで絶対フォローしなきゃいけない情報だろう

54 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 12:43:36 ID:2r1LQqac0
どちらも結構由々しき問題だな。

>>51
用語集は、作ってる人が忙しいから全作品網羅に手が回らないって事情だった。
それで、用語集にまだ入ってない作品については、各作者自身か、
もしくは有志で作成してはどうか、という話も出たはず。
結局実現に至っていないが、この際本気でそれを考えてみてもいいかもしれないな。

>>53
ああ、確かに。
このままだと新参は絶対混乱するし、まとめサイトの中の人には早く対処して欲しい問題だ。
で、気が早いが次スレからはテンプレも復活させるかな。

55 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 12:54:47 ID:fJWR1+4w0
管理人がバレバレでレスするのが楽しくなってきた。

ところでイメージキャラを勝手に想像するってダメかな?
個人的には
カチドキ=大沢たかお
南雲あかね=鈴木京香
な感じなのだが。



56 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 13:17:21 ID:Yik7UTve0
雪風関連の書き込みはこちらへどうぞ。

【無断使用】雪風日和【無断加工】
http://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/l50

まとめ関連の事も雪風事件から派生した問題なので、
向こうで話すのがいいと思う。
また揉め事ログが伸びて、作品投下する雰囲気じゃなくなるし。

57 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 14:39:21 ID:5Mylea2MO
>>54
もしも、作者さん達が出来なくて有志で作ることになったら俺も協力しますよ。
今は「皇城の守護鬼」を読んでいるところなのでその用語集なら書けます。

58 :見習いメインストーリー:2006/12/02(土) 15:35:13 ID:BNHU4w8T0
>>48さんOKです。前回は>>20から

十八之巻「誤る履歴」

 黒装束の「クグツ」と遭遇したその日の夜。純友の携帯電話に、神戸にいる橘多美からの
メールが届いた。
 メールには「また田島くんに聞いたよ〜。純友くん、サイテ〜」とあった。
 必死で言い訳のメールを書こうとしたが、猛士にかかわることはあまり詳しくは書けないし、
文章でうまく説明できない。一人で部屋の中でうろたえ続けていた純友は、これしかない、
と思い「電話してもいいですか」というメールを出した。
 その後、部屋の中で立ったり座ったり、うろうろと歩き回ったりすること十分弱。
 多美から、電話番号のみを書いたメールが来た。震える手で番号を打ち、携帯電話を耳に
あてて呼び出しを待つ純友。
『はいはーい』
 意外に明るい声で多美が電話に出た。
「あっ、あのっ、たたた橘さん、違うからね!? 大洋が何を言ったか知らないけど、
ぼくは決してそんな──」
 携帯電話のスピーカーの向こうから、ころころと笑う声が返ってきた。
『よくわかんないけど、人助けをしたんでしょ? すっごいね〜』
 大洋がどこまで話しているのかがいまいちわからないが、とりあえず電話の向こうの
雰囲気は悪くはなかった。二ヶ月ぶりに聴く多美の声が、耳に心地よかった。

 次の日曜、「たちばな」地下での研修は、引き続き太鼓の鬼についての講義が行われた。
「これ、前にも見たことあると思うんだけど」
 と言って、みどりはロッカーから、鬼たちの履歴をまとめたファイルを持ってきた。
「関東にはいま太鼓の鬼さんが四人います」


59 :見習いメインストーリー:2006/12/02(土) 15:35:54 ID:BNHU4w8T0
 みどりはホワイトボードにカタカナで四人の鬼の名を書いていき、一番最初に書いた
ヒビキの名前の横になぜか花丸をつけた。
「関東の太鼓の鬼っていったらやっぱりヒビキ君。もう二十年ちかく鬼をやっていて、
去年の関東での戦績ナンバーワンなんだから。普段はなんかその、ああいう感じだけどね」
 純友と大洋が覚えているのは、一緒にディスクアニマルの講義を受けた時に居眠りを
していた姿がほとんどだ。
「鬼になった姿はなかなかカッコいいでしょ? あれ見て」
 みどりは部屋の隅の棚の上に飾ってある何枚かの写真を指さした。「たちばな」の前で、
みどりと二本角の鬼が並んでいる写真があり、純友たちの手元にあるファイルのヒビキの
頁にも、同じ鬼の写真があった。大洋は棚の上の写真を見て訊いた。
「なんでツーショットなんスか?」
「ああ、私とヒビキ君、同級生だから」
 続いて純友が訊いた。
「え? じゃあ猛士に入ったのって──ぼくたちみたいに、学校の行事で何かあって……?」
「ええと、学校とは関係ないけど……ま、互いに影響を受けてるのは確かかなあ」
 次にみどりは、ホワイトボード上の「ゴウキ」という名前を指して言った。
「で、ゴウキ君は去年、ヒビキ君に次いで支部で戦績ナンバーツーだった鬼さんね。
『飛車』さんと職場結婚したばっかりだから、いまは新婚さんいらっしゃいって感じ?」
 何と言っていいかわからない二人の少年の反応を見て、みどりは「あ、ゴメン」と
謝ってから、続いてダンキの名前を指した。
「まあその、戦績順に書いてるってわけじゃなくて、これは年齢順なんだけどね。
ダンキくんは、まだ若いほうかな〜。鬼になって四、五年だったと思うけど」


60 :見習いメインストーリー:2006/12/02(土) 15:37:02 ID:BNHU4w8T0
 最後に、みどりはホワイトボードの一番下に書いた「エイキ」という名を指した。
「彼が、太鼓の鬼の中でも、関東の鬼の中でも最年少かな。イブキくんとかもそうだけど、
君たちとは一番年齢が近くて、まだハタチくらい」
 純友は、自分と大洋の机を跨いで広げていた鬼のファイルのエイキの頁を見て言った。
「でも、このエイキさんって人、生年月日からすると二十八……とかじゃないですか?」
 大洋もファイルを見ていった。
「ホントだ。このエドエイタローって人の生まれた年、俺たちより十年以上前っスよ?」
「えっ?」
 みどりがファイルを取り上げてエイキの履歴を見て言った。
「うわ。これ、写真だけ新しくなってて、データが先代さんのになってる〜。日菜佳ちゃんに
言っとかなきゃ」

 研修を終えた後、みどりが純友にだけ残るように言った。
「なんですか?」
「ごめ〜ん、弟子として、師匠の私を助けて純友くん」
 両手を合わせてみどりは頼みこんだ。最近『と』から『角』に昇格した戸田山──鬼名、
トドロキのディスクアニマルの整備が追いつかず、純友にも応援を頼みたいという。
「最近、ディスクアニマルをいつも傷だらけにして帰ってくるのよ」
 確かに、純友の前に並べられたディスクアニマルたちには、傷や細かい破損、歪みなどが
数多く見られた。
 みどりは設計室の壁際の机で、純友は研修のために出してあった机の上で、それぞれ
青磁蛙や茜鷹などの整備を続けた。


61 :見習いメインストーリー:2006/12/02(土) 15:37:42 ID:BNHU4w8T0
 みどりは一体の整備が終わると、音叉を鳴らして起動テストをした。純友は、それを
うらやましそうに見ていた。視線に気づいてみどりが顔を上げる。
「ん?」
「……すみません。ぼく、起動できなくて」
「ああ、忘れてた」
 ファイルロッカーを開けたみどりが、紐で翡翠の様な石を連ねた腕環を取り出して純友に渡した。
「コレ、『陰陽環』っていうものなんだけど、着けて、青磁蛙を起動してみて」
「え? でも──」
 純友は、環を腕に着け、整備が終わった青磁蛙をみどりから手渡された音叉で叩いた。音が響くと、
今まで純友が一度たりとも起動できなかった青磁蛙のディスクが色づいて、蛙の形に変形した。
「ああ……ええっ!? ぼくに、起動できた!」
「実は、講義の初日にちらっと言ったんだけど、鍛えてない人でもディスクアニマルを起動できる
方法があるのね。それがこの、陰陽環」
 鬼の呪力が込められた腕輪で、これを嵌めれば、誰でもディスクアニマルの起動が可能となり、
また鍛えている者であれば、ディスクなしでも炎等を式神として使役できるようになるという。
「この原理を利用して、本部では色々新しい機器を開発中よ。そのうち、ディスクのテストを
自動的に行うシステムとかもできるかもね。──その前に、毎回大量のディスクに整備が
必要っていうこの状況もどうかと思うけど」
 ため息をついてみどりは言った。純友は、みどりに背を向けて肩を震わせていた。
「で、でででで、できたぁぁぁ……」
「この支部には一つしかない貴重なものだから、大事に使ってね──って、聞いてる?」
 喜びのあまり涙が止まらない純友を見て、くすりと笑いながらみどりは紅茶をいれに行った。

十八之巻「誤る履歴」了


62 :見習いメインストーリー:2006/12/02(土) 15:39:08 ID:BNHU4w8T0
次回予告

「まあ……その……見習いというか」
「ああ、じゃあ天美さんと同じですね。天美さんも鬼の見習いですから」
「同じじゃありません、そんな人」
「イケてんじゃん!?」

見習いメインストーリー 十九之巻「取り持つ少年」


63 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 16:20:35 ID:eUNpK3kL0
>>56
いや、これは中四国支部鬼譚(雪風)の管理人さんに関してどうこうというのではなくて
新参者のことを考えると今のまとめサイトの現状はどうか、という話題なので
そちらさんへの誘導は無用です。

64 :まとめサイト:2006/12/02(土) 16:55:50 ID:XnFe2hQ+0
リンクの削除について。
2ch(2ch系サイト含む)と一般サイトでは風土が異なるので、私がリンクしたサイトのそのまた先々の一般サイトが2chのノリで炎上なんてことになるのも嫌だなというのがリンク削除の理由の1つです。
また、リンク集があるとそれの保守をしなくてはならなくなるのが面倒で嫌になったのも理由です。
語弊はありますがいい機会なので今後はリンク集は作らないことにします。
スレこそがスレ住人を結ぶ中心だと思うので、スレを軸にして繋がっていればリンク集は不要だと思います。
スレや過去スレにリンクがあるのだし。

新参者への配慮ですが「過去ログ嫁」で十分だと思っています。

前スレのログですが、手が空いたらUPしておきます。

65 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 17:24:14 ID:eUNpK3kL0
>>64
とりあえず中四国支部鬼譚の他の話数がどこにあるのかの説明は
適当なところに入れたほうがいいんじゃないですか?

66 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 19:53:40 ID:Z7sER+L/0
>>55
俺も面白い

67 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 19:58:14 ID:z9FkzzQmO
雪風問題は向こうに用意されている。
あえてこっちに書くのは便乗した荒らしとみなす。

68 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 20:47:45 ID:Yik7UTve0
>49 >53 >63 >65
ID:eUNpK3kL0

判りやすい釣りだよな。
っていうか自演乙というべきなのか。
真面目にSSの邪魔なんで、向こういってくんない?

69 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 21:12:22 ID:2r1LQqac0
>>68
このスレのまとめサイトなんだからこのスレ全体に関わる話だ。
ここの住人全員が向こうを見てるわけじゃないんだから、
スレ全体に関わる話はここで話すのが当たり前だろう。
俺にはお前のほうが釣りに見えるよ。>>67はお前が携帯で書いたんだろうし。
釣りじゃないとしてもお前は勘違いしてる。
誰も雪風管理人に配慮してるんじゃない、このスレに新しく来る新参に配慮してるんだ。

あと念のため言っておくが用語集の話題は誰がどう見てもこのスレでやるべき話だからな。

70 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 21:53:18 ID:z9FkzzQmO
出ると思った自治厨気取りw
作品読みたく無い奴は邪魔!
ここは作品投下にして向こうで話すって趣旨だろ?

71 :名無しより愛をこめて:2006/12/02(土) 23:15:29 ID:rD8MwQEG0
最近はSS読むのと厨死酷の管理人の書き込みを見破るのがこのスレの新しい楽しみ方になってる。


72 :名無しより愛をこめて:2006/12/03(日) 02:05:43 ID:kCdJwCXy0
ID:fJWR1+4w0 ID:Z7sER+L/0 ID:rD8MwQEG0
こいつの煽りは一切相手にせず脳内あぼーんするように。
向こうのスレでもそういう結論になった。


で、上のほうで出てた用語集の話だけど、今のところ用語集に載ってない作品の作者さんの中で
自分自身の作品の用語集を自分で作ってもいいよっていう作者さんはどれくらいいる?
名乗り出てみてほしい。

73 :名無しより愛をこめて:2006/12/03(日) 04:25:23 ID:ZIO+EGMpO
スレを元に戻しましょう!
そのためには作者さん方がSSという燃料を投下して下さい。
住人も一言でいいからコメント寄せると良いです。


また鬼達に逢いたいです(ノ_・。)

74 :凱鬼作者:2006/12/03(日) 11:55:26 ID:TYsD3RPx0
やっとPC復帰・・・。
>>72
時間があれば作りたい・・・。

75 :名無しより愛をこめて:2006/12/03(日) 21:25:53 ID:w8/f2Wp7O
おお、良い感じの流れになってきたな。
用語集を皆で作るのはすごくいいアイディアだと思う。
VIPのことで色々ゴタゴタはあったけど、これを機に
スレの団結力が一層高まったらいいな。
雨降って地固まるというし。

76 :名無しより愛をこめて:2006/12/03(日) 21:27:54 ID:xKDRkoH10
用語集の情報提供なんかはここでやってもらうの?それとも別に場を設けるの?
皇城みたいにチラ裏とかかいてもらうとか?

77 :名無しより愛をこめて:2006/12/03(日) 22:08:33 ID:kCdJwCXy0
>>76
本家用語集は、SSで書かれた内容を収集しているだけで、
用語集のために各作者さんが書き下ろされた設定とかは無いよね。
だから読者が作るとしたらSSを熟読して書くしかないし、
作者さん自身が作る場合も、SSで語っていない設定を出したりはしないで
あくまでSSに既に書いた内容だけを入れるのが、整合性が取れていいと思う。
場所はどこかに避難所でも作ったほうがいいのかな?

78 :名無しより愛をこめて:2006/12/04(月) 00:39:14 ID:U+FPlgL8O
>>77
そりゃどこか別の場所でやるべきでしょ
こんな場所に投稿したい職人さんなんていないだろうし

↓それこそここなんか良いんじゃない?
ttp://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/

79 :名無しより愛をこめて:2006/12/04(月) 01:57:20 ID:txERLMxHO
向こうはここが荒れてるのを見かねてVIPが立ててくれたんだろ?
スレ乱立はイクナイけど雪風問題以外に使うのもどうかね?
かなり好意的な態度の人達に失礼じゃないかね?

80 :名無しより愛をこめて:2006/12/04(月) 07:16:00 ID:bpac9Qgo0
>>78は例の煽りだから相手にしない。
その内、「雪風管理人の自演書き込みがバレバレで今日も面白いなあ」とか言い出すよ。

81 :名無しより愛をこめて:2006/12/04(月) 11:12:33 ID:UVWpAB8eO
各自、現行の用語集の様式をそっくりそのまま真似てhtmlで作り、どこか適当なロダに上げればいいと思う。
ロダなんて幾らでもあるから迷う必要はないかと。
最終的には、それらの用語集を、用語集サイトさんに現行用語集に合体(吸収)してもらうということでどうか。
用語集サイトさんもいくら多忙とはいえ、皆が作った用語集を現行用語集に組み込んでくれる余裕はあるはず。


82 :名無しより愛をこめて:2006/12/04(月) 11:32:25 ID:0p7HBaR20
ここと重複で立ってるスレがあるんだけど、
↓を用語集用のスレにしたらどうかな?

鬼達の活躍するSSを創るスレ【響鬼】(仮)
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1164864944/


たとえば、名前欄に作品名(作者名)を書き、
記事欄に用語と説明を書くとか…
様式を最初に決めておけば、文字検索もしやすいと思うし、
記事をエクセルとかの表計算ソフトで纏めれば、
一つのスレでいろんな作品の用語があっても作者や作品ごとにソートも出来る(htmlの書き出しも)。
まあ一案だけど。
ただ、これをやるには誰かまとめ役が必要になると思う。
俺は今忙しくて出来ないけど。
案だけ言いだしっぺでごめん。

83 :名無しより愛をこめて:2006/12/04(月) 12:09:57 ID:d2f/atR2O
この先SS発表してくれる作家さんってどのくらいいるの?
最近あまり見てないから気になってた

84 :名無しより愛をこめて:2006/12/04(月) 13:31:07 ID:bpac9Qgo0
>>81の案と>>82の案とだと、俺は前者がいいと思う。
後者はスレに書き込んだ内容をhtmlに直す必要があるし、それをやるまとめ役も必要になる。

>>81の案に補足して提案だが、新しく作る人は本家用語集をhtmlで手元に保存してしまって
それを直に編集して用語を付け足すというのはどうかな?
本家に載ってないSSの内容を新たに加えるなら、元々あった方も微妙にいじらなきゃならんし。
(例えばあるSSに登場する「A」という用語が既に本家に載っていて、そのSSと設定が異なる別のSSにも
「A」という用語があり、それを新たに加えるなら、元々あった方に「○○SSのほうのA」という説明を
付け加えなければならない)
このやり方なら、本家用語集の人にも余計な作業をしてもらわなくて済むし。
大勢がてんで勝手に作業を進めてると結局あとで全部合体させなきゃならなくなるから、
ある人があるSSの用語を完全に付け加え終えたあとで、別の人がそのhtmlファイルを引き継いで
自分の担当するSSの用語を付け加えて、また別の人に渡すというリレー形式にする必要がある。

85 :名無しより愛をこめて:2006/12/04(月) 15:06:13 ID:rrilebTA0
あんまり詳しい方じゃないから気楽に書き込める方法がいいな。

86 :見習いメインストーリー:2006/12/05(火) 23:24:02 ID:bTv5xJlr0
前回は>>58から。

十九之巻「取持つ少年」

 六月に入り、先月の太鼓の鬼についての講義に続いて、管の鬼についての講義が始まった。
みどりは、先日猛士の間で会ったイブキを例に出して、管の鬼の説明を始めた。
 イブキと聞いて、純友はその弟子の「と」、天美あきらのことを思い出した。
 学校でも、「たちばな」でもまったく会っていないが、先月の一件以来、気まずいまま
時間が過ぎている。ある日曜の研修の後、残ってみどりと共にディスクアニマルの整備を
してから、夕方過ぎに帰ろうとした時、「猛士の間」であきらと顔を合わせてしまった。
「あ……その……」
 口の中でもごもごと何か言いかける純友を無視して、あきらは部屋の一角にあるパソコン
に向かい、報告書の提出作業を続けた。
 そこに、店の作務衣を着た少年が一人、入ってきた。
「天美さん、授業のノートのコピー持ってきたよ」
 純友と大洋は立花勢地郎から、今月から「たちばな」にアルバイトが一人入ると聞かされて
はいたが、まだ顔合わせはしていなかった。そこに現れたのは、純友も遠くから見たことのある、
ヒビキの友人、安達明日夢だった。
「あ、あれ?」
 純友とあきらの間にある張り詰めたものを感じて、明日夢は二人を見比べた。
「あの、はじめまして。安達明日夢です。──猛士の方ですよね」
「まあ……その……見習いというか」
「ああ、じゃあ天美さんと同じですね。天美さんも鬼の見習いですから──」
 言いかける明日夢に背を向けたまま、あきらは厳しい口調で言った。
「同じじゃありません、そんな人」


87 :見習いメインストーリー:2006/12/05(火) 23:25:12 ID:bTv5xJlr0
 やはりまだ、勝手に鬼笛を使用したことを怒っている。何も言えず、純友は涙目でうつむいた。
 明日夢は、純友とあきらの様子を交互に見て、どうしたものかと考えていた。

 翌週も、引き続き管の鬼についての講義が続いた。
「管の鬼の戦い方は、遠距離攻撃。空を飛ぶ魔化魍や高速移動をする魔化魍に対して、空気弾を
打ち込むことから攻撃が始まるから、スピード重視で、なおかつ精度の高い射撃能力が優先されるの」
 戦い方につづいて、扱う魔化魍の話を終えた後、みどりはホワイトボードに鬼の名を書き出し、
純友たちには鬼の履歴ファイルを渡した。
 ホワイトボードの一番上に書いた名前を指して、みどりは言った。
「まず、トウキさん。彼が関東の管の鬼の最年長。奥さんと息子さんとの三人家族なんだけど、
奥さんが『飛車』で、息子さんは『と』で──つまりは一家そろって鬼の活動をしてるのね」
 履歴書ファイルには、そうした家族構成も載っていた。
 次にみどりは、ホワイトボードにカタカナで書かれた「ショウキ」を指して言った。
「ショウキ君は管の鬼だけど、両腕に鉤爪の武器を着けていて、接近戦も多用する鬼さんね。
ダンキ君と同じで体育会系で、なんか気が合うみたいで、どっちかが出動の時は、もう一人が
『飛車』の役をして、よくお互いサポートしてるんだけど──大洋くんは、会ったことある?」
「いや、まだ」
 大洋は、ファイルのショウキの頁にある写真を見た。Tシャツ姿の青年が笑顔で写っていた。
 続いて、みどりは上から三番目にある「フブキ」という名を指した。
「フブキちゃんは、関東では唯一の女性の鬼よ」
「イケてんじゃん!?」


88 :見習いメインストーリー:2006/12/05(火) 23:25:48 ID:bTv5xJlr0
 大洋がファイルにある写真を見て言った。純友は、多美に言いつけてやろうと密かに思った。
「射撃能力だけで言えば、全国レベルの実力者よ。それだけが管の鬼の力のすべてってわけじゃ
ないけど、そのことで本部でも名が通っているのは確か」
 みどりは、ホワイトボードの一番下に記したイブキの名を指して言った。
「で、最後がイブキ君。会ったことあると思うけど、彼は吉野にある宗家の三男坊で……
本当に、お坊ちゃんよね〜。でも、君たちとそう変わらない年から鬼の活動を続けていて、
彼の鬼としての実力は相当なものよ。あの若さでもう弟子がいて──って、あきらちゃんのことは
もう良く知ってるよね。おんなじ学校だし。仲良くしてる?」
 大洋は元気良くオウ、と答えたが、純友は何も言えなかった。

 六月半ばの日曜日、みどりが吉野の本部に出張のため研修はお休みだったが、純友だけは
「たちばな」にやってきた。今週も、ディスクアニマルの整備にかり出されたのだ。
 既に先週のうちに、純友は陰陽環を監督なしで使用するための申請書を書いていた。
 ──本来この腕環は、鬼が修行の最初の段階で師匠の許可を得て使用するものであり、
師匠が弟子のために吉野から取り寄せるのが慣例となっている。純友は、関東支部の外に
持ち出さないことを条件に、腕環の使用許可を得ていた。
 右手に陰陽環、左手に鬼弦を装着して、地下の研究室で一人黙々とディスクの整備を続けて
いると、そこに誰かが入ってくる気配があった。
 入ってきたのが天美あきらであることに気づいて、純友はその場から逃げ出したくなった。
 硬い声と表情で「失礼します」と言って入ってきたあきらに、純友はおそるおそる黙礼を
返すしかなかった。


89 :見習いメインストーリー:2006/12/05(火) 23:26:49 ID:bTv5xJlr0
 純友の背後で、ロッカーを開ける音と、何かをカチャカチャといじる音が聞こえた。
やがて鬼笛が吹き鳴らされ、ディスクアニマルが起動する音がして、純友はびくりとした。
 純友が机上のディスクの整備を終え、次のひと山を取りにボックスのところまで行くと、
純友と同じようにディスクの整備らしきことを行っている天美あきらの姿が目に入った。
「え……?」
 立ち尽くしている純友に対して、そちらを見ずにあきらは言った。
「あのあと安達くんに、須佐先輩と仲直りしたほうがいいって言われました」
 整備の手は止めずにあきらは続けた。
「助けてくださった先輩に、失礼な態度をとってしまったことをお許しください。
今日は、お詫びにディスクアニマルの整備の手伝いに来ました」
「あ、ああ──そう……」
 いくぶんほっとして、純友は言った。あきらは顔を上げて笑顔で言った。
「協力して、早く終わらせましょう」
 安心のあまり、思わず涙が出て来た。あきらがそれに気づいて慌てて言った。
「せ、先輩──?」
 そこに、明日夢が入って来て言った。
「すみません、ここに天美さんは……あれ? 先輩?」
 純友は、流れる涙をぬぐいながら明日夢に近づき、言った。
「安達くん、君っていいやつだな……本当に」
「え? あ……いや、そんな、泣かないでください」
 感激して純友は、自分の手が涙でべったり濡れていることにも気づかず明日夢の手を取った。
 遠慮して何も言えない明日夢の様子を見て、あきらはくすくすと笑っていた。

十九之巻「取持つ少年」了


90 :見習いメインストーリー:2006/12/05(火) 23:27:32 ID:bTv5xJlr0
次回予告

「ディスクの整備が増えているのは、コイツのせいだ」
「さすがっス! 始末書の書き方ひとつ取っても手慣れたものっス!」
「始末書ってあるじゃないスか。あれって、増えるとナンかあるんスか?」
「世の中には、知らない方がいいこともあります」

見習いメインストーリー 十九之巻「謝る師弟」


91 :名無しより愛をこめて:2006/12/06(水) 07:18:54 ID:S85+Uu/S0
用語集企画、本気で進めるなら作者さん一人一人に当たっていかないと。

さしあたり見習いメインさんはご自分の作品の用語集をご自分で作られますか?

92 :名無しより愛をこめて:2006/12/06(水) 09:17:49 ID:DYEA0J79O
全作品用語集を作るなら鬼門は中四国さんかな?
べつにこの前の騒動のことを言ってるんじゃなくて設定のこと。
四国支部と中国支部と中四国支部が同じ用語集に並ぶのは……
そういう「ごたまぜ感」を楽しむならいいけど。


93 :見習い:2006/12/06(水) 23:16:58 ID:XiDxJrAB0
>>91さん
私の方では用語集作成の予定はありません。今はSS作成に集中したいと思います。


94 :名無しより愛をこめて:2006/12/07(木) 00:05:45 ID:3ejqwy5vO
鬼のハナシで鬼門を避けてどーすんだい。

95 :名無しより愛をこめて:2006/12/07(木) 00:14:16 ID:YOLUHZg1O
はいはい

96 :名無しより愛をこめて:2006/12/07(木) 12:39:56 ID:uE1rDXXRO
前スレで中四国さんが言ってたけど、出雲の神有月は今日までらしいね。
投下は間に合うんだろうか?

97 :名無しより愛をこめて:2006/12/07(木) 17:50:28 ID:pUZtrM+r0
用語集作るのならwiki形式が無難かな
現在の用語集サイトさんはあくまで善意でやってる訳だし
あのサイトは響鬼の方の用語集を見れば判るとおり
管理人さんは極端な前期響鬼信者傾向なので
載せる内容に偏りがあるかも知れないし、初見さんを不快にさせる可能性もなきにしもあらず
(“用語集を見るとここは前期響鬼好きの集まりなので”みたいなことを前にレスされてたし)

98 :高鬼SS作者:2006/12/07(木) 20:56:34 ID:T2PAea7A0
ここ暫く忙しく、いつものペースでSSを書く事が出来ませんでした。
漸く一本出来たので投下させていただきます。
自分で言うのも何ですが、ちょっとグダグダな箇所もあります。
だがそれがいい。

…それではどうぞ。今回のSSは思いっきり軽いノリです。

99 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 20:58:29 ID:T2PAea7A0
1977年、長月。
この頃は全国的に魔化魍がイレギュラー発生し、各地の猛士支部では変則的なシフトが組まれ連日のように鬼が戦いを繰り広げていた。首都東京でもそれは例外ではない。
関東支部所属のザンキに国際電話が掛かってきたのは、まさにそんな時期であった。
「ジェバンニじゃないか!どうした?良い女でも紹介してくれるのか?」
「馬鹿。非常事態でもないのにこちらから電話をする筈がないだろう!?」
勿論ザンキだって分かって言っている。
「ZEUSを覚えているか?ギリシャの組織の……」
「それが?」
ジェバンニが何を言いたいのかよく分からない。
「連中が長年探していたタロスの心臓がDMCの管轄内で発見された」
タロスとは神話に登場する青銅巨人の事である。
「第一時大戦のどさくさに紛れてクレタ島から墺太利(オーストリア)に持ち込まれていたらしい」
「だったら煩く言われる前に引き渡せばいいだろ?……否、待てよ?何でお前がそんな事をわざわざ俺に話す必要がある?」
「我々が確保するほんの数日前、何も知らない日本人観光客が骨董品として買っていってしまったのだ」
それを聞いてザンキは物凄く嫌そうな顔をした。つまり現在日本に滞在中のザンキに回収してこいと言っているのだ。
「……売られてたのか」
「そうだ。事情を知らない者から見ればただの青銅のオブジェだからな」
うちとZEUSとの関係を円滑にするため是非ともやってくれ、とジェバンニは告げた。
「あのな、今こっちも大変なんだぜ?この間も山から追われた狸が人里まで出てきて人を化かしてだな……」
「タロスを放っておくともっと酷い事になるぞ」
確かに、あの屈強な聖闘士達が危険視しているような代物だ。放置しておけば碌な事になるまい。
「こちらで調べた結果、その日本人の住所は……」
その住所を聞いて良い事を思い付くザンキ。
「よっしゃ任せろ。数日後には郵送してやる」
「頼むぞ。それと郵送する際は絶対金属製の物には入れるなよ」
そう念を押すとジェバンニは電話を切った。

100 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:00:10 ID:T2PAea7A0
「……という訳で今回のあなたの任務はそれの回収よ」
猛士総本部の研究室で、開発局長の南雲あかねはコウキに説明を終えた。
「つまりその大阪に住んでいる資産家の家から回収してくればよろしいのですね?」
そう確認するコウキ。あかねが頷く。
「しかし何なんですか、その青銅のオブジェというのは?何故猛士はそのような物を?」
「私も詳しくは知らないんだけど、物凄く危険な代物らしいから……」
ここで少し説明しておこう。数時間前、あかねに関東支部のザンキから電話が掛かってきた。そしてタロスの心臓の回収を依頼してきたのである。
電話を終え、ザンキから聞いた情報の裏付けを取って漸くあかねはコウキにその事を話したのだ。勿論ザンキの名前は伏せて。
「やってもらえるかしら?」
「まあ任務であるのならば……」
そう言うコウキに対し、あかねは猛士の正式な任務であると嘘を吐いた事を内心謝っていた。

後日、コウキは身分を偽り件の資産家の屋敷を訪れていた。今回コウキは美術品の鑑定家という設定になっている。
「鑑定の際にこっそりこの偽物と取り替えればいいわけだな」
そう呟きながら手にしたアルミケースを一瞥するコウキ。中にはあかねがザンキから聞いた情報を基に作られたフェイクが納められてある。
着慣れない背広の襟を正すと、コウキは屋敷へと入っていった。

101 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:01:41 ID:T2PAea7A0
コウキを出迎えたのは沢山の使用人と、主人の金賀有造(かねがあるぞう)だった。
「お待ちしておりました。金賀です。いやあ、偉い鑑定家の先生が来るいうもんやからどんな爺さんが来るやろ思うてましたが、意外と若い人で驚きましたわ」
揉み手をしながらそう自己紹介をする金賀。対するコウキは。
「はあ……」
そう答えるのがやっとだった。一体自分は相手に何と知らされているのだろうか。
「聞けば何でもかの有名なメトロポリタン美術館に勤めていたとか……」
何か凄い事になっている。
「ほな行きましょか。こちらです」
そう言って青銅のオブジェ=タロスの心臓を展示してあるという部屋へとコウキを案内する金賀。長い廊下を黙々と歩いていると。
「ところで……」
「な、何か?」
偽の鑑定士だとばれたか?
「なんや噂に聞いた話やと、メトロポリタン美術館には絵の中に少女が閉じ込められたっちゅう怪談があるらしいですなぁ。ほんまでっか?」
「……知りません」
無駄話をしているうちに二人は金賀が「宝物庫」と呼ぶ部屋の扉の前へとやって来た。

102 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:03:10 ID:T2PAea7A0
室内には様々な骨董品が所狭しと陳列されていた。
「どうです?凄いですやろ?」
コウキに向かって自慢げにそう言う金賀。
タロスの心臓は部屋のど真ん中に、硝子のケースに入れられて展示されていた。
ターゲットを確認し、早速作業に移ろうとするコウキ。
「では早速鑑定を始めさせていただきます。申し訳ありませんが、ここから退室していただけませんか」
「何でですのん?」
フェイクと摩り替える為とは口が裂けても言えない。
「実は……あまりにも来歴の不明な品を鑑定する際は、部外者を傍に置いてはいけないという恐ろしい掟があるのです!」
「な、何やて〜!」
実に良いリアクションを返してくれる。
「せ、せやけど何でそんな……」
「大宇宙の意思です!我々世界鑑定士協会の長、パパパジャマ様がレティクル座に住む邪神コケモモ様より送られた電波を受信し……」
大袈裟な言い回しやハッタリ、持論を押し切る強引さはコウキの得意とするところだ。しかしいくら何でもこれを信じる事はないだろうという自覚もあった。後悔先に立たず。言ってしまったものは仕方がない。
だが。
「何と……そんな秘密があったやなんて……」
信じたのか、こんな与太話を?
金賀の目を見るコウキ。疑っている様子は微塵も感じられない。
この男は馬鹿だとコウキは心で理解した。何らかの肩書きを持つ者の言葉は何一つ疑う事無く信じるという大馬鹿者である。

103 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:04:42 ID:T2PAea7A0
「ほな、鑑定が終わるまで出ていきますわ。防犯システムも停止してあるさかい、後は頼んます」
最後まで軽い調子で宝物庫を後にする金賀を見送ると、コウキは早速硝子ケースの中からタロスの心臓を取り出してフェイクと交換し、本物をアルミケースの中に納めた。
(少しひやひやしたが、実に簡単な任務だったな)
改めて室内を見渡してみる。部屋の至る所に同じ様に硝子ケースに入れられた壷だの何だのが陳列されてある。それ以外にも壁には絵画が、部屋の四隅には石膏や青銅で出来た彫像が並べられてあった。この一室だけで小さな美術館にも引けを取らない。
しかし節操無く集められているのを見る限り、典型的な成金趣味の表れだと言える。きっと贋物を掴まされた事も多々あるだろう。だからこんなにも簡単に鑑定士として潜り込めたのだ。
暫くぼうっと室内を見て回っていたが、気配に気付き扉の方を向いた。直後、ノックと共に「失礼します」という声が聞こえた。「どうぞ」と招き入れるコウキ。
「旦那様のお言い付けでお茶の準備をさせていただきました。どうぞこちらへ」
一人の使用人がうやうやしく礼をしながら告げた。
「分かりました。仕事も終わった事ですし、直ぐに伺います」
金賀には「大した価値はありませんでした」と一言言ってやればいい。後は向こうが勝手に処理してくれるだろう。そんな事を考えながらコウキは宝物庫を後にした。

104 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:05:28 ID:T2PAea7A0
剥製が立ち並ぶ応接間に案内されたコウキは、そこで主人の金賀と共に用意されたお茶菓子を食べながら、話を切り出す機会を窺っていた。
と、その時。
「な、何や今の音は!?」
宝物庫の方から硝子が割れたり、大きな物が倒れたりする音が聞こえてきたのだ。
使用人を引き連れて宝物庫へと向かう金賀。コウキも後に続いた。
「ま、まさか泥棒やろか?防犯システムを切ってあったさかい、その隙を衝かれたんちゃうやろな……」
不安そうに執事にそう尋ねている金賀。コウキもまた不安を感じていた。例の心臓が入ったアルミケースを宝物庫に置いてきたままだったのを思い出したのだ。
宝物庫の中に飛び込んでいった者全てが我が目を疑った。有り得ない光景が眼前に広がっていたからだ。
「な、何やこいつは……」
そこには、部屋中に飾られていた金だの銀だの青銅だの、ありとあらゆる金属が融合して生まれたと思われる不恰好な巨人が突っ立っていた。
巨人の左胸が脈打っているのが見える。間違い無くあの心臓が原因だろう。という事は。
「これがタロスなのか……?」
ザンキは一つだけミスを犯していた。悪意があったわけではない。ただ言い忘れていたのだ。「タロスの心臓を金属と直に触れさせてはいけない」と。
様々な金属が溶け合い混沌としていた巨人の体の形が少しずつ整っていき、古代の歩兵のような姿へと変わっていった。
金賀も執事も使用人も、皆一様に唖然とした表情で事の成り行きを見守っていた。
と、天井に届く程巨大な金属の巨人が、そののっぺりとした顔をコウキ達の方に向けた。悲鳴が上がり、使用人達が主人を見捨てて我先に逃げていく。
「こ、こら!お前等〜!」
当の金賀は腰を抜かしていた。そんな金賀を背負い、駆け出すコウキ。
「あ、あ、あれは何ですのん?」
「知りませんよ!」
扉を突き破る音と、タロスが床を軋ませながら追ってくる音が背後から聞こえた。
外へと逃げ出したコウキは既に避難を終えていた執事に金賀を預けると、一言「様子を見てきます」と告げて屋敷内へと戻っていった。

105 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:06:57 ID:T2PAea7A0
廊下でタロスと向き合うコウキ。
「参ったな……。破壊ではなく回収が任務だからな……」
炎で体を構成している金属を溶かし、心臓部を回収するというのが最良の手段に思える。しかし金属を溶かす程の熱を出すとなると、まず間違い無くこの屋敷は炎上してしまう。
「さて、どうするかな……」
思案したところでどうにかなるわけでもない。コウキはとりあえず変身するべく音叉を取り出した。だが、ある事に気付いて再び音叉を懐に収める。
「……全然攻撃を仕掛けてくる気配が無いな」
タロスは突っ立ったまま一向に動く素振りを見せないのである。
試しにタロスの傍へ数歩近づいてみるコウキ。と、今まで停止していたタロスが突然動き出した。慌てて同じ分後方へ下がると、タロスもまた同じ位置へと戻り動きを止める。
「こいつ、まるで……」
コウキは、タロスがまるで廊下の奥へと進むのを妨げているかのように見えた。廊下の奥にあるのは宝物庫のみである。
番人。その言葉がコウキの脳裏に浮かんだ。
そういえば神話ではタロスはクレタ島で番人をしていた筈だ。という事は……。
「守っているというのか?」
コウキの問い掛けに答える筈も無く、タロスはケンタッキーの店頭にあるカーネルおじさんの像よろしく、ただ静かに立っているだけだった。

106 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:08:00 ID:T2PAea7A0
外へと戻り自分の推理を金賀に話すコウキ。それを聞いて流石の金賀も驚きを隠せずにいた。
「んなあほな!宝物庫のお宝は全部わしの所有物やぞ!それやのに何で所有者のわしまで近付けんねん!」
「ですが旦那様、並大抵の防犯システムよりは遥かに安全かと……」
そのように助言する執事の頭を思いっきりしばきあげる金賀。パコーンという良い音が周囲に響いた。
「どあほ!せやからわしが近付けんでどないするっちゅうとんのじゃ!……鑑定士さん、何か良い方法はありまへんやろか?」
少し可哀そうな気もしてきたが、こればかりはどうしようもない。しかしコウキの方にも回収という任務がある。
と、使用人の一人が屋敷の方を見て悲鳴を上げた。見ると、さっきまで全く動く様子の無かったタロスが屋敷内を徘徊していたのだ。
「う、動いとるやないですか!」
「ひょっとして……巡回しているのか?」
つまり、不審者がいないか屋敷内をパトロールしているのだ。見つかれば即摘み出されるか、最悪な場合殺されるだろう。
「冗談やないで!屋敷内におる事もでけへんのかいな!」
血相を変えて金賀が叫ぶ。
使用人達も不安そうに互いに顔を見合わせている。このまま屋敷に立ち入る事が出来なくなれば全員失業となるわけだ。それは不安だろう。
「とりあえずあの巨人がおらん間に、宝物庫の残った宝を回収するで」
執事以下使用人一同にそう告げる金賀。それに対しあからさまに嫌がってみせる使用人達。
「……危険な事は止めておいた方がよろしいかと。あの巨人が何の考えも無しにあの場から離れるとは思えません」
そう金賀に告げて思い止まらせるコウキ。
沈黙が流れた。この屋敷の住人達は全員絶望し思考を停止している。
その沈黙を破るかのように、コウキが「電話してきます」と言ってその場から立ち去っていった。こうなったら正直に事情を話してあかねか京極に助言を貰うしかない。
「あ、どちらへ!?まさかマスコミを呼ぶんとちゃいますやろな!?」
金賀の悲痛な叫びが背後から聞こえてきた。

107 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:09:22 ID:T2PAea7A0
一時間後、コウキは再び屋敷の中でタロスと対峙していた。対策を聞き、金賀に何とかする事を告げて単身屋敷内に乗り込んだのだ。
音叉を打ち鳴らして変身する。炎を払って中から高鬼がその姿を現すも、タロスは宝物庫へと続く廊下のど真ん中に突っ立ったまま微動だにしない。やはり近付く者以外には反応しないようだ。
(さて、生物でない相手に正攻法が通用するかどうか……)
音撃棒・大明神を構え、鬼石の先端に炎を集中させる高鬼。そのまま鬼棒術・小右衛門火をタロス目掛けて放つ。
紅蓮の炎に包まれるタロス。流石に身の危険を感じたのか、高鬼の方へと向かってきた。
掴みかかってくるタロスの腕を躱すと、高鬼はその背後へと回りこんだ。そして電話で聞いたタロス唯一の弱点を狙う。
その弱点とは踵だ。踵にある栓を抜くと体を構成している金属が再び溶けだし、再結合まで時間が掛かるというのだ。その隙に回収すればいい。
「ぬおおお!」
力任せに栓を引き抜こうとする高鬼。タロスの体に触れている部分から肉の焼ける音と共に煙が上がる。しかし高鬼も炎使い。これしきの事で怯むわけにはいかない。
そして。
派手に音を立てて栓は引っこ抜かれた。途端にその部分からどろどろと赤く焼けて液状になった金属が流れていく。
「……ん?待てよ、という事は……」
金属を溶かす程の熱を出すとなると、まず間違い無くこの屋敷は炎上してしまう。その予想通り、屋敷はあっという間に炎上してしまった。

燃えろよ燃えろ(燃え上がる屋敷をバックに流れる挿入歌)
フランス民謡 作詞 串田孫一 歌 加賀美新(特別出演)

燃えろよ燃えろよ 炎よ燃えろ
火の粉を巻き上げ 天までこがせ

108 :仮面ライダー高鬼「闊歩する番人」:2006/12/07(木) 21:10:25 ID:T2PAea7A0
その後は散々だった。消防車やパトカーが何台もやって来て現場は騒然としていた。
主人の金賀は燃え落ちていく自慢の屋敷を前にしてずっと放心状態だった。勿論、タロスに取り込まれなかった美術品の数々も全て灰になった。
コウキは流石に悪い事をしたと思ったが、何一つ掛ける言葉が思いつかず、タロスの心臓を片手に早々と現場から立ち去っていった。
おそらく屋敷の使用人達は事情聴取を受けるだろうが、果たして何と説明するのだろうか。本当の事を喋ったとしても誰も信じまい。
翌日、地方紙に火事の記事が小さく載っていた。それによると金賀は元々東京の人間だったらしい。道理で関西弁のイントネーションが微妙におかしかったわけだ。まあそんな事はどうでもいいわけだが。
理由はどうあれ屋敷を燃やしてしまったのはコウキに違いないため、流石にあかねも庇いきれず、コウキは上から厳しい処分を受けてしまった。そして上を通さず直接コウキにこのような任務を指示したあかねもそれ相応の罰を受けた。
金賀家の方にも猛士が何らかの形で謝罪を入れるようだ。きっとあの時コウキがその場のノリででっち上げた世界鑑定士協会名義になるだろう。
あらゆるものに多大な迷惑を掛けたタロスの心臓はザンキの下へと無事届けられ、その後欧羅巴へと送られた。それからタロスの心臓がどうなったかは誰も知らない。 了

109 :名無しより愛をこめて:2006/12/07(木) 23:04:44 ID:YOLUHZg1O
久しぶりに先代に振り回される小暮さんだ!w
燃えろよ燃えろのシーンは
ボッチャマ樹花タンと肩組みハミングで行って欲しかったw

110 :中四国支部鬼譚作者:2006/12/07(木) 23:20:49 ID:d6LmyB5X0
>>96
どうにか今日中に間に合わせたいと思って急いで書いていたのですが、
どうやらもう間に合わないみたいなので諦めて明日以降にします。
期待して頂いているところどうもすみません。

最近出ている用語集の話ですが俺は賛成です。
>>97にあるようにWikiの形式がいいと思います。
誰でも自由に編集できて、かつ編集が簡単なので。

111 :見習いメインストーリー:2006/12/09(土) 00:38:09 ID:R/bBa9D30
前回は>>86から

二十之巻「謝る師弟」

 ディスクアニマルの整備を終えて純友が帰ろうとしていた所に、二人の男が現れた。
 一人はヒビキと同年代くらい、野性的な風貌だがもの静かな男で、ザンキと名のった。
そして、もう一人の若く真面目そうな青年は、トドロキと言った。
「『銀』見習いの純友くんだね」
 落ち着いた低い声でザンキは言った。
「この度は、俺の馬鹿弟子のせいで申し訳ないことをした。ディスクの整備が増えているのは、
コイツのせいだ」
 と言って、ザンキは隣に立つトドロキを小突いた。
「スンマセンっス!」
 腰をほぼ直角になるまで曲げて頭を下げるトドロキの様子に慌てて、純友は立ち上がって言った。
「あ、いや、そんな……」
「俺の指導が行き届いていなかったようで、申し訳ない」
 ザンキも頭を下げて言った。
「こないだの現場で気づいたんだが、コイツ、ディスクアニマルを起動する前に、ディスクの
ボックスを逆さにしてばらまいてやがった」
 再びトドロキは大きな声で謝りながら頭を下げた。
「あ、その、頭を上げてください……」
 大声を何度も自分に向けられ、謝られているはずなのに、逆に怒られているようでなんだか
怖かった。
 純友のすすめで席に着くと、ザンキは語り始めた。
「俺は鬼を引退して、独り立ちしたこのトドロキのサポーターになったんだが……」
 トドロキは、ザンキの後ろで休めの姿勢で立ち続けている。


112 :見習いメインストーリー:2006/12/09(土) 00:39:03 ID:R/bBa9D30
「現場でのコイツの仕事を見て驚いた。装備は大切に扱えと教えたはずだったんだが。
あんなやり方じゃ、ディスクアニマルが痛むのも当然だ。余計な手間をかけたな。
コイツには始末書を書かせる。それで許してやってくれないか、純友君」
「あ、はい……じゃ、これを」
 純友は書類棚から慣れた様子で始末書を取り出すと、ペンと一緒に机の上に置いた。
「ありがとうっス!」
 やっと席に着くと、トドロキはペンを持って書類に向かったが、書くことに慣れて
いないのかその手が止まる。
「まず、こことここを書いてですね……」
 要領よく純友が書き方を示す。
 ザンキは、純友にクールに笑いかけて言った。
「ダンキから聞いてたが、君が噂の『銀』見習いか。四月に小菅で人命救助を手伝って、
それからつい先月もイブキの弟子をクグツから守ったそうじゃないか」
「いやあ……それほどでも」
 たちまち有頂天になりながら、満面の笑顔で純友は答えた。トドロキの手がまた
止まっているのを見て、純友は書き方の例を示した。
「さすがっス! 始末書の書き方ひとつ取っても手慣れたものっス!」
 トドロキの胸に刺さる言葉に、純友は泣きながら言った。
「いや、別に好きで慣れたわけじゃないんですけど──」
「今後はもうこういう事はないようにする」とザンキが言い残し、トドロキを連れて帰って
いった。純友は陰陽環を腕から外し、ファイルロッカーの所定の位置に返してから、
その場を引き上げた。


113 :見習いメインストーリー:2006/12/09(土) 00:39:58 ID:R/bBa9D30
 その週の半ばの昼休み、純友は携帯電話にみどりからのメールが入っているのに気づいた。
 本文には「陰陽環が見当たらないんだけど、純友くん知らない?」とあった。
 教室の窓際に移動し、「たちばな」に電話をかけると、勢地郎が出てみどりに取り次いでくれた。
「あの、陰陽環なら日曜にロッカーの中にしまってから帰りましたけど」
『うーん、それがね、その場所になくて……』
 純友は嫌な予感がして聞いた。
「ま、まさかこれも始末書ですか……?」
『ううん、無許可で持ち出していたりとかだったら始末書物モノったけど、そうじゃなければ、
この部屋の中のどこかにあると思うから。純友くんが持ち出してないって言うのなら、信じるわ』

 しかし、日曜研修に訪れた純友が、みどりと大洋に手伝ってもらいながら部屋を探してもやはり
陰陽環は見つからず、探し疲れて三人はそれぞれ机の上に崩れた。
「テメエ、ナニやってんだよ!」
 大洋の罵声に純友は泣きべそをかいて答えた。
「ぼくにもわかんないよぉぉぉ」
「なんだろ〜、ディスクアニマルさんがイタズラでもしたのかな……」
 みどりは、申し訳なさそうに始末書を出して言った。
「ごめんね純友くん、これ書いてくれる〜? 有事の際に、陰陽環が無い状態だとちょっと
まずいから、本部に申請して代わりを取り寄せないと。そのためにはこれが必要なの〜」
「は、はい……どうせ、その……慣れてますから。うぅ……」
 純友は泣く泣く始末書を書いて提出した。


114 :見習いメインストーリー:2006/12/09(土) 00:41:28 ID:R/bBa9D30
「しっかしオマエもよく書くよな。今日ので何枚目だ?」
 今日の研修も終わり、地下からの階段を上がりながら、大洋が純友に訊いた。
「もうとっくに二桁……」
 一階の店員用の休憩室では、ちょうど香須実と日菜佳が休みを取り、お茶を飲んでいた。
そこに顔を出し、大洋が日菜佳に聞いた。
「スンマセン、始末書ってあるじゃないスか。あれって、増えるとナンかあるんスか?」
「ああ、二〇枚を超えると本部で研修になりますよ。でも大洋くん、書いたことありましたっけ?」
「イヤ、コイツ」
 大洋が、隣で背をまるめて肩身の狭い様子で立っている純友を指さした。
 香須実が、何かに気づいたように言った。
「純友くん、『銀』を目指すって決めたんだよね?」
 日菜佳が香須実に向き直って言った。
「ということは、姉上──」
 身震いしながら首を振る香須実。気の毒そうに純友を見る日菜佳。
「え? な、何ですか?」
 何でもない、と言いお茶をすする姉妹の様子に、何か言い様のない不安を覚えたが、
香須実も日菜佳もそれ以上は何も言おうとしなかった。
「い、い、一体なんなんですか? 教えて下さいよぉぉぉ。なんだか怖いですよぉぉ」
 しばらく無言でお茶を飲んでいた日菜佳が、やっと茶碗から口を離して言った。
「純友くん。世の中には、知らない方がいいこともあります」
「要は、これ以上始末書を書くようなことをしなけりゃいいってことよ」
 香須実に言われた後、得体の知れない怖さに泣きながら純友は帰宅した。

二十之巻「謝る師弟」了


115 :見習いメインストーリー:2006/12/09(土) 00:42:33 ID:R/bBa9D30
次回予告

「たったったっ、橘さん!?」
『え? そうなの? でもなんで? ──田島くんも一緒?』
「ごめ〜ん、陰陽環なくなったの、純友くんのせいじゃなかった〜」
「『飛車』か『角』か、いい加減決めないとな。コイツも『銀』目指すって決めたし」

見習いメインストーリー 二十一之巻「届く腕環」


116 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 22:58:08 ID:oZFUaFkJ0
>>97
>>110
新用語集をWikiの形式で作るとしたら、今の用語集サイトさんのを全部そっちへ移植するってことか?
あれはあくまで用語集サイトさんが自分で編纂したものだから許可が要るんじゃないのか?

117 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 23:19:27 ID:bPaIA0Tn0
>116
俺も同意。
いくら2ch派生サイトでも、許可無くコンテンツを移植するのは、盗作だよな。
傾向が気に入らないから、差しさわりのない部分だけ持っていくっていう考え方はいくない。
先ずは用語集サイトさんと今後を話し合ってから決めないと駄目じゃないか?

118 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 23:31:01 ID:Ha1F1tv+0
なんで移植という考えに至るの?
一から作ればいいだけじゃん

119 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 23:35:36 ID:oZFUaFkJ0
>>118
だけど用語集は各SSで語られた設定を忠実に書き出しただけだから、どうしても似通ったものが出来てしまうよ

120 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 23:41:56 ID:cONq65y/0
用語集の人も、現状でいうと手付かずになってきてる訳だから、
他の読者の事を考えると、作者あるいは俺たちみたいな古参が頻繁に更新していくほうが良いのかもな。

121 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 23:49:30 ID:lRBuwNvhO
普通、SSやネタ系のスレのまとめサイトやらまとめwikiやらはスレ住人皆の共有財産だと思うが。
wikiを開設して皆で編集する場合は言わずもがな、誰かが代表としてまとめサイトを作る場合も
その人はスレの共有財産を管理するボランティアみたいなもんだろう。

殊更このスレでは、誰かが書いた設定は皆で共有して使い回そうという伝統がある。

仮に今ある用語集の内容をごっそり移植したとしても特に問題はないと思う。

122 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 23:56:02 ID:Ha1F1tv+0
いや、ごっそり移植は問題あるだろw

123 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 23:59:15 ID:oZFUaFkJ0
まとめサイトと用語集を併せ持つ新しいまとめWikiを作る?

124 :名無しより愛をこめて:2006/12/10(日) 06:10:46 ID:iBP3GqOe0
wikiシステムで1からでいいんでないの?
内容が似通うのは題材が同じなんだからしゃあないし。
ごっそりは多分まずいだろうから、古参の方々筆頭に有志で編纂すれば、内容に偏りなくていいと思うぞ。

125 :名無しより愛をこめて:2006/12/10(日) 22:18:03 ID:HpggGTbb0
そもそも用語集を新たにつくる件について、反対の人どのくらい居る?
レス見る限り、ほとんど新しくつくる方向で話してる気がするんだけど・・・。

126 :名無しより愛をこめて:2006/12/11(月) 12:44:56 ID:uR57OPCAO
反対ではないが用語集なくても構わない

127 :名無しより愛をこめて:2006/12/11(月) 14:26:07 ID:QrnttZx+0
今の状況で用語集つくっておもしろいか?
むしろここが過疎ってる事を晒すだけな気がするぞ。

128 :名無しより愛をこめて:2006/12/11(月) 19:28:46 ID:bT9KskN3O
なくても困らないけどあれば楽しい。俺なんかは用語集を流し読みしてるだけでも結構楽しめるぞ。

ところで現時点で用語集について何も発言されてない作者さん達の意向も聞きたいな。
作者さんや用語集の人、まとめサイトの人など、スレを運営してる人があまり発言しないで
他の住人だけで作ろう作ろうと勝手に話を進めてしまってる気がする。

凱鬼メインさん:時間があれば自作は自分で作る
見習いメインさん:自分では作らない
中四国さん:用語集自体には賛成、自作を自分で作るかどうかには触れてない

用語集に入ってない作品はあとどれどれだっけ?

129 :名無しより愛をこめて:2006/12/11(月) 19:35:09 ID:Gcc5zzB50
>>128
いっぱいあるな・・・。
パロディ系も多いし。

130 :中四国支部鬼譚作者:2006/12/11(月) 23:43:48 ID:DSAMe8zV0
>>128
凱鬼メインさんと同様に、時間があれば自分で作ります。

Wikiで作るなら、そのWikiを開設する役目を買って出ようかとも思っています。
先日のことでこのスレにもご迷惑をおかけしました。その罪滅ぼしの意味を兼ねてです。

131 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 00:17:43 ID:mwmhJZOr0
>130
いや…悪いんだけど、中四国さんは勘弁して。<Wiki作成
IPとか個人情報抜かれたり、悪用されたくないしさ。
せっかくみんなで書き込んだ記事を削除されたらかなわないし。

132 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 00:44:55 ID:nxvDGlQBO
いちいち荒れそうなこと言うなよVIPPER。
せっかく反省した中四国氏を住人が受け入れようとしていたところに…。

133 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 00:54:43 ID:IRwpEyJsO
俺も131に同意。

つうか自分に都合悪いレスを全部ビッパーにしてんじゃないよ^^

134 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 01:15:37 ID:mwmhJZOr0
>132
だから、悪いんだけど…って前置きしてるでしょ?
どう見ても今までの中四国さんの態度から、
反省だとか誠意だとか、そういったものを感じられないから
俺は彼の事を信用出来ないんだよ。
絵師の人をさんざん叩いて置きながら、
自分は反省したので信じてくださいって言っても無理だよ。
俺の発言が、住人の総意じゃないのと同様に、
132の発言も住人の総意じゃない事をわきまえないと
説得力なんて生まれないよ?

ついでに言うと俺はVIPPERじゃない。
裁鬼スレの頃からの住人だ。
ここでVIPPERがどうのというのなら、向こうのスレに行ってくれ。


135 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 01:25:42 ID:RPp2GFTRO
住人の中にもこういう輩がいるということで。
見たくない奴は見なきゃいいだけだ。おとなしく黙ってな。

中四国さんは本当にその気があるのでしたらこいつは無視して作っちゃって下さい。
こういうひねくれた奴もいますが他は素直に感謝するものがほとんどでしょう。

136 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 01:41:17 ID:D7xq9dWJ0
中四国は今まで削除した掲示板のログを全部元に戻せよ。
自分の都合のいいように内容を改組する奴が信頼おけるか、アホ。
ポーズだけの反省はいい加減やめろ。

あと中四国自身も糞VIPPERだろ。

137 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 05:40:22 ID:zsr2ayls0
>>131
俺も同意。
この前のログ見たけど、中四国に管理されたら何されるかわからない。
あの雰囲気じゃ「私の設定とかぶってたので消しました」とか言われかねないし。
そしてその後、中四国を擁護するレスがいっぱい付くんでしょ?
「私は中四国さんの設定の方が好きなので消してよかったと思います」みたいな。

なんかもう信用したくても疑心暗鬼になってくるよ…。

138 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 07:44:07 ID:RPp2GFTRO
>>131>>135のような根拠の無い煽りはもはや荒らしとしか見なせないが。


139 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 07:45:11 ID:RPp2GFTRO
>>137の間違いだ

140 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 07:57:39 ID:+ibpmbuO0
お前個人がどれだけ中四国を嫌いでもかまわないが他の皆を巻き込むな。
VIPの絵師とは揉めていたがこのスレの住人とはそもそも何ら揉めていないのに
どうして中四国がこのスレの住人に害を及ぼすなんて滅茶苦茶な予想ができるんだ?
それにそういう話題はヲチ板のスレでやると決まったんだから無駄にこっちを荒らすな。
そして白々しく「俺も同意」とかいって仲間が複数人いるように見せかけるのはやめような。

141 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 08:03:20 ID:O73KKWrY0
>>140
雪風乙。


142 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 08:07:18 ID:zsr2ayls0
>>138
なんだよ、少しでも中四国に不利なこと書いたら荒らし扱いかよ…。
そもそも本人なのか特定できない中で、暴言吐いて疑心暗鬼を生んだのは中四国だろ。
もう何を信じていいのかわからなくなってるんだよ。
今となっては>>138>>140も携帯とPCで自演かもしれないって思えてくるし…。

それに嫌いとかじゃなくて、がっかりしてるんだ。

143 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 09:07:53 ID:jZhXuhfg0
中止国がレスしたあたりから嫌な予感はしてたが、
やっぱりこういう流れになったか……。

また面倒な事になるかもしれないが、ここにSSを投下する人は
エイキ、ダンキを筆頭に殆どが裁鬼SSさんに刺激された人でしょ?
虹鬼は他から流れてきたけど、今、連載してないからちょっと置いといて。
雪風問題の事はとにかく、中止国さんは裁鬼SSリスペクト作品では無い訳だから、
別カテゴリー扱いでいいんじゃないかな?それなら中止国支部が一緒でも問題ないんじゃん?
裁鬼SSリスペクト系と中止国等の独立系で分けちゃえば?
もちろんSSの作者が中止国系に入れてくれといえば、そっちでも可。

144 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 09:09:19 ID:jZhXuhfg0
あ、すまん。中止国→中四国だった……。
悪意はなかった。ホントにごめん……。

145 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 10:11:59 ID:zsr2ayls0
>>143
重ならないように最初から分けておくってこと?
うーん、まあそれもひとつの解決策かもしれないけど…。

wikiのレンタル自体は5分もあればできるから、それぞれの作者さんが個別にスペースを借りるって手もありかもね。
他人に書き換えられたら困るページだけ管理者権限にしておけば、誰かに荒らされることもないだろうし。

146 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 10:16:10 ID:RPp2GFTRO
>>143
用語集には、全然違う複数の作品の設定をごった煮にしたごちゃまぜ感を楽しむという目的もあるが。
俺含めて特撮ファンはそういうの好きな人が多いし。

147 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 10:20:10 ID:zsr2ayls0
>>138
>>146

うーん…悩みどころ…。

148 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 10:37:14 ID:zsr2ayls0
ちなみにwikiはここで借りられるよ。

http://atwiki.jp/

149 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 11:00:21 ID:H8CFjUj50
ねえ…用語集、今すぐに必要なの?
みんなが疑心暗鬼になっているなかに作っても荒れちゃうと思う。
もう少しクールダウンしてからにしない?

私も>131に同意なんだけど、自分に都合の悪い書き込みに対し、
真摯な態度で返事をせずに、掲示板や記事を削除したりする癖のある人が、
みんなで共有するコンテンツを管理するのは無理じゃないかな。
中四国さんの管理するコンテンツに参加して、
彼の都合の悪い記事を削除されたり規制されたりする人が沢山出ると、
みんな作るって意義が無くなると思うよ。

150 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 11:43:02 ID:jZhXuhfg0
>>145,146
雪風問題がなかったら普通にまとめてwikiで良かったんだけどさ、
現状じゃ一緒にされたくない住人や作家さんもいるだろうから、
とりあえずそういう区分で分けようかと思ったんだ。
もちろん設定が違う作品を混ぜるのはスパロボ風で楽しいと思し、
後に統一するとかなったら面倒だから、同じwikiでいいとは思うんだが、
なんか区別(差別ではない)しとくのもいいんじゃないか?
例えば文章の最初に(TV響鬼系)とか(裁鬼SS系)を表記するとか。
設定で文章の色とかは変えられるのかな?

でも、149の言うとおり現状は今みたいに意見交換だけがベストな気がする。
馴れ合いスレと呼ばれようと前みたいな雰囲気に戻って欲しい。

151 :中四国支部鬼譚作者:2006/12/12(火) 13:02:54 ID:hEMvXoxC0
 俺が名乗り出たことでこういう騒動を呼んでしまいすみませんでした。
 この流れを見ていて思ったことを掛け値なしに書きます。

 一度問題を起こした以上は、それが解決したからといってすぐさま信用を取り戻せるとは思っていません。
 一人目の絵師さんとのログを読み返していると、確かにこれは酷かったなと自分でも思います。
 「知らなかった」を言い訳にするつもりもありませんが、最初は自分でも何が何やらわからずテンパっていて
 一人目の絵師さんの口調も相俟ってあのような返し方になってしまい、皆さんにも不快な思いをさせてしまいました。
 その後、落ち着いてその流れをもう一度読み返したり、二人目の絵師さんと話をしていく中で、自分の態度の酷さを思い知った次第でした。
 このスレの雰囲気が今でも荒んでいるのはひとえに俺のせいだと自覚しています。
 今回wiki開設に名乗り出たのは、皆さんにもご迷惑をおかけしたことの罪滅ぼしという意味のほかにも、
 何らかの形でスレに貢献することで皆さんの信用を少しでも取り戻せれば、という思いがあったためです。
 言うまでも無く、一部の方が懸念されているような自分の好き勝手にwikiを編集するようなつもりは毛頭ありません。
 このスレを構成する者の一人として、一刻も早くスレの雰囲気を元に戻したいという思いは皆さんと同じです。
 そのためにはこの荒れた雰囲気を呼んだ俺自身が自分から何か行動を起こさなければ話にならないと思いました。

 ところで以前書いた通り、このスレでSSを書くことを辞めるつもりはありません。
 図々しい話ですが誰か一人でも求めてくれる人がいる以上、俺は求められていることをするまでです。
 wiki開設の件もそれと同じで、他に開設する人がおらず、かつ誰か一人でもwikiを求めている人がいるなら、俺がその役目を果たそうと思っています。

152 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 13:27:07 ID:OmYojVS6O
>>151
例の騒動では、説明を求める書き込みの削除、放置から謝罪文の即削除まで、対応がマズすぎ、その積み重ねで信用を失われたと思います

スレへのお詫びに何かしたい、という気持ちはわかるのですが、やはり直接スレにアクションをかけるのは早かったのではと思います

まずはご自身のサイト内で出来ることを積み重ね、その上でアクションを起こすべきだったのではないでしょうか

(具体的には
絵師さんが意図していないのに、自作の設定画として使用した事、
和太鼓のもう一枚も無許可転載であること、
バナーへの無断加工、などへの対応です)

なお、この話題でこれ以上スレが埋まるのは避けたいので、なにか反論、異論などありましたら、ヲチスレの方へお願いします

153 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 18:03:01 ID:Udjoq+Wa0
485 名前:「中四国支部鬼譚」作者 投稿日:2006/11/26(日) 12:17:23 ID:IJPgP+Cr0
はいこんにちは。

>あたしがレンタル掲示板見つけてくるので、
お断りします。それで変な情報抜かれたりしたらたまったもんじゃありません。
VIPでなく掲示板上でやりとりしたいというのなら当方の掲示板にいらっしゃいませ。
アクセス規制切っときましたから。


こんな発言する奴が管理する?笑わせるな。
これ以上迷惑かけるな。

154 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 18:06:10 ID:IRwpEyJsO
うざい自演をやめない限り誰も信用しませんよ^^;

155 :名無しより愛をこめて:2006/12/12(火) 18:36:00 ID:D7xq9dWJ0
雪風関係の話題はこっち
http://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/l50

156 :見習いメインストーリー:2006/12/12(火) 23:41:29 ID:BKNzd0IQ0
前回は>>111から

二十一之巻「届く腕環」

 純友は、猛士本部での研修の事を考えた。自分でも数えきれない枚数の始末書を今まで
書いてきたが、おそらくあと数枚で二〇枚に達するだろう。
 そうなると、本部がある吉野での研修となるらしいが……
 神戸に転校した、純友と大洋が想いを寄せる、橘多美。彼女の暮す街と吉野との距離は
電車で二時間弱。少し遠いが、もし吉野での研修となった時は、多美に会いにいけるかも
しれない……と、緩みきった顔で考えていた純友は、喜び勇んで多美に電話をかけた。
「たったったっ、橘さん!?」
『どうしたの? 須佐くん』
「い、いま大丈夫?」
『うん。いまちょうど宿題終わったとこー。須佐くんは、何してたの?』
「ネットで、ちょっと調べものを……。今度、奈良の吉野に行くかもしれないから、そうしたら
橘さんに、あ、あ、会いに行けるかなって思って。それで、吉野から橘さんの住んでる所まで、
どうやって行くのか調べてて。大体、二時間弱くらいだったんだけど……」
『え? そうなの? でもなんで?──田島くんも一緒?』
 純友の言葉が止まる。何て説明しよう。橘さんは、大洋のことが気になっているみたいだ。
瞬時に色々な考えが頭の中でまわり、気づくと純友は無意識に話し出していた。
「──大洋と、よく電話で話すの? 大洋のこと、気になる?」
『え? だって、二人仲良しでしょ? ていうか田島くん、私の番号知らないかも。
──あ、ちゃんと仲良くしてる?』
「も、ももも、もちろん」
『本当に〜? 田島くんにも電話して聞いてみるから、番号教えて』
 純友は、大洋の携帯電話の番号を伝えた。


157 :見習いメインストーリー:2006/12/12(火) 23:42:14 ID:BKNzd0IQ0
 翌日の学校で、大洋は純友の顔を見るなり言ってきた。
「おーう、きのう多美ちゃんから電話が掛かってきたぜ!」
 笑いながら、純友の背後に回った大洋は、恐るべき力でヘッドロックを掛けてきた。
「てめえ、ちょっと前から多美ちゃんの電話番号聞いてたんだってな。抜け駆けしやがって
コノヤロウ」
 首を絞める力はますます強くなり、純友は意識が遠のいてきたが、大洋の声はとても
嬉しそうだった。
「ちょっ……待っ──」
「久々に声聞いたけど、なんか感動したぜ! ってオイ? 聞いてんのか?」
 大洋が腕を離した時、純友はほとんど意識を失い倒れる寸前になっていた。

 その次の日曜、研修にやってきた純友に、両手を合わせてみどりは謝った。
「ごめ〜ん、陰陽環なくなったの、純友くんのせいじゃなかった〜」
「え?」
「実は、前にもこういうことがあったんだけど……忘れてた、ごめん! 昔鬼を
やっていた人で、陰陽環とか猛士の備品を勝手に借りてっちゃう人がいるのね。
今回も、その人がやったことだったの」
「いや、そうとわかれば──」
 始末書が一枚無かったことになると思い、満面の笑みで純友は言ったが……
「それがね……これ見て」
 みどりは、持っていた二つの陰陽環を純友の目の前に出した。


158 :見習いメインストーリー:2006/12/12(火) 23:43:26 ID:BKNzd0IQ0
「もう本部から代わりの陰陽環が届いちゃったの。──で、事務局長に相談したら、二つあった
ほうがいいってことで……ごめん純友くん、ここで始末書取り消そうとしても、返って返送代
やら何やらで費用が掛かるし、陰陽環を持っていった人って、もう猛士から離れている人だから、
始末書を書いてもらうわけにもいかないし……ここは一つ、涙を飲んでくれる?」
 申し訳なさそうに言うみどりの前で、泣きながら純友は言った。
「はい……涙を飲むというより、流れて止まらないという感じですけど……」

 学科が終わった後の実技研修は、鬼笛を使用したディスクアニマルの再生練習だった。
 大洋は、相変わらず苦もなくディスクアニマルの操作をこなし、そして純友は相変わらず
苦労が絶えなかった。消炭鴉以外起動できないため、録画機能を持ったディスクアニマルを
起動してテスト録画をさせるには、陰陽環の力が必要だった。
 テレビモニタに直結可能な、音叉を模したような形状のディスク固定アームを持つ映像再生機を
使って、純友は緑大猿で録画した映像を再生させた。
「うわっ」
 突然、画面一杯にカメラを覗き込むみどりの目が映って純友はのけぞった。
「な、何やってんですか、みどりさん」
「知らないよ〜、緑大猿が勝手に近づいてきたんだも〜ん」
 大洋が起動した黄赤獅子はもっと遠くまで行っていたらしく、どうやって扉を通り抜けたのか、
研究室を出て廊下を抜け、猛士の間に行って、店の作務衣姿のままパソコンに向かってキーを打つ
日菜佳の姿を映していた。カメラに気づいた日菜佳が笑顔で手を近づけてくる。


159 :見習いメインストーリー:2006/12/12(火) 23:44:12 ID:BKNzd0IQ0
 黄赤獅子が小突かれたらしく、モニタの視界が揺れた。黄赤獅子はそのまますごすごと
引き返したようで、映し出す風景は再び廊下を進み、研究室へと帰っていった。
「しっかしドコのドイツだよ! 勝手に腕環を持ってっちまったヤツってのは」
 先週そのせいで、そこにあるはずもない陰陽環の捜索にかり出されていた大洋は、
実技研修のあとで「ぶっとばしてやる」と悪態をついた。
 即座にみどりは「無理」と言い切った。
「今のベテランの鬼さんたちの師匠にあたる人よ。絶対無理だと思う」
「おれだって、鬼になれりゃ、ソイツにも負けねえよ」
 大洋は強気に言った。
「えっ? まだ、『角』あきらめていないんだ」
 みどりにそう言われると、大洋はめずらしく、しおらしくなって言った。
「……。『飛車』か『角』か、いい加減決めないとな。コイツも『銀』目指すって決めたし」
 大洋は、隣で猫背ぎみになって立っている純友を親指で指した。
「おれも、そろそろ自分の生きる道を自分で決める、ってヤツをやんなきゃいけないのかな、
って思い始めてるんだ。適性試験の結果がどうだったとか、ダンキさんに言われたからとか、
そういうことじゃなくて。自分で決めなきゃ、なんねえんだ」
 それを聞いて軽く驚きの表情になったみどりは、やがてふっと笑って言った。
「大洋くんも、大人になったねぇ。──これに関しては、純友くんが一歩リードしてるけど」
 緩みきった顔になって頭をかき始めた純友にヘッドロックをかけて大洋は言った。
「調子に乗るなよォ?」
「ちょっ……待っ──」
 顔面蒼白になった純友を見て、慌ててみどりが止めに入った。

二十一之巻「届く腕環」了


160 :見習いメインストーリー:2006/12/12(火) 23:45:06 ID:BKNzd0IQ0
次回予告

「──最近、多美ちゃんからのメールがコネー」
「『銀』の本部での研修のことなら聞かないで──え? 違う? 『飛車』の仕事内容?」
「純友くん、お手伝いをお願いできますか〜? こういうの得意でしょう?」
「──大洋ッ!!」

見習いメインストーリー 二十二之巻「語る飛車」


161 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 01:43:56 ID:gh52vmttO
未だに中四国作者さんを無理矢理悪者に仕立て上げようとする住人がいるんだな…。
そんなに追い出したいなら自分達が出て行けばいいんだ。

162 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 01:56:15 ID:Blz0hJsV0
どっちも出て行けばいいと思うよ

163 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 01:56:28 ID:mJYCAORe0
>>161
>>155

164 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 02:01:49 ID:J5ysPKfz0
現状では中四国作者さんがスレ内部の信頼を回復しようと焦って動くことが却ってマイナスに働いていると思えます。
SSへの投下を少し自粛して自分のサイトの足場を改めて固めつつ、復帰の機会を待った方がいいのでは?
読みたい人のリクを待っても遅くないのだし。

165 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 02:09:15 ID:RkdP/DPk0
中四国作者が悪の元凶というのは事実・・・。

あのやりとりを見れば誰でもわかる。

166 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 02:32:00 ID:J5ysPKfz0
投下を続けたいのなら、それなりにしなければいけないことがあるでしょう、ということ。
再開するにはきちんと禊をする必要があるのだと思います。

どこまでやればいいのよ?、と怒る方もいるかもしれませんけど。



167 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 09:03:40 ID:Nz7Wwc+V0
>>166
それが原因で他の人が投下しにくい雰囲気になったら元も子もない。
「誰のために動くべきか」をしっかり考えて下さい。

168 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 09:16:23 ID:PonbWX/20
そんな時のための専スレです。
雪風さんも、雪風さんに何かいいたい人も移動お願いします。
雪風さんへの物言いでスレを潰すのは、SS投下スレとしてスレ違いになります。

【無断使用】雪風日和【無断加工】
ttp://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/l50


いきさつについては、このスレの
>1-16あたりを参照してください。


169 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 09:32:09 ID:0E82pgoVO
wikiに反対するのはいいとして、中四国SSの投下を自粛しろと言っている住人は何か違う。
「あんな奴のSSは読みたくない」と思うのはわかるがそれはあくまで個人の話。
読みたくなければ読み飛ばせばいいし、専ブラならNGに設定しとけばいい。
このスレを見るために金を払ってるわけでもないし、
スレに投下された作品を強制的に全部読まなきゃいけないわけでもないし、
パートスレだからスレに投下できるSSの量が有限ってわけでもない。
中四国SSの投下が続いたとして何か君らが損をすることがあるとは思えない。
「作者は嫌な奴だがSSはこれからも読みたい」と思っている住人もいるみたいだし、
極端な話、作者が嫌な奴だなんてちっとも思ってない住人だっているように見える。
サイトがあるんだからサイトだけで続ければいいというのも一理あるが、
このスレからサイトへのリンクが切断されてる現状ではそれは良くないと思う。

170 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 09:35:39 ID:PonbWX/20
>169
移動よろしく。

【無断使用】雪風日和【無断加工】
ttp://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/l50

171 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 09:55:35 ID:PViwfNW+0
中四国さんはやたらと携帯の人に支持されてるな。

172 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 10:09:16 ID:PViwfNW+0
作者さんに聞くのは酷な話だからスルーしてもらって構わないんだけど、
中四国さんと同じスレに投下するのが正直嫌な人っています?

173 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 10:40:54 ID:APakwUmS0
いたとしたら、どうなの?

児童買春で捕まった島袋光年がスーパージャンプで連載を開始した。
じゃあ島袋をスーパージャンプから追い出すべきか?

読み飛ばすか、スーパージャンプを買わなければ済む話でしょ。
…飛躍した例えだけどね。

174 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 11:34:46 ID:1ckq2iK60
>>172
居たとしたらとうにそう発言してる筈だから居ないんじゃない?
中四国さんの対応・態度にがっかりした、失望した、と言っている作者さんはいたけど。
大体、投下を辞めろと言ってるのも数多い住人の中のほんの一部だけでしょ?
それなら>>169>>173の言うように読み飛ばすなりNG設定するなりこのスレを見限るなり
個人個人で対応してほしい。
SSを読み続けたい住人が少なからずいるならそれをないがしろにするのはよくない。
SSに罪はないし、そもそもこのスレが被ったのは二次的被害で、ここの住人が中四国に
直接嫌なことされたわけでもないしね。

175 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 11:40:56 ID:kmHAraYDO
だからこっちで…
http://s2.s2ch.net/test/-/ex9.2ch.net/net/1164793750/8-

176 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 11:43:48 ID:eMheJoGI0
皆さん移動移動。
続きは向こうでやってください。

【無断使用】雪風日和【無断加工】
ttp://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/l50

177 :某さくーしゃ:2006/12/13(水) 11:51:49 ID:WvnXX52g0
また燃料投下するようなことをw
どの作者もこれ以上、ひどくなるのが嫌だからなんも言わないだけだろ。
どう答えたって結末が見えるじゃん。

と言う事は現状で中四国さんの作品が投下されたとすると・・・。

178 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 12:06:54 ID:eMheJoGI0
一言言いたい気持ちは判るけど、
ここで言い返しの応酬を続けてたら荒れる一方です。
そのための専スレなので、移動してください。

【無断使用】雪風日和【無断加工】
ttp://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/

179 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 21:52:01 ID:kg3MJoMv0
ι( ´д`)ノ 皇城SSまだ〜?

180 :DA年中行事:2006/12/14(木) 01:49:55 ID:qJw9xg6m0
お久し振りです。もう12月に入ってしまいましたが・・・・・
今回獣成分薄めです。

181 :番外 「装う獣」前編:2006/12/14(木) 01:53:08 ID:qJw9xg6m0

重たげに垂れ込めた鉛色の雲は、雪混じりの霙を降らせ、山と空の境界を曖昧にする。
葉をすっかり落とした木々の陰は鋭く尖り、陰鬱な雲を突き刺そうとしているように見える。
枯れ朽ちたススキの原が、滅茶苦茶に踏み荒らされ、所々黒い地面を露わにしている様も痛々しい。
しかし、やがてはそれも、霙や雪が覆い隠してしまうだろう。
ゴウ、と空が鳴り、稲光が暗い空に亀裂を作る。
幾筋も、幾筋も。
霙は一層激しく降り、地面を白く汚す。
色を失って行く景色の中で、ただ一点、目の覚めるような朱色が、狂い咲きの花の様に落ちている。
いや、それは花ではない。
頭に角を持つ、異形。

――――鬼。

鋭い爪が、冷たくぬかるむ土を掴み、朱色の鬼は上体を起こす。
苦しげに熱い息をつき、鬼は見回す。
己の周りには、もう、誰も、何も、いないと言うのに。
人を喰らう魔物も、不浄な養い親たちも、そうだ、自分が清めたのだ。
鬼は自らの闘いを、誰かに感謝される訳でもなく、また、それを望む可くも無い。だが、他の鬼のように、確かにこれで人を護る事ができたのだ、という感慨も達成感も、朱色の鬼は感じていない。
朱色の鬼は、立ち上がる。
ただ燃え盛る憎悪と埋めがたい寂寥を、支えにして。

182 :番外 「装う獣」前編:2006/12/14(木) 01:55:16 ID:qJw9xg6m0
身体はまるで自分の物ではないかのように重く、痛む。
硬く朱い鬼の足を一歩踏み出すたびに、鈍い痛みが体中に響く。
恐らくどこかの骨にひびが入っているのだろう。だが、そんな事はどうでも良い。痛みは、肉体がまだ死んでいない証拠。朱色の鬼は歩みを止めない。
びしゃびしゃと降り続けていた霙が、強い風を伴いながら水っぽい雪に変わる。朱色の身体が、みるみる白い雪に塗れていく。
寒さは、容赦なく鬼の体温を奪う。ただ、鬼面を配した額だけが、焼けるように熱い。

「恐ろしやの」

吹き付ける風が、女の声で囁く。朱色の鬼は立ち止まる。

「醜いことよの」

女の声が、今度は哂う。
魔化魍か?
軋む身体で鬼は身構える。全身を耳にし、その気配の元を探る。だが。

「魔物が魔物に怯えやるか?さもしいこと」

ざらざらとした嫌な響きを耳に残し、女の声は尚も朱色の鬼を哂う。
全ての命が息絶えたような吹雪の中、黒く尖った木の上で、一羽の猛禽だけが朱色の鬼を見下ろしていた。


183 :番外 「装う獣」前編:2006/12/14(木) 01:56:12 ID:qJw9xg6m0

「ひどいな・・・・・」
メールに添付された写真をモニターで確認しながら、尾賀元子は思わず独り言を呟いていた。
くたびれたスチール机と、重心を変える度におかしな音を立てる椅子、煮詰まった匂いのするコーヒーメーカー、あまり調子の良くない空調。
この部屋の佇まいは普通の事務所と大した違いはないが、各々が覗き込んでいるパソコンや広げている資料には、およそ現実世界とはかけ離れたデータが詰っていた。
部屋の入口には、こんなプレートが掛けられている。
『予測研究・対策室』
吉野の猛士本部。もともと『歩』だった尾賀が、小学校の教師を辞め、魔化魍出現の予測に関する部署で働き始めて半年近くになる。
今、彼女のノートパソコンのモニターには、網状の蔓草に覆われた藪の写真が映し出されていた。
藪は茶色く立ち枯れ、蔓草の色だけが毒々しい。暗褐色の蔓草は、捩じれ、絡み合いながら枯れた草を締め上げている。
尾賀の独り言に、室長が立ち上がった。
「どうかした?」
見てくれはくたびれたキューピー人形のような中年男だが、魔化魍に関する知識は深い。過去の魔化魍の出現データから、気象条件との関連を調べ上げ、出現予測をシステム化できたのは、彼の功績に拠る所が大きい。
これなんですが、と尾賀は東海支部の『歩』から送られてきたその画面を見せる。
「この網みたいな物が、尾賀さんが前に言ってた植物なの?」
―――――オキナツルクサモドキ。
その蔓草は、そういう名前だ。種子から発芽すると、自ら土に根を下ろすことなく、茎の一部を棘のついた吸盤のように変化させ、寄生主から養分を奪いながら繁茂する。
彼らは宿主を特定せず、どんな植物にでも寄生する。河原、山中、海岸、土手、野原・・・・少し注意を払えば、日本中どこの藪にでも見出せるだろう。
だが、これは。
「・・・・・薄気味が悪いね」
ふっくらと愛らしいキューピー人形に似ていた頃から魔化魍を研究していた室長の一言に、尾賀は黙って頷いた。


184 :番外 「装う獣」前編:2006/12/14(木) 01:57:29 ID:qJw9xg6m0
尾賀は、改めてモニターを見る。
見渡す限りの枯野に、乾いた血の色の網を投げたようだ。
寄生主の葦やススキがカサカサに乾いて枯れているというのに、寄生したオキナツルクサモドキだけが茎を縦横に伸ばしている。
普通、寄生主が枯れてしまえば、水分や養分を自分では作りだせない全寄生植物も、その運命を共にする。
では彼らは、一体どこから成長に必要な養分を得ていたのだろう。
「尾賀さんの見解は、どうなの。魔化魍とどんな関連があると思ってるの」
優しい声音や柔らかい物腰は、面倒見が良過ぎてなかなか出世できない万年学年主任のようだな、と尾賀は思う。
「魔化魍を清めた後に、これが異常な成長をしている、という例がある事しか、わかっていません」尾賀は、室長のネクタイについた染みに向かって言う。
「でも、尾賀さんは、10年前からオキナツルクサモドキを研究していたんでしょ?」
「研究と言うほどでは・・・・・・」
「じゃあ、観察?それにしたって、ずっとデータをとって、見ていたんでしょ?あなたなりの見解は無いの?」
口調こそ穏やかで優しいが、室長の質問は鋭い。無意味な研究で時間を潰すな。尾賀にはそう聞こえる。
「弦の鬼が清めた後に、繁茂する傾向があるように思います。つまり、バケガニやオトロシ、ヤマアラシなどが出現し、弦の鬼によって清められた後の場所に・・・・・」
「そう。それは全国的なものなのかな」
「少なくとも、私が歩いていた山ではそうでした。他の地域では、まだ確かめておりません」
それなら早急にデータを集めなさい、と室長は静かに言った。その答えに、尾賀は思わず顔をあげる。分厚い眼鏡の奥で、室長の目は微笑んでいた。
「宜しいのでしょうか・・・これは出現の予測とは関係無く、出現後の事象に過ぎないのかもしれません」
「裏付けも無くただ想像するだけなら、誰にでも出来るでしょ。ここはね、尾賀さん、その想像を裏付けする為に、データ化する部署なんですよ」
その為のネットワークです、と室長は付け加えた。尾賀は自分のノートパソコンに向き直る。パソコンから伸びる灰色の細いケーブルは、全国の猛士の仲間たちに繋がっている。
キーボードに打ち込みを始めた尾賀の机の隅で、起動する事の無い一枚のディスクが、天井の蛍光灯を反射して鈍く光っていた。


185 :番外 「装う獣」前編:2006/12/14(木) 01:58:38 ID:qJw9xg6m0

雷が遠のき、雪は一層激しい。
視界が白く、狭くなる。

「何処を見やる。我はここぞ」

朱色の鬼は、未だ声の主を見つけられない。吹雪が、視覚と聴覚を麻痺させる。
雪は風を伴うと、上から降ってくるものでは無くなる。白く渦巻く礫となって、朱色の鬼を打つ。

「ほんに醜い鬼じゃ」

神経を研ぎ澄まし、気配を探ろうとするが、肋の痛みがそれを妨げる。
息の詰るような痛みに、鬼は思わず片膝をつく。姿の見えない相手に、朱色の鬼の内で苛立ちも不安も、怒りに変わっていく。
怒りが身の内で凝り固まり、黒く膨らむ。黒い塊は噴き出す出口を見失い、額の鬼面が熱を持つ。

「そなたはじきに、ただの鬼になる。人の心を忘れた鬼に」

人の、心。
朱色の鬼は、思わず額の鬼面に手をやる。恐ろしい顔で睥睨し、悪しき物を遠ざける役目を果たすはずのこの鬼面が、自分を魔物そのものにするのか。
目を開けていられぬ程の吹雪も、鬼面の熱を下げる役には立たなかった。

186 :番外 「装う獣」前編:2006/12/14(木) 01:59:45 ID:qJw9xg6m0
ふと、あたたかな光を感じて、朱色の鬼は振り返る。
吹雪は嘘のように掻き消え、そこは暮れかかる秋の夕日に金色に染まった山。
楢、ブナ、ナナカマド、山桜・・・・・・赤く、黄色く色を変えた木々の葉が、どんな上等な絹糸で織られた錦より美しく山を彩る。
その山を背景に、一軒の傾いた家が見える。家の前には小さな畑。畑の隅には柿の木が、夕日より濃い色の実を鳥の為にと少しだけ残している。
朱色の鬼は、引き寄せられるように、傾いた小さな家に近付く。
家の裏手には小川。洗濯も野菜を洗うのもその冷たい流れだった。傾いた小さな家の屋根は、雪が降る前に直そうと言っていた。ああ、でもその前に、柿の実を吊るさなければならないと、話をしていたのだっけ。
あの、貧しくて、小さな家は、こんなにも美しかったのか。
朱色の鬼は、頬に違和感を感じ、自分が涙を流していた事にようやく気がついた。

帰りたい
帰りたい

駆け出そうとする朱色の鬼を、額の鬼面が、止める。

『かえれないよ』

帰れない替わらない変えられない代える事は、もう、できない。
だって、この風景は―――――

「まだそなたが人であった頃の昔」

朱色の鬼の耳に、冷たい吹雪と女の哂い声が蘇った。

187 :番外 「装う獣」前編:2006/12/14(木) 02:00:51 ID:qJw9xg6m0

「お探し物は、見つかりましたかな?」
ふいに声をかけられ、尾賀は飛び上がるほど驚いた。
室長にオキナツルクサモドキと魔化魍の関連を研究するように助言されてから、三日が経っていた。
日本全国の支部に、助力を求めるメールを送る一方、彼女はオキナツルクサモドキという寄生植物を調べていた。
猛士の図書室には魔化魍に関する古今東西の記録の他に、膨大な書物が所蔵されている。
インターネットで情報を収集する一方で、猛士のデータベースやそれに収まりきれない古文書まで丹念に目を通す。
ほんの少し前まで教師をしていたとはいえ、崩し字で書かれた書物を読み解くには苦労する。
随分長い時間、古い時代の人々が残した記録と向き合っていたらしい。窓の外は、すっかり暗くなっている。
尾賀に声をかけた初老の男は、腕にコートとマフラーを持って、あまり機嫌の良く無さそうな顔をして立っていた。
まだ帰らないつもりか、と咎められている気がして、尾賀は慌てた。
「すみません、すぐ出ます」放課後、早く帰れと私に叱られていた生徒に見られなくて良かった、と尾賀は心の中で舌を出す。
「お探し物は見つかりましたか、と声をかけたつもりなのですがねぇ」
見つかったのなら結構な事ですが、と男は続けた。
「いやぁ、それが・・・・・」机の上に積み上げた書物の、半分もまだ目を通せなくて、尾賀は頭を掻く。
「余計なお世話かもしれませんが、何を調べていらっしゃるのかな?」
ピンと伸びた背筋、張りのある声。はて、この人は誰だろう、と尾賀は考える。猛士という長い歴史を持った組織の、しかも本部であるこの建物には、老若男女、様々な人が出入りする。
「ある植物です。オキナツルクサモドキ、と言うんですが、外来種なのかあまり資料が無くて、困ってます」
「ああ、あの赤い蔓草かね」男の眉間の皺が、改めて深くなる。「あれを探しておられるなら、古い書物には載っていませんよ」
名前が違いますからね、と怒ったような顔で男は言った。

188 :番外 「装う獣」前編:2006/12/14(木) 02:02:58 ID:qJw9xg6m0
「名前が違う?――――あのう、詳しく教えて戴けませんでしょうか」
藁にも縋る気持ちで、尾賀は自分の隣の椅子を引き、男を促した。壁にかかった時計が、九時を廻った事など、目に入ってはいない。
もう帰るところなんですがね、と言いながらも、初老の男は尾賀の隣に座った。ふわり、と古い書物のような匂いが尾賀の鼻をくすぐる。
男は机の上に積み重ねられた本から、一冊を取り出す。
「本草綱目、ですか。これには載っていませんよ。あれは薬にはなりませんから」思いのほかきれいな指先で、頁を繰る。「ああ、これなら載っていますよ」
す、と差し出された頁を覗き込んで、尾賀はつい声を出した。
「鬼蔓草・・・・・」
「オキナツルクサモドキに『もどかれて』いる蔓草です」
茎太く、頑健にして赤く、故に鬼と呼称さる・・・と、そんな事が書いてある。根を煎じれば、生水による腹痛に効能有り、とも。
根を煎じれば、という事は、鬼蔓草は自生するのか。
「鬼蔓草の別名は、オキナツルクサ。茎に白い柔毛が生えている様子を、翁の白い毛髪や髭に例えたのでしょう」
オキナツルクサモドキとの相似点は、蔓草である事と、その蔓が赤い事くらいらしい。二つの植物は、魔化魍とどんな関連があるのだろう。
いや、そもそも関連など無いのだろうか。
多弁な尾賀だが、今日は頭の中での自問自答が多い。口の先まで言葉が出て来ないのだ。
「時に、あなたは紅葉狩り、というものをご存知ですか?」
突然と言えばあまりに突然な話題の飛躍に、尾賀はポカンと口を開けてしまった。
「いや、まぁ、知っていますけど・・・・イチゴ狩りやリンゴ狩りみたいに、果実を採る事ですよね。紅葉は見るだけですが・・・・」
「いえ、それがね」男は本をぱたりと閉じる。「平安の昔、狩ったのですよ、紅葉を――――」
非道を重ね、時の帝が差し向けた軍勢に狩られた鬼女は、その名前を紅葉と言ったのです、と男はよく通る声で言った。
図書室では壁にかけられた時計が、沈黙を続ける夥しい蔵書を見つめ、静かに時を刻んでいた。


189 :DA年中行事:2006/12/14(木) 02:05:06 ID:qJw9xg6m0
後編は、また後日・・・

190 :名無しより愛をこめて:2006/12/14(木) 09:54:33 ID:Tn74yVxl0
おお!DAだ!

191 :名無しより愛をこめて:2006/12/14(木) 12:31:01 ID:P80VtBpA0
乙です!
続き楽しみにして待ちます!

192 :名無しより愛をこめて:2006/12/14(木) 22:48:24 ID:vahHJE+P0
用語集の話は、まるごと
【無断使用】雪風日和【無断加工】
ttp://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/

でやるべきでは?ここはSS投下のみにして。
今の、中四国さん許容レスは書き込みを許す、反対意見がつくととたん
スレ違いにつき上記スレ誘導ってがなりたてるスレの流れはキモチワルイ。自演だろうけど。
丸々向こうに持っていくか、丸々ここでやるかの二択だろ。
そしてここでやられるのは嫌なので、丸々別スレ立ててくれ。

193 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 01:45:25 ID:Ty5Cr2XH0
ここで中四国関連の話題が出るたびに何度も何度もしつこく向こうに誘導される。
だけどあれはこのスレの住人が立てたスレではないし、立ててくれと依頼したわけでもない。
本来このスレとは余所者(※)のVIPPERたちが勝手な判断で勝手に立てたスレだ。
「SSスレの方針について話すのにどうして他所のスレに行かなければならないのか」
「SSスレのことはSSスレの住人がSSスレで話し合って決める。余所者は構ってくれるな」
そう考えている住人だっているってことを考慮してくれよ。

(※)余所者という言葉を使ったが、VIP絵師と中四国作者との間に起こった問題については
逆にこのスレの住人こそが余所者だった。VIPPERは絵師の身内だから発言権があった。
それが済んで、今はこのスレが今後中四国作者や中四国SSとどう付き合っていくかという話をしている。
本来このスレとは関係がないVIPPERはそういう話においては余所者だ。

ついでに言うと向こうのスレの存在を不快に思っている住人だっているだろ。
中四国作者が悪くなかったとは言わないが、あのスレでは“必要以上に”悪く悪く語りすぎている。
スレタイ一つ取ってもそう。「無断使用 無断加工」を強調しているのは一体何のためだ?
中四国作者に悪いイメージを必要以上に擦り付けようとしているようで悪意を感じざるを得ない。
誘導の理由にしても「荒れてSSが投下されなくなる」などともっともらしい理由を付けているが、
「中四国作者や中四国SSがSSスレの運営に関わりそうになるたびに封殺しようとしてるのでは」とか
「中四国の存在自体が荒れる元だというイメージを浸透させようとしているのでは」とか、
そういう邪念を推察してしまう。別に擁護してるわけじゃないがな。

とにかく俺は、このスレのことはこのスレの住人がこのスレで話し合って決めるべきだと思っている。
他人の立てたスレで他人と意見を交えたらそれはこのスレの方針、あり方を決めたことにならないだろ。
仮に向こうで何か決まったとしても結局はこっちに持ってきて皆の了承を得る必要があるわけだし。
だったら最初からここで話すべきだ。
「ここで話すと荒れるから」とか言って向こうに逃げたい奴は勝手に逃げろよ。戻ってくるな。

194 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 01:48:12 ID:o0PM3OoC0
>>193
おまえの存在が荒らしなんだけど。

195 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 06:41:49 ID:XXGI2zBW0
>>193
あなたが以前からのスレ住人であるとか、中四国さんでないとか、そういう証明も無い。
そして、それはここに書き込む人みんな同じこと。
スレ住人とかそうでないとか分けるのは、気持ちはわかるけど、無意味だと思いますよ。

そういう中で現実的にここのスレに平和を取り戻すには、別にスレを立てる必要もあったと思います。
「悪意的」というけど、実際、無断使用、無断加工で指摘されても削除アク禁などの不誠実な対応だったわけですし。


今後のこのスレの展開としては、

1・中四国さんが誠意ある謝罪をする、疑問に対する回答をする。(向こうの>>146です)
 みんなもそれで水に流す。

2・中四国さんが立ち去る

3・他の人が立ち去る

のどれかなのかなぁ。
1がベストだと思うんだけど……。


196 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 08:16:38 ID:TdpaUptFO
謝罪謝罪って一本調子だけど、誰に何を謝るの?
VIPの絵師さんはあれでいいと言って帰った。今更蒸し返すのも雰囲気悪くするだけ。
このスレの住人は直接被害を食らったわけじゃない。
二次的にスレにも戦火が及んだことと、不誠実な対応で不快にさせたことは既に謝罪が済んでる。
サイトにもずっと説明・謝罪文が掲載されたまま。
この状況でさらに謝らなきゃいけない事項と相手って?
誠意が感じられないっていうなら何回謝り直しても同じだし。


197 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 09:23:15 ID:BcdXmd0nO
餓鬼でドヘタなヘタレ絵師(笑)に絡まれた上、アンチにスレから叩き出されかけている…。
何も悪くないのに中四国氏も可哀相だな。彼を追い出そうとしてるのは案外他のSS作者だったりしてな。
高水準の文章である中四国氏を追い出す事で、自分の駄作に目を向けさせようとしてるんじゃないのか?

198 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 09:24:56 ID:EyN7cyPe0
ホント、中四国のファンは携帯の人が多いね……。

>このスレの住人は直接被害を食らったわけじゃない。
えっと……スレが一つ死んだんですけど……
擁護する人は「直接被害が…」って言うの好きだね。

199 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 09:34:46 ID:XjaN+nAyO
ばかな中四国

200 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 10:00:20 ID:EyN7cyPe0
>>197
そうか!ならば中四国様の作品が汚れないように、裁鬼SSインスパイアー作品だけのスレを立てよう!
このスレは中四国様のような高水準な作品だけが投下することを許される高貴なスレとし、
下賎な作品と、それをまとめているまとめサイトや、用語集などは響鬼二軍スレに放り込めばいい。
そうすれば、中四国様を悪人扱いするクソ住人があられる事もなくなるだろう。
>>197。君は素晴らしい!!
中四国を悪人扱いする住人など、このスレでは微々たる数。
過疎っていく姿をこちらの高貴なスレから笑ってやろうじゃないか!

201 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 10:15:17 ID:EyN7cyPe0
テンプレ案
【響鬼SS】鬼スト−リ−【二軍スレ】
「仮面ライダー響鬼」から発想を得た小説を発表するスレです。
世界観を共有しないと作品が書けないような奴。
既存の鬼を使うなどの発想の貧しい奴や、DA、見習いなどの奇策的なだけの話など、
作品と呼ぶには乏しいSSなどを投下し成長していくスレです。

中四国支部のように高水準な作品を投下したい方はこちらへ
【響鬼】鬼ストーリー(仮)【SS】

中四国に比べると笑ってしまうようなレベルの作品ばかりですが、
どうか暖かい目で見守ってやってください。

注)中四国さんの作品はこちらの二軍スレには投下されません。


202 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 10:51:33 ID:KX4OykgZ0
もううんざりだよ…
中四国の名前が出ると荒れるのは事実じゃん。
せっかく昨日職人さん達の投下でいい雰囲気になって嬉しかったのに。
スルーするとかの次元じゃない。
中四国のコテで書き込まれる記事見るだけで不愉快だ。

203 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 10:51:38 ID:pmBKiREY0
>>201
おまえ天才だな!

204 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 11:16:53 ID:EyN7cyPe0
基本スタンス
二軍スレでは中四国さんの名前を呼んだり、話題をすること事態が中四国さんへの
侮辱行為に値する。褒める事すらスレでは汚らわしい行為、仮に降臨さてもそれはおそらく
中四国さんの名を語った奴であり、中四国さんではないのでスルーする事。
本当の中四国さんは下賎なスレなど訪れない天上人であるはず。
もしお言葉を頂いても「皇城」や「DA」などの駄作で喜んでしまう低脳な私たちが、
レスを返すなど、もはや極刑に値するので心の中で感謝する事。
たった一人の為にでもSSを投下してくれる中四国さんはその気持ちだけで充分嬉しいはず。

優しい中四国さんは「いっしょに居てあげてもいいよ」と言ってくれるかもしれないが、
中四国さんを悪人呼ばわりする連中と一緒にする事はあってはならない。
作品を読みたい人はこっちのスレへの投下を強く要求する事。

205 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 11:26:20 ID:EyN7cyPe0
二軍としてしまうと、中四国さんは「他の人たちに失礼!」とかおっしゃるかもしれないので、
響鬼にちなんで「序の六段SSスレ」とか「ときんSSスレ」はどうでしょうか?

206 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 12:18:22 ID:lpIaZClh0
>>201
なんだか極論って感じがしてイヤなんだが、スレの現状を考えるとそれもありかと思ってしまう俺がいる…。
本当はこのまま丸く収まってくれれば良かったんだが、中四国の名前が出るたびにこの調子じゃいつまで経っても落ち着いてSSが読めない。

207 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 12:24:25 ID:lpIaZClh0
そういえばひとつ気になってたんだが、中四国自身はどうしたいんだろう?

毎回「読者への責任」とか「罪滅ぼし」とか言ってるけど、「自分がどうしたい」って話はしないんだよな。
「スレに戻って来たい」とか、「リンク張って欲しい」とか思ってるんだったら、自分の言葉で希望を出せばいいと思う。

「○○がこう言ってるから」みたいな言い方はちょっと卑怯だし、このスレの住人としても「じゃあ仕方ないね」とは言えないんだよね。

208 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 12:30:04 ID:lpIaZClh0
>>204
でも駄作とか低脳とか言うのは止めてくれ。
冗談だというのはわかってるが、SSの作者さん達に対して失礼だ。

209 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 12:45:18 ID:EyN7cyPe0
>>206
まあ、極論なのは承知の上なんだけどね……もう名前が出てはだと仕方ないのかも。
>>207
自分から戻りたいって感じだと、「調子いいな!」って展開になりそうだから、
周りが言ってるからって事にしてるんじゃないかな?
個人的には1スレは自粛してもらって、次で「前々スレでは……」って登場すれば別に気にしなかったんだけどな。


210 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 12:47:24 ID:EyN7cyPe0
>>208
それは心から作者さん達に謝罪します。


211 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 12:57:11 ID:OzAy6nIV0
「中四国」の文字が出るたび、この状況・・・。
スレタイ気に入らないって人もいるみたいだけど、もう、この問題がらみのことはあっちでやって欲しい・・・。
ホント、安心してSS読めるようにして欲しいです。

212 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 13:02:57 ID:2pxzJGWlO
中四国さん自身は何も言って来てないし、今は反応待ちでいいんじゃない?
あれこれ想像していろいろ言うのはそれこそ向こうのスレでやろう。

213 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 13:35:49 ID:JJH8UdK80
中四国作者の反応なんかいらないよ。
匿名掲示板でやらかしたら、しばらく間をおいて別人別作品でやり直すのがベストだと思う。
ここはSSを投下するところで、ROMにとっては投下されたSSを読むところだろ。
それ以外はスレ違い。煽って楽しんでるやつは出て行けよ。


214 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 13:44:40 ID:lpIaZClh0
>>213
確かに中四国の反応を待っても不毛な気がする。
これからもずっとこの調子なんだったら、一時的にでも中四国をBANした方がいいと思うんだが。
本人は自分のサイト持ってるわけだし、わざわざこのスレに投下する必要もないのでは?
本当にこのスレの読者のことを考えてるんだったら、しばらく自粛してくれるのがベストだと思う。

215 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 14:03:06 ID:xcADDNSEO
>192からの煽り及び自演の流れはスルーで!

作者さんが作品投下で本来のスレに戻そうとしてくれるなら
読者として感想。

見習いメインさん、乗ってますね!
あきらのキャラが立ってますけど、
逆にキャラが目立つのは正解なんですかね?
年中行事さん待ってました。
今回の番外編は朱鬼さんですか?
秋に投下予定だったのかどの時候だろ?
後編wktkです。

本来感謝だけでなく嬉しさで誉めたいけど、
読者間の批評を引き出したいのでケチ付けました。

スレ本来に戻す戦いが作者さんの作品投下なら
読者の戦いは作品批評感想と考えます。

216 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 14:20:29 ID:EyN7cyPe0
反応もなにも都合の悪い事はすべてスルーだからなぁ。

例えば「響鬼SSを書いたけど発表する媒体が無い人用スレ」ってダメかな?
これだと凱鬼さんは引っかかってしまうんだけど。
まとめサイトさんにはライダー共闘スレみたいに別枠で作ってもらうとか?
基本的に別スレとして立ち上げて、お手数だけど作家さんには改めて自己紹介から入ってもらうのは?


217 :皇城:2006/12/15(金) 15:24:24 ID:06qN3/QK0
申し訳ない。
冗談でも何でも駄作といわれて黙っているわけには行かない。
つられたとあざけってもらってかまわない。

高尚な話を書いているつもりもないし、自分の文章がうまいとも思ったことは無い。

ただ、>>179さんのような方がいてくれることがうれしいから投下させていただいていた。
一人でも多くの読み手に面白いと思ってもらえるものを書いてゆこうと思ってここまで着ました。

今回の件に関しても。自分の意見を明確にした後は、話題に参加することは避けてきました。
荒れるのは本位ではなかったし、住人方に対する配慮だ。投下も避けていました。

話に対する批判ならいくらでも受け付ける用意がりましたが、口汚い雑言を許容できるほど私はどうやら人間が出来てはいないようです。
>>197および>>200の意見だと私はこのスレにいる資格はないらしい。

ならば去りましょう。読者に戻らせていただきます。
感想がダイレクトに得られるこの空気は好きでしたがいた仕方なし。

少なくとも他の職人方とは対等な立場でいたつもりです。
二軍扱いされてまで投下し続ける気力はありません。

今回の件が本当の意味で決着を迎えたならばまたお邪魔することにいたします。

218 :皇城:2006/12/15(金) 15:31:41 ID:06qN3/QK0
追記。

諧謔でも限度があると思います。
云いたいことの意味は分かりますが書き方を考えてほしかった。

219 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 16:36:59 ID:eoQKsPYj0
・好きなSS作者さんがいる
・中四国にヘドが出る

両方である自分としては、中四国が出入りしないSS投下スレが出来るなら
ありがたいとは思ったけど、SS作家さんのモチベーションを削っては本末転倒だ。

220 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 16:39:30 ID:eoQKsPYj0
AA長編板みたいに、作品投下スレと住人の感想(雑談)スレを分けるべきでは?

作品投下中にうっかり感想いれて、流れを中断させてしまうこともないし
新しい作品投下が始まっているのに、前の作品の感想を述べ続けるのは失礼かと、感想自粛することもない。
SS作家さんの過去作品についても感想レスつけられる。
面白い作品を読ませてくれる作家さんに、貰った感動をもっと伝えたかったし。
まとめスレにWEB拍手があったら押しまくるのになぁと思ってた


221 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 17:10:38 ID:xcADDNSEO
>>217-218
皇城様、ファンとして敢えて苦言を呈します。

ここは2ちゃんねる。基地外や厨房も来ます。
元に戻そうとするには作品投下の「鬼」ありきです。
そう思いファンとして「銀」を気取り
石川英輔の大江戸が参考文献で紹介出来たら
感動に対する恩返しになるかと思った者です。

言葉の攻撃に負けないで下さい!

222 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 20:52:12 ID:4be2iFB30
>>221
同意。
とにかくスレをマトモにしたかったらグダグダいってねーで
面白いSSだけ投下しろ。


わざわざつまらん煽りあいなんか見たくないんだよ。
読む方だってモチベーションいるんだから…。

223 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 21:03:49 ID:Ty5Cr2XH0
中四国の存在が嫌だから追い出そうというのは、私怨だろう?
中四国SSの投下をやめさせなきゃならない合理的な理由が見つからん。
読みたくない人間にとってはそりゃ投下があっても何の得にもならんが、
かといって誰も何も損をしないんだからやめさせることは出来んだろ。

224 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 21:27:40 ID:xcADDNSEO
>>223
ちょっと向こうに来い!

225 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 21:40:47 ID:o0PM3OoC0
>>223

は ?

226 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 22:02:24 ID:ol/WYQrc0
>>223
スレが荒れる発端といっても過言ではない奴を、追放したって構わんよ俺は。
中四国は自分のサイトも持ってるんだし。

227 :名無しより愛をこめて:2006/12/15(金) 22:43:09 ID:i2BiA2jzO
以前飛沫鬼さんを描かせていただいた者です。(規制に巻き込まれてるので携帯から…)
この事件のせいで皇城さんの話が読めなくなるのは残念極まりないです。
迫力があり、なお読みやすい文体も、その内容も本当に凄いと思っているだけに…

228 :見習いメインストーリー:2006/12/15(金) 23:59:46 ID:zpvfhJiK0
前回は>>156から

二十二之巻「語る飛車」

 七月に入り、みどりの学科研修の内容は、弦の鬼についての講義になった。
 弦の鬼の戦い方、弦で倒す魔化魍の種類、そして弦の鬼の特徴である、利き手の指に現れる
ピック状の突起についてなど──。
 その日の学科研修が終わると、実技研修として、今日から鬼弦を用いた演習が始まった。
純友と大洋は鬼弦にディスクアニマルをセットして、記録した音の再生テストを行った。

「──最近、多美ちゃんからのメールがコネー」
 研修の帰り、駅へ向かう道の途中、大洋は言った。
「試験前で忙しいんじゃないかな」
 二人が通う高校も、七月の第一週に期末試験を予定している。
「そっか」
 純友も、最近橘多美からのメールの返信が無いことが気になってはいたが、その理由を
確かめる勇気はなかった。大洋の所にも来ていないと聞いて、少しほっとしたが。

 純友たちの一学期の期末試験も終わり、次の日曜、二人は鬼の履歴書ファイルを見ながら、
みどりから関東の弦の鬼についての説明を受けた。
 みどりは、ホワイトボードに書き出した鬼の名前を指しながら説明していった。
「サバキさんは、先日引退したザンキさんと並んで、関東の弦の鬼のトップの座を争っていた人よ。
──で、そのザンキさんのお弟子さんだったのが、トドロキ君。ザンキさんは今、トドロキ君の
サポートについて『飛車』をやってるの」
 純友は、先日研究室を訪れたザンキ・トドロキ師弟を思い出した。あれ以来、大量のディスク
の整備に追われることもなくなった。

229 :見習いメインストーリー:2006/12/16(土) 00:00:51 ID:zpvfhJiK0
「最後は、バンキ君。サバキさんのお弟子さんで、今は大学に通いながら鬼の活動を続けてるの。
イブキくんとそんなに年もかわらないから、お休みの日はイブキ君と、それにあきらちゃんも
入れた三人で、一緒に過ごすことも多いみたいね」

 研修の後、大洋が「たちばな」の仕事を休憩中の香須実の所に行った。
「『銀』の本部での研修のことなら聞かないで──え? 違う? 『飛車』の仕事内容?」
 自分の進む道を「飛車」にすべきか「角」にすべきか判断する材料として、大洋は
現役の「飛車」である香須実に、その仕事内容について聞いてみることにしたのだった。
「大体の話はみどりさんから聞いていると思うけど、現場に鬼を連れて行き、連れて帰る。
現場でのキャンピングのサポート、現地の皆さんの避難誘導──と、いろいろあるけど、
大事なのは『機動力』かな」
 休憩室の畳の上に立ち上がり、香須実は言った。
「先々月、みどりさんが現場のダンキ君に音叉を届けにいったことがあったけど、
あれも本来は私の仕事。あの時は、風邪で行けなかったけどね」
 大洋は、休憩室の上がり端に腰をかけ、腕を組みながらであったが、真剣に彼女の話を
聞いていた。純友はその横で背中を丸めて立っていた。
「この間も、夏の魔化魍対策をしていたトドロキ君のところに音撃棒を届けに行ったり
したしね。そういう──指示を受けたら即行動に移し、現場とこことの距離を縮めるための
行動の素早さが大事だと思うわ」
 休憩室の中をぐるぐると歩き回りながら、香須実は話し続けた。
「お父さんも『飛車』だったしね。私はこの仕事、結構気に入ってるけど」
 香須実の父、つまりそれは関東支部長の立花勢地郎を指す。

230 :見習いメインストーリー:2006/12/16(土) 00:01:35 ID:zpvfhJiK0
「え? おやっさん、『飛車』だったんスか?」
 驚く大洋に、ニヤリと笑って香須実は言った。
「そうよ〜。イブキ君のお父さんが現役の鬼だった時にその『飛車』として付いていて、
名コンビだったらしいわ。──それが今や、総本部長と事務局長だからね。君もイブキ君に
『飛車』として付いたら、出世できるかもよ」

 更に数週間が過ぎ、夏休みに入った頃。
 その日の「たちばな」での研修を終えた純友は、「猛士の間」の机上にある数冊の
スクラップブックを目に止めた。表紙には「『凄・橘』に関する通報綴」とある。
 その横で、別のスクラップブックに日菜佳が何やら貼付けている最中だった。
 表紙の「橘」という字を見て橘多美を思い出した。もうずっとメールも来ないし、
電話でも話していない。多美のことを想ってその場で佇んでいた純友に、大洋は言った。
「何やってんだよ、行くぞ純友ー」
 日菜佳が顔を上げて、満面の笑顔で純友に言った。
「純友くん、お手伝いをお願いできますか〜? こういうの得意でしょう?」
「え……あ、はい」
 頼まれると断り切れない性分で、純友はおとなしく席についた。
「じゃーおれ先に帰っから」
「ああ、それじゃ」
 大洋が階段を上がっていくと、純友は日菜佳のそばに置いてあるスクラップブックを
一冊手に取った。こちらの表紙には、「全国失踪者リストファイル」とあった。

231 :見習いメインストーリー:2006/12/16(土) 00:02:20 ID:zpvfhJiK0
 スクラップブックをめくり、余白ページの前に貼ってあった新聞か何かの切り抜きを見て、
純友の思考は停止した。
 実に、不思議だった。懐かしい橘多美の顔写真を、こんなところで見るとは思わなかった。
 小さな楕円形の中に、多美の白黒写真が載っていた。
 記事の見出しには、「東灘区の高校生行方不明に」とあった。
 こんな時、普段の自分だったら大泣きするはずなのに──不思議と涙は出てこなかった。
あまりのことに、感情の動きというものが止まってしまったらしい。
「純友くん……?」
 スクラップブックを手にしたまま立ち尽くす純友を見上げて、日菜佳は言ったが、それも
純友の耳には届いていなかった。
「──大洋ッ!!」
 今までに決して出したことのない大声で、純友は大洋を呼んだ。日菜佳は常にない純友の
様子に目を丸くした。
 少しして、ばたばたと階段を下りてくる音がした。引き返してきた大洋が、スクラップ
ブックから目を離さぬままの純友に言った。
「なんだよ、でっけぇ声出しやがって」
 動かない純友の隣に来て、大洋もその記事を見た。その目が見開かれた。
「貸せ」
 純友の手から乱暴にスクラップブックをひったくると、大洋は記事を読み始めた。それも
気にせず、しばらく無言のままだった純友は、携帯電話を取り出して多美に電話を掛けた。
『ただ今この電話番号は、使われておりません──』
 感情の無いアナウンスの声がそう告げた。

二十二之巻「語る飛車」了

232 :見習いメインストーリー:2006/12/16(土) 00:03:26 ID:zpvfhJiK0
次回予告

「なんスかコレ……。行方不明ってふざけんなよ、ったく──」
「……確かな関連性はないわ。ただ、可能性の一つとして……そういうことも考えられるわ」
「みどりさん、ねえどうして、みどりさん。教えてよぉぉぉぉ! なんで? なんで?」
「……手間をかけるな、小僧ども。せっかく詫びを入れに来たのに」

見習いメインストーリー 二十三之巻「通じぬ電話」

233 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 09:37:50 ID:Ua2vRGf/0
ほんとお前らどうしようもねぇなwww
せっかくバッシングに負けずに中四国さんが作品を投下してくれるっていうのによ!
むしろお前たちの駄作の方が中四国さんの作品を汚してるって事に気付いてないの?
中四国さんは前スレの事を忘れようとして、あえて大人しく登場したのに、そんな事も気付かないの?
まあ、皇城やDAがおもしろいとか言ってる低脳集団には理解できねぇよな!

用語集とか設定が違うからとかいってんじゃねーよ
こっちのアホ設定じゃなくて中四国さんの設定の方が公式なんだよ
設定共有とかいってるが本当は自分達で設定を考えるだけの能力がねぇだけだろ?

>中四国さんへ
もうこんなスレにいるのはやめましょうよ。
こんな連中と一緒にされたら、あなたの作品が汚れていってしまいます。
新に中四国さんようにスレ立てしましたので、今後はこっちで作品を拝見させてください。

響鬼外伝 中四国支部鬼譚(きたん)を語るスレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1166228342/l50

234 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 09:46:58 ID:TCM4UcBG0

みなさん、>>233はスルーで行きましょうねぇ〜


235 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 09:53:58 ID:Ua2vRGf/0
むしろ関わらないでください。
中四国さんと関係があるみたいでイヤです。

236 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 10:00:05 ID:TCM4UcBG0
うん、まぁ元々は同じ響鬼を扱ってることでしか無い関係なんだから
俺はそれで大歓迎よ。
ついでに聞いておくけど、>>235はもうこの低脳集団のスレには来ないんだろ?
さらに聞きたいんだけど、君はもしかして中四国作者?

237 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 10:05:30 ID:Ua2vRGf/0
いえ違います。いちいち自演呼ばわりするのは失礼ですよ。

>中四国さん
自演とか言ってるやつらがいるので、このスレを見次第すぐに決別宣言してください。
もうここの住人が泣いて謝ってもここに戻る必要などありませんから。

238 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 10:12:52 ID:TCM4UcBG0
自演とか言ってねぇしw
まぁ俺は泣きも謝りもしないけど。
中四国SSは読んだことないし。

239 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 11:56:11 ID:jKCzBQBjO
終わり?

240 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 12:09:13 ID:G0wBtOpmO
中四国は中二病

241 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 20:20:13 ID:iXdsg/Q10
>>見習いメイン様
乙です。
今までと少し違った展開が・・・。
橘さん、無事でいてほしいです。
次の投下、楽しみにしています。

242 :中四国支部鬼譚作者:2006/12/16(土) 20:54:17 ID:5y5s7MgN0
 皆様
 俺のことで散々スレが荒れてしまって本当に申し訳ありません。
 長々と何か書けば書くだけ余計に雰囲気を悪くするだけだと思いますので、結論だけを簡潔に述べます。
  このスレへの中四国SSの投下をしばらく控えようと思います(つまりSS公開場所をサイトと新都社のみとします)。
 「誰も作らなければ用語集を作る」と言ったことも撤回とします。
 無論、>>233はスルーします。

 返す返すも申し訳ございません。

243 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 22:05:14 ID:cWcLSE6z0
あっそう。じゃあとっとと消えてね。


何事も無かったのかのように、誰でもいいからSS投下しろ。


244 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 23:04:25 ID:UdZTkLUH0
ほっ(安堵)良かった良かった。

>243
そんな命令口調はどうかと。

245 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 23:19:51 ID:lnn+b2WDO
>>241
一つだけ質問です。
中四国SSは、このスレへの直接の投下がなくなるだけで連載SSの一つとしてはあり続けるのか、
(つまり少し前までのようにサイトを更新したことだけ書き込むという形に戻るのか)
それともこのスレから完全に消えてしまうのか、教えて下さい。
前者なら、まとめサイトから消したり、これから用語集を作るとすればそこから除外したりはされず、
作者さん達の中で特に中四国さんだけを違った扱いにもできないですし。

246 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 23:34:33 ID:EgAMMDSp0
>241
>245

用語集について、中四国さんが手を引き、SS投下を自粛するということなら、
SSスレで語り合う事はもう無いと思います。
中四国さんの名前が出るだけで荒れてしまうため、
このスレ本来の活動である、SS投下が妨げられて困ります。

今後の身の振り方で話し合うのなら、
「中四国さんも」、「中四国さんに直接何かをいいたい人」もこちらでお願いします。

【無断使用】雪風日和【無断加工】
ttp://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/

247 :246:2006/12/16(土) 23:35:29 ID:EgAMMDSp0
レス番間違えてすいません。
>242
>245宛です

248 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 23:37:40 ID:DQ0U5Z/j0
>>246
そのスレ中四国は無視してるから、話し合いの場としては機能してない

249 :中四国支部鬼譚作者:2006/12/16(土) 23:41:38 ID:5y5s7MgN0
>>245
ここから居なくなりはしないつもりです。
SSの投下はしませんが、サイトを更新した際にはまさに以前のように、その旨知らせに来ます。
(ただし、この形で実際やってみてそれすらも荒れる元になるというなら控えることになるかもしれません)

250 :名無しより愛をこめて:2006/12/16(土) 23:48:50 ID:EgAMMDSp0
>248
でも、中四国さんがこれから先、ここで245の問いに答えていったら間違いなくまた炎上します。
中四国さんが本当に謝意を持っておられるのなら、ここではなく、
一連の問題を隔離した専スレで回答をお願いします。

>245
中四国さんが御自分のサイトで更新したという情報を、ここで報告するのでは、
ここでSSを投下していくのと変わりがありません。
それでは、SSの投下を自粛する事によって、
問題への責任を取られると発言した中四国さんの発言が無為になってしまいます。

251 :250:2006/12/16(土) 23:54:00 ID:EgAMMDSp0
>249
リロードせずに発言してしまってすいません。
中四国さんの自粛するといった発言の意図、どうやら読み違えていたようです。
私の言いたい事は、250の発言の通りです。
ここを荒れさせたくないので、どうか向こうのスレで発言をお願いします。

252 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 00:07:35 ID:/f8XZNQ+0
>>249
ほらまた、都合の悪いことは無視だ。
もう君来なくていいよ。


253 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 00:18:36 ID:Eky4YKbi0
>249
中四国さん、>246、>250…そしてみんなの発言を無視しないで受け止めてくれ。
ちゃんと、自分がどう言われているのか、
このスレと専スレで自分に向けられてる発言を全部読んで、応えを返してくれ。

それが出来ないのならもう二度とここに書き込まないで欲しい。
今までのあなたの発言、どんなに言葉を飾っても、その応えの無い限りまったく信用出来ない。
あなたの発言で荒れるのは、はっきり言って迷惑だ。

254 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 01:02:09 ID:3clKLd5z0
結局いい子ぶってるだけじゃねぇか。

結局自分のことしか考えてない。

結局自分の言いたいことしか言ってない。

結局自分のやりたいようにしかやってない。

質問にはきちんと答えろ。その義務がおまえにはあるだろう。

255 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 01:06:31 ID:PKT/X3x50
なぜか荒れてるので少し読み返してきた。
とりあえずわかったこと。

・皇城の人はメール欄を見ない

256 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 01:49:50 ID:fEIqSeP+0
荒れるの見るのもう嫌なので、途中まで作ったSS投下します。

裁鬼SSリスペクトなのでイチゲキさんやテンキさんが出ています。
SS作者様、お許しください。
駄目な場合は続きの投下はやめることにします。

では「戻る川」行きます。

257 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 01:54:05 ID:fEIqSeP+0
「戻る川」

―平成十八年―。
この年の初めに起こった猛士史上でも最大級の魔化魍大量発生事件、通称「オロチ」。
 図らずも「闇の住人」たちの導きにより鎮めの場を発見したことと、猛士関東支部の「角」を始めとする
全国延べ八十余名の鬼たちの活躍によってこの事件は一応の解決を見た。
 当初は関東支部所属の「角」であり、宗家の鬼であるイブキがこの中心で儀式を行うことになっていたが、
諸々の状況を鑑みた結果として「鎮めの儀」の前にイブキの指導に当たった太鼓担当の最年長の「角」、
ヒビキが独断でこれを代行した。
ヒビキの行動に関しては、総本部の意向を一支部の「角」が無視したとして組織運営の面からこれを問題視する
向きもあった。が、「オロチ」そのものが極めて稀な現象であること、また、いかに宗家の鬼であるとはいえ、
失敗の許されない「鎮めの儀」に管の鬼であるイブキが臨むことに当初よりこれを危ぶむ声も総本部の中であった
ことから、このヒビキの独断による行為については結局不問に付されることとなった。
 現象の終息により魔化魍の異常発生は急速に収束し、春を過ぎる頃には魔化魍の発生は例年どおりの状況に落ち着いていった。



258 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 01:57:04 ID:fEIqSeP+0
―同年、夏―。
 関東支部の巡回区域である紙黄村の数キロ上流側にある上紙黄地区。
 川の近辺に古くからの民家が点在するこの辺りでは、毎年夏になると野菜が畑から盗まれていた。
 盗まれるもので一番多いのは、胡瓜、西瓜。だが、全部盗まれることは決してない。
 何故か、その中でも一番美味しそうなものが少しずつ消えているのである。
 たまに一本も盗られない家もある。その家の作物は大概出来が今一つで、市場に出してもあまり
良い値で売れなかったりする。
 蔓のあるものだと作物を?いだ後に器用に一結びされた痕跡を見つけることが出来る。
 土を掘った場合には埋め戻した跡がこんもりと山状にされていたりする。
 人々は昔からこの奇妙な痕跡を残す不思議な泥棒を「川名主」と呼び、出没の有無で
作物の出来不出来を測っていた。
 しかし、数年前からこの川名主が全く現れなくなった。
 この状況に集落の人々は口々に「寂しいねぇ」と洩らしていた。




259 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 01:57:36 ID:fEIqSeP+0
 戦前、戦中を生き抜いた古い人びとは言った。
「昔は夏になると川辺で川名主さまと相撲を取って、よく遊んだもんだよ」と。
「土産に川魚をもらったこともあるよ」とも。
「西瓜を持っていくとそりゃもう、喜んでねぇ。ニコニコして遊んでくれたもんさ」
「でも、時期になると迎えが来てねぇ、いつの間にか帰ってしまってたのさぁ」
「迎えの人は鬼みたいに体の大きい人でねぇ」
「おっかない貌(かお)してたけど、優しい目をしていたっけねぇ」
「琵琶みたいなもの、持っててさぁ」
「撥も見たことあったよ。先っぽに石のついたようなやつ」
はたして、川名主は一体何処に行ってしまったのだろう。
寂しいながらも人々はこれも時代の流れなのか、と感じていた。

そんな中、久しぶりに川名主が現れた。
一軒目は川に程近い篠原という老人の西瓜畑だった。
 収穫間近の最も大きい熟れた西瓜が?がれ、結び目が施してあった。
 篠原は八十近い老齢であったが、実際に川名主を知る最後の世代でもあった。
若い頃は猛士の「歩」としても働いていたので、川名主の正体が何なのかも知っていた。
篠原は紙黄村の「歩」に連絡を取り、河童の童子と姫の出現を告げた。


260 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 01:59:59 ID:fEIqSeP+0
―東京、葛飾柴又。甘味処たちばな―
 この日も東京は真夏日の最中にあった。
 この店の看板娘である立花香須実と日菜佳の姉妹は涼を求め訪れる多くの客の
応対に追われていた。
 そんな中で店の電話が鳴った。
 日菜佳が出たが、少し表情を変えると電話を切らずにそそくさと店の奥へと入っていく。
 それを見て、店主の立花勢地郎がすっと後を追って店の奥に向かう。
 香須実は彼らの方を気にするでもなく、何事もないように客にかき氷を出した。

 甘味処「たちばな」の地下にある猛士関東支部。そのデータベースに結びついている
パソコンの前で日菜佳が誰かに連絡を取っている。
「…はい。実は上紙黄の方で河童が出たと知らせがありまして…。シフトでは今週は
ダンキさんの番なのですが、以前、父上からこの近辺で河童が出たら、サバキさんに
連絡するようにと伝達されておりましたので………はい、……はい。
それではダンキさんのほうにはこちらからそのように伝えますので。
……はい、それでは宜しくお願い致します」
 電話を切ると、勢地郎がイチゲキ君かい、と聞いた。


261 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 02:04:01 ID:fEIqSeP+0
 過日引退を宣言したサバキは現在イチゲキのサポーターということで登録されているので
直接のシフトに組み込まれてはいない。魔化魍退治は通常「角」である人間に直接連絡されるので、
日菜佳は原則に従ってイチゲキに連絡を取ったのである。
「あの地域の河童はテンキさんの頃からの伝統だからねぇ…」そう言ったものの、昨年数年ぶりに
出た河童は非常に凶暴化しており、裁鬼はおろか救援に向かった響鬼も苦戦する始末だった。
 裁鬼は連戦の疲れから撤退を余儀なくされ、響鬼は紅に変化して退治に成功したものの、
河童特有の粘液で声帯をやられ、定時連絡した際に電話に出た香須実に悪戯電話と間違われるという
悲惨な目にあっている。
「ほんと、去年のあの時は…」
「去年がどうかした?」悪戯っぽく目を細める勢地郎の背後から香須実が入ってきた。
「あ、いや。何でも。…上はもういいのかい?」
「あきらが来てくれたんで、店番頼んできたの。で、出たの?」
「ああ、上紙黄の方で河童が出たそうだ。今週はダンキくんが当番だが場所がアレなんで、
イチゲキ君に連絡を取って彼に行ってもらうことにしたよ」
「去年はヒビキさんが行ったのよね。今年は大丈夫なのかしら」
香須実は去年ヒビキが苦戦したという話は聞いているが、声帯をやられたことはまだ知らない。
香須実に冷やかされるのが嫌でヒビキは数日たちばなに姿を見せなかったのだ。


262 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 02:05:43 ID:fEIqSeP+0
「去年の場合は奴等が手を加えたんじゃないか、とサバキが言っていたからねぇ。
まあ、最近は大人しくしているみたいだし、警戒は必要だけどイチゲキ君なら大丈夫だと思いますよぉ」
 飄々としたいつもの調子で勢地郎は香須実に言った。だが、眼鏡越しの彼の目の奥は厳しい光を放っていた。
 お父さんってこう言う割には結構怖いのよね、と香須実は心の中で思った。
 かつてはイブキの父である総本部長と組んで魔化魍退治に励んでいた男である。
 魔化魍の恐ろしさは誰よりも熟知していると言っても過言ではなかった。
 父と同じ道を行く香須実にとって、勢地郎は愛すべき父であり、尊敬する師匠であった。
 勢地郎は日菜佳にダンキへの連絡を頼むと店へと戻っていった。



263 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 02:09:40 ID:fEIqSeP+0
 一時間後に状況確認のためにイチゲキがサバキと共にたちばなに現れた。
 客が掃け、一段落した店では暇そうにしたヒビキの弟子の桐谷京介が団子を頬張っていた。
「ぼびゅひゃひゃひへびゃひゅ(ごぶさたしてます)」トドロキばりに食っていた京介はばっと
立ち上がるとそう言ってサバキ達に挨拶した。
「やあ、久しぶり。修行は進んでいるかい?」いつものポーズを決めるとサバキはそう言って京介に笑いかけた。
「はい。今日飯田さんの所から帰ってきたところです」
「シフトの合間を縫って教わるのも大変だろうけど、自分で鍛えるのはちゃんとやっている?」
京介の正面に座りながら、イチゲキが暖かい眼差しで言う。

弟子になってからも京介はまだヒビキのシフトへの同行は数回しか許されていない。
元が運動音痴の京介の場合、通常の鍛え以上に体を鍛えなければ鬼になる基礎が作れないため、
ヒビキは出動の際には同行を許さず京介に自主トレを課した。また、その時に暇な鬼がいれば
コーチを頼むようにしていた。
 イチゲキやサバキも頼まれれば、と思っていたのだが、幸いにもダンキやショウキといった
体育会系の若手の鬼がその役を買って出てくれ、そのたび京介はボロボロになって帰ってきていた。
「ハチャメチャです、あの人たち。修行先までダッシュだ!とか言っていきなり走りだすんですから。
帰りも結局走って帰らされました」と、彼らに初めてコーチしてもらった後で京介はこっそりイブキにこぼしたそうだ。
 さすがにトドロキには言わなかったらしい。
 同じ体育会系のトドロキにはきっと分からないだろうと思ったからだった。

264 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 02:11:45 ID:fEIqSeP+0
 閑話休題。

「鍛えは欠かしていないつもりです。本当はシフトにももっとついていきたいのですが…」
京介はそう言って俯いた。
「焦るのは君の悪い癖だ。ヒビキは君の事を見ながら考えているのだから、まずはきっちりと
体を作ることに専念した方がいい」そう言うとサバキはヒビキを目で捜した。
「オロチ事件の報告書がまだ提出されていないと本部からお叱りがあったんですぅ」と日菜佳が告げた。
「今、下でみどりさんに手伝ってもらってますけど、当分カンヅメだと思いますよ」
「あいつ、今まで何やってたんだ」呆れるサバキ。
「機械音痴ですからね、ヒビキさん。キーボード触ると眠くなるみたいですよ」
「書類作りも苦手でしたよね。特に報告書のような公式文書は」イチゲキが心配そうに言う。
彼は師匠に似てか、技術のみならず多方面に器用さを併せ持つ。
「手伝ってきた方がいいでしょうか」
「やめておけ。みどりもついているし、たまにはデスクワークも必要だ。現場に係わる事は
きっちりこなせるんだから、そういう方面にも慣れたほうがいい。あいつもそのうち管理職に
なるかもしれんのだからな」
「え?引退するんですか?ヒビキさん」
「違うよ、京介君。同じ「角」でも一応全体を見る人間が要るってことさ。支部長が不在のときでも
状況を回せる人材は育てておかないとならないからな」
「サバキさんは違うんですか?」
「…鍛えてるからな」自分はその必要がないな、というニュアンスも見せながらサバキは言った。
  そういえば、報告書作りは自分がすることが多かった。イチゲキはこの時そう思った。
文書作りが苦手なのは実はサバキも同じだ。行動で示す鬼たちは得てしてこの傾向にあると言えよう。
中にはイチゲキのような者もいるが。


265 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 02:13:45 ID:fEIqSeP+0
「そういえば、今日は河童の話だったのではなかったのか?」思い出したようにサバキがイチゲキに言った。
 あ、と本題を思い出したイチゲキと日菜佳。
 状況の説明を受ける。
 上紙黄に出た童子と姫は以前に出たように西瓜と胡瓜を幾つか盗んで行ったらしい。
「紙黄村近辺の魔化魍はあまり人を襲わないと聞いているのですが、本当なんですか?」
 話を聞いていた京介がサバキに尋ねた。
「そうだ。あの辺りは特殊な波長があって、「聖域」と言っていい場所なんだ。
だから、魔化魍といっても人的被害は少ない、と言っていい。だが、完全とは言えないし、
去年のように奴等が介入してくれば凶暴化することもある。俺としては人を襲わない魔化魍が
いることは悪いことではないと思うんだが、万一ということもある。そうなると、やはり、
出た場合には清める必要はあるだろうな」
「人を襲わない魔化魍…」サバキの言だが京介は半信半疑だった。彼の出会った魔化魍たちは
どれも凶悪で悪意に満ちたものばかりだった。目の前で以前の級友を焼き殺されたこともあった。
嫌な奴だったが目の前で死んでいったのは辛かった。
 そんな京介の顔を見ていたイチゲキが言った。
「京介君も一緒に行ってみるかい?」
「え?」
「魔化魍にもいろいろある。京介君は夏の奴はまだ見たことがないだろう?」
「去年見た奴は違うんですか」
「アレもそうだけど、奴等が手を加えた奴だからね。自然発生の魔化魍とは違うよ」
「そうだな、紙黄村は猛士にも縁のあるところだし。一度行ってみるのもいいかもしれないな」
 サバキがそう言って立ち上がった。ヒビキには俺から話そう、そう残して下に降りていく。
 五分ほどしてヒビキがサバキと上がってきた。
 帰ってきてすぐで大丈夫か、と問うヒビキに、はい、と力強く答える京介。
「では、サバキさん、イチゲキ。京介を宜しくお願いします」そう言ってヒビキは二人に頭を下げた。
「ああ、心配するな」
「ちゃんと返しますから、安心して下さい」そう言って二人は京介を連れてたちばなを出て紙黄村に向かった。

266 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 02:16:22 ID:fEIqSeP+0
取り急ぎ投下しました。
スレの正常化を祈ります。
続き、年内には投下したいと思いますが・・・。

267 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 02:36:47 ID:+ogqCz2q0
>>256-266
・sageて。
・桐谷→桐矢
・ようこそ。

268 :戻る川 作者:2006/12/17(日) 02:43:54 ID:fEIqSeP+0
>>267
訂正ありがとうございます。
sage忘れてました。サーセンwww

269 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 09:14:20 ID:cMGNCnd80
233をスルーって事は中四国はファンの為なんじゃなくて、自分の為にやってんだね……
このスレで一生懸命擁護してくれた人がいて、最終的に中四国さんの作品を読みたくて、
これ以上悪く言われるのが嫌で離脱して、ファンだけでも楽しめるようにって用意したのだろうに。
このスレの現状で更新の情報なんか投下したら、どんな良作だろうとコキおろされるに決まってる。
それが嫌だったろうから単独スレが立ったのに……。

確かに233はここに対して言いすぎだとは思いますが、この件を沈静化させ、
互いの作品が生き残るには良い策だったのではないでしょうか?
とりあえず、ここの住人ばかりか、本当に中四国さんの作品を読みたかった私のようなファンも
裏切ったと思います。もうサイトも見ません……残念です。

270 :233:2006/12/17(日) 09:21:39 ID:BFHctVBz0
そうですか。本当に楽しみにしてた者でも、ここから引き離そうとすれば荒らし扱いなんですね。


271 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 10:16:09 ID:aTR8oWHJO
>>269-270
向こうで話してくれる?
俺も作品なまじっか好きだっただけに余計頭にきてる
実際皇城さんは去ったじゃねえか。
皇城さん読んでたら帰還いつまでも待ちます!

272 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 10:25:01 ID:1ugXbIUo0
            __,,,,_
            /´      ̄`ヽ,
            / 〃  _,ァ---‐一ヘヽ
         i  /´       リ}
          |   〉.   -‐   '''ー {!
          |   |   ‐ー  くー |
           ヤヽリ ´゚  ,r "_,,>、 ゚'}
         ヽ_」     ト‐=‐ァ' !
          ゝ i、   ` `二´' 丿
              r|、` '' ー--‐f´
         _/ | \    /|\_
       / ̄/  | /`又´\|  |  ̄\

皇太子様がこのスレに御興味を持たれたようです。

273 :まとめサイト:2006/12/17(日) 11:45:30 ID:0aizCbrX0
>>256-266
小説の雰囲気がいいですね。続きが楽しみです。
文中文字化けしてる部分があるのですが、どうしたらいいですか。

>>258 蔓のあるものだと作物を?いだ後に器用に一結びされた痕跡を見つけることが出来る。

>>259 収穫間近の最も大きい熟れた西瓜が?がれ、結び目が施してあった。

「もぐ」でいいのかとおもうのですが、使った漢字がUTF-8でないと表示できない文字のようです。
2chはShift-JIS(まとめサイトも)なので、?になってしまったようです。


274 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 12:08:01 ID:kPOs2e/J0
>>271
お前もレスつけんな

275 :名無しより愛をこめて:2006/12/17(日) 12:31:48 ID:aTR8oWHJO
>>274
だな!いや悪かった

276 :戻る川 作者:2006/12/18(月) 02:06:26 ID:G+26Q+1/0
>>273 まとめサイト様
遅くなりまして失礼いたしました。
早速掲載いただきまして恐縮です。

?の部分については「もぐ」でOKです。
変換できない字を使いましてすみません。

御手配よろしくお願い致します。

277 :名無しより愛をこめて:2006/12/18(月) 23:30:15 ID:xBhQ5jPn0
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +

そろそろDA後編クルー?

278 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:03:57 ID:AwT4dyya0
一応、完成しましたので、投下いたします。
整合性のない部分もありますが、お許しください。
パラレルワールドとお考えいただければ何よりかと。
では、「戻る川」続きです。

279 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:06:46 ID:AwT4dyya0
戻る川(弐)
前スレは>>257-266

都心を出て山道を分け入ってゆくとやがて紙黄村の本町に出た。
本町といっても紙黄村は今で言えば寒村であるため、その人口も比較的少なく、
村にいる若者も少ない。
かつてトドロキの祖母が現役の鬼として活動した頃とさして代わらない古い
町並みが続く。それでも、住宅のいくつかは比較的新しい造りに変わっていた。
今回はその本町から更に奥に在る上紙黄地区が現場になる。
川上に直線に沿えば数キロだが、道を走るとくねくねと曲がる道路が続くため、
実際には十キロぐらいは走らなければならなかった。
峠族といわれるぐらいの車好きならば泣いて喜びそうな道路だが、京介はこの急な
カーブの続く状況にひどく酔ってしまっていた。
「車、停めようか?」気遣うイチゲキに京介は青い顔をしながら、大丈夫です、と
答えた。
 助手席のサバキは、強情な子だ、と思いつつ昔のヒビキを思い出した。
あいつも結構、強情張りだったよなぁ。
師匠である鬼が早くに死んでしまってから、次の師匠を迎えずに独力で鬼になった
ぐらいだからな。
感慨にふけっていたサバキの後ろで京介が、うっ、と呻いた。
「あ、まずい!」言うや否やイチゲキはすぐに車を左に寄せた。
 停まってから京介が外に出るまで十秒もかからなかった。
 路肩の下で派手に嘔吐する京介。
 イチゲキとサバキは車中で嘔吐されなかった事にほっとしつつも、やれやれという
顔をして互いに顔を見合わせた。

280 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:08:43 ID:AwT4dyya0
 その後も青い顔をしたままの京介を乗せた車は三十分ほど走行した後、川の近くに
ある篠原老人の家に着いた。
「御免下さい」張りのある声でイチゲキが玄関で来訪を告げる。
「はい」と庭の方から老人の声がした。
八十近いと聞いていたがその割にはまだ七十前かと見まがう老人が庭仕事をしていた。
「お久しぶりです」
「おお、サバキ君か。そちらは確か、石割君だったね」
「今はイチゲキと名乗っています。こっちは支部の「と」の桐矢です」
「桐矢京介です。宜しくお願いします」京介が折り目正しく挨拶したのを見て、
サバキはほう、と思った。初めて会った時の京介の口調を思い出したからだった。
当時の京介は自分が鬼になるのに相応しい人間だ、などと大口を叩いていた。
 父を越えたいという純粋な思いは強かったが、如何せん礼儀を知らないところが
あった。初対面の人間にいきなり弟子にしてくれ、と言われ、サバキもイチゲキも
随分と戸惑ったものだった。
顔合わせも済んだところで篠原がこちらへ、と庭の方へ一行を誘った。
「まずは麦茶でも飲みながらお話いたしましょう」と奥へ引っ込む篠原。
髪の毛は真っ白く顔の皺も深いが、農家の男衆らしく浅黒く日焼けした肌と
しっかりした足取りが若さを感じさせる。腰もあまり曲がっていない。
未だ現役、といった風情だ。
「魔化魍が出ているのに、いいんですか。そんなのんびりして」さっきまで青い顔を
していた京介が気色ばんで言う。
「まあ、そう焦りなさんな、若いの。出たのは川名主様。まだ河童は出ておらんよ」
「でも、支部長は河童が出たと…」
「紙黄の「歩」がそう言ったのかい?」
「我々はそのように聞いてきたのですが」サバキがそう言うと篠原は、ははは、と
笑ってこう言った。


281 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:09:26 ID:AwT4dyya0
「紙黄の「歩」はまだ代わって間がないからねぇ。川名主様が出たのを知らせた時に
勘違いしちまったんだな。あの早とちりめ」
「早とちり?」少し拍子抜けしたように京介が聞き返す。
「この辺の河童は川名主様から貢物をもらって育つ。他所はどうか知らんが名主様が
出てから河童が出るまでには、少なくとも一、二日はかかるよ」
「じゃあ、すぐにでも童子と姫をやっつければ…」逸る京介をイチゲキが制した。
「ところが、それをやると河童がDA(音式神)の網になかなか引っかからなくなる。
河童は本来警戒心の強い魔化魍で、特にこの辺りの河童はそれが顕著だ。うっかり
手負いにして奥に隠れたまま成長されて、数を増やされるともっと厄介なことになる。
仮に人は襲わないとしても、多数で畑を荒らされたりすれば地域の人には大打撃だ」
 害獣駆除か、これは。京介は頭が混乱してきた。
「しかし、去年の奴みたいになっていたとしたら…」
「はて、川名主様は去年出てないんだが」今度は篠原が尋ねる番だった。
 サバキは去年の出来事を掻い摘んで篠原に話した。
「そうか…。そんな事が…」
「ええ。ですから、今回の河童が人を襲う可能性も捨てきれずにいます。私は今回の
童子と姫の行動が例年の動きとほぼ同一であることから、おそらく奴等の関与はないと
考えていますが」
「幸い、今回の童子と姫は人を襲っていません。このことが裏づけの一つになるかと
思います」イチゲキがサバキの説に同調する。
「そうだね。川名主様は里の人には手を出さん。少なくともわしはそう思う」
「何だか納得がいきません」京介が憮然として言った。
「魔化魍は魔化魍です。事が大きくならないうちに封じてしまうのが筋というもの
ではないんですか?」
「焦る必要はない、ということさ、京介君。童子と姫は必ず現れる。そこで河童のところまで案内してもらうのさ」
「案内させる?」
「DAにこっそり尾行してもらって、その後彼らを「送る」んだ」
「…どういう事です?」いぶかしむ京介にサバキは、まあ、それは後で教えるよ、とやんわりと微笑んだ。


282 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:10:40 ID:AwT4dyya0
 その日、一行は篠原の家の離れに泊まることになった。
 ベースを張るという選択肢もあったのだが、ひょっとすると童子と姫がまた現れる
かもしれないという予感もあって、篠原の好意に甘えることにしたのだった。
 久しぶりの来客ということもあって、篠原家には近隣から食べ物や飲み物を持った
住人が集まり、ちょっとした宴になった。
 サバキたちも地元産の野菜を使った料理や自家醸造の果実酒などに舌鼓を打ち、
懐かしい五右衛門風呂を頂いて昼間の疲れを癒した。
 彼らが床についてから数時間後に、川名主が出現した。

283 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:13:08 ID:AwT4dyya0
 サバキの判断は当たった。
 奇しくも離れに程近い胡瓜畑に彼らは現れたのだ。
 外は綺麗な満月。中天に輝き、姿を映し出す。
「うーさぎうさぎ、なにみてはねる」
「じゅうごやおーつきさん、みてはーねーるー」
 若い男女の歌う声が聞こえてきた。歌声はそれほど大きくない。
 男は髪を長く垂らしている。絣の着物のような物に、ちゃんちゃんこだろうか、
袖のないベストのようなものを着ている。
 女は長い髪を後ろで結わえているが、着ている物は男と同じようなものだ。
 二人はけん、けん、ぱっ、とやりながら畑に近づき、上の方に生っている胡瓜を選びながらもいでいった。
「おいしそう」
「これ、おおきいねー」
「あのこにあげよう」
「わがこにあげよう」
話す声はどこか幼く、男女の声が逆転している。
間違いない。川名主―河童の童子と姫―だ。
離れから様子を伺っていた京介が陰陽環で炎式神を打とうとしたのを取り押さえ、
サバキたちは事の成り行きを見守った。
 童子たちは胡瓜を数本ずつもいで結び目を作ると、再びけん、けん、ぱっ、と
言いながら去っていった。
 鬼の気配を消していたのが幸いし、サバキたちは存在を感づかれずに済んだ。
 イチゲキは頼むよ、といいながら三枚の瑠璃狼を展開し童子達の後を追わせた。
サバキが取り押さえた京介を放そうと下を見ると、一時的に呼吸が出来なくなって
いた京介が気絶していた。
「…」何事もなかったかのように京介を寝かせるサバキ達。
 夜が明ければ、童子達の行く先も分かるだろう。
 今回の河童が昔と同種なのか、または人を襲う亜種なのか。
 全ては明るくなってから判明する。
 サバキ達は次に備え、眠りについた。


284 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:13:46 ID:AwT4dyya0
  朝、篠原家の食卓に呼ばれ、体を解していると瑠璃狼の一匹が帰ってきて、
うぉん、と一鳴きした。どうやら童子達の行く先が分かったらしい。
 電話が鳴り、近隣の農家からも川名主の出現を知らせる情報がもたらされた。
 サバキ達は情報を精査確認し、瑠璃狼の案内で川の方へ向かう事にした。

 上紙黄から紙黄村本町に向かって流れる川は清流と言っていいほどの水質の良い川だ。
 川幅は上流部ということもあって四メートル弱、深さも流芯部で一メートル後半と
いったところだった。
 水は透明度が高く、川岸近辺は底が透き通って魚が泳いでいるのが良く見えた。
 サバキ達は川沿いに上流部を目指し、瑠璃狼の後を追う。
 瑠璃狼は、早く来いよ、とでも言いたげに時折後ろを振り返りながら案内を続ける。
 サバキたちの背中には大きめのリュックがある。予備の衣服と食料だ。
 今回は河童が相手なのでイチゲキは音撃弦を携行していない。音撃棒をカラビナで
リュックの横から提げていた。
 サバキは念のため、と音撃弦「閻魔・釈迦」を持参していた。軽めの革ケースに
入れ、肩から提げている。音撃棒はイチゲキと同じようにリュックの横だ。
 サバキやイチゲキのリュックより少し小さめの京介のそれはディスクアニマルや
ナビゲーション用の小型GPSといった装備を積んでいた。
 見た目は重装備に見えるが、足取りは軽い。
 先頭を行くイチゲキから最後尾のサバキまで、しっかりした足取りで川を上る。
「帰りはのんびりカヌーでも乗りたいですね」
「ファルト(布製のカヤックのこと)でも持って来れば良かったな」
 京介の緊張を解そうとでもしているのか、のんびりした口調で話すイチゲキとサバキ。
京介は話に加わるでもなく、黙々と歩く。

285 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:15:00 ID:AwT4dyya0
「時に京介君、最近明日夢君と会ってる?」
「…いえ、全然」イチゲキの問いに少しむっとして答える京介。
 京介は明日夢がヒビキの下を去った頃から、だんだん学校へ登校することが
無くなっていた。修行に出るときはオリエンテーリングの会社「TAKESHI」の
現場研修として行っていたので学籍こそ残っているのだが、国立への進学コースに
入った明日夢とはクラスも別になり、顔を合わせることも無くなっていたのだった。
「何故、今、安達の話なんです?あいつは鬼になるのをやめた。もう関係ないじゃ
ないですか」京介は明日夢が弟子を辞めた経緯を知っている。やっと自分が胸襟を
開いて話せる仲間が出来たような気がしていた京介にとって、明日夢の心変わりは
何にも増して許せないものだった。自分や師であるヒビキを裏切ったような気がして
京介は明日夢のことを未だに許せずにいたのだった。
 しかし、京介はヒビキが明日夢の自立を促そうとして突き放したことを知らない。
 鬼になるということは浮ついた気持ちではできないことであるし、命の尊さを深く
知るヒビキが明日夢の中に別の「人助け」に関する気持ちの芽を見出し、それを自覚
させようとして敢えて厳しい態度で明日夢に別れを告げたことは、そのことをヒビキ
から聞いたサバキやイチゲキしか知らないことだった。
 事情を知るイチゲキは真実を話した方がいいのではないかと考えた。が、イチゲキの
師匠であるサバキはそれを良しとはしなかった。
 ヒビキが自分の弟子である京介にそれを伝えないのには、それ相応の理由がある。
それに、ヒビキが言わないことを外部の俺達が言うのは筋が通らんだろう。
 サバキはそう言ってイチゲキを諌めた。

286 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:16:20 ID:AwT4dyya0
 実はイチゲキが京介を今回の河童退治に連れ出したのにはもう一つ理由があった。
 それが、京介と明日夢の関係の修復だった。
 真実を話すことをしなくとも、真実を伝える方法はあるはず。
 他人を僅かでも憎む気持ちのある者は真の「鬼」にはなれない。
 人一倍他者を守ることを是としたサバキの元にいたイチゲキは誰よりもそれを痛感
していた。
 京介が鬼となるためには、他者を許し、愛し、守ろうとする心根を作り上げる必要が
あった。
 本来は師匠のヒビキがするべきことだが、ヒビキはこのことに関しては敢えて深入り
することを避けていた。
 ヒビキは京介自身の自覚を待っていたのだ。
 かつて自分がそうであったときと同じように、自分で考え、学び、掴まなければ
鬼には近づけない。
 それ故、敢えて明日夢の件には触れなかった。
 イチゲキはそんなヒビキの姿を見て、自分にも何か出来ないかと思い、京介を
魔化魍退治に連れ出したのだった。
「いや、しばらく姿を見ないのでどうしたかな、と思ったんだ。京介君なら知っている
んじゃないかと思ってね」
「知りませんよ、あんな奴」さらに不機嫌になる京介。
「でもね、京介君。どんな人のどんな行動にも目に見えない理由が必ずある。それは
君が今こうして鬼を目指していることに理由があるのと同じことなんだよ」
「それと安達の話とどう関係があるんです?」かつてバンキに頭はいいようだが、頭が
悪いと評された京介の悪い部分が頭をもたげた。
 相手の言葉を推し量る洞察力が足りないのは、若さ故か。皮肉屋のくせに直情的な
京介の性格がイチゲキの言葉の意味を理解することを邪魔しているようだった。
 やはり、直言しかないのかな。イチゲキはそう思い始めていたが、今はまだ早い、と
思う部分もあった。ヒビキやサバキがじっと待っているように、自分ももう少し待って
みよう、と思い直した。

287 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:18:43 ID:AwT4dyya0
 そうして歩くうち、瑠璃狼が歩を止め、小さく、うぉんうぉん、と鳴いた。
 どうやら河童の住処に近くに来たらしい。
 川岸近い所からやや離れるように草むらを分け入る。
 適宜なところにリュックを置き、装備を展開する。
 サバキとイチゲキは音撃武器をチェックし、京介は陰陽環でディスクを展開した。
「これ、何です?」サバキのリュックにあった風呂敷包みを見た京介が尋ねる。
「…秘密兵器だ。開けるなよ」
「?」ニヤッ、と笑うサバキの仕草に疑問を隠せない京介。
 最後に持ってきたタープ(覆い布)で荷物を包みペグ打ちする。
 野生動物に荷物を荒らされない為の備えである。
 イチゲキは装備帯を腰に巻き、音撃鼓「爆裂火炎鼓・改」をバックルに装備した。
 爆裂火炎鼓は関東支部の「銀」である滝澤みどりが独力で開発した音撃鼓である。
 強力な破壊力を持っているが安定性に欠け、一回の使用で壊れてしまうほどであった。
 みどりはこの爆裂火炎鼓に改良を施し、リミッターをかけることで安定性を確保した。
 威力は本来の八割ほどになってしまったが、それでも通常の音撃鼓の出力以上の
効果が得られ、なおかつ音撃打の回数を減らすことが出来るようになった。
 これにより、使用者の体力の負担が軽減され、本来太鼓の鬼でない者が使用する
際にもある程度のリスクの軽減につながるとして、夏の魔化魍対策の一環として支給が
始まっていた。
 この春に新たに支給された音撃棒「彩火」を背中にくくる。
 サバキは音撃震「極楽」をバックルにつけ、音撃鼓「陽炎」を装備帯の右腰から
カラビナで吊った。背中のフックに音撃棒「炎夏」を付け、音激弦「閻魔・釈迦」を
両手に持つ。
 京介は猛士から支給されたベストに身を包み、さっき開けるなよ、と言われた風呂敷
包みを右手に下げた。
「近くまで行ったら、京介君は陰に隠れていなさい。とりあえず見ていればいい。
炎式神やDAたちは良いと言うまで使うんじゃないぞ」サバキは京介にそう言うと、
イチゲキを促して歩き始めた。

288 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:20:56 ID:AwT4dyya0
 川辺に出て行くと玉砂利のように丸い石の転がる岸に出た。
 丁度流れのゆるいところで、浅瀬が多く展開している。その向こうに昨晩見た男女が
二人、川に石を投げて遊んでいた。
「そーれ」男が小石を投げると小石は数回水面を跳ね、やがてポチャン、と中に落ちた。
 やがて、サバキたちに気がついた童子と姫が声をかけてきた。
「おにですかー?」
「おにですねー?」無邪気な様子に京介は警戒心を強める。
 油断させる気か。風呂敷包みを下におき、左手の陰陽環に手をかける。
 イチゲキはその手をぐっと掴んで首を横に振った。
「さっき言ったでしょう。良いと言うまでは使うんじゃない」
 サバキとイチゲキは京介に下がるように言うと変身鬼弦に手を添えた。
 びぃぃぃん、と音が響き額の鬼面が浮き上がると、深紅の炎と銀色の炎が二人を
包んだ。片手でその結界を切り裂くと、深紅の四本角を持つ鬼と煌く銀の四本角を持つ
鬼が現れた。
 まるで双子のように似た外観。色違いであるのが唯一の違い、と言っても良かった。
 関東支部の「角」裁鬼と一撃鬼である。
 京介は鬼を見た童子達が戦闘体制に入ると確信していた。だが、彼らがとった行動は
京介の予想を遥かに超えていた。
「……うわぁあああん!」
「わぁぁぁぁん!」子供が泣く仕草そのままにボロボロと泣き始めたのだ。
「…どうした?」裁鬼が穏やかに聞く。
「…ぼくたち、ぼくたち…」
「すもうとってほしかっただけだったのに…」
「…覚えてるのか。去年のこと」
「…ごめんなさーいー!!」
 魔化魍が鬼に謝っている。まさに悪さをして大人に謝る子供そのままの姿だった。
 京介は目の前の光景に我が目を疑った。

289 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:23:08 ID:AwT4dyya0
 有り得ない。しかし、紛れも無くその光景は現実のものだった。
 裁鬼は腰を下ろして音撃弦をそっと置くと近くにあった風呂敷包みを開けた。
 京介に秘密兵器だ、と言ったあの包みである。
 中から大きめのタッパーに入った西瓜と胡瓜、よく熟れたトマトが出てきた。
 裁鬼は無言でタッパーを差し出した。
「…くれるの?」
「お土産だよ」一撃鬼が優しい声で言った。
「ありがとう!」
「ありがとう!」童子達は満面の笑みを浮かべて礼を言うと美味しそうに西瓜を
食べ始めた。
「おいしいね」
「おいしいよ」そう言いながら瞬く間に西瓜とトマトを平らげた。
「きゅうりはあのこに」
「きゅうりはわがこに」そう言って童子と姫は川に胡瓜を投げ込んだ。
 胡瓜がぼちゃん、と川に落ちると中から、くけっ、と鳴き声が聞こえた。
 河童だ。京介は音式神を放とうとした。が、止めた。
 サバキやイチゲキが黙って見ているよう念押ししていたからだ。
 京介は事の成り行きを黙って見守ることにした。
 それでいい。ヒビキがそう言ったような気がした。

290 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:26:32 ID:AwT4dyya0
「ねぇ、おすもうとってくれる?」
「おすもうとりたーい」口々に無邪気に要求する童子たち。
 裁鬼と一撃鬼は一つ頷くと童子たちと相撲を取り始めた。
 はっけよーい、のこった。のこった、のこった。
 裁鬼と一撃鬼が交代しつつ童子と姫を相手していく。
 適度に勝ち、適度に負ける。
 京介は一撃鬼から包みにある握り飯とお茶を貰っていた。
 距離を置き、握り飯を頬張りながら鬼達と魔化魍の相撲を観戦する。
 穏やかな川のせせらぎを聞きながら空を見上げる。
 白く大きな雲がゆっくりと川下に流れていた。風が心地良い。 
 あいつ、どうしてるのかな…。今も授業中か…。俺より頭が悪いのに医学部なんて
無理に決まってるのにな…。
 いつの間にか明日夢のことを考えていた。
 明日夢の後を追いかけてパネルシアターで大喧嘩したあの日。
 京介は後で級友の天美あきらから明日夢がシアターに通う不治の病の女の子から懇願
されて、やむなくサークルに参加したことを知った。その後、暫くして明日夢が大学の
医学部に進学するべく進路の希望を担任に出したことを聞いた。
 ぼーっとしていて何を考えてるのか良く分からない。でも、気になる存在だった。

291 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:27:45 ID:AwT4dyya0
 同じ師に弟子入りして、厳しい修行を始めた。
 何をやっても敵わなかった。
 いつも自分の上を行く。でも、いつか越えてみせる。
 いつの間にか、明日夢は京介にとって一番身近な目標になっていた。
 その明日夢が目の前から消えた。
 自分の前からいなくなった明日夢は、パネルシアターで芝居の真似事をしていた。
 鬼になることよりもそんな事が大事だったのか!
 お前の「人助け」への思いはそんなものだったのか!
 京介の怒りはそこで爆発した。
 パネルシアターをぶち壊した時に見せた明日夢の怒りの表情は京介の脳裏に強く
焼きついていた。
 短い付き合いだが、あんなに怒る明日夢は見たことが無かった。
 自分の皮肉に困惑した表情を浮かべる事はあっても、はっきりとは口にしなかった。
 京介はイチゲキの言葉を思い出していた。
 ―どんな人間のどんな行動にも目に見えない理由が必ずある―
 安達、お前の理由って、何なんだ?
 ヒビキさんと袂を分かってまで、お前は何をしようとしているんだ?
 京介は未だ、ヒビキの元を去った明日夢の真意を図りかねていた。


292 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:29:15 ID:AwT4dyya0
 鬼達と河童の相撲は夕方まで続いた。
 京介はサバキやイチゲキの指示通りにじっと待っていた。
 もうすぐ日が暮れるという時、水面からくけけっ、と声がした。
 放物線を描いて何かが投げられる。
 蔓で括られた川魚が数匹、地面に上がっていた。
「これ、おみやげ」
「おいしいよ」そう言って、童子は一撃鬼に魚を渡した。
 一撃鬼はありがとう、と言って魚を受け取ると楽しかったかい、と聞いた。
「うん、とっても」
「おもしろかったよ」声をそろえて喜ぶ童子達。
「また、あそんでくれる?」
「また、きてくれる?」童子達の問いに、ああ、また来るよ、と裁鬼が答えた。
 いつの間にか両手に音撃弦を構えていた。
 振り向き様に両手の「閻魔・釈迦」を一閃させる。
 童子と姫は、嬉しそうに微笑んだまま茜色の川辺に散った。
 すると、そばの水面から河童がのっそりと上がってきた。
 例年見る形と同じ河童は鬼達を恐れるでもなく歩いてくる。
 一撃鬼は音撃鼓をベルトから外し、すっ、と河童に近づいてゆく。
 河童が口から粘液を吐き出した。一発だけだろうと思っていた一撃鬼に二発目の
粘液が飛んできた。顔を庇って腕で受ける。
 裁鬼が少し困ったな、と言う仕草を見せたのを京介は見た。
 一撃鬼は河童の腹に「爆裂火炎鼓・改」を取り付けると、背中の音撃棒「彩火」を
取り出し、清めの太鼓を打ち鳴らした。
「また、来年会おうね」そう言うと、大きく両手で音撃を打ち込む。
 その衝撃で河童は爆裂、飛散した。


293 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:35:06 ID:AwT4dyya0
 顔の変身を解いた二人に、京介が近づいてゆく。
「お疲れ様でした」
「ああ、お疲れ様」そう言うサバキの表情は晴れない。
「やっちまったな…」
「ええ、油断しました」そう言うイチゲキに仕方ない、とサバキは言い、京介に包みの
中にあるマスクを三つ持ってくるように言った。
「ありませんけど」京介はマスクが無かった旨をサバキに伝えた。
「…」
「忘れましたね、サバキさん」
「…の、ようだな」
「どうします、これ」
「取るより仕方ないだろう」
「今は風も無いようですし、上手くいくと思います」
「よし。京介君、少し離れていよう」
「一寸待ってください、僕一人ですか?勘弁してくださいよ」
「受けたのはイチゲキ、お前だ。諦めろ」
「むぅうう」

294 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:35:39 ID:AwT4dyya0
 サバキは京介を伴って川上の方にイチゲキを置いて距離をとった。
「何があるんです?」
「ん、ちょっとアレには問題があってな…」
 そういうサバキ達を他所にしかめ面をしたイチゲキが右手から鬼爪を展開させて
 左腕についていた河童の粘液の塊を剥がし始めた。
 ぶしゅうう、と割れた塊からガスらしき煙が上がる。
 げほげほ、とむせるイチゲキ。
 しかし、悲劇はイチゲキだけにもたらされたものではなかった。
 無風だった川辺に突風が吹いた。この風で川下にいたサバキ達も結局ガスの餌食に
なってしまった。
「う!…ナンナンデスカ!コレ!」
「アーア、ヤッパリ、コウナルノカ…」
「サバキサンガマスクワスレルカラコンナコトニ…」
「オイ、オレノセイナノカ?」
「ヤメマショウヨ、コンナコトロデモメルノ」「ムゥゥゥ」
 かくして、ドナルドダックもあわやという声に変わってしまった三人は、荷物を
まとめて上紙黄の篠原家に戻ることとなった。
 川辺を離れようとする三人の傍を柔らかい風が過ぎていった。
「また、あそんでね」三人は童子達の声を風の中に確かに聞いた。


295 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:36:55 ID:AwT4dyya0
 サバキとイチゲキが着替えを終え、京介がたちばなに連絡を取る為に携帯電話を
取り出した。
 幸いにも画面のアンテナが三本立っていたので、京介は安心してたちばなに電話を
かけた。
 奇しくも電話に出たのは、あの香須実だった。
「はい、たちばなです」
「アノー、オヤッサンオネガイシマス」
「はぁ!?」
「アノ、オヤッサンヲ…」
「…あ!あなた去年も悪戯電話してきた人でしょ!つまらない悪戯すると、営業妨害で
訴えますよ!いいかげんにしてください!」
「ア、アノ…」
「もう、切りますからね!二度とかけてこないで下さい!」
ぶつっ、と電話が切れ、残されたのは電話の向こうの看板娘のあまりの剣幕に呆然と
するヒビキの弟子、京介。
 はたして、関東最強の鬼とその弟子は二代続けてその正体を知られることもなく、
悪戯電話魔の汚名を着せられたまま夏を送ることとなったのである。

 桐矢京介、十七歳。彼が密かに目標としていた安達明日夢と和解するのは、それから
半年ほど後のことであった。

296 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 02:42:35 ID:AwT4dyya0
裁鬼リスペクトで童子メインで考えて書き始めたのですが、気がついたら京介が話の中心にどっかり座っていました。
桐矢京介、恐るべし。

次回、また何か思いついたら作ってみたいと思います。
お目汚し、失礼。

297 :名無しより愛をこめて:2006/12/19(火) 04:21:38 ID:opvMWS+0O
上手い!
それとアウトドアの描写は実際やってるのかな?
タープで荷物包む辺りなかなかw
陸自の人かなと詮索してしまう。

298 :戻る川 作者:2006/12/19(火) 13:12:30 ID:PzJMBW8+0
>>297
ありがとうございます。
陸自ではないですが、趣味でカヌーを少しかじっています。
川の描写をしていたらキャストが台詞語ってましたwww

299 :名無しより愛をこめて:2006/12/19(火) 18:37:50 ID:90SYJ8LS0
       ミ\                   /彡
       ミ  \                 /  彡
        ミ  \              /  彡
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          ミ   \         /   彡
           ミ    \      /   彡
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ミ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\  |  |  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄彡
 ミ              \  ⊂⊃. /             彡
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄\ ∧_∧ / ̄ ̄\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          /   / ̄ ( 0H0 ) ̄\.   \
        /   /   ⊂. † ⊃   \    \
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     /    /│  ミ. (__|__)彡  │\.    \
     彡   /  │  ミ       彡  │  \   ミ
      彡/   │  ミ       彡  │   \ ミ
             \  ミ       彡  /
              \ミ       彡/

                弱フォームン

300 :見習いメインストーリー:2006/12/19(火) 21:58:07 ID:bFdM4y4x0
前回は>>228から

二十三之巻「通じぬ電話」

「たちばな」の地下の猛士の間で、純友は携帯電話に耳を当てたまま立ち尽くしていた。
 大洋が多美にメールを送ると、程なくして配信不能の通知が返ってきた。
 二人を見上げる日菜佳が心配そうに声をかける。
「どうしましたか? 純友くん、大洋くん。まさか……」
 そこに、扉をくぐってみどりが猛士の間にやってきた。
「──あれ? 二人ともまだいたんだ? あ、日菜佳ちゃん、純友くんにお手伝いをお願い
したんでしょ〜」
 二人の様子に気づかず話し続けるみどりを目で制して、日菜佳は首を何度も左右に振った。
「え?──え?」
 みどりも、大洋が覗き込んでいるスクラップブックに貼ってある記事を見た。記事の横には、
日菜佳のものらしきメモ書きで、多美が行方不明になった同時刻、同地域で魔化魍オオナマズ
が地元の「歩」によって目撃されていたことが記してあった。
 純友は、急に足の力が抜けて、その場にへたり込んでしまった。そして、ようやく熱いものが
目にこみ上げてきた。
「うわああぁぁぁぁーっ!!」
 床にへたりこんだまま、純友は盛大に泣き出した。力なく椅子についた大洋は、頭を抱えて
うなだれた。
「知り合い──なの?」
 そっと、みどりは大洋に訊いた。うなだれたまま、ぼそぼそと大洋は喋り出した。
「みどりさん……なんスかコレ……。行方不明ってふざけんなよ、ったく──それに、ヨコに
あるこのメモは、なんスかコレは!」
 最後は爆発するように叫んで言った。

301 :見習いメインストーリー:2006/12/19(火) 21:58:56 ID:bFdM4y4x0
「……確かな関連性はないわ。ただ、可能性の一つとして……そういうことも考えられるわ」
 苦しげに、みどりは答えた。その横で、純友は泣き続けながらみどりに言った。
「橘さん、魔化魍に?……そんな──そんなぁぁぁぁ……!」
 大洋が乱暴に机に拳を打ち付けた。純友は大声で泣き続けた。
「だっだっだっ、だって、橘さん何にも悪い事してないのに。すごいいい子なのに……!
なんで、橘さんがそんなことに……みどりさん、ねえどうして、みどりさん。教えてよぉぉぉぉ!
なんで? なんで?──ねえなんで!?」
 みどりは、つらい表情で下を見て、どう答えてよいかを考えていた。ゆらりと大洋が立ち上がると、
よろよろと純友も立ち上がった。二人は先を争うように地上への階段を上っていった。
「純友くん!」
「大洋くん!」
 静かになった猛士の間の机に、多美の記事を貼ったスクラップブックが置かれていた。

 日曜の午後、甘味処「たちばな」を飛び出した純友と大洋は、近くの公園に駆け込んだ。
 両手と両膝を地面に落とし、大洋は荒い息のまま下を向いていた。やがて拳で土を叩きつける。
「くそぉぉぉぉ!」
 その隣に力なく座り込んだ純友は、また泣き出した。
「うえぇぇぇぇぇぇん!」
 おそらく、橘多美は魔化魍の餌食になった。大洋はもちろん純友も、理不尽な魔化魍の所行に、
怒りと悲しみでわけがわからなくなりそうだった。
「純友……おれ、『飛車』か『角』か迷っていたけど、やっぱり『角』だ! 鬼になって、
やつらを、一匹残らずぶち殺してやる!──おまえはどうだ、純友!」

302 :見習いメインストーリー:2006/12/19(火) 22:03:27 ID:bFdM4y4x0
「ぼくだって……ぼくだって、なれるものなら鬼になりたいよ。『銀』になるって決めたけど、
こんなのって……こんなのって! 許せないよぉぉぉぉぉ!!」
 純友は、自分の中にある怒りをどうしていいかわからなかった。自分が、鬼になる──
ずっと前にあきらめたはずだったその考えが、いま再び頭をもたげてきていた。
 そこに姿を現した、一人の壮年の男が言った。
「……手間をかけるな、小僧ども。せっかく詫びを入れに来たのに」
 男は、ヒビキらと同世代にも見えるが、話す口調はなぜか老成しており、年齢不詳だった。
 二人とも初めて見る男だが、同時にどこか見覚えがあるような気がした。まったくの初対面だが、
その雰囲気はこれまで何人か見たことがある鬼と同じ──この男も、鬼だと思った。
 純友は、男の右手に嵌まる腕環に気づいた。
「陰陽環……」
 男は、詫びに来たと言った。そして、腕には陰陽環が。
「すまなかったな。俺が陰陽環をちょいと拝借したせいで、始末書かいたりコレを捜したり、
色々あったそうじゃないか。──ま、また内緒で借りてきちまったけどな」
「誰だテメー」
 立ち上がって、鋭く大洋が訊いた。
「こないだコイツを黙って拝借していたのは俺だ」
 男が腕を上げて陰陽環を二人に示した。
「てめぇか……!」
 大洋は低い声で男に言った。
「今のおれは最高に機嫌がワリぃんだ!!」
 叫ぶと、大洋は陰陽環の男に殴り掛かっていった。

303 :見習いメインストーリー:2006/12/19(火) 22:04:44 ID:bFdM4y4x0
 大洋が陰陽環の男に殴り掛かると、突き出した拳は空を切り、足をさばかれて土の上に
倒れ込んだ。すかさず起き上がり男に飛びかかったが、結果は同じだった。
「そういきり立つな。詫びに来たと言ったろう。……後先考えずに仕掛けるな。おまえみたいな
ヒヨッコが、この俺とやりあうなんざ百万年早いぜ」
「くそ……!」
 大洋は起き上がり、地面に腰を落としたまま顔についた土を拭った。
 純友は、涙を拭いて男に言った。
「あの……ぼくは……猛士の見習いの須佐純友といいます」
 名のってから、今度は純友は大洋を指して言った。
「こちらも見習いで、田島大洋といいます。その……あなたは、どちら様ですか」
 壮年の男は、満足そうな笑顔を向けながら言った。
「もう一人と違って、おまえはなかなか礼儀正しい見習いだな。まあ、俺の名前は勘弁してくれ、
名のるほどのモンじゃない。ただの引退した鬼だ」
「関東の鬼のどなたかの、お師匠さんですか?」
「いい勘してるぜ、泣き虫小僧」
 ニヤリとして男は言った。
「あまり『たちばな』の連中を心配させるなよ、お前たち。とにかく連絡を入れろ」
 純友は、切っていた携帯電話の電源を入れ、「たちばな」に連絡を入れた。
『純友くんっ!? 今どこにいるの?』
 電話に出たみどりが、凄い勢いで訊いてきた。

二十三之巻「通じぬ電話」了

304 :見習いメインストーリー:2006/12/19(火) 22:06:57 ID:bFdM4y4x0
次回予告

「アンタ、鬼なんだろ?」
「ぼ──ぼく、『銀』になって、ぼくが誰にも負けない武器を造るから」
「ああ。なるぜ、鬼に。おれは鬼になる」
「どうした。鬼になるんじゃなかったのか、小僧」

見習いメインストーリー 二十四之巻「踏出す鬼道」

305 :名無しより愛をこめて:2006/12/19(火) 23:07:56 ID:AwT4dyya0
>>300-303
乙です。
鬼の現実…。厳しいなぁ…。
次回投下、待ってます。

306 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 12:35:13 ID:dJxDSq8HO
多美ちゃん犠牲になったのか・・・
少年達が可哀想だと年甲斐もなく感情移入しちまった。

いいともでジローラモさんが天狗に扮してた。
天狗や鬼は漂着した渡来人って説がある。
描写が欧米人ぽく特殊技能を持ち獣肉を食うからで、
なんかZANKIさんのご先祖様が日本に来てたらと妄想して
楽しかった

307 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 13:06:12 ID:WKtvnOhv0
中四国よ、ここに投下しようがしまいが、更新を知らせようが知らせまいが別に構わんが、
てめえの言った日からもう十日以上経ってんだからさっさと書き上げろ。
生意気にエンターテイナーがどうとかほざくなら客に約束した締め切りを守れよ。

308 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 14:33:07 ID:o2pk944EO
スレが進んでると思って見たら見習い(笑)かよ…。
もうお腹いっぱいだ。中四国はまだか?

309 :元・ZANKIの人:2006/12/20(水) 15:17:29 ID:MR0N1+kn0
久々に書いてみる。
>>306
天狗という設定ではないんですが、先代の設定の中で先祖または本人は一度、日本に来た事があり、
その時、南雲あかねと接触した事があると言う話を考えた事がありました。
最初は第二次世界大戦を舞台にしようかと思いましたが、先代とあかねさんの年齢設定が良くわからんので、
前世の世界が舞台で、DMCが世界の魔物事情を調べようとした際に船が転覆し、
辿り着いた先が、まだ鎖国していた頃の日本で前世のあかねさんだったという話は考えてました。
作品の中で、先代がなんか知らないけど年も違うあかねさんに対して妙に親近感を一方的に持っていたのは
こういった背景があったのでは?なんて脳内で勝手に想像してました。
と、ここまで書いたら高鬼さんが先代前世編とか書いてくれないかな……
ではスレ汚し失礼。

310 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 16:10:21 ID:dJxDSq8HO
>>309
ジュニア生誕おめでとうございます。
男の子なら一緒に特撮ライフですか?
くうぅ〜っ羨ましい!
女の子ならプリキュアかなぁw
又何か投下して下さい!フルスイングで吹っ飛ばすシーンを読みたいです。

311 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 16:37:32 ID:+DL64Tr50
      ☆ チン     マチクタビレタ〜
                        マチクタビレタ〜
       ☆ チン  〃 ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        ヽ ___\(\・∀・) <  凱鬼SSマダーーーーーーー?
            \_/⊂ ⊂_ )   \_____________
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /|
       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |
       |  猛士みかん |/

312 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 18:34:35 ID:ygRAffyGO
弾鬼SP作者様!!素晴らしい作品の投下心よりお待ちしております!!

313 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 20:59:59 ID:J14U3XtgO
自演うぜえ

314 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 21:38:18 ID:+DL64Tr50
ttp://avexnet.or.jp/rin/jp/topic/index.html

↑の和楽ユニットの公式サイトのディスコグラフィーに、「Flash back」があったぞ!
視聴できるので聴いてみよ!尺八の音が綺麗だった。

315 :名無しより愛をこめて:2006/12/20(水) 23:19:15 ID:E07WrWFj0
>>306
酒呑童子=シュタイン・ドッジ(日本に漂着したドイツ人)説、って素敵な与太話(褒め言葉)
がありましてね・・・・・いや、こっから先はSS作家さんにお願いしようw
無駄話スマソ

「戻る川」
おもしろかった。なんか久し振りにこういう形のSSを読んだ気がした。次回作も期待してます。

「見習いSS」
そうか、タミちゃんが・・・・小僧ッ子二人の今後が気になります。短編連載ガンバレ!

316 :名無しより愛をこめて:2006/12/21(木) 00:53:36 ID:IyNqlnlJO
そう言えばTHE MOMOTAROH(お尻ふりふりモンガモンガの)で
シュテンドルフって居ましたね!

317 :名無しより愛をこめて:2006/12/21(木) 23:55:17 ID:0JQjptFK0
ところで、Wikiの件はどうなった?

318 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 01:15:38 ID:yfb5M3Ll0
>>317
中四国さんが(投下はしないにしても)このスレの連載作者さんの一人であり続けてる以上、
全作品網羅のWikiを作るなら中四国さんだけハブるわけにはいかない。
しかし今、中四国SSを含めたWikiなんか作ろうものなら絶対噛み付いてくるのが何人かいそうだ。
そしたらまたスレが荒れることになる。
だからWikiを作るのは少なくとも今は思いとどまったほうがいいと思う。

319 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 09:09:23 ID:beTZUjkU0
>318
賛成。俺も急いで作らなくていいと思う。
古くからの作品は今までの用語集で、
新作についても過去ログ嫁で充分じゃない?
SSだけじゃなく、みんなの書き込みを過去ログを一から読んで行くのも楽しいよ。
裁鬼スレの始めの頃から居るけど、時々読み直して楽しんでる。

320 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 09:44:21 ID:qicqS7G70
俺も賛成。もうちょっと様子みていいんじゃない?
事件の事はムカついてるが、中四国SSもある方がいいとは思う。
ただ、用語集さんとは別に個人的に作ったって人が現れるのは可。
もちろん中四国が自分で自分の用語集を作るのも別に構わないと思うが、
wiki形式での用語集はしばらく待った方がいい。

321 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 18:48:49 ID:VRHEt/4Y0
とりあえずとっかかりだけ、と思ってオフィシャルの鬼の分だけ作ってみたんだが
まさか丁度こんな話になっていようとは……
でも作っちゃったものを捨てるのももったいないからとりあえず置いていく。
煮るなり焼くなり放置するなり好きにしてくれ。
http://www23.atwiki.jp/hibikiyougoshu/

322 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 19:05:20 ID:WNKCdY920
何もこのタイミングに投下しなくても…

323 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 19:12:45 ID:yfb5M3Ll0
つ、作っちゃったのか・・・。
タイミングは悪いけど作ってくれたんだからとりあえずGJと言うしかないな。

提案だけど、しばらくは各SSの内容は追加しないで、公式のデータだけみんなで埋めていく?

324 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 19:48:16 ID:N5MWI2+R0
う〜ん、公式を埋めていくのには賛成。
俺としては各SSの用語も見てみたいんだよね。
弾鬼SSとかは元の用語集にもあるから我慢できるけど、凱鬼〜見習いSSとかは載ってないしさ。

325 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 20:52:46 ID:yfb5M3Ll0
言いだしっぺがまず何かやらなきゃいけないなと思って安達明日夢、天美あきら、桐矢京介を埋めてみた。
鬼と同じページに入れてよかったのかはわからないけど。

326 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 23:05:21 ID:328yPcRg0
そうなるとSS分の用語は別の枠を作って書くべきなのか?

327 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 23:09:37 ID:p8+HjtRz0
記事に(〜SS)とかつけて区別すればいいんじゃね?

328 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 23:26:50 ID:HqATNBlFO
>>321=厨四国だろ。
騙されるなよみんな。

329 :名無しより愛をこめて:2006/12/22(金) 23:48:24 ID:N5MWI2+R0
>>328
この際、もう誰でもいいよ・・・。

330 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 00:16:46 ID:n5I+4+/V0
>>327
それはいいアイデアだと思う

で、一体これ何処から手を付けるんだ?
皆がてんでに色んなSSのことを書き始めたら収集つかなくならないか?

331 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 01:04:13 ID:k1/W0qd20
Wikiの件ですが、いろいろ考えた末、拙作の用語は掲載されなくても結構です。
それは何故かといいますと、拙作の方ではできるだけ裁鬼SSやその他諸々のSSと筋を通すように努力しているにも関わらず、
後半部分になると、てんやわんやの展開が待っていて、いざ用語集に纏めるとなると新参の方が見て混乱する可能性が高いので
ここは自ら響鬼スレ統一の用語集には身を引きたいと思います。
でも時間さえあればゆっくりと独立して作って行きたいと思いますので、お許しください。

乱文失礼しました。

332 :凱鬼メイン作者:2006/12/23(土) 01:05:07 ID:k1/W0qd20
名前を記入し忘れました・・・orz
>>331は私です。

333 :見習いメインストーリー:2006/12/23(土) 01:27:29 ID:E6rc7+Rr0
前回は>>300から

二十四之巻「踏出す鬼道」

「たちばな」近くの公園に立つ純友の手に持つ携帯電話から、必死な声が漏れていた。
『純友くん、純友くんっ!? 大丈夫なの? 大洋くんも一緒!?』
 電話の向こうのみどりの声は、これまで聞いたことのないくらい切羽詰まっていた。
 純友の方は、陰陽環の男がそばにいることで、不思議と落ち着いてきていた。そして、わりと
冷静な気持ちでみどりの慌てた声を聞き──にわかに、とても悪い事をした気がして言った。
「あ、その、ごめんなさい、心配かけて……」
『純友くん……?』
 みどりも、純友の様子に気づいて、ようやく落ち着いた声になった。
「今、大洋と一緒に近くの公園にいます。大丈夫ですから……」
『……よかったぁ〜……』
 心からほっとしたように、みどりは言った。
『すごく、心配したんだよ。──ねえ、いますぐ戻ってきて』
「え、あ、いや……大丈夫です、ホントに」
 何度かやり取りを繰り返した後、純友は「すみません」と何度も謝りながら電話を切った。
 ──あの「全国失踪者リストファイル」がある「たちばな」に、今は戻る気になれなかった。
 純友は大洋を振り返って言った。
「帰ろう、大洋」
 大洋は、地面に直に座り込んだまま無言でいたが、やがて立ち上がって陰陽環の男に言った。
「アンタ、鬼なんだろ?」
「……前はな」

334 :見習いメインストーリー:2006/12/23(土) 01:28:03 ID:E6rc7+Rr0
「おれを鬼にしてくれ」
「悪いな、俺はもう弟子を取る気はねえんだ」
「アンタのせいで、環っか探しにつき合わされたんだぞ」
 男は少し考えてから、言った。
「弟子にはしねえが、ちょいとばかり鍛えてやってもいいぞ。取りあえず俺の言う事をやってみろ」
 純友と大洋は男に連れられて、芝生が整えられた広い運動場に行った。
 男の指示で、二人は男の行う空手の型のような動きを真似て体を動かした。
 ゆっくりと空気を取り込み、吐き出しながら、腕や足をひらめかせ、体を回転させる。
 三〇分も体を動かした頃には、緩慢な動作しかしていないのに、二人とも呼吸が乱れていた。

 夕闇が迫り、遠くで野球をやっていた少年たちも帰った頃、純友は芝生の上に大の字に
なって倒れていた。大洋も、芝生の上にへたりこんでいた。休憩をはさみつつだったが、
筋力トレーニングやランニング、ダッシュを何セットも何時間も続けていた。
「準備運動で何バテてんだ、小僧ども」
「マジか、これで準備運動かよ……」
 大洋が息を切らしながら言った。純友は、疲れ果てて何も言えなかった。
「思い出すぜ。昔もこうやって、二人のガキに修行させたもんだ」
 そう言って、男は快活に笑った。
「……そん時ゃ、二人で切磋琢磨していたモンだが、そっちのお前はなあ……」
 呆れ顔で純友を見て言った。

335 :見習いメインストーリー:2006/12/23(土) 01:28:48 ID:E6rc7+Rr0
「とことん鍛えるのに向いてないというか、何というか──」
「……わかってますよ」
 仰向けのままぐったりとしていた純友が、涙を流しながら言った。
「橘さんのことを知って──あいつらを、この手でぶち殺してやりたいって思ったけど──
ぼくはホントにこういうのには向いてなくて……」
 しばらく黙ってから、純友は続けた。
「大洋……鬼になってくれ。頼む……!!」
 大粒の涙をこぼしながら、純友は絞り出すように言った。
「大洋! 鬼になってよ。なってくれよぉぉぉぉ……!」
 純友は、暗くなりつつなる空に顔を向けたまま叫んだ。
「ぼ──ぼく、『銀』になって、ぼくが誰にも負けない武器を造るから。
そうしたらきみがそれを使って、あいつらを──あいつらを倒してくれッ!」
 うなだれていた大洋は、ふらつきを抑えながら立ち上がって言った。
「ああ。なるぜ、鬼に。おれは鬼になる。誰が何と言おうと。たとえ無理だって言われようと。
──絶対にだ!」
 陰陽環の男に向き直る大洋。
「さあ、次は何をすればいい、オッサン」
 ぎらぎらとした目で睨みつけてくる大洋を見て、男はふっと笑った。
「組み手だ。どこからでも掛かって来い」
 言うと、男は腕を組んで待ち構えた。

336 :見習いメインストーリー:2006/12/23(土) 01:29:21 ID:E6rc7+Rr0
 大洋が殴り掛かっても、蹴り掛かっても、腕組みの姿勢で、紙一重で男は攻撃をかわし続けた。
やがて、全体重を掛けた攻撃をかわされ、大洋はまたしても芝生の上に倒れた。
「どうした。鬼になるんじゃなかったのか、小僧」
「うおおお!」
 叫びつつ、大洋は立ち上がった。

 数日して、純友と大洋は学校近くの警察から連絡があり、多美のことで話をすることになった。
携帯電話の通話記録などから多美と二人に交遊があったことがわかり、行き先に心当たりがないか、
訊きたいとのことだった。無論、魔化魍の犠牲になった可能性があるなどとは言えなかった。
 警察に、解決できる問題ではない。暗い気持ちのまま警察署を出た二人は、並んで駅へと向かった。
「いいか」
 純友の方を見ることもなく、大洋は言った。
「おまえが『銀』になって、誰にも負けねえ武器を造る。おれは『角』になって、鬼として、お前の
造った武器を使ってやつらを倒す」
「うん」
 純友も、前を見続けたまま答えた。
「それは、おれと一緒におまえも戦っていることになるんだ。おれたち二人で戦って、あいつらを
倒してやろうぜ」
 少年たちは復讐を心に誓い、戦いへの道を踏み出した。

二十四之巻「踏出す鬼道」了

二之章「傷」完


337 :見習いメインストーリー:2006/12/23(土) 01:30:13 ID:E6rc7+Rr0
次回予告

 復讐を胸に秘めた少年たちの、黄昏い戦いが始まる──
 一人は最強の武器を造るべく、師のもとで学び……
 一人は鬼となるべく、ひたすらその身を鍛え続け……
 彼らは憎しみの闇へと堕ちてゆく。

見習いメインストーリー 三之章「天」 

良いお年を。


338 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 11:14:16 ID:1xUtbnIbO
>>331
お言葉ですが、用語集の役割を考えると、てんやわんやの展開はむしろ望むところだと思います。

339 :凱鬼メイン作者:2006/12/23(土) 12:23:30 ID:k1/W0qd20
>>338
まぁ、みなさんが了承のうえでやってくれるなら、構いませんが・・・。

340 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 12:27:04 ID:n5I+4+/V0
作者さんご本人が「入れないで」と望まれるのなら最大限尊重すべきだけど

341 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 20:29:29 ID:Bacu2F7RO
VIPの連中にとっては中四国氏の作品を純粋に応援するファンすら叩きの対象みたいだな。
彼らはきっと、よってたかって袋叩きにするサンドバックとして中四国氏を陥れたかっただけで、実はあのやる気のない落書きの無断使用なんてはなから興味ないんだろう。
中四国氏、卑劣な彼らやこのスレに潜り込んだ工作員に屈せずこれからも頑張ってください。
応援しています。

342 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 20:47:03 ID:7HMJS8p4O
>>341
VIPPER乙。
煽りなら、もっと上手にやりなよ。

343 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 20:56:49 ID:n5I+4+/V0
>>341
どこまで本気なのか知らないけどそういう書き込みがかえって中四国作者さんの迷惑になるってわからないのかな

344 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 21:01:28 ID:WOiqCIv20
>>343
わかってるから書いてるんだよ。
と、言うわけで、安い餌に釣られるのは俺で打ち止め。



345 :名無しより愛をこめて:2006/12/23(土) 23:48:23 ID:EZlLogl/O
自演乙

346 :高鬼SS作者:2006/12/24(日) 01:57:48 ID:lCgBFdBv0
やっと用事が一段落ついた…。まだ多少残ってるけど。

というわけでおそらくこれが年内最後の投下になります。
軽いノリのドタバタものなら年内に書き上げて投下出来るかもですが、誰も読みたくないだろうし。
御用とお急ぎでない方は時間潰しにでも読んでみて下さい。
それではどうぞ。

>先代前世編
「劇場版よろしく戦国時代モノでも書いてみようかなぁ」
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
まあ下手な事は言えませんが、もし書くなら時代設定は変わると思います。

347 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 01:59:28 ID:lCgBFdBv0
1977年、霜月。
「つまり……我々に潜入捜査に行けと?」
あかねに対しコウキが問う。
総本部の研究室にはあかねとコウキ、そしてイッキの姿があった。
少し前に研究室へと呼び出しを受けた二人は、そこであかねから今回の任務についての説明を受けていた。
何でも、京都のとある小学校で不穏な噂が流れているのだという。校内で児童が行方不明になったり、怪しい人物が目撃されたりしているとか……。
だからコウキ達に潜入捜査の任務が命じられたのだ。
「しかし我々よりも適任の人物がいるのでは……?」
「確かに子ども受けの良いニシキくんや柔和なイブキくん、何だかんだで面倒見の良いバキくん辺りが適任なんだろうけど、シフトの関係で長期間空ける事が出来ないのよ」
潜入捜査である以上、ある程度時間は掛かると見るべきだろう。だから京都方面担当のイッキと、総本部付きの為シフトに無理がきくコウキが選ばれたのだ。
「既に手は回してあるから安心して行ってきなさい」
そう言うとあかねは二人に向かって笑顔を見せた。

翌日、二人は早速件の小学校を訪れた。表向きイッキは病気療養中の教師の代理、つまりは教師として潜入捜査に当たる事になっている。一方コウキは……。
「……納得がいかん」
コウキの役は用務員だった。てっきり教壇に立てるものだと思っていただけにこの配役は不満で仕方がなかった。
「まあまあ。コウキさん手先が器用ですから……」
「だったら理科の教師なり図工の教師なりをやるのが筋というものだろう。今からでも遅くない。交代したまえ」
「駄目ですよ。もう僕の名前と顔で登録されていますから……。我慢して下さいよ」
それでも納得がいかず未だぶつぶつと文句を言い続けるコウキを尻目に、さっさとその場から立ち去ろうとするイッキ。
コウキが教師役を外されたのは、おそらく過度の体罰を児童に課す惧れがあったからだろう。二年前、コウキに激しく尻を叩かれた時の事を思い出し、イッキは身震いした。
こうして二人の奇妙な潜入捜査が始まったのであった。

348 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:02:18 ID:lCgBFdBv0
潜入捜査開始二日目にして、早くも動きがあった。その日の晩、二人は宿直室で互いに得た情報を交換していたのだが……。
「……私からの報告は以上だ。多少の差異はあれど、こちらへ来る前にあかねさんから聞いたものと何一つ変わらない」
つまり、校内でどこぞのクラスの誰それ君が行方不明になったとか、怪しい人物を見たとか、あとは校内で不気味な声を聞いたとかそんな話である。
「……それで君の方はどうかね?」
イッキに尋ねるが、当のイッキは何処かそわそわしている。疑問に思ったコウキが問い質してみると……。
「……実は今日の放課後、校内で姫と遭遇したんです」
「そうか!これで噂の裏付けが取れたな!あとは……」
「あの、それがですね……」
暫く言い難そうにしていたイッキだったが、意を決して話し始めた。
「何!?目撃されただと!?」
姫と戦闘している所を、偶々何人かの児童に目撃されたと言うのだ。
「鬼の姿を目撃されたのか!?」
「いえ、変身はしていなかったのですが……」
相手が妖姫に変身しなかったので、イッキも人の姿のままで戦っていた。鉄扇子を武器に激しい攻防戦を繰り広げていたのだが……。
「姫に逃げられてしまい、後を追おうとしたら……」
視線に気付いたのだと言う。
視線の先には、数名の児童が文字通り目を点にして立っていた。無理もない。イッキも姫も、人の姿とは言え常人離れした身体能力で戦っていたのだから。
「迂濶だったな。で、どうしたのかね?」
普通はこの事を忘れるか猛士に加入するかの二択を突き付ける事で対処する。しかし相手が小学生の場合話は別だ。忘れるよう脅しを掛ける事も猛士の仕事に従事させる事も出来ない。

349 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:03:24 ID:lCgBFdBv0
「案の定僕が何者か恐る恐る尋ねてきました。それで、僕は……」
「何と答えた?よもや本当の事を教えたわけではあるまい」
「つい……咄嗟に『僕は仮面ライダーだ』と答えちゃいました」
「何!?」
驚くコウキ。言うに事欠いて「仮面ライダー」とは。
「仮面ライダー」は制作局である毎日放送のお膝元、ここ関西では高視聴率を叩き出しており、その名を知らない小学生はいない程の番組だ。
「……それで信じたのかね?」
イッキが頷く。
実際に常人離れした戦いを目の当たりにしたのだ。低学年の子でなくともイッキの言葉を否定する事は出来ないだろう。
「ただでさえ僕はバイクに乗っていますから、それもあるのではないかと……」
いつもの如くイッキはバイクでここにやって来ている。
「その場はそれで収まったのですが……」
「まあ自分の蒔いた種だ。頑張りたまえ」
力無く頷くとイッキは夜の校舎の見回りに向かっていった。

翌日、コウキの予想通り学校内は騒がしい事になっていた。瞬く間に噂が全校児童の間を駆け巡り、休み時間になるとイッキの周りには物凄い数の人だかりが出来た。
「君達!もうすぐ次の授業が始まります。早く戻りなさい!」
何を言おうが焼け石に水である。皆口々に「変身しろ」だの「ベルトを見せて」だの叫んでいる。
今まで怪談めいた噂ばかりで誰もが気が滅入っていた所に仮面ライダー登場の噂である。この騒ぎもある意味仕方の無い事だろう。その様子を傍観しながらそんな事を思うコウキ。
「コウキさん、助けて下さい!」
イッキがそう叫ぶと同時に、児童達の視線が一斉にコウキの方へと向けられた。
「あの用務員さんも仮面ライダーなの?」
「滝みたいなもんじゃないの?」
「捕まえろぉ!」
わーっと大声を上げながら人だかりの大半がコウキに向かって突撃してきた。血相を変えて逃げ出すコウキ。こういう時の子ども達の団結力や爆発力程怖いものは無い。
「イッキめ、私にまで累を及ぼしおって!後で覚えていろ!」
追い掛けっこは教師達が止めに入るまで続けられた。

350 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:05:38 ID:lCgBFdBv0
校内で二人に落ち着ける場所は無くなった。何処で何をしていようが必ずその傍には何名かの子ども達がいる。授業をさぼってまで付け回してくる好奇心旺盛な子もいる。魔化魍の探索など出来るわけがない。
結局、本日の探索は門が閉められて全ての児童が帰ってから行われる事になった。
放課後、コウキ達は屋上で打ち合わせをしていた。
「あかねさんに定時連絡を入れたら、近いうちに何名かが陣中見舞いに来てくれるそうだ」
「……いっそその際に任務を交代してもらいたいです。いえ、僕が悪いという事は重々承知していますが……」
もう授業にならないとイッキがぼやく。
「私だって、魔化魍の探索はおろか用務員としての仕事もままならん。これでは……」
と、校舎内から明らかに悲鳴が響いたのを二人の鍛えられた聴力が捉えた。
悲鳴が聞こえた方へと駆けていくコウキとイッキ。そこには男女合わせて数名の児童と、彼等に対峙する姫の姿があった。
子ども達をイッキに任せ、姫にそのまま体当たりをお見舞いするコウキ。邪魔が入った事で逃げていく姫。
「待て!」
コウキは姫の後を追って校舎の外へと飛び出していった。
暫く追い掛けていると、姫がこちらを向いて立っているのが視野に入った。警戒し、少し走る速度を落として姫に近寄るコウキ。
と、コウキの脇から童子が跳び掛かってきた。それを合図に姫も襲い掛かってくる。二対一の戦いが始まった。
素手で格闘を続けるコウキだったが次第に劣勢となり、とうとう変身のため音叉を取り出した。
だが、ふいに複数の視線を感じてそちらの方へ振り返るコウキ。見るとそこには目を輝かせながらコウキの戦いを見ている先程の子ども達と、申し訳なさそうにしているイッキの姿があった。

351 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:07:32 ID:lCgBFdBv0
「変身しろー!」
男の子がコウキに向かって叫ぶ。そして巻き起こる変身コール。
人前で変身するなど査問会ものだ。しかし童子と姫が空気を読んで撤退してくれる筈もない。
それどころか全員の目の前で怪童子と妖姫に変身してしまった。子ども達から悲鳴が上がる。
ここでコウキはふと考えた。子ども達は自分を「鬼」ではなく「仮面ライダー」として認識している。つまり目の前で変身しても「鬼」を見られた事にはならないのではないか。
詭弁には違いないのだが、ごり押しすれば通らない理屈でもないだろう。
しかしその為には……。
(変身の掛け声と……確かポーズが必要なんだったな)
ちらりと子ども達の方を見やるコウキ。子ども達は変身を今や遅しとわくわくしながら待っている。
「……イッキ、お前もやれ」
ドスの利いた声でそう告げるコウキ。イッキは仕方無く子ども達に下がるよう言うと音叉を片手に前に出た。
「あれ、ベルトは?」
「ライダーマンみたいなもんじゃないの?」
「それって弱いんでしょ?大丈夫かな……」
子ども達がそんな事を話しているとは露知らず、並び立つコウキとイッキ。
まずイッキが即興で変身ポーズを取り、「変身!」の掛け声と共に鳴らした音叉を額に掲げた。
彼の体を直撃した落雷を払い、中から壱鬼が姿を現す。
「天を裂き地を震わし悪を討つ雷撃の戦士!見よ、仮面ライダー壱鬼!」
これまた即興で作った口上と共に決めポーズを取る壱鬼。しかしこの男、やけにノリノリである。

352 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:08:07 ID:lCgBFdBv0
落雷という派手な演出付きだったせいか、子ども達から拍手が起こる。
「仮面ライダーというより怪人じゃね?」
「でもアマゾンだってあんなもんでしょ?」
「頑張って、仮面ライダー!」
子ども達の声援を受けながら怪童子と妖姫に向かっていく壱鬼。次はコウキの番だ。
コウキはとりあえずさっきイッキがやっていたポーズを真似てみた。しかし子ども達から「同じじゃねえか!」と野次が飛んだ。
「それが目上の者に対する口の利き方か!」
大人気無く怒鳴り返すと、音叉を鳴らして変身するコウキ。
「仮面ライダー高鬼!……これで良いんだよな」
炎を破って出てくるという演出に、やはり子ども達から歓声が上がった。
だが。
「……マフラーは?」
一人の子どもが疑問を口にした。
「そういえばマフラーが無いぞ」
「仮面ライダーなのに?」
ひそひそと話し合う子ども達。
「偽ライダーだ!」
誰か一人がそう叫び、全員「わー!」と叫びながら逃げていってしまった。つまり高鬼達を仮面ライダーの偽者と判断したのである。
「おい待て!何故逃げる!?」
「高鬼さん、今はこいつらを!」
後味の悪いものを感じながらも、高鬼は壱鬼と共に怪童子と妖姫を倒したのであった。

353 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:09:33 ID:lCgBFdBv0
その晩、宿直室でコウキとイッキは話し合っていた。
間違い無く明日には全校に今日の事が広まっているだろう。そうなると潜入捜査なんかやっている場合ではなくなる。従って今夜中に決着を付ける必要があった。
育て親を撃退した以上、何らかの動きを見せる筈だ。既に校内の至る所に式神を放ってある。後は式神が戻ってくるのを待つだけだ。
日付が変わる直前、一枚の式神が当たりを見つけて帰ってきた。二人は一旦校舎の外に出て変身すると、魔化魍の所へと向かっていった。

「しかしこんな所に潜んでいるなんて、どんな魔化魍なのでしょうか?」
壱鬼が高鬼に尋ねる。確かに、本来魔化魍とは自然の中に湧くものだ。こんな無機質な小学校の校舎に湧くとは一体どんな魔化魍なのか高鬼も気になっていた。
と、何者かに見られている気配を感じた。立ち止まり辺りを見回すも猫の子一匹見当たらない。だが気配だけは感じられる。
「上です!」
壱鬼が天井を指差して叫んだ。
天井には、巨大な老人の顔が現れ大きな口を開けてこちらを威嚇していた。
「仮面ライダー壱鬼!」
「馬鹿者!もう名乗らなくていいんだ!」
天井の巨大な顔に向かって名乗りを上げる壱鬼を注意し、音撃棒・大明神を取り出し構える高鬼。しかし顔は一瞬のうちに消え去ってしまった。
再び校舎内を夜の静寂が包んだ。

354 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:12:19 ID:lCgBFdBv0
翌日、二人は授業がある間は学校に姿を現さなかった。予想通り朝から全学年が大騒ぎになっていた。ここで出ていったら、間違いなく暴動めいた事が起こるだろう。それ故この判断は正しかったと言える。
そして夜。再び校内の捜索を開始する二人。噂や昨日の出来事を考慮した結果、今回の魔化魍は黄昏時から夜明けまでの間に姿を見せるようだ。
地響きがした。現れたのだろうか。変身し、音のした方へと駆けていく。
そして。
「出たな。今度こそ清めてやる」
再び謎の魔化魍と相対する高鬼と壱鬼。昨夜とは異なり今回は壁から現れている。
「ここは僕が!」
壱鬼が壁の顔に向かって電撃を放った。しかし直撃する瞬間、顔は壁の中に引っ込んでしまった。そして次に反対の壁から現れる。
「ならば次は私が」
「駄目です!下手に炎を使って火事にでもなったらどうするのですか!?」
これ以上騒ぎを大きくする事は絶対に避けなければならない。壱鬼も普段より電撃の威力を抑えている。
壁の顔は口から長く太い舌を伸ばして襲い掛かってきた。回避するも反撃を行う前に顔は再び壁の中に引っ込んでしまう。
「こいつ、校舎そのものと一体化しているのか?」
壱鬼が呟く。
「だったら逆に厄介だぞ。こんな大きなものを二人きりで清めるのは無理だ」
例えば高鬼と壱鬼がそれぞれ校舎の端に立って音撃鼓を貼り付け、鳴らすとする。しかしこの大きな校舎の隅々までに音の波が伝わるとは到底思えない。
「せめてあと二人太鼓の鬼が居れば……」
四方にそれぞれ音撃鼓を貼り付け、計四人で同時に打ち鳴らせば勝機はある。
と、その時。
「音撃鼓を貼って下さい。今すぐ!」
驚いて声の主の方を振り向くと、そこにはイブキが立っていた。
「どうしてここに……」
「既に刃鬼さんと怒鬼さんが準備をしています。あと三分後には音撃打を行う手筈になっています!」
「壱鬼!」
高鬼に言われ、壱鬼が校舎の端に向かい弾丸の様に廊下を駆けていく。高鬼もまた、反対の廊下の端まで行くと音撃鼓・紅蓮を貼り付けた。

355 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:12:58 ID:lCgBFdBv0
「時間です!」
「行くぞ!音撃打・炎舞灰塵!」
打ち鳴らされる音撃打。同時に四ヶ所で鳴らされた清めの音が校舎を包み込んだ。
校舎がまるで地震にでも遭ったかのように大きく揺れた。四人の鬼が打ち鳴らす太鼓の振動故か、はたまた魔化魍が苦しんでいるためか。
熱が入ったためか、「紅蓮」を打ち鳴らす動作がより激しくなってくる高鬼。
どれだけの時間を叩き続けただろう。ふいに絶叫が校舎中に響き渡った。そして一際大きく校舎が揺れた。
「……終わったのか?」
「おそらく……」
顔の変身を解除すると、コウキは何故ここに居るのかをイブキに向かって問い詰めた。
「陣中見舞いに来たんです。慣れない生活に気が滅入ってるんじゃないかと思って、なるべく大勢で行こうと……」
いつものメンバーにそう提案した所、シフトの都合で全員が集まれるのは今夜しかなかったのだと言う。
「確かにあかねさんから近いうちに誰かが陣中見舞いに来ると聞いていたが、昨日の事だぞ」
まさか翌日の晩に来るとは予想出来なかった。
「しかしやけに対応が早かったな」
それについても説明するイブキ。なんと魔化魍は最初にこの小学校にやって来たばかりのイブキ達の前に現れたのだという。あの時の地響きがそうだったのか……。
「僕達は人数が人数ですから魔化魍もすぐに撤退して……」
そこをコウキ達に見つかったのだと思われる。
「その際、あの魔化魍が校舎と一体化している事が分かったので……」
そこでバキとドキの二人が他の鬼を連れて音撃の準備に向かい、イブキはおそらく交戦中であろうコウキ達の下へその事を知らせに来たのだ。
「実に都合の良い話ではあるが、助かったよ。礼を言う」
長期になる事を覚悟していたのに、僅か四日で終わらせてしまった。だがやっと終わったという安堵感こそあれ、拍子抜けしたという気持ちは全く起こらなかった。
と、廊下の奥から顔の変身を解除したイッキ、バキ、ドキと共にニシキ、アカツキ、セイキがやって来た。笑顔でこちらに手を振ってくるイッキとニシキ。
コウキもまた、素直に笑顔で手を振り返すのであった。

356 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:16:01 ID:lCgBFdBv0
こうしてコウキとイッキの潜入捜査は終了した。そして当然ながら子ども達の前で堂々と変身した事について言及される事となった。
だが、始末書を書かされちょっとした罰を与えられたものの、危惧していた査問会にかけられる事は無かった。それは何故か。
まず相手が子どもだったというのがある。子どもの証言は大人のそれと比べると信憑性に欠けるため、仮に周りの大人に話したとしても戯言として処理されるであろうとの判断である。
そしてもう一つ。イッキが咄嗟に吐いた「仮面ライダー」という出任せを、総本部長の和泉一流が気に入ってしまったのである。挙句、今度から子どもに姿を目撃された際には「仮面ライダー」を名乗るよう関西支部の全鬼に通達が出されてしまったのだ。
当然ながら難色を示す者もいたが、大多数の者は結構ノリノリだった。
ある日、コウキが関西支部を訪れるとニシキとセイキ、ドキがこんな会話をしていた。
「どうです?仮面ライダーを意識して巻いてみたんですけど」
そう言いながら首に巻いたオレンジ色のスカーフをセイキ達に自慢するニシキ。
「お前バイクに乗ってないだろ」
「乗ってますって!石川の後ろにやけど……。そう言うセイキさんだって移動は車のくせに」
言い争いを始める二人をドキが冷ややかに眺めている。と。
「ドキはいいよな。二本角だからシルエットだけなら仮面ライダーに見えるもんな」
急に話の矛先が自分に向けられて多少なりとも狼唄するドキ。
「あー、俺もバイクの免許取ろうかな」
そうニシキが呟くとセイキも。
「じゃあ俺は蹴り技でも特訓するかな。バキさんやイッキは蹴り技を持ってるもんな」
皆が皆こういう風だという訳ではないが、まあ概ねこんな感じである。
ちなみにコウキとイッキに課せられた罰というのは、これから暫くの間中国支部と関西支部のシフトを掛け持ちするという実に面倒なものであった。

357 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:16:40 ID:lCgBFdBv0
さて、小学校に現れた魔化魍についてであるが、あかねは一冊の本を取り出すとコウキに説明を始めた。
「この本は『稲生物怪録』と言って、寛延二年に今の広島県で起こった怪異について記してあるんだけど……」
そう言ってとある頁を開いてコウキに見せるあかね。そこには建物の天井から大きな老婆の顔が現れている挿絵が描かれていた。間違いない、あの魔化魍と同じものだ。
あかねは念のため中国支部に確認を取ったと言う。
「この本の記述の信憑性は高いみたいね。事実、中国支部には当時比熊山で異変が起きた事についての記録が残っているみたい」
向こうの「金」の人にお礼を言っておいてね、とあかねは言った。
「それで、この魔化魍は何と言う名前だったのです?」
コウキの問いにあかねは困りながら答えた。
「それがね……名前が無いのよ」
「と、言いますと?」
「この魔化魍、出現が確認されたのはこれで二度目なのよ。しかも最初は猛士の与り知らぬ所で現れている。だから名前が付けられてないのよねぇ……」
頁に目を落としながらそう告げるあかね。
名前というのはある種の呪詛であるという考えがある。忌み名というやつだ。だから鬼は自分の本名を隠しコードネームを名乗る。
名前の無い魔化魍。それこそ正に真の化け物と言っても過言ではないのかもしれない。
「そんなものまで湧くようになったのですね……」
「いつまで続くんだろうね……」
二人は本に描かれた化け物の姿をただ静かに眺め続けるのであった。

358 :仮面ライダー高鬼「呼ばれる名前」:2006/12/24(日) 02:17:23 ID:lCgBFdBv0
余談だが、「仮面ライダー」という呼称は関西支部のみの静かなブームとして終わる事は無かった。大宴会の席上でとある関西支部の鬼が他の支部の鬼にこの件を面白可笑しく話して聞かせたのだが、それが瞬く間に全支部に広まってしまったのである。
最初に食い付いてきたのは、北陸支部の鬼小島や中国支部の東のような「面白ければ何でも有り」的な考え方の支部長達だった。
更に九州支部のヤミツキや四国支部のサカズキのようにノリの良い鬼達が自ら名乗り始めた。
結果、いつの間にか全国の鬼が近くに子どもが居ようが居まいが「仮面ライダー」を名乗るようになった。
このブームは暫くの間続き、その間子ども達を中心に各地で「仮面ライダーを見た」という都市伝説が流れたとか流れなかったとか……。 了

359 :名無しより愛をこめて:2006/12/24(日) 14:47:14 ID:Y4t/CWos0
用語集どうする?
元の用語集に収録されてる作品だけとりあえず埋めてみて、それからぼちぼち続きを埋めていくか?
それとも元のに収録されてない作品から優先して埋めていくか?

360 :名無しより愛をこめて:2006/12/24(日) 18:06:36 ID:eI2+hRU6O
原作の鬼を主役にしたSSから埋めてくのに一票
ここは元々裁鬼スレなんだから裁鬼SSからやりたいよ

361 :名無しより愛をこめて:2006/12/25(月) 09:37:35 ID:8gi058Gy0
>>360
そうだね。裁鬼からいくのがいいんじゃない。
時期的にはエイキもダンキも同じだけど、完結してるからやりやすいんじゃない。


362 :名無しより愛をこめて:2006/12/25(月) 09:51:45 ID:y7gwOTJk0
今、新しい用語集は元の用語集に比べて、項目ひとつにつき説明がかなり簡潔なわけだけど、
これは新しい用語集はそういうスタンス(あまり冗長に説明しない)でいくの?
それともこれからどんどん補足して元の用語集みたいにしていくの?

363 :名無しより愛をこめて:2006/12/25(月) 10:44:26 ID:1Fu7IOyIO
元の用語集の解説を転載できたらそれが一番いいんだよな。
用語集サイトの人が駄目と言ったら駄目だけど。

364 :名無しより愛をこめて:2006/12/25(月) 12:28:53 ID:8gi058Gy0
そういえば用語集さんを無視してしまったな。
すみませんが見ていたらちょっと意見をいただけますか?

安易に転載してしまうと現用語集が洋ナシになってしまう可能性がある。
それは先駆者としてやってくれた用語集さんに失礼だと思うが、
かなり前の中四国の件もあったから、用語集さん一人に負担をかけるのもどうかと思う。

365 :名無しより愛をこめて:2006/12/25(月) 23:28:35 ID:4YskTSy+0
           __
        , ‐' ´   ``‐、             / ̄:三}
.     /,. -─‐- 、.   ヽ        /   ,.=j
 _,.:_'______ヽ、 .!       ./   _,ノ
  `‐、{ へ  '゙⌒ `!~ヽ. !     /{.  /
    `! し゚  ( ゚j `v‐冫   , '::::::::ヽ、/     SS投下されてるけど無視して用語集の話しようぜ!
.    {.l   '⌒      ゙ 6',!   / :::::::::::::::/ __
.     〈  < ´ ̄,フ  .ノー'_ , ‐'´::::::::::::::;/ (_ノ)‐-、
.      ヽ.、 ` ‐", ‐´‐:ラ ':::::::::::::::: ;∠.   ヽ_}  ゙ヽ
        ,.r` "´  /:::::::::::::::::::ィ´  `ゝ  !、  /
     /       / :::::::::::::::: ; '´   /´\ /   r'\
.     i      ! ::::::::::::::/ 墨 | .!::::::::/ヽ、.._!ヽ. ヽ、
     {      {:::::::::::;:イ /   ‖i:::::::/:::::::::::::/  \
.      ヽ       ヽ,.ァ‐'´ /ヽ 二 ,/`ヽ、::::::::: /    ヽ

366 :名無しより愛をこめて:2006/12/26(火) 11:00:21 ID:AHJ5VUHV0
解説の中で、特定のエピソードに触れるときは、どのSSの第何話からの出典なのか書いてはどうだろうか?
例えばこんな感じ。

また子供たちが小さいうちは自分が鬼であることを秘密にしていたのだが、
裁鬼が修羅を使い切って人間の姿に戻れなくなったときに石割とバンキによって明かされた。
(裁鬼SS三十九之巻参照)

そのSSを読んでなかった人も、用語集を見て「面白そうだ、読んでみよう」と思うかもしれない。

367 :用語集サイト:2006/12/27(水) 00:56:01 ID:+ntiEHGA0
ええと、いい加減意見を言ったほうがいいのかな?
一応サイトにも書いたのですが、俺としては現在の用語集にある裁鬼、裁鬼最終章、鋭鬼、弾鬼、剛鬼、
高鬼、先代、DA年中行事さんの作品はどれほど長期連載になっても作り続けたいと思っています。
狂鬼さんについても既に完結しているし短いうえ、鬼投術の項目つながりで作成に着手しています。

もちろん他の方が新しく用語集を作ることは自由です。というかむしろ歓迎します。
俺が手をつけられない作品もありますし、いろいろな工夫の意見も出ていることですし。
ただ、現在俺が作成した用語集を丸ごと転載してそこから積み重ねるという手法をとる場合は
もう俺の手を離れているので、用語集と追加用のメモファイルと「用語集サイト」の名を譲り(或いは下ろし)
一読者に戻らせていただきます。

ここからは用語集サイト管理人としてではない個人的な意見ですが、効率で言えば俺が上記の作品の用語集を作り続け、
新しく作ろうという方にはそれ以外の作品を担当していただくというのがいいのではないか、と思います。

368 :名無しより愛をこめて:2006/12/27(水) 01:07:17 ID:l0U22ZT80
>>367
コメントありがとうございます。

皆に提案だけど、Wikiの方は「用語集に載っていない作品の用語集」にしないか?
解説の書き方とかは極力用語集さんのを真似て、「用語集の別冊」的な扱いにする。
皆はどう思うかと、あと、Wikiを作った人の意見もお聞きしたいです。

369 :名無しより愛をこめて:2006/12/27(水) 03:01:24 ID:75zgeE3cO
携帯読者です。
正直wiki等に関してはスキルが無く何も言えません。
但し、用語集で訂正や作者さんの意図しない解釈は
作者さんに投下の際、冒頭の続きは>>○○○からの部分で
注釈して貰うってどうですかね?
出展等の参考文献も興味有りますのでその辺りも知りたいです。

370 :名無しより愛をこめて:2006/12/27(水) 03:18:46 ID:EAiBi6YK0
用語集サイトさんお疲れ様です。
この件については、用語集サイトさんのお話を聞いてからでないとと思い、
ずっとロムっていました(ただの読み手です)。

俺的には、用語集サイトさんが纏めてくださったコンテンツを
ずっと楽しませて頂いた読者として、やるんだったら368の意見を支持したいと思います。
正直言って、新しい用語集を作るとしても、用語集サイトの文を丸々転載っていうのは、
苦労してコンテンツを作ってこられたであろう用語集サイトさんを見て来た読者として抵抗があります。
元からあるコンテンツに付与していく形で、新規のデータを構築していく方が効率もいいと思いますし…
どうでしょうか?

371 :名無しより愛をこめて:2006/12/27(水) 21:42:39 ID:On16Sc2o0
>>367_370
それでおk。

372 :名無しより愛をこめて:2006/12/28(木) 14:22:12 ID:NRX/mf2a0
俺が作ったWikiは皆で煮るなり焼くなり好きにしてくれたらいいから、
ひとまず話の流れに従ってトップページを書き換えてきた。
http://www23.atwiki.jp/hibikiyougoshu/

373 :名無しより愛をこめて:2006/12/29(金) 13:45:33 ID:LcktLOLz0
住人どうしの会話の中で出た考察なんかも用語集に入れていけたら面白いと思う。
俺は音撃武器の名前の考察をしてみた。ちょっとした暇潰しだと思ってくれ。

武器の名前には「烈」がつくのがスタンダードだと思っている人もいるかもしれない。
だけどオフィシャルの音撃武器をずらっと並べてみると、

烈火 那智黒 緑勝 剛力 烈風 嵐 台風 烈雷 烈斬 閻魔 刀弦響 鬼太樂

意外なことに「烈」が付く武器はそんなにないことがわかる。
じゃ「烈」って何なのか?
ここでヒントになるのが戦国時代の音撃武器。

烈火 烈風 烈雷 烈翠 烈凍 烈盤 烈節 烈空

これでもか、とばかりに「烈」のオンパレード。
「烈」というのは戦国時代の頃に大流行した名前なんじゃなかろうか。
現代でも一部の鬼はそれを伝統・王道として踏襲している。
たとえるなら船の名前に「丸」を付けるかのように。
そう思って見てみると、「烈」の付く武器を使っている鬼は名家の出身だったり、
伝統とかを大事にしそうな人ばかりな気がしてくる。
猛士のトップ、宗家の威吹鬼の音撃管は「烈風」。
東北の名家の出身、吹雪鬼の音撃管は「烈氷」。
宗家を支える四柱家、光厳寺の荒鬼は「烈旋」。
出雲に十七代続く名家、双柳寺の蒼鬼は「烈光」。
「烈雷」は代々受け継がれてきた希代の名音撃弦。
「烈斬」は現代の最新技術で作られた特別な音撃弦。
「烈火」の響鬼、「烈凱」の凱鬼、「烈光」の一撃鬼も伝統を重んじそうな人たちだ。
(一撃鬼の場合は本人がというより師匠の裁鬼がそんな感じ)
明治時代には蒼鬼が「烈雅」、景鬼が「烈迅」を使っている。

374 :名無しより愛をこめて:2006/12/31(日) 21:02:11 ID:0RAUu5F0O
保守

375 :名無しより愛をこめて:2006/12/31(日) 23:58:43 ID:P6PBzJb40
今年ももう終わりですね
来年も皆さんのSSを楽しみにしています


中四国さんもはやく帰ってきてね

376 :名無しより愛をこめて:2007/01/01(月) 10:03:05 ID:ODulI2+20
>>375
自演乙。


377 :名無しより愛をこめて:2007/01/01(月) 13:44:40 ID:OO9ojbr60
>>375

空気嫁ヴォケ

378 :名無しより愛をこめて:2007/01/01(月) 15:37:14 ID:oSlIoLyRO
>>375
中四国の動きが無くてあっちが盛り上がらないからって、いちいち自分たちで火種を蒔きに来るなよ糞VIPPER。

379 :名無しより愛をこめて:2007/01/01(月) 15:46:38 ID:3iJ6Qn/LO
お前がビッパーだろ
俺ら住人はお前らにこそ消えてほしいんだよ
わかんねえのかボケが


380 : 【大吉】 【1806円】 :2007/01/01(月) 15:50:38 ID:u9tTFhzwO
テレビ視ててふと思う。

小泉孝太郎かぁ〜。
布施明の元で修行して二代目高鬼ってありだよな〜


静かな正月です

381 : 【大凶】 【519円】 :2007/01/01(月) 17:40:07 ID:iS5I8RqQ0
あけましておめでとう!今年もよろしく!

>380
言われてみれば、鬼っぽい名前だよね<小泉孝太郎
ヒビキさんやイブキ、トドロキが現世に転生しているのなら、
タケシもまた転生して、今度こそヒビキさんの下で鬼になれるって世界もあったらいいのにな。

382 :名無しより愛をこめて:2007/01/01(月) 19:05:01 ID:bOlOMe9y0
>381大凶カワイソス...(´・ω・`) デモオメデトス...

安倍麻美の名前も鬼っぽいじょ。

    _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 転生!転生!
  (  ⊂彡
   |   | 
   し ⌒J

383 : 【大吉】 【1181円】 :2007/01/01(月) 19:18:08 ID:u9tTFhzwO
>>381
いいねタケシの再来。
明日夢の父親が再婚した先の年上のタケシとか?w
ぎこちない二人だけど響鬼バイク開発してるとか。
急襲受けて初めて明日夢を呼び捨て。
「明日夢っ!響鬼さんに届けろ!」
泣きながら響鬼バイクを走らす明日夢。

なんてな

384 :名無しより愛をこめて:2007/01/02(火) 09:03:57 ID:p1QKiF6N0
>>373
おもしろいね。それもいいけど、作った人の名前なんかどうだろう?
「烈」は烈霊院の住職が作ったとか、緑勝・那智黒は虹色宮の神主が作ったとか。
現代でもゼロから作る時は一度、そこに奉納するしきたりがあるとか、
または現存はしていなく、メンテや開発には実は流派があるとか。

385 :名無しより愛をこめて:2007/01/02(火) 21:37:42 ID:vGrtTkvO0
烈についてはどっちもアリかな、と俺は思う。
戦国のときの流行というのも充分ありえるし、または劇場版に出てきた鬼たちの武器は製作者が全て同じで、
そうすると全国に散り散りであってもそれぞれが顔見知りというのは説明できる。

386 :Wiki作った奴:2007/01/02(火) 22:06:14 ID:InJvKe/R0
>>373
>>384
>>385
などの面白い考察を掲載するためのページ「読者の部屋」を作ってみた
自由に編集したってね
http://www23.atwiki.jp/hibikiyougoshu/

あとできればこのWikiで収録する予定のSSの作者さん方には、ご自分で編集されるか否かをコメントしてもらえるとありがたいです

387 :名無しより愛をこめて:2007/01/03(水) 09:02:24 ID:vpmKq+zc0
>>375
荒らしでもなんでもかまわないから。

こっちに書かないと、勝手にスレ住人はみんな復帰を待ち望んでるように決定されるみたいだからこっちに書きますね。

>中四国さんもはやく帰ってきてね
なんてこと現状ではまったく思ってませんから!

……筋を通したちゃんとした対応(「社会人」の人ならわかりますよね)をしてからなら、ちょっと思うかも。
そうじゃないなら、自粛、なんて半端な表現せず、すっぱりスレと縁切ってほしい。



388 :名無しより愛をこめて:2007/01/03(水) 13:20:04 ID:pMS7RJjf0
>385
劇場版で思い出したけど、ヒビキさんの職業って鍛冶屋なんだよな。
猛士における銀の祖が、ヒビキさんだったら面白いって思った。
鬼の武器をメンテナンスしたり、新開発したり。
ヒビキさんなら鬼としての能力と、鍛冶屋としての能力、両方あるし。

嫁さんの所に帰ったハバタキも、農家と鬼の兼業で。
嫁さんは旦那をサポートするために銀として活躍する事になるとか…

389 :見習いメインストーリー:2007/01/03(水) 23:02:48 ID:a8QmSAP10
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。前回は>>333から

見習いメインストーリー 三之章「天」

二十五之巻「叩く太鼓」

 須佐純友と田島大洋が猛士の見習いとなってから半年。
 学業を優先させるため、毎週日曜だけの研修を行う傍ら、純友は「銀」となるべく、
すでに関東支部の「銀」として活動している滝澤みどりの手伝いを不定期で行っていた。
 そして大洋は、夏休みを利用して、柴又の運動場でただ一人鍛える日々が続いた。
「たちばな」からの陰陽環持ち出しを黙っておくことを条件に、その修行を時おり見に来る、
腕に陰陽環を巻いた男の姿があった。

「たちばな」地下で行われる学科研修では、音撃武器の講義が始まった。
 純友は、「銀」として最強の音撃武器を造るため、そして大洋は「角」として音撃を
決める時のために、すべてを聞き逃すまいとするかのようにみどりの講義を聞いていた。
 そんな二人の様子を心配しつつ、みどりは学科研修を続けた。
「太鼓の鬼の音撃武器は、音撃棒。装備帯につけている音撃鼓と組み合わせて音撃を決めます」
 机に着いた純友と大洋の前に立ち、みどりは講義を続けた。
「音撃棒の先に鬼石がついてるでしょう? よく見ると、口が開いているのと閉じてるのが
あって、開いてる方を左手用の『阿』、閉じてる方は右手用の『吽』と呼んでいます」

 実技研修も、これまでのディスクアニマルの操作練習は終了し、音撃武器の使用法の実習に入った。
 みどりの研究室は、研修や設計等を行っている設計室と、試作品を並べている展示室に分かれる。
 展示室の床の中央に音撃鼓を置くと、大洋は鼓側面のつまみを操作した。鼓が直径一メートル
ほどに展開すると、大洋は陰陽環を着けた腕で音撃棒を持ち、鼓を叩き始めた。

390 :見習いメインストーリー:2007/01/03(水) 23:03:46 ID:a8QmSAP10
 展示室の床は設計室より一段高くなっており、段差にはショックアブソーバが埋め込まれている。
そして、床や壁には防音処理が施してあり、音撃武器のテストを可能としていた。
「そこまでっ!」
 みどりが合図をし、今度は純友の番になった。
 純友が真剣な表情で音撃鼓のつまみを回した。そのままたっぷり数十秒待ったが、
何もおこらなかった。純友は展示室の入り口から見ていたみどりと大洋に泣き顔を向けた。
「展開しないよぉぉぉ〜!」
「イチイチ泣くんじゃねぇよバーカ」
 腕組みをして大洋は純友に言った。
 みどりはその様子を見て、ほっとしたように笑って言った。
「よかった──」
「何が良いんですかぁぁ〜!」
 純友は泣きながら言った。
「なんで大洋にできて、ぼくにはできないんですかぁ。ほら、ぼくも陰陽環つけてるし。
なのに、なんで……全然良くないですよぉぉぉ」
「いや、いつもの二人だな、って思って」
 くすくすと笑いながらみどりは言った。
「その……最近なんだか、ちょっと二人とも感じが変わっちゃったなぁ、って思っていたから」
 それを聞いて、純友と大洋の目に鬼気迫るような光が差したのも一瞬──
「コイツは相変わらずの泣き虫じゃないスか〜」
 以前と変わらず、純友を馬鹿にしながら大洋が言うと、純友もいつものように泣きながら言った。
「性格悪いままですよぉぉぉ、相変わらずぅぅぅぅ」

391 :見習いメインストーリー:2007/01/03(水) 23:04:53 ID:a8QmSAP10
 大洋の「鬼」となる決意も、その大洋のために最強の武器を造るという純友の決意も、
「たちばな」の人間には一切言っていなかった。言ったら、止められる気がしていた。
「でも、どうして『銀』と『飛車』の見習いが音撃武器の実習なんですか?」
「有事の際のために」
 純友の問いに、みどりは簡潔に答えた。
「魔化魍の出現件数は年々異なるから、時には人手が足りなくなることもあって、そんな時に
鬼以外の人もお手伝いにまわることもあるの」
「でも、鬼じゃないと音撃ってできないんですよね?」
「『鬼の鎧』を使えば、鬼以外の人が音撃をすることも可能よ。ずーっと昔に鬼の数が足りない
時に開発されたもので、ある程度鍛えた人がそれを着れば、本物の鬼さんよりは弱いけど、
いちおう音撃ができるの」
「ある程度鍛えたヤツなら?──ってことは純友、おまえは無理だな」
 ニヤリと笑って大洋は言った。
「おれ、それ着てみたいです」
「ごめんね、いま関東支部には無いの。えーっと、私が知ってるのだと、吉野の鬼武神社かな。
ここのところ実用する人はいなくて、神社に奉納されてる状態」
「もったいねー。おれが着りゃあダンキさんたちの手助けできっかもしんねーのに」
 大洋が言うと、みどりは笑顔で言った。
「今年はイレギュラーに魔化魍の出現が多い年だけど、まだまだ見習いくんの君たちに手を
借りるほどじゃないよ。そうなったら、君らに頑張ってもらう前に、まず私がやるから。
これでも、鍛えてますから」
 そう言ってみどりは細い腕をぐっと上げてみせた。

392 :見習いメインストーリー:2007/01/03(水) 23:05:48 ID:a8QmSAP10
 陰陽環の男の訪れを待って、わざわざ柴又の運動場まで出向いて大洋は鍛錬を続けていたが、
男は気まぐれに三日に一度くらい現れるのみだった。その日も彼の訪れはなく、組手をする
相手もいないため、大洋は早めに切り上げようとしていた。
 荷物をバッグにしまい込んでいると、そこに茶髪の青年が現れた。
「やあ、どうも〜。今日はあの人は、来ないよ。何か他に所用があるとかで、代わりに君の
修行をちょっと見てくれって言われてさ」
「誰だテメエ」
 鬼にしては少し軽い感じがして、大洋は邪険に言った。
 関東の鬼で最年少のイブキよりも、更に若いようだった。
「そうとんがるなよ、見習いく〜ん。おれは、津村努」
「鬼……じゃねえよな」
「鬼を目指してたんだけど、親に反対されてね〜。でも、君よりは鍛えてるよ」
「ざけんなよ。テメェみたいなチャラいヤツが、おれより鍛えてるだぁ?」
 近づいてきた努が、ニヤけたまま構えを取った。
「カモ〜ン」
 指をくいくいと曲げて言った努の態度にキレた大洋は、陰陽環の男との組手で身に付いた
構えを取ると、まず努に容赦なしの強力な蹴りを叩き込んだ。
 横にかわされてしまったが、それは今までの鍛錬の中でもよくあったことで、すかさず
体勢を立て直して今度は拳を突き出した。腕を使った上段受けでそれもさばかれた、と思った
時には努のもう一方の手が握り込まれ、拳が大洋の眼前にあった。すう、と血の気が引いた。
「言っただろう? 君よりは鍛えてるよ」
 ニヤリと笑って努は言った。

二十五之巻「叩く太鼓」了

393 :見習いメインストーリー:2007/01/03(水) 23:06:43 ID:a8QmSAP10
次回予告

「多美ちゃんの仇だぞ」
「スサ・タチバナ。少なくとも、私たちはそう呼んでいるわ」
「安達くん!」
「あ、え──ぼ、ぼくじゃないからね」

見習いメインストーリー 二十六之巻「届ける通報」

394 :名無しより愛をこめて:2007/01/04(木) 21:01:07 ID:uTFOf9x20
最近思い始めたんだがなんでこんなに・・・
サブタイのセンスが無(殴
過疎って来てんだろうな・・・。

395 :名無しより愛をこめて:2007/01/04(木) 21:14:02 ID:nx+TezQh0
サブタイの話題が出たから俺もひとつ・・・
せっかく響鬼のSSなんだから「動詞の連体形+名詞」の法則を守って欲しいなあ。
言いたかないが白倉と井上でさえ守りぬいたことだぞ。
どうして響鬼を愛してる人間がそれをできないんだ。

その点見習いメインは合格だよ。

396 :名無しより愛をこめて:2007/01/05(金) 00:35:28 ID:PoWdF1od0
この際、言わせて貰おう。
見習いSSのサブタイなんだけど、いつもなんだか違和感がある。
二十三之巻の「通じぬ電話」だっけ?ちょっとうろ覚えでスマンが・・・。
話の内容的には橘さんが魔化魍の餌食になってた〜で、テンキと遭遇みたいな感じだったと思う。
「通じぬ電話」で確かに間違っているわけではないが、なんか語呂が悪いと思うんだ。
主観的な意見だけど、「電話」のとこを「声」にかえて「通じぬ声」または「届かぬ声」の方がいいんじゃないかと思ったりする。
でもやっぱり話と照らせあわすと、違和感は残る。それは何故かと考えてみた。
響鬼本編だと、その回で最も強調された事柄をもとにサブタイは出来てる。だから違和感はない。
でも見習いSSの場合、どの部分が最も作者は強調したいのか、よく読まないとわからないことが多い。
もちろん、それは他のSSにも見られるところなんだけど、見習いSSは特に目立っちゃってるんだ。
強調したいことの表現と、どうでもいいところの表現をもっと明確にするべきだと俺は思う。いつまでも始末書書かせてないでさ。
とくに二十三之巻は流れが唐突過ぎてちょっと混乱した。
純友と大洋が半ば錯乱状態に陥って、テンキと出会うまでが早すぎると感じた。
あそこは純友たちが錯乱したままで終わって、次回かまたその次の回でテンキと合わせたほうが、読み手としては非常に楽な心持で物語を楽しめるんだ。
段々と見習いたちが次のステップに行く様子を見守っていくという心のゆとりがもててね。でも残念ながら今の見習いSSは、ほとんどゆとりを持って読めないんだ・・・。
俺の意見はここまで。まぁ意見とか感じ方は人それぞれだから、俺の意見が絶対ということはありえない。
いろんな人が読んで楽しむものだから、見習いSSの作者さんには頑張って欲しい。あ、別に批判とかじゃなくて、アドバイスのつもりで言っただけだからね。

397 :名無しより愛をこめて:2007/01/05(金) 00:39:44 ID:aA7pNSRJ0
あの人テンキさんだったんだ……。
見習いSSは結構好きなのに全然気付かんかった。

398 :名無しより愛をこめて:2007/01/05(金) 01:25:16 ID:phbpp6GH0
こんなスレはさっさと落とせ。
もう読む価値の無いSSばかりだ。

399 :名無しより愛をこめて:2007/01/05(金) 02:40:33 ID:nCoO7KIEO
スサ・タチバナってファイルの名前だっけ?

400 :名無しより愛をこめて:2007/01/05(金) 02:54:02 ID:UkOKTgQaO
建設的な意見、見解がでるならいーけど、闇雲な批判する奴は読まなきゃいーじゃん。
見習いSS確かに荒削りだけど俺は好きだよ、書き手の暖かい視点がなんか前半の響鬼っぽい。

401 :名無しより愛をこめて:2007/01/05(金) 23:10:48 ID:m5zgOhYDO
「つまらぬ見習い」でいいじゃんw

402 :名無しより愛をこめて:2007/01/05(金) 23:12:39 ID:aA7pNSRJ0
いや見習いSSそのものは結構好きなんだけどな。

凄橘(スサ・タチバナ)にかけてんのかな、須佐と橘は。

403 :名無しより愛をこめて:2007/01/06(土) 00:23:13 ID:fEww+rbj0
>>400
闇雲な批判って、>>396のこと?
「自分だったらこうする」的なことも書いてあるし、作品を読んだ上で理詰めで見解を書いている。
絶対こうすべきとか言ってるわけじゃないし、書き手としても素直に読める、普通の批評だと思うよ。

404 :名無しより愛をこめて:2007/01/06(土) 00:53:16 ID:UE5mlxBv0
>>402
純友と橘さんはそれぞれ凄橘の血を引いてるとかありそうだな。

405 :名無しより愛をこめて:2007/01/06(土) 01:02:49 ID:y2wLAmqe0
>>404
もしそうだったら・・・大洋カワイソス

406 :名無しより愛をこめて:2007/01/06(土) 05:47:55 ID:pE3kQIb9O
>>403
具体的には>>398の事、>>401も同質。


407 :名無しより愛をこめて:2007/01/06(土) 10:50:48 ID:5ZrebwAFO
見習いしかり中四国しかり、素人がダブル主人公体制なんか書いたら絶対どっちか片方しか目立たないんだよな
一人の人間の生きざまを書くのがどれだけ難しいか知りもしないで欲張って二人書くなんてド素人もいいとこ

408 :名無しより愛をこめて:2007/01/06(土) 12:08:27 ID:+WMNfL2B0
初めまして。「文芸新都」にSSを投下してみました。
お暇がありましたら読んでみて下さい。
http://neetsha.com/inside/main.php?id=1291

409 :名無しより愛をこめて:2007/01/06(土) 12:11:44 ID:JD3Q6IQmO
>>407
素人だっていいじゃない。SS書く人誰もが山本周五郎やデュマである必要はないよ。
見習いさんのは登場人物たちが妙に黒く傾いたりしないから、読みやすいなぁ、と思うよ。
最初は「ん?」と思ったけど、今は毎回続きが楽しみだ

410 :名無しより愛をこめて:2007/01/06(土) 12:43:25 ID:+7TsF4TD0
>>408
・一ノ巻、二ノ巻、…で切るか、1,2,…で切るかどっちかにした方が。
・勢知郎→勢地郎
・ようこそ。

411 :見習いメインストーリー:2007/01/06(土) 23:06:55 ID:yBHWtrx00
前回は>>389から

二十六之巻「届ける通報」

 大洋が、柴又の運動場で津村努と組手を行っていた頃──
「っわ!」
 自宅で夏休みの宿題をやっていた純友の首に下げたディスクが震え出し、自分の部屋の中で
情けない悲鳴を上げた。
 三ヶ月前にもこんなことがあり、その時ディスクの引っ張る方向に行った純友は、南行徳で
黒装束の傀儡と遭遇することになった。
 今回も、ディスクが示す方向に向かえば傀儡がいるのかもしれない。
 あの後、立花勢地郎には、絶対に近づかないように言われていたし、そもそも恐ろしくて
とても自分から危険に近づく気にはなれない。
 一応「たちばな」には連絡を入れ、純友は消炭鴉を首から外して宿題を続けた。

 次の日曜日、研修のため訪れた「たちばな」の地下でそのことを聞くと、大洋は純友の襟を
つかんで締め上げた。
「なんでそれをおれに言わねえ」
「だ、だって、事務局長に『絶対に近づくな』って言われてたじゃないか」
 大洋は、声をひそめて言った。
「多美ちゃんの仇だぞ」
「そんなのわかってるよ、だけど……」
 純友も小声になって答えた。そこに、みどりが入ってきて言った。
「! 何してるの、大洋くん」
 大洋が急に手を離したので、純友は後ろにのけぞって倒れた。
「うぎゃ!」

412 :見習いメインストーリー:2007/01/06(土) 23:08:47 ID:yBHWtrx00
 床に背中を打ち付けて純友は悲鳴を上げた。
「ナンでもないっス」
 凄んでいた顔を瞬時に元に戻し、大洋は言った。涙目になって起き上がりながら純友も言った。
「なんでもありません……」
「本当にぃ〜?」
 疑いの眼差しでみどりは言った。
「男と男の世界っスから」
「なあにそれ」
 二人がそろって席につくと、みどりは追求をあきらめて言った。
「この間、純友くんから報告があった消炭鴉の反応の件だけど、ちょうど同じ時間に、
イブキくんから、光が丘の近辺であいつらを見たって報告があったの」
「あいつら?」
 大洋が聞き返すと、みどりはホワイトボードに二文字の漢字を書いて言った。
 純友と大洋がそこに見たのは、「凄」「橘」という字だった。
「スサ・タチバナ。少なくとも、私たちはそう呼んでいるわ。──クグツの親玉みたいなもの
なんだけど」
「スサ……」
 純友は、自分の名字と同じ、その音を呟いた。
「タチバナ……」
 そして大洋は、自分たちの大切な存在であった一人の少女の名字と同じ文字である、その名を呟いた。
 みどりは一冊のスクラップブックを取り出した。表紙には「『凄・橘』に関する通報綴」とあった。

413 :見習いメインストーリー:2007/01/06(土) 23:09:37 ID:yBHWtrx00
「支部によって違う呼び方をすることもあるし、『凄・橘』の捉え方も色々あるんだけど──
この資料でいうスサ・タチバナは、あいつらのことを指してるわ」
 みどりは、一枚の紙を純友の前に差し出して言った。
「でね、純友くん」
「えっ? 始末書ですか!?」
 泣き出しそうになって純友は言ったが、机の上に置かれた紙は、見慣れた始末書のフォーマット
ではなく、「通報届」と書かれていた。
「消炭鴉の動作とあいつらとの関連性は確かじゃないんだけど、いつかのクグツの時の例もあるしね。
クグツだけじゃなく、あいつらが近づいても反応する性質があるかもしれないから、一応書いておいて」
 純友は、とにかく始末書でなくてほっとした。
「でね、そのディスク、しばらく私に預からせてほしいんだけど──」
 自分が陰陽環なしで初めて、唯一起動できたディスクを取り上げられそうになって、
純友の目に涙がにじんだ。
「あ〜ごめん、純友くん。私のほうでディスクを調べたら、すぐ返すから。泣かないで〜」
 純友は、泣く泣くディスクをみどりに渡した。

 その日の研修を終えた純友と大洋は、「たちばな」から駅に向かう途中で、高架下の
川沿いのフェンスの側で行われている喧嘩を目にした。フェンス際に追いつめられている方は、
純友たちと同じ城南高校の制服を着た、見たことのある生徒──安達明日夢だった。
 一方、明日夢に殴り掛かっているのは、私服に帽子をかぶった、純友たちと同じ年くらいの
少年だった。
 明日夢は相手の攻撃をかわして反撃したが、蹴り込まれてフェンスに背中を打ち付けた。

414 :見習いメインストーリー:2007/01/06(土) 23:10:25 ID:yBHWtrx00
 夏の午後、周囲の人通りは途絶えていた。
「大洋!」
 純友が言うと、大洋はうなずいて二人に向かって駆け出した。
 うずくまる明日夢を蹴り付けて背を向けているその少年に、卑怯にも大洋は何の言葉もなしに
いきなり背後から蹴りをお見舞いした。驚いて振り向く少年に大洋は凶悪な顔を向け言った。
「いいかげんにしろよォォ……? 前に、そいつに間違ってボールをぶつけちまった事があってな、
一個借りてっから、何が何でも助けさせてもらうぜ」
「何わけワカンネーこと言ってんだよ!」
 向かってきた帽子の少年を、大洋は、陰陽環の男や努がやっていたように紙一重でかわした。
そして、がら空きになった背中をまたしても蹴りつけた。
「ぐぁッ!」
 地面に倒れこんだ少年は、そこから逃げ出した。
「待てやコラァ!」
 大洋は少年を追いかけていった。
 純友が、倒れている明日夢に近寄っていったその時、横合いの道から声がした。
「安達くん!」
 振り返ると、城南高校の夏服姿の女生徒が立っていた。
 女生徒は、鼻血を流し地面にうずくまる明日夢と、その側に立つ純友を見比べて泣きそうな
顔になって言った。
「ひ……ひどい……」
「あ、え──ぼ、ぼくじゃないからね」
 自分がやったことだと思われていると感じ、狼狽えながら純友は言った。

二十六之巻「届ける通報」了

415 :見習いメインストーリー:2007/01/06(土) 23:11:28 ID:yBHWtrx00
次回予告

「ソレ、みどりちゃんとか、おやっさんとか、みんな知ってんのか?」
「──友達を殺された人間の気持ちは、あんたらにわかりっこないんだ!」
「ふざけるなよ? 見習い」
「最終的に認めてもらえないこともあるって、覚えといたほうがいいよ」

見習いメインストーリー 二十七之巻「怒る拳」

416 :名無しより愛をこめて:2007/01/07(日) 18:16:41 ID:zjXddlge0
>>400
時には理不尽な声も甘んじて受ける事も必要だろ。
鍛えるってのはそういう事なんだよ。


「建設的な意見」だろうが「闇雲な批判」だろうが、どちらも読者の「声」に
代わりは無い。前者の声が欲しければそれなりのレベルに見合ったSS書け。

417 :名無しより愛をこめて:2007/01/07(日) 21:00:03 ID:HVlbbXZd0
>>416

言わんとするところは分かるけど、少し言葉選んでおやりな。

喧嘩腰にしか取れませんよ。

418 :名無しより愛をこめて:2007/01/09(火) 23:51:12 ID:0lVs3+Ir0
dnmd?

419 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 14:03:30 ID:Qv7Q/Ttt0
この際だからはっきり言おう。
見習いの作者いい加減にしろ。批判を無視してSSを垂れ流すな。
過疎の状況をいいことに目立ちたいとしか思えない。
中四国も見習いも消えろ。

420 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 14:40:24 ID:fcxRkwXr0
419が消えればいいと思うよ

421 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 14:44:44 ID:/oPbYBYc0
>>419

どのレスがそれに相当するのか、どんな批判なのか具体的に上げてくれ。
その書き方だとお前の好き嫌いだけで吠えているようにしか思えんな。

耽々と話だけ投下しているだけの行動をどうこう言える筋合いじゃない。
俺にしてみれば彼は彼なりにスレの現状を憂いての行為と取れるが?

読みたくないのならそれこそフィルタでも何でも掛ければいい。

422 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 14:58:45 ID:fcxRkwXr0
見習い作者さんに、何をそんなに噛み付くのか判らん。
彼の創作物の内容は、響鬼を愛する者が書くファンアートの範疇であり、
他人を不快にさせる目的であったり、公共良俗を乱す目的のものではないのは、
普通の読解力を持ってる人間からすれば判る事だろ。
巧拙について、読み手それぞれが感想を言うことはあっても、
消えろだなどと暴言を吐く権利など無い。

フィルター掛けろと言わずに、
419は、自分からここから消えて行く事をお勧めする。
自分の好きな作品を書くサイトにだけ通えばいい。

423 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 15:08:36 ID:+QQPCCOIO
>419
SSスレなんだから、SS投下するのは当たり前の事だろ?

424 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 15:16:05 ID:zMZZRfhlO
419は煽り厨だろ?
スルーは常識

425 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 15:20:22 ID:fcxRkwXr0
完全スルーするのは、見習い作者さんが気の毒だったので書いた。
まあ、延々続く話題じゃないよな。
ということで、作者さん達もこういう煽りは気にしないで書いて欲しい。
皇城さんみたいに、失望されたまま去られると寂しいよ。


426 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 20:43:58 ID:zMZZRfhlO
そういうことなら同意する。

427 :見習いメインストーリー:2007/01/10(水) 21:04:05 ID:FGN4hju10
前回は>>411から

二十七之巻「怒る拳」

 純友が、明日夢を痛めつけた犯人と間違えられて泣きそうになっている頃、大洋は
本当の犯人である、帽子にTシャツ姿の少年を追いかけて川沿いの道を走っていた。
 明日夢が痛めつけられていた場所と似たような、高架下のフェンスの前で少年を追いつめ、
大洋は圧倒的な力の差をもって相手を叩き潰した。
 口からも鼻からも血を流し、すでに抵抗力を失っている少年の襟首をつかみ上げ、
大洋は狂ったように殴り続けた。
「よせ! 死んじまうぞ!」
 そこに駆けつけた、サングラスをかけた青年──ダンキが言った。それも耳に入っていない
かのように、大洋は拳を振るい続ける。
「やめろ!」
 ダンキが少年から大洋を引き剥がした。それでも動こうとする大洋だったが、ダンキ
の力には敵わない。
「いい加減にしろ、見習い!」
 大洋はやっと動きを止め、ゆっくりと振り向いた。そこには、大洋にとっては約四ヶ月
ぶりにもなる、久々に見るダンキの顔があった。
「ダンキ……さん?」
「何やってんだ、馬鹿野郎!──見ろ! お前のやったことを」
 ダンキが指す先には、鼻と口周辺を流血で染めて倒れている少年の姿があった。
「言ったはずだ。──人間なんて、簡単に死んじまうってことをな。このまま続けてたら、
そいつは死んでたぞ」
 帽子の少年はしばらく動けずにいたが、やがて立ち上がると、悲鳴を上げてそこから
逃げていった。

428 :見習いメインストーリー:2007/01/10(水) 21:05:14 ID:FGN4hju10
「あいつには、おまえが化け物に見えたんじゃないのか。やり過ぎだぞ」
 つかんでいた大洋の服を手放し、ダンキは言った。
「やらなけりゃ、こっちがやられちまう」
 荒い呼吸を鎮めながら、大洋は言った。
「オレは、ダンキさんみたいに強いわけじゃないんだ」
「俺だって、最初から今ほど鍛えていたわけじゃねえよ?──しばらく見ない間に、だいぶ
鍛えたみたいだが……力をあんなふうに振うもんじゃない」
「……おれは……鬼になるんだ」
「ソレ、みどりちゃんとか、おやっさんとか、みんな知ってんのか?」
 ダンキの問いにぐっと詰まってから、それには答えず大洋は言った。
「──もう、猛士も何も関係ねえんだ。おれはとにかく鬼になる。『たちばな』の人たち
にとっちゃ、魔化魍の犠牲者の一人でしかなくても、おれや純友にとっちゃ大切な友達が
死んだんだ。──友達を殺された人間の気持ちは、あんたらにわかりっこないんだ!」
 途端にダンキの表情が険しくなり、大洋を殴りとばした。──それは、大洋が今まで
生きてきたなかで、一番重く、一番痛い一発だった。
 大洋は数メートル吹っ飛ばされて地面に落ちた。
「ふざけるなよ? 見習い」
 仰向けに倒れ、やっと半身だけ起こした大洋にダンキは言った。
「俺たちが、何の犠牲も払わずにこれまでやって来れたと思うのか。そしてこれから先、
何の危険も無いとでも思っているのか。それがわからないっていうんなら、お前は鬼にも
猛士にもなれやしない」
 言い残し、ダンキは去っていった。

429 :見習いメインストーリー:2007/01/10(水) 21:05:55 ID:FGN4hju10
 大洋が「たちばな」に引き返すと、店先で香須実が出迎え、客を意識して小さい声で言った。
「純友くんに聞いた。明日夢くん連れて病院に行ったよ。君も大変だったね、その傷」
 香須実が大洋の口の端が切れているのを見て言った。
「いや、これは……」
 言いかけたが、ダンキに殴られたことは言わず、大洋は香須実に病院の場所を聞いて
「たちばな」を後にした。

 猛士と繋がりのある町医者の病院に大洋が到着すると、小さな待合室に、純友と、もう一人
城南高校の制服を着た女生徒がいた。
「ん……? 誰だコイツ」
「彼女も偶然通りかかったんだ。安達くんの同級生の持田さん」
「はじめまして」
 長い髪の少女、持田ひとみは沈んだ表情で挨拶をした。
「大洋、その傷……」
 純友が言いかけると、大洋は純友の肩を乱暴につかみ、待合室の隅に連れていって言った。
「アイツにやられたワケじゃねーぞ。……あんなヤツに遅れをとるかよ。これはダンキさんに
やられたんだ」
「ダンキさん? 柴又に来てたんだ。でもなんで……」
 大洋は純友の肩から手を離して表に出るように促した。病院の外に出ると、大洋は言った。
「……話してたら、いきなりダンキさん怒っておれのことガン!って」
「何の理由もなしに殴るわけないじゃないか。その時言ってたこと、全部思い出してよ!」

430 :見習いメインストーリー:2007/01/10(水) 21:06:30 ID:FGN4hju10
「それは、まずいことを言ったかもしれんな」
 翌日、大洋の地元の公園に来てもらった陰陽環の男にそのことを話すと、男は即座に言った。
「まずいって、なんスか」
「猛士に入る理由は色々あるが……おまえと『銀』見習のように、鬼に助けられたことが
切っ掛けとなることは少なくない。──ダンキも、そうだったのかもしれん」
「え……?」
「おまえの時は誰も死ななかったかもしれんが、ダンキが鬼になった切っ掛けもおまえと同じで、
その時やつの周りで誰かが死んでいたとしたら……まあ、すべては想像の域を出んがな」
 大洋が男の話を聞いて考え込んでいるところに、茶髪の青年がやってきた。
「いよう」
 津村努は、二本指を立てて右手を挙げ、左右に振って挨拶をした。ヒビキが似たような
挨拶をするが、ヒビキの場合は敬礼のように手を挙げた後、前に差し向ける所が違う。
 やった後で、努は顔をしかめて自分の二本指を立てた手を見て、慌てて下ろした。
「今日は二人そろって付き合ってやるぜ」
 相変わらず、努の乗りは軽い。
「でも、いいの? 密かに鍛えたところで、どこかで猛士に認めてもらわないと、
鬼になる許可は降りないよ。オレはそのパターンだったから」
 持っていた小荷物をベンチに置いて、努は準備運動をしながら言った。
「──なんとしても鬼になりたいっていう君の気持ちはわかるんだ。だから、こうして
修行にもつき合ってきたけどね。最終的に認めてもらえないこともあるって、覚えといた
ほうがいいよ。──それじゃ、始めますか」
 努は、いつもの笑みを消し、大洋に向けてかまえを取った。

二十七之巻「怒る拳」了

431 :見習いメインストーリー:2007/01/10(水) 21:07:56 ID:FGN4hju10
次回予告

「い……いま──鬼が見えた……ような気がした」
「へ〜え、そんなの見えるようになったんだ。すっごいね〜、この短期間で」
「それ、おれが引き継ぐから。おれがあんたの鬼になりたかった気持ち、引き継ぐから」
「……で? で? 消炭鴉は、今どこにあるんですか?」

見習いメインストーリー 二十八之巻「引継ぐ気持」

432 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 21:20:01 ID:3jhTf4nYO
皇城の件はただ単にネタが尽きたから中四国問題にかこつけて逃げただけじゃないのか?

433 :一回だけ釣られますよ:2007/01/10(水) 22:19:12 ID:yGNzQBjv0
中四国擁護でスレが荒れなくなったら、今度は手当たり次第叩きまくりwww
低脳乙www

434 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 22:56:37 ID:Z+SX0G/00
そういえば、DA短編の人が冬に作品出すって予告してたけど、まだかなー?
すんごい楽しみにしてます。

435 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 22:59:10 ID:WJIuqtQU0
この窮状はどうにも見てられないな
とうとう作者まで巻き込んでケンカになっちまった

例の用語集別冊Wikiを利用しないか?
あれを皆で協力してばーっと仕上げるんだよ
何か共通の目標があれば自然と団結できるだろ?
幸い、皇城も見習いもあのWikiでフォローすると決まった作品だし
(それに場合によっては一番荒れてる中四国に関しても同じことができるかもね)

436 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 23:11:26 ID:Z+SX0G/00
>>435
賛成賛成!!

437 :名無しより愛をこめて:2007/01/10(水) 23:57:47 ID:zMZZRfhlO
携帯からでもなにか出来るかな?

438 :名無しより愛をこめて:2007/01/11(木) 13:47:16 ID:TRcOB2flO
見習いさん おもしろいよ

439 :以前駄文投下スイマセン:2007/01/11(木) 14:21:02 ID:kEtxMmQaO
ライダーはサブテーマってあるよね?
昭和が孤独をテーマにして、平成は生き残りかな?
その中響鬼は目標との出会いによる成長って
爽やかなテーマで好きなんです。
そこを掘り下げてる見習いさん応援してます。

こういうの書くと甘やかしだの馴れ合いだの言われるだろね

440 :『皇城の守護鬼』 一の巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:24:57 ID:bBQOr4A50


 又ひとつ、地下出口から音式神が飛び出し、ハバキ等の円座する卓上で丸いディスクへ
と還った。これで三十八枚目。音式が最初の帰還を始めてからすでに三時間が経過してい
る。ハバキ、肇、ヒラメキ、葛島、各人が繰るディスクリーダーは、めまぐるしく映像を
移ろわせるが、昨夜の死闘の余韻を探すための努力を嘲笑うかのごとく、地下世界の平穏を
裏付けるばかり。
 収穫はゼロであった。
 派手好きの俺にとってこういう地味な作業は苦痛でしかないんだが…ま、それを何の苦
もないような顔でこなしちまうところが、このヒラメキ様の凄いところなんだな、と、優
男は心の中で一人心地る。口の端をゆがめ、本人はニヒルな笑みを浮かべているつもりの
ようだが、端からは自己満足で悦に入っているようにしか見えないのがこの男の愛嬌とい
えなくもなかった。
 ヒラメキは検索を終えたディスクを、テーブル中央にすえられた充電器を兼ねた収納ラッ
クへ納める。続いて最新の帰還者を折り畳んだ音叉にセットし、記録されている音声に耳を
そばだてるが、得られるものの変化のなさに落胆の息を漏らす。

「奴(やっこ)さん達、今回はなかなかしぶといな」

 液晶モニタの画像を巡回経路図に切り替え、「はずれ」の光点をタッチペンでチェック
しながら誰にともなく呟いた。いずこからも返事がないことに対し首をすくめ、柱時計の
振り子の音にあわせて舌をタップさせながら立ち上がると人数分のお茶を入れて回った。
「や、すまない」と茶を啜りつつモニタを視続けるハバキの語尾にもまた、未収穫の色が
伺えた。

「『鬼』がこれだけ雁首をそろえていながら痕跡すら発見できないのはちと厳しいな。」
「俺たちにせいばかりじゃないでしょう。そもそも実際に探索に出ているのは音式だし。
経路のデータ更新にも即時対応している。
 ま、あれですよ。彼奴らも四百年掛けて『鬼ごっこ』が上達したんでしょうよ」
「我々はその『鬼ごっこ』のプロだぞ。それではこまるなぁ」

441 :『皇城の守護鬼』 一の巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:25:33 ID:bBQOr4A50
 入れたての宇治茶をまるで水みたいに煽り、壮年の長が苦笑いを浮かべる。
 我々の四百年を彼奴らのそれが上回るかよ。

「精螻蛄(しょうけら)。悪事の監視者。明り取りから人家を覗き込み、その悪行を天帝
に密告する役目をもつといわれている。百鬼夜行図(ひゃっきやぎょうず)・風之巻…で
よろしかったですよね。
 都市型の魔化魍と記憶していますが、少なくとも、私は今まで戦ったことがありません」

 モニタからは一切目を放さず葛島がハバキに向け云った。背中に物差しでも仕込んでい
るのではないかと思えるくらい背筋をピンと伸ばし、しかもこの三時間、ほとんど姿勢を
崩していない。こいつ絶対A型だ、とB型のヒラメキは胸中で呻きおののいた。癖なのか
それともわざとなのか、感情の色をほとんど表に出さない口調。まるでマネキンが喋って
いるように思える。深夜にやっていたナントカと言う番組を思い出して肩をすくめた。
 どうも苦手だよ、こういうお嬢さんは。

「模範解答だ。わざわざ引っ張ってもらった価値がある。…信濃あたりはのどか過ぎて、
ショ
ウケラも出る幕がなかったというところじゃないかな。京都や奈良あたりの古い町並
みが残る
地区では定期的に発生していたみたいだが…それ以外での出現が報告されたの
はごく近年だ。
 東京でも維新よりこっちは暫く出現記録はなかった。」

 漸く検索を終えた銀板を取り出し、眉間を揉みながらハバキが答えた。ショウケラ発見
より今まで三十八時間余、ハバキは不眠不休であった。目の下の隈がどす黒く広がってい
るのが遠目にも分かる。シフト従事中は一晩や二晩の徹夜は珍しいことではないが、今回
はこの間二回の戦闘を挟んでいた。加えていうならば、昨晩は長距離の追跡行動の後で三
人がかりでの激しい戦闘を行っている。伝説の忍者の名を受け継ぐ鉄人といえど、流石に
疲労の色は隠せないようであった。

442 :『皇城の守護鬼』 一の巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:26:23 ID:bBQOr4A50
 軽いため息ひとつ。
 回転椅子の背もたれに身体を預け、目を閉じたまま桐板の天井を仰いだ。普通に見れば
だらしの無い格好でくつろいでいるような姿だが、ハバキの頭の中では今、凄まじい勢い
で情報が交錯していた。昨夜の戦闘における敵戦力の損耗度合い、追跡経路の想起、巡回
路に放ってきた式の位置と数、特区内における潜伏可能箇所の検索と魔化魍の生態から導
き出される位置の特定。長年の知識と経験、そして先人の残した膨大なデータを駆使して
一秒でも早く、怨敵を発見・殲滅を完了させねば成らぬという使命感。またそれを成せぬ
という焦燥。閉じられた瞼の裏に写る何かを追うように、眼球が激しく小刻みに動いてい
た。

「父さん。少しでも休んでください。僕一人じゃあ不安かも知れないけど、ベテランが二
人もフォローに着いてくれてるんだからきっと大丈夫」

 ディスプレイ越しに肇が父を労わった。穏やかに懇願しているようにも聞える。 

「肇さんの言うとおりです。クォーターでもハーフでもかまいません。身体を休めるのも
仕事のうちです」

 対照的な声が言い放つ。長がまた苦笑をもらした。  

「若手二人にこうも労わられては仕方があるまい。お言葉に甘えさせていただこうか」 
「いいえ、ボス。作業効率の問題です。不休では逆に能率が落ちてしまいます。」
「解った解った。ではしばし頼んだよ」

 云った次の瞬間にはもう、規則正しい呼吸音が聞え始めた。よほど疲れていたのであろ
うか。
 否。葛島を除く二人はこの眠りが深いものではないことを知っている。眠っている
ように見えても、意識は半ば隔世状態にあるのだ。御所守は忍びとして、眠りを自在に操
る術を身に着けている。どんな状況下においても瞬時に眠りの淵に立ち、また逆にそこか
ら瞬時に戻ってくることが出来る能力。寝ていてなお、覚醒時と同じように物事を感ずる
ことの出来る感覚。マインドコントロールの一種ともいえる。

443 :『皇城の守護鬼』 一の巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:27:33 ID:bBQOr4A50


「さて、ルーキーとベテランその一のほうの首尾はいかがかな」
「もうすぐ終わるけど変化なさそう。」
「こちらも同じです」

 肩をすくめヒラメキは嘆息する。

「御頭にはああ云ったが確かにこれじゃ困るんだ。おちょくられたまんまじゃあヒラメキ
様の…いやいや、御所守の面目丸つぶれだ」
「面目がどうのというレベルでは…」
「お硬く考えすぎだよ、葛島さん。これはヒラメキさんの癖。軽口叩いて自分を鼓舞して
るんだよ」
「的確なフォローをありがとう、肇クン」

 一瞬視線を上げ憮然とした表情で肇を、続いてヒラメキを見たが、またすぐに元のクー
ルな顔でモニターのチェックに戻る。クールに見えて実は意外と直情的な性格なのかも知
れない。
 なんだか因縁浅からぬ、みたいな割にはあまりヒラメキさんを知らないみ
たい。それともわざとこんな態度を取っているのかな?だとしたらちょっと面白いな。そ
んなことを考えながら肇も葛島に習った。
 一方ヒラメキは充電の済んだ音式を一体ずつ展開しては、掌でしばし踊らせまた戻すと
いう作業を始めた。時折、元に戻した音式を分解すると、どこから取り出したかパーツボッ
クスの部品と交換し、また組み立ててゆく。消耗部分のチェックと補修をしているのだ。
 御所守の使役する音式神は他の支部の音式神より損耗率は高い。ボディの損耗について
も前述以外に理由があった。入り組んだ地下水路網には人の入って行くことの出来ない広
さの水路がそれこそ無数に存在しており、そういう部分の探索はどうしても音式神に頼ら
ざるを得ない。そして音式たちは命令を忠実に守り、水に満たされた水路をくまなく捜索
する。本来飛行を目的として設計されている機体や、陸上活動を前提として設計されてい
る機体にも水中での行動を強いるケースも頻繁にあるから、無茶をさせる分駆動系にかか
る負荷も、電池の消耗も半端ではないのだ。

444 :『皇城の守護鬼』 一の巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:28:18 ID:bBQOr4A50
 ヒラメキは器具を使わず掌から伝わる駆動系の振動と音と、音式神の動きだけでその損
耗箇所を正確に探り当てているのであった。

 「よーしワンちゃん、頑張ったな。これで元通りだ。またよろしく頼むぜ。」

 精密メガネ越しに修理の終わった瑠璃狼へ声を掛け、ラックへと戻す。

「そうやって一枚一枚声を掛けているのですか。非効率では?」

 気がつけば傍らに葛島が立っていた。手には蛍焼きの急須を持っている。先ほど干した
湯飲みからはほのかな湯気が立ち上っていた。
 こういう気遣いも出来るんだな…まあ、A型だもんな。当然か。
 固定観念たっぷりな意見。

「身体はメカかも知れないが、まだこいつらの魂は死んじゃいない──俺は魂に語りかけ
ているのさ…ってのはロマンチストかな?」
「スリープ状態で声が届くのですか」
「気持ちの問題さ」

 ロマンチストって部分に食いついてほしかったんだがな。

「ま、一人でシフトに入っているときじゃぁこんなことしてやれんからな。いい機会だ」
「私も手伝いましょうか」
「いや。コイツは俺の趣味みたいなもんだから結構さ。それよりも別の角度から彼奴らの
潜伏箇所を割り出してくれないか。情報処理は十八番(おはこ)なんだろう、く〜みこちゃ
ん?」
 
 アニメに出てくる怪盗の口調を真似しておどけてみせたが葛島はそれを受けず、事務的
に返事を返しただけでまたモニターの前に戻った。

445 :『皇城の守護鬼』 一之巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:29:18 ID:bBQOr4A50


「ヒラメキさん空振りが多いね。どうしたの?」

 ヒラメキのモーションがことごとく交わされるのが面白くて仕方が無いらしい。必死に
モニターを追う眸は、画像から得られる情報とは別の情報への探究心をこらえきれないと
いった風であった。

「ほっとけ少年」

 舌打ち。

 冷静を装った手元が震え、黄檗蟹の足パーツを止めるビスが一本、どこかへ転がっていっ
た。
 歳若い御所守の好奇心は膨らんで行くばかりであった。


  
 柱時計が正午の鐘を打った。魔化魍を見失ってから十時間が経過したことを告げていた。
 新たに二枚の音式が帰還してきたが、持ち帰った情報にさしたる変化は無かった。現在
帰還を始めているのは皇居北靖国神社方面担当で、特に結界の強力な区域を巡回している
式たちであった。例外が無いとは言い切れないが、手負いの魔化魍が潜伏するには困難を
有する区域であるため当然の結果といえたが、それはそれで具合が悪かった。

「まずいですね。ヒラメキさん」

 ルーキーの言葉に髭面が苦々しく頷いた。

446 :『皇城の守護鬼』 一之巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:29:52 ID:bBQOr4A50


 ルーキーの言葉に髭面が苦々しく頷いた。
 ハバキ等は魔化魍を靖国方面に追い込んだものと見ていた。結界の強力な地域に封じ込
めることが出来れば、敵の戦力を大幅にそぎ落とすことが出来る。肉体能力は格段に落ち、
増殖型の増殖スピードも半分以下に低下する。被害を最小限に食い止めることができ、且
つ少人数での殲滅──史郎のひとり立ちの試験もスムーズに行える。これまでの経緯から
そのように計算していた。だから今回の帰還で少しでもその痕跡を得ることが出来るもの
と踏んでいたのだ。
 決して楽観していたわけではない。しかし結果は思い通りの方向には転ばなかった。そ
うなると残りの音式に関しても持ち帰ってくるものに期待は持てそうにない。早急に計画
の建て直しを計らねばならなくなった。

「葛島君、特区の見取り図を。地下も地上も全てだ。一から洗いなおす。
 ヒラメキ、葛島君と地上を。肇は私と地下経路を。なんでもいい、必ず見つけ出すのだ。
どん
な小さな綻びも見逃してはならん」

 いつの間にか覚醒した長が檄を飛ばした。室内の空気が一気に緊張の度合いを増す。
 昨夜の遭遇地点から戦闘地点への移動経路、戦闘にかかった時間、魔化魍の逃走経路の
予測。その後の移動と朝のお勤めから今までの時間経過。探索に穴は無かったか?いや、
どこかに見落としがあるのだ。そうでなければとっくに発見できているはず。
 何処だ?何処だ!何処だ!!
 ハバキの、ヒラメキの纏う気が色を変えた。
 十代の肇ですら全身から峻烈な気を放っている。
 先ほどまでのゆったりとした流れは何処に。
 これが御所守本来の姿なのか?気迫に圧倒されていた葛島は、ヒラメキに尻を叩かれる
格好で我を取り戻した。どうした、はねっかえり。お前の負けん気はそんなもんだったか。
 一瞬だけ頬を紅潮させ、そしてすぐにいつもの顔を取り戻した。自分としたことが。あ
らかじめ知識は入れていた筈なのに。

447 :『皇城の守護鬼』 一之巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:30:36 ID:bBQOr4A50


「申し訳ありませんでした、ボス。水道局の水路図と巡回路図です」
「こっちには国土地理院の最新版だ。俺は南側お前は北。いいな」
「了解しました」

 時間と御所守との追いかけっこが始まった。追う側から追われる側へ。四人の守護者は
デジタルデータとアナログデータを照合し組み合わせ、糸を紡いでゆく。つむいだ糸を手
繰り寄せ、そしてその先にあるものを見極めるため。
 
 突如、地下出口とは別の──熊野路店内への出口より、それは帰還した。部屋に飛び込
むなりカムフラージュの光学明細を解くと、墨色の制御翼を打ち振り打ち振り、けたたま
しい声を上げながらヒラメキの頭上を旋回する。早く。早く。俺の見たものを。何かが起
こっているぞ。

「カー九郎!」

 ヒラメキが叫び手を差し上げると、待っていたとばかり消炭鴉は銀盤へとその身を戻し、
その手に飛び込んだ。葛島が髭面に怪訝な表情を向ける。カークロウ?この音式神の名前
なのか?この男がつけたのだろうか?

「つけたのは俺じゃあ無いぜ。当時三歳だった女の子だ。そいつがまだ血の通う躯を持っ
ていたときの名前さ。
 音式に過去の記憶が残っているかどうかは謎だが、少なくとも鴉の九十六番はそう呼ん
でやると喜ぶ。比較的素直に言うことを聞いてくれる。それだけだ」

 葛島の考えを読んだか、ディスクリーダーの画像検索バーを調整しながら髭面が小さく
云った。
 
「出たぜ御頭。多分コイツだ」

448 :『皇城の守護鬼』 一之巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:31:51 ID:bBQOr4A50


 それ以上何も言わせまいとするかのように長を呼ばわる。ハバキと肇はいつの間にか二
人の後ろに席を移し、モニターに食い入っていた。しゃくった顎で指した画像は、清海の
倉庫街を映し出している。範囲指定をしてやりマウスをクリックすると無人の埠頭がモニ
タに大写しとなった。

「見事にいないね」

 肇の言葉に全員が頷いた。高みからの映像に人影は皆無であった。
 
「彼奴らこのエリアのどこに潜伏している?もともと少ないにしても人にとり消えれば連
絡も途絶える。誰かが不審に思うはずだ」

 ハバキが唸る。

「歩からの報告はなにか」
「取り立てて変わったことは…まてよ……昨晩から豊海の倉庫と電話が通じないとヤマト
の人間が云っていた気がするな。回線が切断しているらしいって」

 この場合のヤマトとはヤマト運輸を指す。
 
「肇、NTTに裏を取れ」

 了解、と言うが早いかハバキのデスクの電話を取り銀座局の短縮回線を叩く。二秒で会
話が始まったが、ハバキは報告を待たずに階下の師弟を呼ばわる。

「親方、史郎君、出番だ。B武装。5分以内で出てくれ。」

 インターホン越しに叫べば、返事の代わりに何かをひっくり返す音が聞え、続いて慌し
い足音。
 いつもの反応であった。

449 :『皇城の守護鬼』 一之巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:32:25 ID:bBQOr4A50
 葛嶋は己の端末に向き直り報告記録の検索を始めている。御所守の切り替えの早さに対
応してきつつあった。
 ヒラメキが埋立地区におけるNTTの地埋設ケーブルの回線図と地下水路図を呼び出し、
モニタの画像と重ねあわせた。隅田川の川底の更に下を太い下水管が通り、それに沿うよ
うにインフラの集合パイプが走る。川を渡るとそれは網に眼のように分岐し、各家庭やオ
フィス、公衆電話へと伸びてゆく。
 昨夜戦ったのが八丁堀地下。豊海町に潜伏しているとなると、地上での目撃報告の無い
ことからすれば有楽町線から大江戸線を経由して埋立地に入ったことになる。
 普通なら有楽町を抜けて皇城へ侵入するルートを取るのだが、その裏をかいてきている。
 狡猾であった。
 勝どき駅へ到達する前にどこかのダクトから下水に移り、埠頭へを抜けた確立が高い。
もっとも、仮に逃走に地上ルートを取ったとしても、ショウケラはその存在を消し去るこ
とが出来る能力を持っているため、一般人の「歩」に発見できた可能性は限りなくゼロに
近かったはずだ。地上に放っていた音式の探索網に引っかからなかったのもそのためか。

「爬虫類型(ショウケラ)の育成環境からいって、冷凍倉庫内に潜伏していることはまず
ありえまい。」
「そりゃまぁそうですが…地下は捜索済みですぜ?だったらあとは『豊海−芝浦トンネル』
の現場ですか?それもありえんでしょう。人が多すぎてすぐにばれる」
「巡回路と繋がっていないのはこのエリアでは唯一そこだけだ。可能性は高い」
「しかし…」
「いえ、当たりかも知れません。たった今第三管区・仁藤三等海尉から入ったメールです。
その現場は先週から休工になっているそうです」

 あの莫迦野郎、と髭面が頭を抱えた。

450 :『皇城の守護鬼』 一之巻 「飛沫く鬼」 捌、:2007/01/11(木) 21:39:24 ID:bBQOr4A50
次回予告。

 二体の大きなな影が風のように疾る。


「いこうか、史郎」
「はい」

 金色と銀の鬼面煌々と。
 清涼なる音高らかに。真夏の空を切り裂いて。



 っぃいよいしょおっ

 渦を裂き、現れ出でしは鉄の──


※)以上は製作途中のもので、予告なく変更される場合が在ります

451 :名無しより愛をこめて:2007/01/11(木) 21:47:54 ID:eibD/Y0J0
皇城さん!あなたを待っていましたよ!!

452 :お帰りなさい:2007/01/11(木) 21:54:54 ID:kEtxMmQaO
皇城さん良く戻ってくれました。
嬉しいッス!

453 :名無しより愛をこめて:2007/01/11(木) 21:59:44 ID:eibD/Y0J0
早速ですけど>>435について皇城さんはどう思います?

454 :皇城の…:2007/01/11(木) 22:17:00 ID:bBQOr4A50
 いろいろお騒がせいたしました。
 お待ちくださっていた方、お言葉を頂いた方、大変うれしく思うと共に感謝いたします。

 件の案件、まだ決着が着いたとはいいがたい現状ですが、ひとまずの沈静化ということで。
 禊(みそぎ)が終わったとは考えないで頂きたいものですが…。

>>453の件について

 流れがよい方向に向くのであれば特に反対する理由は御座いませんが。
 基本的な編纂は読者の方々にお任せし、作者は補足部分を加筆するというスタンスがよいのではないかと考える次第です。

 あくまで私見ですが。
補足部分いついてのみ手を加えさせて

455 :皇城の…:2007/01/11(木) 22:20:28 ID:bBQOr4A50
失礼しました。

補足部分いついてのみ手を加えさせていただくほうが、読み手の想像力を縛らないのでは?
と考えたのですがいかがでしょうか。

456 :見習いメインストーリー:2007/01/13(土) 13:21:50 ID:TmPTiHbZ0
前回は>>427から

二十八之巻「引継ぐ気持」

 陰陽環の男の前に、空手のような構えを取る大洋と努が向き合った。
「始め!」
 今日、十数回目の男の声が掛かった。たちまちのうちに激しい突きと蹴りの応酬が続く。
しかし、いずれも寸止めであった。男の指導が始まってからひと月、大洋も努と互角の
攻防ができるようになってきた──と思っていたのは、大洋の思い過ごしだった。
 努の拳が、手刀に変わった。時には打ち下ろされ、また左右になぎ払われる努の手刀には
刃物を振りかざされているかのような恐怖を感じた。それまでの攻防が嘘だったかのように
大洋は防戦一方となった。
「はッ!」
 努の手刀が自分の喉元に向かって突き入れられた時、大洋の目には、努の姿に重なって、
角を生やして無貌に隈取りの入った、鬼の姿が見えたような気がした。
「止め!」
 男の鋭い声が飛び、努は動きを止めた。大洋は、その前に既に努の手刀によって
動きを止められていた。
 努がゆっくりと手刀を引くと、大洋は止まっていた息を吐きつつ言った。
「い……いま──鬼が見えた……ような気がした」
「そいつは努の『気』だ」
 陰陽環の男が言った。それを聞くと努は面白そうに言った。
「へ〜え、そんなの見えるようになったんだ。すっごいね〜、この短期間で」
 努はベンチに座ると、自分の荷物からタオルを取り出し、吹き出た汗を拭いながら言った。
「最後に成長したところが見れてよかったよ」
「最後?」

457 :見習いメインストーリー:2007/01/13(土) 13:23:03 ID:TmPTiHbZ0
 大洋が訊くと、努はスポーツドリンクを飲みながら言った。
「明日っからオレも『研修』ってのが始まってさ。東京を離れるんだ」
「研修? 猛士の?」
「いや、まあ、猛士と一緒で人を守る仕事だけどね。ライフセーバー」
「……」
「ウチの親も、それならいいって言うからさ〜。だから、君の修行につき合うのは今日で最後」
 荷物をまとめて立ち上がった努に、大洋は言った。
「なあ、アンタ今日ここに来た時に、なんかこう……ヒビキさんみたいな、挨拶してたよな」
「ああ、あれ」
 努は照れ笑いをしながら言った。
「ヒビキさんがやってるような挨拶を、自分流にアレンジして鬼になったらやろうと思ってた
ヤツでさ。鬼にはなれないってわかった時にやめたんだけど、未だにたまにやっちゃうんだよね〜」
 そこで努は、陰陽環の男に向き直って「特にこういう、鬼の人がいるとね」と言った。
「もう一回やってくれ」
 大洋の申し出に、努は笑いながら言った。
「な、なんでさ」
「それ、おれが引き継ぐから。おれがあんたの鬼になりたかった気持ち、引き継ぐから」
 努はちょっと意外そうな顔をしたが、また笑顔に戻って言った。
「へぇ〜、うれしいね〜。まあ、まだ君が鬼になれるかどうかわからないけど、教えとくよ」
 努は二本指を立てた手を上げ、顔の前でシュバッと左右に振った。
 大洋も、真似をして同じ挨拶をした。それを見届けると、努は鞄から腕環を取り出した。
「じゃ、ついでにこれも引き継いでくれる? もうおれには必要ないや」

458 :見習いメインストーリー:2007/01/13(土) 13:24:05 ID:TmPTiHbZ0
 それは、弦も切れ、部品が欠けて腕に嵌めることもできない、古い鬼弦だった。
「ウチはもともと鬼の家系で、コレはたぶん爺ちゃんが使ってたものだと思う。壊れてるから、
ただのお守りみたいなモノだけど。おれが未練がましく持ってるのもなんだから、きみが持ってて」
 その鬼弦を手渡すと、「じゃね。頑張れよ」と言って、努は意気揚々と歩き去っていった。

 翌週の日曜の「たちばな」地下での研修は、関東の鬼の音撃棒、音撃鼓についての講義が行われた。
 みどりは、ホワイトボードに五、六枚の写真を貼って、一つ一つ指し示しながら言った。
「これが、関東の鬼が持っている音撃棒と音撃鼓。太鼓の鬼さんとサバキさんは、彼らが自分で
自宅管理しています」
 次に、置いてあったいくつかの木箱を開けて、みどりはその中に納められた音撃棒と音撃鼓の実物を
純友たちに見せた。
「夏の魔化魍を倒すためには、管や弦の鬼も太鼓が必要だってことは、前に教えたよね?
夏用の音撃武器は、この『たちばな』の地下で管理しています」
 みどりは緑色の音撃棒を取り出して言った。
「これは弦の鬼のザンキさん、トドロキ君が代々使っている音撃棒・落雷。管の鬼のイブキ君も、夏だけ
使う音撃棒の山背風っていうのを持っていて……もしかしたら音撃武器の中で一番数が多いのは太鼓かもね」

「こないだ純友くんから預かった消炭鴉だけど」
 講義が終わった後、みどりは机に着く二人を前にして言った。
「ソフト面、ハード面共に特に変わったところはなかったわ。……まあ、期待はしてなかったけどね。
最初から、ディスクの機構というよりは、それに宿る魂の問題だと言われていたから」

459 :見習いメインストーリー:2007/01/13(土) 13:24:56 ID:TmPTiHbZ0
 純友は、期待に満ちた顔をしてみどりに言った。
「……で? で? 消炭鴉は、今どこにあるんですか?」
「それなんだけど……」
 みどりは言い辛そうに言った。
「ごめん、純友くん。今後あの消炭鴉は、関東支部で預からせてほしいの」
「え……?」
「なんでだよ!」
 大洋も異をとなえた。──あのディスクの特性を利用して魔化魍をあやつる者たちを見つけ出し、
橘多美の敵討ちを考えていたが、それもできなくなってしまう。
「これは、猛士の本部で決定したことなの。あのディスクを持っていることで、君に無用な危険が迫る
のを回避するため。──および、次にあいつらが現れた時に、ディスクの反応を関東支部で検証するため」
 純友は、涙を流すだけで何も言えなかった。
「あ〜、泣かないで純友くん。代わりに君にはこの白練大猿を貸し出すから」
 みどりはディスクを一枚出して、純友に手渡した。純友はディスクを手にしながら泣いた。
「そ、そんな……ぼくが、唯一起動できるディスクだったのに……」
「純友くん。私がディスクを君に貸し出しているのは、ディスクの内部構造を理解してほしいからよ。
──だからわかって、純友くん」
「は、はい……」
 手にした銀色の円盤に、純友の涙が落ちた。
 ──こうして純友は、初めてにして唯一、陰陽環なしで起動できたディスクであり、また今まで
何度も危機を救ってくれた存在でもある、消炭鴉を手放すことになった。

二十八之巻「引継ぐ気持」了

460 :見習いメインストーリー:2007/01/13(土) 13:26:36 ID:TmPTiHbZ0
次回予告

「おれと勝負しませんか?」
「そうなんだ……彼、楽器ができるんだ」
「全然鳴らないよぉぉ〜」
「あれ? 何か忘れてるような……始末書たくさん書くと、ナンかあったような……」

見習いメインストーリー 二十九之巻「鳴らす管」

461 :名無しより愛をこめて:2007/01/13(土) 18:21:11 ID:sZ5iT0kdO
消炭鴉と純友の絡みが気になるw
DA年中行事さんコラボの可能性大!

462 :高鬼SS作者:2007/01/14(日) 10:18:04 ID:nQnN8N7R0
こういう番組では恒例の総集編を一本投下します。
俺自身が今までの展開を整理するためというのもあります。
「あれ、こんな話やったか?」という内容も出てきますが、それはあくまで今後投下 予 定 のネタです。
ストーリーは決めてあるけどまだ書いてないし。
それでは行かせてもらいます。どうぞ。

463 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:19:00 ID:nQnN8N7R0
1978年、年末。
鹿児島県甑島。この島の小さな漁村で毎年行われている伝統行事がある。それは……。
「坊主どもー!良い子にしてたかぁ!?」
二人の鬼が窓から民家に押し入って、その家の子ども達を相手に説教を始めた。
この行事の名前は「トシドン」。秋田のナマハゲと同じコンセプトの行事だ。つい昨年(1977年)、国の重要無形民俗文化財に指定されている。
そう、今は十二月三十一日。大晦日の夜である。そして猛士関係者の家に訪れた二人のトシドンは、九州支部所属の闇月鬼と爪弾鬼だった。
毎年、甑島の猛士関係者の家には九州支部の鬼が交代でトシドンのために訪れるようになっている。今年はこの二人の担当だった。
特に、トシドンは馬に乗ってやって来るという伝承があるため、実際に馬に乗っている闇月鬼はこの役にうってつけだと言えよう。
「お前達は実にいかん。お袋さんがペットを飼うのは禁止だと言ったのに、こっそりと猫を拾ってきたそうじゃないか」
幼い兄妹が目に涙を浮かべながら闇月鬼の説教を受けている。
「……だがそれがいい。弱いものを労る気持ち、幾つになっても忘れるんじゃないぞ」
いきなり顔の変身を解除したヤミツキが兄妹に優しい笑みを見せた。
「さあ、お前達にはこいつをやろう!笑え笑え!笑顔で新年を迎えようじゃないか!」
そう言うと手にした袋の中から丸餅を取り出して兄妹に手渡すヤミツキ。彼の笑顔に感化されて、幼い二人の顔に笑みが戻った。

「勘弁して下さいよ、ヤミツキさん……」
そうツマビキがぼやく。二人はヤミツキの愛馬である黒風の背に乗って帰路に着いている最中だった。
「人前で素顔を出した事か?だってそうしないと笑顔が伝わらないじゃないか」
「だからって……」
「まあまあ。それより急いで船に乗らなきゃ。支部の皆と初詣に行くのが遅くなっちまう。来年は良い年になるよう心からお祈りしなきゃな」
ヤミツキがそう言うや否や、まるで主人の意思を汲み取ったかのように、突然黒風が速度を上げた。
「うおうっ!きゅ、急にスピードを上げるのは勘弁して下さいよ!」
「迂闊に喋ると舌を噛むぞ」
その名の通り風のように疾走していく黒風。その馬上でヤミツキは、ふと余所の支部の鬼達は今頃何をしているのかと想いを巡らせていた。

464 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:20:10 ID:nQnN8N7R0
秋田県男鹿市。
やはり猛士関係者の自宅で一人の鬼が、家の主人の用意した酒と料理に舌鼓を打っていた。暁鬼だ。
彼は天美家の慣習を守るため、関西支部出向になってからも毎年律儀に故郷に戻ってきてはなまはげを続けていた。
「ご苦労様です」
主人に手酌されて酒を飲む暁鬼。勿論その姿は鬼のままだ。
「暁鬼さん、正式にこちらへ戻ってくるのはいつになります?」
「……分からないな。親玉は今あっちを拠点にして活動している。暫くは戻れないだろう」
酔いの所為かいつもより饒舌になっている。
と、さっきまでなまはげに震え上がっていた子ども達が急に騒ぎ始めた。喉下過ぎれば何とやら、というやつである。
五月蝿く騒がれて主人の話し声が聞こえなくなった事に腹を立てた暁鬼は、口を大きく開けて子ども達を威嚇した。その姿に子ども達の動きが一瞬止まり、次いで泣き声の大合唱が始まった。どうやら逆効果だったようだ。
「泣くな!……俺が悪かった。今度ババヘラアイスを奢ってやる」
途端に泣き止む子ども達。まるで最初からそれが目当てだったかのようだ。
「すみません、うちの子ども達が……」
「構わんよ。……御馳走になった。ここらでお暇させてもらおう」
杯を飲み干して立ち上がる暁鬼。
玄関で見送る主人夫婦に向かって暁鬼はこう告げた。
「……さっきの話の続きだが、関西支部の連中は来年中には決着を付けようと考えているようだ。その場合、厳しい戦いになるだろう……」
それだけ告げると暁鬼は雪の降る外へと出て行った。その後ろ姿に向かって主人が声を掛ける。
「暁鬼さん、また来年も来て下さいな。子ども達との約束のためにも」
暁鬼は振り向かず、ただ軽く手を挙げると夜の闇の中へと消えていった。
最後まで彼の後ろ姿を見送っていた主人が、妻に向かってこう呟いた。
「あの人も変わられた。昔のあの人なら、子ども達に何かを奢ってやるだなんて口が裂けても言う筈が無かった」
向こうで余程良い仲間に出会えたのでしょうね。そう妻が言った。
もう少しで年が明ける。夫婦は家族が待つ家の中へと戻っていった。

465 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:23:31 ID:nQnN8N7R0
「お前ってさ、いつ見てもホンット冴えない面してるよなぁ」
まつに向かって堂々と言い放つ石川。
「会った早々それですか!?そんなんだから三十にもなって浮いた話が一つも無いんですよ!」
「うっせーよ!冴えない女に何言われたって痛くも痒くもないもんね!へへん!」
ここは奈良県生駒郡斑鳩町。関西支部の面々はその地に建つ斑鳩寺――即ち法隆寺の除夜の鐘を聞きにやって来ていた。都合で来られなかった者もいるが、ほぼいつもの面々が集まっている。
「あの馬鹿者が。行く年を偲び来る年を祝うこの場で何を……」
「まあまあ、あの二人にとってはいつもの事じゃないの。寧ろ顔を合わせて普通に挨拶をするようだったらそっちの方が異常に思えるわ」
まるで子どものように口喧嘩を続けつつ追い掛けっこを始めた石川とまつを眺めながら、コウキとあかねが話し合っていた。あかねの言う通り、まつは本気で怒っているわけではないし、ニシキとセイキもいつもの事と放置してある。
「……早いものね。もう昭和五十三年が終わる。そして五十四年。あと一年で1970年代は終了よ?」
しみじみとそう呟くあかね。
「コウキくんって鬼になったのはいつだったっけ。確か60年代の終わり頃だったよね?」
もう十年近くも鬼として戦っている事になる。まだ新米だったあの頃の彼も、今では支部の若い鬼達を引っ張っていく存在となっている。
「この約十年間、色々あったよね」
「ええ。あの連中が引き起こしたものも含めて、色々な事が起こりました」
感慨深げにそう語るコウキ。二人は、1970年代に起きた様々な出来事を思い出していた。

1970年、皐月。
万博のどさくさに紛れて大陸から渡ってきた魔化魍とコウキは戦っている。
「苦戦したんでしょ?」
「今ならそれ程でもありませんよ。『紅』にもなれますしね」
同年、葉月。
猛士の半ば形骸化していた因習がとある出来事を切っ掛けに廃止された。
「あの時はどうなる事かと思ったよ」
「ええ。総本部長が物分りの良い方で良かったですよ。お蔭でバキさんもお咎め無しでしたし」
「でも四柱家のお偉いさんとは随分揉めたみたいよ、総本部長」
私が「銀」になる以前からずっと型破りな人だったみたいだからね、とあかねは苦笑しながら言った。

466 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:24:21 ID:nQnN8N7R0
1971年、皐月。
コウキとあかねは宝探しの手伝いとして大阪を訪れている。
「あの堀衛門とかいう男は今頃どうしているのでしょうね」
「意外とまだ宝探しをしているかもね。確か四国でも偶然会ったんでしょ?」
そう。コウキはその五年後に四国で彼と再会している。その時もやはり彼は宝探しをしていた。

1972年、皐月。
沖縄が日本に返還された直後、沖縄支部の支部長が総本部へ挨拶に来ている。その際、一人の鬼が支部長に同行して総本部を訪れていた。
鬼の名前はムカツキ(向月鬼)。沖縄古武術に長け、やはり沖縄の古武道で用いられるトンファーを模した音撃棒を振るう鬼だ。
彼は以前から猛士最強と名高いバキ、そして格闘技術だけならバキにも匹敵する四国のコンペキと手合わせする事をずっと望んでいたらしい。
「バキくんとムカツキくん、結局どっちが勝ったんだっけ?」
「引き分けです。再戦を誓い合ったまま結局六年も経ってしまった……」
大会議の席で顔を合わす事はあっても、このような場で私闘を行うのは両者共流石に謹んでいるらしい。

1973年、葉月。
コウキはセイキ、ドキ、まつと共に山中異界へと迷い込み不思議な体験をしている。それは最終的に沢山の人達に悲しみと絶望を与えるという結果を残し、その件は今でもコウキの心に深く刻み込まれている。
同年、師走。
日本各地に同時に稀種が発生し、コウキも奈良の地でこれと対峙している。
「あの時は私の不手際で……」
「そこまでよ。五年も前の事をいちいち蒸し返さないの。結果的に人的被害が出る前に退治出来ているんだから」
いずれも人里離れた場所で発生しているため、大した被害は出ていない。

467 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:27:05 ID:nQnN8N7R0
1974年、葉月。
この時京都で発生した魔化魍ノブスマは、翌月日本全国で大量発生して各地の鬼を苦しめている。
あの後、総本部の研究室には各支部から破損した音撃武器の修理依頼や何やらが舞い込んで修羅場と化していた。
「あの時はモチヅキくんの医療班も大変だったみたいね。各地に血清を送るために不眠不休で働き続けていたし」
北陸支部の「銀」が薬物精製のエキスパートだったため、協力してもらっていたらしい。確かに、その当時モチヅキと一緒に見慣れない男が研究室を行き来していたのをコウキは覚えている。
同年、師走。
コウキとあかねは秋田で名門の鬼、アカツキと出会った。彼を関西支部に連れて行くためだ。
「彼、あの時と比べて少し変わったと思わない?」
「そうですか?不遜なのは相変わらずだと思うのですが……」
そう答えるコウキに対し、あかねは「ふふっ」と笑った。

1975年、睦月。
年明け早々コウキはニシキと共に滋賀県の山中へと魔化魍退治に向かった。その際、コウキはニシキの知られざる特技を目の当たりにしている。
(あいつめ、しっかりと灸を据えてやったが……よもやまだやっているのではないだろうな)
同年、卯月。
関西支部の人間から「聖域」と呼ばれる三輪山に神を名乗る謎の童子と姫が現れ、コウキはこれと戦っている。
この件は猛士内部では黒歴史扱いになってしまい詮索は禁じられたが、あかねはいつものようにあの連中の仕業であろうと考えている。
そしてこの年の夏、コウキにとって、否、この当時関西支部に在籍していた全ての者にとって忘れられない出来事が起きた。伝説となったコウキの「三十匹殺し」だ。
この日、コウキは言霊と科学を融合させた全く新しい音撃武器を開発している。これを見てあかねは自分の後任はコウキしかいないと確信したのだ。
その戦いで折れた音撃棒の代わりに、あかねは新しい音撃棒を三輪山の霊木を使って制作しコウキに渡している。そして彼は二ヶ月で霊木から放たれる陽の気を克服する事に成功している。
「この年の夏は大変だったよね。モウリョウなんて厄介なのまで湧いちゃったし……」
「この二年の間に連中が表立って動き始めましたよね」

468 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:28:47 ID:nQnN8N7R0
1976年、弥生。
この月から五ヶ月もの間、コウキは四国支部へと出向し戦っている。負傷したコンペキの代理としてだ。そこでコウキは一人の男と出会った。
「その時お世話になった人、キリサキくんだっけ?元気にやっているのかしらね」
「あいつは年賀状を出しても全く返事が来ない!今年もあいつ宛に出しましたが絶対来ないですよ!絶対」
少し苛々してくるコウキ。キリサキは大会議にはいつも欠席するため、数年間音信不通となっている。
「そんなに怒らないの!……コウキくんが向こうに行ってる間、こっちも大変だったんだからね」
これ以上コウキを怒らせないように、あかねは話題を変えた。
「ああ、確か紀伊半島沖で……」
この年の文月に、紀伊半島沖に水棲魔化魍が大量に発生し、イブキ等七名の鬼が退治に向かったと聞いている。その件については「人食い島の戦い」として記録されている。
「イッキが大活躍だったそうじゃないですか。バキさんやニシキからそう聞きました」
イッキは夏の強化形態に変身し、獅子奮迅の活躍を見せたという。
また、あの連中が始めて猛士の鬼達の前に姿を現したのもこの時が最初だ。
「戻ってきた早々コウキくんには苦労を掛けちゃったね。セイキくん達の代わりに兵庫まで行ってもらったり……」
「はい。そして……鞍馬山での一件ですね」

469 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:29:19 ID:nQnN8N7R0
同年、長月。
日本史上最大の降雨量を記録した台風十七号が直撃する中、京都鞍馬山で八大天狗の一角である僧正坊が蘇った。関西支部から多数の負傷者を出したこの戦いは「鞍馬山の変」として記録されている。
コウキはこの戦いの最中、古の鬼の力を借りて戦っている。
「私も見てみたかったなぁ。伝説の鬼の姿を……」
当のコウキはその時の記憶を失っており、その姿を目撃したのはその場に居たイブキとアカツキのみである。
その後、中国支部と中部支部から補充要員がやって来た。その中には、中部最強の太鼓使いであるカラスキの姿もあった。彼は後輩のカゲキ(影鬼)、リュウキ(隆鬼)と共に関西支部を訪れている。
「カゲキくん、ドキくんと会いたがっていたけど、この時彼は入院中だったからね……」
二人は同じ場所で忍の技術を学んだライバルだと聞いている。会う度に互いの実力を比べあおうという約束を昔交わしているらしい。
「リュウキくんもあの時はまだ新米だったけど、もうそれなりに一人前になったかなぁ」
リュウキの事を思い出しながらあかねが言う。まだ新米だった彼は、経験を積むためにカラスキに連れられて関西へと出向してきていた。
コウキもまた、彼と、彼の持っていた昇り龍が彫られた音撃弦の事を思い浮かべていた。
同年の神無月には、イブキを救う為に一年振りにコウキが言霊マイクを作っている。また、その翌月には退院したばかりのセイキ、ドキと共にコウキは稀種魔化魍を退治している。

470 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:32:32 ID:nQnN8N7R0
1977年、卯月。
奈良県大淀町の旧家で起きた変死事件の裏に魔化魍の存在が認められ、コウキは身分を偽って現場へと赴き、ついでにそこで起きた殺人事件まで解決している。
「シチュエーションといい、まるで金田一耕助みたいだよね。私もコウキくんの名推理を聞きたかったなぁ」
「大した事は何もしていませんよ」
「でも担当の刑事さん、物凄く君の事を評価していたよ?」
この時知り合った奈良県警の大沢刑事とは、四ヶ月後に思わぬ形で再会している。
同年、長月。
コウキは民間人の家を全焼させてしまい、厳しい処分を受けている。あかねもまた、同じ件で処分を受けていた。
「……こんな事言えた義理じゃないのは分かっていますが、今何処で何をしているのでしょうね、金賀さん」
「……さあ。故郷へ帰っているんじゃないかと思うけど……。関東支部に連絡を入れて調査してもらう?」
「いえ。……何故か関東支部と聞くと悪寒が走るのです。何ででしょうかね?」
同年、神無月。
中国支部管轄の大山で蘇った伯耆坊退治のために、コウキはイブキ達と共に鳥取県へと向かっている。その際、彼等には伝説の音撃武器が貸し与えられていた。
「それにしてもあの三種の音撃武器は凄かったですね。あんな寒い場所で使用したにも拘らず、あそこまで良い音が出せるだなんて……」
「器物は百年経つと化けるとか不思議な力を宿すとか色々言われてるからね。況してやあれは古の鬼が魂を込めて奏でた楽器。到底私達の常識で語る事は出来ないわ」
同年、霜月。
コウキとイッキは潜入捜査の際のちょっとした失敗の罰として、先の大山での戦いで多くの負傷者を出した中国支部のシフトを掛け持ちする事になった。
そこでもコウキは様々な鬼に出会った。また、四国支部の懐かしい面々とも久し振りに会って会話を楽しむ事が出来た。
そして師走には、北海道支部から運ばれてきた雲外鏡によってちょっとした騒動が起こっている。
「あの時はね……本当に死ぬかと思ったよ」
その時の事を思い出してあかねが言う。ほんの一年前の出来事だ。
「雲外鏡の始末はあれで本当に良かったのでしょうか?」
「幾ら貴重な品でも、あそこまで危険な代物じゃあしょうがないわねぇ……」
そう言いつつも、何処か未練の残った言い方をするあかねであった。

471 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:34:07 ID:nQnN8N7R0
1978年、即ち今年の睦月。
コウキ達は中国支部の新年会に招かれた。だがそれから間もなく、コウキは人形峠で、突然変異によって放射能を取り込んだツチグモと戦う事になった。
「最初話を聞いた時は我が耳を疑ったわ。放射能を吐くツチグモだなんて。京極くんも是非一度見てみたかったとぼやいていたわよ」
笑いながらそう告げるあかね。
その後も中国支部では様々な出来事がコウキを待ち受けていた。弥生には石見銀山でツツガムシとの、卯月には厳島で画霊との戦いがあった。尤も、ツツガムシ戦の直後に起きたとある出来事だけは、コウキはあかねにも話していない。
また、如月には関西支部の面々と共に、五十年に一度起こるという金霊に遭遇している。これが兎に角とんでもなかった。
「あの後、別の班に居たニシキにこう言われましたよ。総本部長やイブキさん達のキャラが壊れる瞬間を是が非でも見てみたかったですよ――と」
「私もあの後京極くんに怒られちゃったよ。一緒になって小判を漁るとは何事だ――って」
顔を見合わせて溜め息を吐く二人。確かにあの時、あの場に居た全ての者が何処かおかしくなっていたのは事実だ。
同年、皐月。
コウキは三上山での戦いで音撃弦を失っている。あの後、四国支部のキリサキに貸したままの音撃弦を返すよう連絡しようとしたが、結局止めて今は弦を使わなくなっている。
そして長月。あの連中の実験、イレギュラーの出現、定期的に発生する魔化魍の出現時期が重なり、数日に渡って京都各地を舞台にコウキ達関西支部の鬼が戦っている。
「京都動乱」の名前で記録されたその件以降、いい加減あの連中との決着を着けるべきだとの風潮が支部内で高まってきていた。おそらく、来年には関西支部も何らかの動きを見せるだろう。

472 :仮面ライダー高鬼「のぞむ新年」:2007/01/14(日) 10:34:54 ID:nQnN8N7R0
除夜の鐘が厳かに鳴り響く。
「……今年ももう終わるね」
「……はい」
「今年の嫌な事は全部鐘の音と一緒に忘れちゃいましょ!ね!」
「それは……ひょっとしてあの事を仰っているのですか?」
コウキが嫌な顔を見せた。彼はつい最近、京都で警察のご厄介になっているのだ。
「まあまあ。そんな顔をしていると幸福なんてやって来ないよ?」
「まさか、そんな……」
と、次の瞬間、まつとずっと追い掛けっこをしていた石川がコウキの背中に思いっきり激突してしまった。
「あ痛たた……。おい、ボケッと突っ立ってるんじゃ……ってコウキさん!?」
「石川、貴様という奴は……」
明らかにコウキは怒っている。そして案の定……。
「石川ぁ!貴様の尻を煩悩の数だけ叩いてくれるわぁ!」
「ぎえええ!それだけは勘弁して下さい〜!」
「待てえ!」
警策を片手に石川を追って走り出すコウキ。
「ちょっとコウキくん!もう……」
止めようかとも思ったが、結局あかねはそうしなかった。きっとコウキは石川を追い掛けているうちに新年を迎える事だろう。如何にも彼らしい。
そして。
昭和五十三年は終わりを告げ。
新しい年が、70年代最後の年が訪れた。 了

473 :見習いメインストーリー:2007/01/16(火) 22:50:34 ID:qj3o3Tmn0
前回は>>456から

二十九之巻「鳴らす管」

 放課後、純友が将棋部の部活に出ていると、そこに安達明日夢がやってきた。
「安達くん?」
 うかない顔をした明日夢の後ろに、不遜な態度で腕を組んでいる一人の生徒がいた。
「あの、それがその……」
 言いよどむ明日夢の前に出て、その生徒は言った。
「おれと勝負しませんか?」
 他校の制服を着ているのを見て、純友は部活を選びに来た転入生かと思って言った。
「入部希望? 取りあえず、こっちに来てぼくと打ってみる?」
「何も、あなた『一人』と勝負するとは言っていませんよ」
「ちょっと、桐矢くん……!」
 止めようとする明日夢を無視して、桐矢京介は言った。
「おれは、部全体と勝負したいんです」

 部にあった将棋盤をフル稼働して、純友を含む五人と、桐矢京介との五面打ちが始まったが
──三〇分も過ぎた頃、最後の一人が京介に打ち負かされた。
「残念だけど、おれが入部するにはレベルが低過ぎますね」
 そう言い残して京介は去っていった。明日夢は純友たちに「すみません」と言ってから京介の
後を追っていった。

 純友たちの受ける猛士の研修は、九月からは音撃管についての講義に入っていった。
「──音撃鳴を外した状態を銃撃モード、装着した状態を音撃モードと呼んでいます」
 日曜日、「たちばな」の地下で、みどりは音撃管とそれに装着する音撃鳴の説明を行った。

474 :見習いメインストーリー:2007/01/16(火) 22:51:20 ID:qj3o3Tmn0
 休憩を挟んだ後、展示室に移動した三人は、各自が音撃管を持った。
「じゃあ、私が見本を見せるね」
 みどりはトロンボーン型の音撃管を構えて、鮮やかに演奏してみせた。
「上手ですね……」
 感心して純友は言った。ひとしきり吹き終えると、みどりは胸を張って言った。
「えへへ。中学校でブラスバンド部の部長をやってたの」
「なんだこんなモン」
 大洋も音撃管を構えて吹き鳴らそうとしたが、まったく音が出ない。力いっぱい吹き込んて
みたが、わずかに途切れ途切れの音が漏れるだけだった。
「くそ! こないだ安達が連れてた転校生は、いきなりブラバンの部室に来て、簡単に吹いてた
とかいう話なのによォ」
 音撃管から口を離して大洋がそう言うと、みどりは言った。
「大洋くん、吹くの初めてなんでしょ? 最初から音を出せなくてもいいと思うよ」
「その転校生、安達くんが連れてたっていうのなら、たぶんウチの部に来てたのと同じ生徒だ。
桐矢くんって言ったかな」
「あ、その子『たちばな』にも来たよ」
 純友が言う名前を聞いて、みどりは言った。
「そうなんだ……彼、楽器ができるんだ」
「おれだってできますよ、ほら」
 再び音撃管を構えて吹き鳴らそうとする大洋だったが、どうしても音が続かなかった。
 純友もトランペット型の音撃管を構えて息を吹き込んだが、いくらやってみても音がしない。
「全然鳴らないよぉぉ〜」

475 :見習いメインストーリー:2007/01/16(火) 22:52:44 ID:qj3o3Tmn0
「それくらいで泣くんじゃねえ」
 結局その日、純友たちの演奏にそれ以上の進歩はなかった。

 今月は音撃管についての講義が続き、その週の学科研修の内容は、関東の鬼が持つ音撃管、
音撃鳴についてであった。
「──これらは、管の鬼のみんなと、それにサバキさんが自宅で管理しています」
 ホワイトボードに貼った何枚かの写真を指し示しながら、みどりは説明を続けた。
「君たちが先週から使っている、そこの展示室にある音撃管はみんな試作品ね。
耐久性が無いから扱いには注意してね」

 その日の実技研修も、引き続き音撃管の演奏だった。みどりの教え方が良かったのか、
大洋はそれなりに音が鳴るようになったが、純友は、相変わらず何の音も出せなかった。
「今日も駄目だったよ……」
 がっくりとしながら、純友は試作品の音撃管を片付けに入った。先に片付け終えた大洋は、
展示室を出てみどりの元へ行って話をしていた。
「純友に、消炭鴉を返してやってくれ……いや、返してやってください」
「ダメよ」
 あっさりと、笑顔でみどりは断った。
「なんで」
「『なんで』は、こっちの台詞」
 真面目な顔になってみどりは大洋に言った。
「大洋くん、何が馬鹿なこと考えてない?」

476 :見習いメインストーリー:2007/01/16(火) 22:53:24 ID:qj3o3Tmn0
 ぐっと詰まる大洋に、更にみどりは言った。
「先月、純友くんに『凄・橘』の通報を出してもらった日、大洋くん、純友くんに何か言って
たでしょう?──あれって、消炭鴉が『凄・橘』に反応したことを君に連絡しなかったから
──それを怒っていたんでしょ?」
 みどりは腕を組んで言った。
「自分たちの手であいつらを倒そうなんて、馬鹿なことは考えちゃダメ」
「……。悪かったよ。まあ、それもあるけど──あれは、あいつの相棒みたいなディスクだし、
あれが返ってくれば純友のヤツも喜ぶかな、ってのもあって……」
 それを聞いて、みどりはまた笑顔に戻って言った。
「──大洋くん。君も、優しくなったね。純友くんも、多少は強くなったみたいだし──」
 その時、展示室の方で、床に金属が落ちるけたたましい音がした。そして、泣きながら、
ぽっきりと折れたマウスパイプとトランペット本体を両手に持った純友が出てきた。
「うぇぇぇぇ〜ん……折っちゃいましたぁ、すみませぇぇぇぇん!」
「……前言撤回」
 額に手を当てて、みどりは大洋だけに聞こえるように言った。
「失敗を反省する気持ちは大切だけど、男の子なんだから、ここで泣かないでほしいナ……」
 純友に近づくと、その手から破損した音撃管を受け取り、純友を椅子に座らせ、お茶を入れて
隣に始末書の用紙とペンを添えた。みどりも、こんな時の対処にだいぶ慣れてしまった。
 泣きながら始末書を書く純友を見ながら、大洋は一人つぶやいた。
「あれ? 何か忘れてるような……始末書たくさん書くと、ナンかあったような……」

 規定の二〇枚に達したため、純友は吉野の本部での研修を受けることになった。

二十九之巻「鳴らす管」了

477 :見習いメインストーリー:2007/01/16(火) 22:54:26 ID:qj3o3Tmn0
次回予告

「関東支部の須佐純友だな?」
「あの……これがホントに『銀』の研修なんですか?」
「男子たるもの、この程度で泣くなッ!!」
「うぅぅ……眠いよぉ──痛いよぉ……」

見習いメインストーリー 三十之巻「磨く鎧」

478 :名無しより愛をこめて:2007/01/17(水) 17:09:38 ID:eM0r3ExI0
相変わらず始末書のくだりが・・・。
次回、木暮登場で純友が鎧を磨かされるな。
なんの捻りもないサブタイは飽きるよ。少しくらい比喩を使って捻って欲しい・・・。

479 :名無しより愛をこめて:2007/01/17(水) 21:29:03 ID:k7OO7rJGO
今流れを変えると前回とのバランスおかしくね?
俺はこのままでいいと思う。

480 :名無しより愛をこめて:2007/01/17(水) 22:35:48 ID:eM0r3ExI0
ごめん。前言撤回。
純友が鎧を磨かされるんじゃなくて、鎧が何かを磨くんだな。

481 :名無しより愛をこめて:2007/01/18(木) 09:53:41 ID:jM3TQ0yA0
ところで2ch閉鎖だとここはどうすんの?
どっかに移動するの?

482 :名無しより愛をこめて:2007/01/18(木) 10:18:41 ID:A12vXXT8O
>>478>>480
サブタイは確かに少し捻った方が良いけど、始末書は出てきていーじゃん。
裁鬼SSの忘れ物みたいで

483 :名無しより愛をこめて:2007/01/18(木) 20:49:52 ID:5uifiEn30
>>481
ttp://softbank.s231.xrea.com/
ここ↑にある移転先候補のどこかに移転じゃね?

閉鎖しなさそうだけど。

484 :見習いメインストーリー:2007/01/20(土) 13:22:23 ID:bMKqLQ0L0
前回は>>473から

三十之巻「磨く鎧」

 猛士の本部・吉野の総本山。そこは、高齢の元鬼たちが後進の育成に努め、また鬼たちの
歴史を記した古文書や、古来の音撃武器などが保管されている、猛士の本拠地である。
 始末書が二〇枚に達したため、本部での研修が決まった純友は奈良にやってきた。
 三連休を利用して、純友は知り合いのオリエンテーリング選手と共に、二泊三日の
キャンプに出掛ける──ということに表向きは、なっていた。

 二日分の着替え等を詰めたスポーツバッグを肩に提げ、駅前からバスに乗り、降りてから
更に歩くこと数十分。へろへろになりながら石段を上りきった純友が目にしたのは、しなびた
神社のたたずまいだった。
「え……? ココが……!?」
 筆で書かれた案内書を何度も見直したが、ここまでの道順に間違いはない。しかし、純友が
想像していた豪華で近代的な設備や、伝説の武具の数々が納められた巨大な保管庫などは一切なく、
何よりも人の気配がほとんど感じられなかった。
 そして、神社の入り口近くに立つ石碑には「鬼武神社」という文字が彫り込まれていた。
(どう考えてもただの神社にしか……)
 純友が恐る恐る境内の様子を伺っていると、背後から低い声がした。
「関東支部の須佐純友だな?」
「ひゃいぃ!」
 驚きすぎて裏返った声で答え、純友が振り向くと、そこに彫りの深い顔立ちをした五十前後と
思われる男が立っていた。
「なんだその情けない返事は。『男子は常に、逞しく』だ!」

485 :見習いメインストーリー:2007/01/20(土) 13:23:15 ID:bMKqLQ0L0
 十分後、純友は本堂で結跏趺坐の姿勢をとっていた。
 入って来た時にあいさつをかわした神社の神主や数人の巫女の他には人の姿はなく、聞こえる
のは虫の声だけだった。
「目は開けたままだ。視線は一メートルほど前に落とし、特に何も見つめるな。見えるものは
見えるままにしたまえ」
 背後から聞こえる男の声が右に左に移動する。男が純友の背後を行ったり来たりしていた。
「あの……これがホントに『銀』の研修なんですか?」
「なんだと?」
 背後の声が鋭くなって純友は縮み上がった。
「この私が──猛士本部の技術部開発局長・小暮耕之助が直々に出向いてやっているのだぞ!」
 小暮の声が背後で止まり、同時に純友の肩に硬く鋭い一撃が炸裂した。
「ぎゃひぃっ!」
 小暮の手にした警策が純友を打ち据えていた。
「貴様は姿勢が悪い。その猫背をどうにかしろ!」
 座禅を組んだまましくしくと泣き出した純友に、容赦なく小暮の激が飛ぶ。
「男子たるもの、この程度で泣くなッ!!」
 その夜、肩の痛みに泣きながら純友は眠りについた。
「──起きたまえ!」
 痛みでなかなか寝付けなかった純友は、翌朝、寝不足の状態で小暮の叫び声に叩き起こされた。
「うぅぅ……眠いよぉ──痛いよぉ……」
 座禅、朝食、座禅と続いた後、純友は小暮の指導の下、本堂の床を雑巾がけしていた。
「何をぶつぶつ言っている! 心を込めて床を磨きたまえ」

486 :見習いメインストーリー:2007/01/20(土) 13:24:15 ID:bMKqLQ0L0
 昼食の後、わずかな休憩時間に神社の境内でぐったりとしていた純友は、泣きながら呟いていた。
「……こんなのが本部の研修だなんて……座禅と掃除しかしてないよぉぉぉ」
「──この後も座禅と掃除しかないぞ」
 背後から小暮の声が聞こえ、びくりとして純友は背筋を伸ばした。
「休憩は終わりだ、来たまえ」
 本堂の真ん中に、純友が雑巾がけをしていた時にはなかった、黒塗りの鎧櫃(よろいびつ)があった。
「今日の午後は、これの掃除だ。開けて中身を取り出したまえ」
 純友は、蓋を開けて櫃の中から鎧兜を取り出して、床に広げられた保護シートの上に置いていった。
 白色の頭頂部が尖った兜には金色の鷲の面が付き、兜の側頭部から後頭部を覆う錣(しころ)と、
鎧の色は赤だった。
「これがなんだかわかるかね」
「これはまさか──『鬼の鎧』?」
 先月の音撃鼓の講義の時にみどりが言っていたことを純友は思い出した。
「分解して清掃した後、再び組み立ててもらう」
「これが──す、凄い。これを着れば……鬼じゃなくても音撃ができるんだ」
 純友は目を輝かせて、シートの上に並べられた鬼の鎧を見ていた。

 鎧や兜の裏面には、各所に呪符のようなものが縫い込まれていた。これに鬼の呪力が封じられて
いると小暮は説明した。
「──滝澤君の弟子だそうだな、君は」
「……はい」
 分解した鎧の手入れをしながら、純友は答えた。

487 :見習いメインストーリー:2007/01/20(土) 13:25:22 ID:bMKqLQ0L0
「滝澤君は、私の弟子だった。よって君は私の孫弟子ということになるわけだが……情けない。
研修を始めてたった半年で始末書を二〇枚も書く粗忽さ。未だに、陰陽環なしでは音式神を起動で
きない鍛えの足りなさ。その首から下げている物は飾りか? 男子たるもの、それでいいのかッ!!」
 いきなり声を荒げられて純友は泣きそうになった。
「この『鬼の鎧』は、着れば誰でも音撃を放てるようになるというわけではない。鍛えた者が
着て初めて、この鎧は力を発揮する。──つまり、君が着ても意味がないもの、というわけだ」
 わかっていたことだが、改めて言われ、純友はがっくりと肩を落とした。
「男子でない滝澤君でさえ、これを着て戦ったこともあるんだぞ。さすが、私の弟子という
ところだが。──彼女は、鍛えている。『銀』としての技術力も申し分ない。今のままでは、
君は滝澤君の弟子として恥ずかしいぞ。もっと精進しなさい」
 そういうと、小暮は本堂を出ていった。

 連休最終日、純友は早起きと、座禅と、神社の本堂や境内の掃除を終えた後、昼食をお世話に
なってから、鬼武神社を後にした。
 帰る道中、純友は小暮に訊いた。
「みどりさんが『鬼の鎧』を着て戦ったことがあるって、本当ですか?」
「ああ。もう何年も前の話だが、彼女は他の者と協力して音撃管で魔化魍を退治したことがある」
 みどりと言えば、研究室で白衣を着ておっとりと喋る姿しか印象にない。だが、ディスク
アニマルを起動できることは確かだし、自ら「鍛えている」と言っていた。
「あの……小暮さんももちろん、『鬼の鎧』を着て戦ったことがあるんですよね」
 純友は、知らなかった。──その昔、小暮が「疾風鋼の鬼」と呼ばれていた鬼だということを。
 山中に小暮の怒声と警策の叩く音、それに純友の悲鳴がこだました。

三十之巻「磨く鎧」了

488 :見習いメインストーリー:2007/01/20(土) 13:26:18 ID:bMKqLQ0L0
次回予告

「『銀』の見習いでありながら、全国の『銀』の長たる私の経歴を知らんとは」
「だ……だってそこまで研修で教わっていませんし……」
「何をしている! そいつから離れろ!」
「小暮さん……?」

見習いメインストーリー 三十一之巻「佇む白影」

489 :名無しより愛をこめて:2007/01/20(土) 13:40:37 ID:8aVQ2Goa0
おい、見習い。
お前はなんで>>396みたいにアドバイスしてくれてる人にノーコメントなんだよ。
他にも、「サブタイは捻った方がいい」とか言ってくれてる人がいるのにさ。
まぁ、次回の「佇む白影」は、ちーっと隠喩が入ってるぽいけど。
アドバイスしてくれた人には何かコメントしとこうぜ。

490 :名無しより愛をこめて:2007/01/20(土) 14:22:29 ID:Zm4m6xxg0
向こうのスレが何やらいきり立ってきたぞ。
なんでも用語集を作る作ると言いながら全然進まないのが気に食わないらしいな。
名前だけでもいいからとりあえず追加しようぜ。

491 :名無しより愛をこめて:2007/01/20(土) 16:03:49 ID:9NO7RFL90
向こうって?

492 :見習:2007/01/20(土) 16:14:08 ID:bMKqLQ0L0
>>489さん
初めて参加したスレ(伍乃巻)で数々の馬鹿な発言をしてしまい、私はそのことをずっと反省しています。
だから、それからは極力投下以外のレスを控えてきました。
頂いたアドバイスすべてを取り込むことは難しいと思いますが、なるべく投下内容に反映させることで、
その答としたいと思っています。

493 :名無しより愛をこめて:2007/01/20(土) 17:18:17 ID:4Tx4kYAqO
>>489
どうなんだろな?アドバイスにレスがないくらいで目くじらって。
俺はサブタイ込みで作品と考えるから
これまでの流れから修正して方向が変わるのが心配だったんだ。
確かに諫言は必要かもって気もする。
でもプロのミュージシャンや漫画家が
ファン投票で自分の作品を見失ったのを散々見てきたからな!
アドバイスって見下ろしたスタンスがカチンと来る。

494 :名無しより愛をこめて:2007/01/20(土) 17:38:38 ID:C8uf+MUC0
>490
煽って無いで、やりたきゃ自分がやればいいだろ。
やりたい奴がやる。やりたくない奴はやらない。それだけだ。

495 :名無しより愛をこめて:2007/01/20(土) 22:15:32 ID:chwo0Q5TO
ここの住人はSSに飢えてるからなぁ…。
長らく美味しい料理が来ないと、不味い雑草でも食べられるようになるんだろ。

496 :名無しより愛をこめて:2007/01/20(土) 23:56:10 ID:4Tx4kYAqO
>>495
誰も貴様の叩きなぞ見たくない

497 :名無しより愛をこめて:2007/01/21(日) 00:38:40 ID:BcuOmh6o0
>495
美味しい料理だの不味い雑草だの何様なんだか。
読みたくなければ、自分が出て行けば?
こっちもあんたのような性根の曲がったレス読まずに済んで助かるし。

498 :名無しより愛をこめて:2007/01/21(日) 00:41:21 ID:E/WPmhM00
一方ではそんなこと言っておきながら「中四国読みたくなければお前が出て行けば?」って言ったら荒らしか擁護扱いなんだよな

499 :名無しより愛をこめて:2007/01/21(日) 03:20:36 ID:MnbbRSNDO
>>498
日本語でおk

500 :名無しより愛をこめて:2007/01/21(日) 07:09:40 ID:lh5OQge80
おまいら、釣られすぎですよ。

501 :見習いメインストーリー:2007/01/23(火) 13:14:22 ID:4xSGpRWV0
前回は>>484から

三十一之巻「佇む白影」

「まったく、失礼だな君は。『銀』の見習いでありながら、全国の『銀』の長たる私の経歴を
知らんとは」
「だ……だってそこまで研修で教わっていませんし……」
 警策で叩かれた尻の痛さに涙しながら純友が言うと、小暮は更に怒鳴った。
「教わっている、いないの問題ではない! 君みずからに学ぶ姿勢が足りんのだ」
 結局、駅の前で小暮と別れるまで、純友は叱られ続けた。

 数時間後、純友は、東京とは逆方向の西へと向かう電車に乗っていた。
 純友が降車したのは、神戸市東灘区──数カ月前、純友の同級生の橘多美が行方不明になった、
その街だった。
 初めて吉野での研修があると聞いた時には、数時間を掛けてでも、神戸まで足を伸ばして彼女に
会いにいけたら、とそんなことを考えて一人で喜んでいた。しかしもうこの街に彼女の姿は無い。
猛士の「全国失踪者リストファイル」によると、魔化魍オオナマズの犠牲になったということだが
……純友は、未だに信じたくなかった。
 前に電話で聞いていた彼女の家を探し、歩き慣れない街を足が棒になるまで歩き続け、そして
──純友は、何気なく見た電柱に、数か月分色褪せた、たずね人の張り紙を発見してしまった。
「この子を探しています」「橘多美」という文字が目に入った。そして、写真の中で彼女は笑って
いた。今となっては限りなく懐かしい、その笑顔──
 純友の目から涙がこぼれた。
 張り紙を見た途端、一気に多美の家を探す気も失せてしまった。
「たちばな」の地下でファイルを見たことも、警察に呼ばれて彼女について聞かれたことも、
すべては悪い夢で、神戸に行けば何事もなかったように彼女はそこに居る……

502 :見習いメインストーリー:2007/01/23(火) 13:15:07 ID:4xSGpRWV0
 そんな、あり得ない希望を胸に、実際にこの地を訪ねてみて──やはり彼女は本当に居ないのだ、
ということを実感してしまった。
(帰ろう……)
 そろそろ陽も傾いて来た頃、純友は力なくとぼとぼと来た道を引き返し始めた。
 鬱蒼とした緑に包まれた、神社に通じるとおぼしき石段の横を通り抜けた時、純友は、視界の
隅に何か動く白い影のようなものを認めた。
 そちらを見ると、木々に囲まれた暗がりの中へと上っていく石段があった。そこに一人の、
異様な白装束の人物が立っていた。
 頭から足下までを白装束で、そして鼻から口へ掛けてを黒い布で隠したその者は、石段の
十数段上から純友を無言で見下ろしていた。
 その姿は、色こそ真逆ではあったが、数か月前に南行徳で遭遇した黒装束の男を思い出させた。
(クグツ──)
 その名が純友の心に浮かんだ。
 白装束の人物の手には、複数の計測器状の器具が着いた銀色の杖が握られていた。黒装束の
男が持っていた金色の杖と色こそ違うが、その形状は同一のものだった。
 しかし、純友はあの時とは違い、恐怖とは違う、何か胸を打つ懐かしさをその姿に感じていた。
 どこかで見た覚えがあるのは、その立ち姿、そして唯一装束の隙間からのぞく、その目だった。
 白装束の人物の姿は、純友よりもわずかに小さく、そして細い。ぴたりと足を閉じた立ち姿は、
女性のものだった。そして、白い頭巾の下にある黒目がちの瞳は、純友の良く知った人物を思い
出させた。
「……橘さん──?」
 純友の呟きを消すように、風が吹いて石段の左右の木々の葉をざわざわと揺らした。

503 :見習いメインストーリー:2007/01/23(火) 13:15:56 ID:4xSGpRWV0
 黄昏時の、人気の無い街外れ。二人の他に人の気配はなかった。
 今すぐ駆け寄って、その女の黒いフードの中を確認したかったが、神社へと続く石段を前にして、
純友は一歩も動けなかった。彼女なのかどうか問いただしてみたかったが、声も出ない。
 そこに、バイクの排気音が近づいてきた。
「何をしている! そいつから離れろ!」
 バイクが純友のすぐそばで止まった。振り返ると、ライダースーツの小暮がヘルメットを取った
ところだった。
「小暮さん……? どうしてここに──」
「それはこちらの台詞だ。君は、東京に帰ったのではなかったのか? それとも、君もあのクグツの
邪気を感じてここに来たとでもいうのか? とにかく、近くに魔化魍がいるかもしれん。気をつけろ」
 小暮は音叉を取り出すと、バイクのハンドルに打ち付けてその音を鳴らした。鳴り続ける音叉が
純友の胸元に向けられると、服の中から飛び出てきた円盤が、白く色づいて猿型に変形した。
「行け!」
 小暮の声に応え、ディスクアニマル・白練大猿が飛び跳ねながら白装束の女へと飛びかかっていった。
「だ、だめだッ!」
 はっとして純友は叫んだ。その時には、既に白練大猿は女の顔の前で小さな腕を振りかざしていた。
身を翻して避けようとした女の黒いフードは白い猿の腕に取り去られ、純友の見覚えのある、
小づくりな横顔が一瞬だけ見えた。それはどう見ても、橘多美にそっくりだった。
「……!」
 純友は絶句した。魔化魍の犠牲になったと思っていた彼女が、なぜか白装束の姿をして自分の前に
現れた。純友は小暮が怒鳴っているのにも気づかず茫然と白装束の女と白練大猿の戦いを見ていた。

504 :見習いメインストーリー:2007/01/23(火) 13:16:54 ID:4xSGpRWV0
 女は掌から、黒いクグツと同様に衝撃波を放って白練大猿の動きを止め、それから握りつぶした。
銀色に戻ったディスクは、破片をまき散らしながら石段の上に落ちていった。
 背を向けて石段を駆け上がっていく白い姿を、純友は息を詰めて目で追っていた。
「たち……ばな……」
 純友の言葉を小暮は聞き咎めた。
「タチバナだと? あれは、クグツというものだ」
 白装束の女が駆け上がっていった石段を見据えながら、純友は小さく呟いた。
「生きて、いたんだ……」
 彼女が生きていたという喜びと、クグツの姿になっていた事に対する当惑と──複雑な思いで
純友は涙を流した。
 泣きながら壊れたディスクアニマルを回収している純友の姿を、小暮は静かに見続けていた。

 小暮の操るバイクの背に乗せてもらい、日が暮れかかった頃、純友は駅に送り届けられた。
 暗くなり、街灯が点き始めた駐輪場で、小暮は言った。
「どんな事情があるか知らないが、男たるもの、簡単に泣くな。『男子は常に、逞しく』だ!」
 それでも泣き続けている純友を見て、警策を取り出しかけた小暮だったが、その手を止めて言った。
「君にひとつ、逞しくなれるおまじないを教えてやろう。見なさい」
 小暮は、二本指を立てた手を敬礼のように顔の前に持って来て、スッと上にあげた。ヒビキとは
また違った、独特のポーズだった。
「やってみたまえ。本来鬼がやるものだが、君は私の孫弟子だ。特別に教えてやろう」
 その優しさに涙した純友だったが──小暮のこのポーズに対するこだわりは相当なものだった。
 駐輪場に小暮の「角度が甘い!」という声と警策の叩く音、それに純友の悲鳴がこだました。

三十一之巻「佇む白影」了

505 :見習いメインストーリー:2007/01/23(火) 13:17:47 ID:4xSGpRWV0
次回予告

「うん……やってみるけど、いいのかなぁ、こんなこと勝手にして」
「さ、君たちも演奏してみて」
「おれたちなんで呼ばれたんだ?」
「現在出動中の者を除き、猛士関東支部は、すべての人員を本件のために動かす事にした」

見習いメインストーリー 三十二之巻「集う邪気」

506 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:24:25 ID:XnyWykAE0
1972年。
この年の五月十五日に沖縄は日本へと返還された。その直後、猛士沖縄支部から支部長の金城(きんじょう)がお供を連れて総本部へと挨拶にやって来た。
「お久し振りです、金城さん」
総本部長の和泉一流が握手を求める。
「お久し振りです。いやぁ、今度からパスポートを持たずに来る事が出来るから楽で楽で」
私はほら、置き忘れが多いから。一流と握手をしながら、金城はそう言うと大声で笑った。
「これからもお互い良い関係でやっていきましょう。……で、そちらは?」
金城の後ろに、まるでボディーガードの如く立っている男を見て一流が尋ねる。
日に焼けた浅黒い肌にオールバックの大男は、一流に向かって静かに目礼した。
「彼はムカツキくんです。うちの支部最強の格闘家にして太鼓使いです」
「お言葉ですが支部長、私は沖縄支部最強ではありません。猛士最強だと自負しております」
静かに、だが威圧感のある声でそう訂正するムカツキ。
「ははは、悪い悪い。で、今日はその事を証明するために私に同行してきたのです」
「証明?……ああ、うちのバキか」
その名にムカツキが反応を示す。
「ムカツキくん。ここはもういいから、君のやりたい事をやってきなさい」
金城がそう告げると、ムカツキは深々と一礼し退室していった。
「おいムカツキくんとやら!あんまり派手な事はするなよ!」
一流が慌ててそう叫ぶも、その声が彼の耳に届いたかは分からなかった。

507 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:26:01 ID:XnyWykAE0
総本部の研究室には開発局長の南雲あかねとコウキ、そしてバキの姿があった。出撃を控えたバキは、調整を頼んでおいた音撃鼓を受け取りに来ていたのである。
と、そこへ一人の男が入ってきた。見掛けない顔だ。室内の視線が一斉にこの闖入者へと向けられた。
男は低く、だがよく通る声でこう告げた。
「私は沖縄支部のムカツキ」
自己紹介と共に近くのホワイトボードに「向月鬼」と書いた。なかなかの達筆だ。
「ちなみに私はこの美しい名前を気に入っている」
沖縄支部という単語に、室内の研究スタッフ達の間からざわめきが起きた。
「バキという鬼がここに来ていると聞いてやって来た。早く名乗り出たまえ」
かなり高圧的なその態度にコウキが機嫌を悪くする。
「何だ、この男は……」
「落ち着きなさい、コウキくん」
あかねに宥められたコウキは深く深呼吸をして気を落ち着かせると、一歩前に出た。
「私は関西支部のコウキだ。字はこう書く」
ホワイトボードの傍に歩み寄ると、やはり「高鬼」と書いてみせるコウキ。
「高鬼……。鬼ごっこが上手そうな名前だな」
「よく言われるよ。で、君は一体何なのかね?いきなりやって来たと思ったら挨拶もそこそこにバキは何処だ、だと?」
「まあまあコウキさん。……あんたが探してるのは俺だよ」
そう言って自ら名乗り出るバキ。

508 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:26:40 ID:XnyWykAE0
「君が?まだ若いではないか。……否、格闘家に年齢は関係無いか」
バキはそんなに大きな体格ではない。大男のムカツキにとっては見下ろす形になる。
「そんなにじろじろ見るなよ。で、あんたは俺に何の用なの?」
バキの問いに対し、ここへ来た目的を告げるムカツキ。
「私は猛士最強の格闘家を自負している。それを証明するためには現在猛士最強と名高い君と、中四国の何処かに居るという最強の女鬼を倒さなければならないと私は考えている」
「へえ……俺の名前は遠く沖縄にも響いているのか。いいよ、相手になってやる」
そう言うとそのまま出て行こうとするバキを、コウキが慌てて止めた。
「バキさん、あなたはこれから出撃では……」
「分かってるさ。そこのあんた、場所は俺が決めさせてもらってもいいか?」
私は一向に構わん、とバキに告げるムカツキ。
「あとコウキさんも立会人として同行してよ。お願い!」
コウキに向かって頼み込むバキ。あかねの方を見ると、付いて行ってやれと目で合図している。
「……分かった」
こうして三人は研究室を後にした。

509 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:27:48 ID:XnyWykAE0
三人が訪れたのは京都市北区蓮台野。『土蜘蛛草紙』という書物には、嘗てこの地で源頼光が土蜘蛛を退治したと記されている。
そう、今回バキはツチグモ退治のためにここを訪れる予定だったのだ。
だだっ広い場所を見つけると、そこで対峙し合うバキとムカツキ。
「史上最強と謳われた鬼の子、バキよ!私が貴様に引導を渡してやるッ!」
「あんた、親父の事も知ってるのか」
その問いに対し、不敵な笑みを見せながら答えるムカツキ。
「ふ、知っているとも。仲間を手に掛けてその血を食らい、修羅と化した挙句そのまま海外へと高飛びした猛士史上類を見ない罪人だという事もな!」
「そんな事言って俺の動揺を狙ってる?言っとくけど無駄だよ。さっきあんたが言った事は事実だし、それに……」
親父はいつか俺がこの手で止めてみせる!そう毅然と言い放つバキ。
「お先にどうぞ」
バキがムカツキに対しそう告げる。それに対しムカツキは。
「余裕だな。だがお前はすぐに後悔する事となるッ!」
そう言うや否や構えを取るムカツキ。
「あれ?ひょっとしてそれって……」
「そうッ!これぞ我が故郷に代々伝わる武術、『手(てい)』だッ!」
「手」とは空手以前に存在した、沖縄古来の武術の事だ。これに中国武術が融合して生まれたのが唐手、即ち空手だと言われている。
「へぇ……実際に見るのは初めてだよ」
「行くぞッッ!」
感心するバキに向かって、ムカツキは容赦無く攻撃を仕掛けてきた。
だが。
「早い!あのムカツキという男もだが、それよりバキさんの方が僅かばかり早い!」
そう。バキはムカツキが繰り出す拳を全て紙一重で躱しているのだ。とんでもない動体視力及び反射神経と言えよう。
ムカツキの放つ蹴りをしゃがんで避けるバキ。空を切る物凄い音が響いた。
バキはそのままムカツキの軸足に蹴りを叩き込むと、体勢を崩した彼の腹に強烈な一撃をお見舞いした。衝撃で吹っ飛んでいくムカツキ。
「相変わらず凄いな、バキさんは……」
バキの傍に近寄ろうとするコウキ。だが。

510 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:29:48 ID:XnyWykAE0
起き上がってきたのだ、ムカツキが。余程土を付けられた事に腹が立ったのだろう、その顔は憤怒の形相に満ちていた。
「タフだね、あんたも。手加減したつもりは無かったんだけどなぁ……」
頭を掻きながらバキがそう告げる。
一方ムカツキは。
「……甘く見ていた。どうやら小手先の技術ではどうにもならん相手らしい。ならばッ!」
そう言うとさっきとは対称的に構えを取らず、無防備の状態でバキの方へと歩み寄ってくるムカツキ。だが、バキもコウキもその歩法に危険な何かを感じ取っていた。
「バキさん、不味い!上手く説明は出来ないがあれは何か不味い!危険だ!」
コウキの声も耳に届かないのか、ただじっとムカツキを凝視しているバキ。
ほんの僅かの間を置いて、意を決したかの様にバキが動いた。弾丸の如く飛び出していくバキ。
ムカツキの間合いに飛び込むと、彼の顎目掛けて強烈な蹴りを放った。顎に一撃を加えて脳震盪を引き起こし、続く二撃目でとどめを刺すのが彼の得意とする戦闘スタイルだ。
だが。
コンマ何秒の差でムカツキのカウンターがバキに炸裂した。数メートルの距離を吹っ飛ばされるバキ。これにはコウキも我が目を疑った。
そんなコウキに対し、ムカツキが静かに解説を始める。
「これは『御殿手(うどんてい)』。代々琉球王家の人間のみが継承したという秘伝武術だ」
「御殿手」とは、人体の急所たる正中線を寸分たりとも動かさずに歩く事で自分の隙を無くし、相手に攻撃をさせる事で確実にカウンターを決める技の事だ。
「まともに喰らったのだ。暫く立ち上がる事は出来まい」
そう言って立ち去ろうとするムカツキ。しかし次の瞬間。
「待ちなよ。俺はまだやられちゃいないぜ」
バキがむくりと起き上がったのだ。その姿を目の当たりにしたムカツキが絶句する。

511 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:31:50 ID:XnyWykAE0
「バキさん!」
コウキが慌ててバキの傍へと駆け寄る。
「タフさには俺も自信があってね。……琉球王家の秘技、確かに見せてもらったよ」
コウキの手を借りるまでもなく、バキは立ち上がった。
「バキさん、大丈夫か?」
「大丈夫だよコウキさん。……沖縄武術、特に秘技とされる御殿手。実際に戦う事になったら苦戦を強いられるんじゃないか……」
ムカツキを凝視しながらバキが静かに、だがはっきりと告げる。
「そんな風に考えていた時期が、俺にもありました」
その言葉に冷静さを取り戻していたムカツキが再び怒った。さらに。
「さっき言った通り、俺には親父を止めるという目標がある。あんた如きに負けるようじゃ、叶わぬ夢として終わっちまう」
「私如き……だとぅ……」
怒りのあまり、ムカツキの額に幾筋もの血管が浮き出た。
「キサマはッッ!沖縄武術を嘗めたッッ!」
物凄い大声に思わず耳を塞いでしまうコウキ。
「貴様が学んだ格闘技など、そこは我々が四百年前に通った道だッッッ!!」
「じゃあ俺が今すぐその四百年分の穴を埋めてやるよ」
そう言うと何とバキは。
御殿手を真似し始めたのだ。さっきのムカツキと全く同じように。
「猿真似に何が出来るッ!」
これまた物凄い勢いで飛び出し、バキに攻撃を仕掛けるムカツキ。だが彼が拳を繰り出すよりも早く、バキの拳がムカツキに叩き込まれた。
吹っ飛んでいくムカツキ。それを御殿手の歩法のままバキが追う。
「ば、馬鹿な……。あれは……」
本物だッ!
「一度見た技は確実に見切って、さらに自分のものとする。親父譲りの技術さ。さあ立ちなよ。インパクトの瞬間に急所を外したんだろ?決着をつけようや」

512 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:34:15 ID:XnyWykAE0
服に着いた汚れを払いながらムカツキが立ち上がった。
「……貴様を相手にする場合、小手先の技術どころかあらゆる技が意味を成さんようだ。ならば純粋に己の力のみで戦うまでよッ!」
構えを取らず、ただがむしゃらに殴りかかるムカツキ。バキもまた、御殿手を止めると拳を握って突撃していった。
対等の技術を極めた格闘家同士が戦う場合、技の出し合いでは決着がつかないため最終的にはただの殴り合いになるという話をコウキは耳にした事があった。それが今現実に目の前で起こっているのだ。
ムカツキの強烈な一撃がバキの顔面に命中した。ダウンを取られるバキ。だが。
「しゃきーん」
そう言うと勢いよくバキが起き上がってきた。しかもさっきまでと明らかに目の色が違う。
「出たぞ。バキさんの暴走モードだ」
あの目になった時のバキは、集中力が120パーセントまで上がっている。コウキも知らない事だが、実はこの時のバキは自らの意思で脳内麻薬を操り、攻撃による痛みを抑えると同時に闘争心を極限まで上げているのだ。
ムカツキの鉄拳がバキを滅多打ちにする。だがバキは全く怯む様子を見せない。
(こいつ、痛みを感じていないのではないのか!?)
一瞬の隙を衝き、バキの強烈なハイキックがムカツキの側頭部に命中した。倒れ込むムカツキの首が、有り得ない方向に曲がっている。

513 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:35:07 ID:XnyWykAE0
「バキさん!まさか殺してしまったのか!?」
と、ムカツキが起き上がった。平然としている。
「あんた、蹴りが入る瞬間に頚骨を外して骨折を防いだでしょ。やるね」
「貴様こそ……我が相手にとって不足無しッッ!」
ムカツキが雄叫びと共にバキに向かっていく。だがその時!
地面が盛り上がり、その中から実に大きなツチグモが現れたのだ。
「ツチグモ!?だがこの大きさは何だ!?」
「流石は伝説の残る地のツチグモだけあって、余所の個体よりも大きいね」
現れたツチグモは牙を剥き、三人を威嚇してくる。
「丁度良い。直接対決では決着がつかない所だったのだ。こいつを先に倒した方が勝者という事でどうだ?」
「別に良いけど……ちょっとずるくない?」
ムカツキの提案をとりあえず受け入れるバキ。さっきまでの戦いでは明らかにバキの方が優勢だった以上、これはずるいと言われても仕方が無いだろう。
変身音叉を取り出し、打ち鳴らすムカツキ。バキもそれに続いた。
「では私は童子と姫を探して倒してこよう!ここは任せた!」
そう声を掛けるとコウキは音叉を取り出し、その場を後にした。

高鬼の鬼爪が怪童子を袈裟懸けに切り裂いた。真っ白い体液を辺りに撒き散らしながら爆発四散する怪童子。
「よし、これで童子と姫は倒したぞ。後は戻って……」
だが高鬼はさっきから複数の視線を感じていた。まだ何か居るというのか?
すると、地面の中に身を潜めていた二組の童子と姫がその姿を現した。更にもう二組、童子と姫が高鬼の背後に現れる。
「何だと!?と言う事は……」
計八体の童子と姫に囲まれながら高鬼は音撃棒・劫火を握り締めた
……ツチグモはあと四体居る!

514 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:37:22 ID:XnyWykAE0
「つあッッ!」
向月鬼の強烈な一撃がツチグモの巨体を引っ繰り返した。その腹の上に飛び乗ると音撃鼓・海王を貼り付ける。そして。
「音撃打・怒髪天衝!」
装備帯からトンファー型音撃棒・海人(うみんちゅ)を取ると、力強く叩き始めた。
爆発と共にツチグモの巨体は大地へと還った。爆煙の中から向月鬼が勝ち誇った顔で(まあ実際には表情など窺えないのだが)現れる。
「どうやら私の勝ちの様だな」
「どうかな。ほら後ろ」
「何ッ!?」
刃鬼の言う通り、背後の土中から先程の個体と同じぐらいの大きさのツチグモが現れた。更にもう二匹現れ、刃鬼目掛けて襲い掛かってくる。
「見てな」
手の甲から出刃包丁並に大きく鋭い鬼爪――鬼闘術・鬼刃(きば)を出してツチグモに斬り掛かる刃鬼。一振りでツチグモの右前脚を切断し、もう一撃で左脚をも切り裂いた。返り血が刃鬼を染めていく。
「おのれッ!ならば見るがいいッ!我が十三の鈎棍技(トンファーアーツ)の一つ、鈎棍脚!」
急角度からの強烈な跳び蹴りがツチグモの巨体を宙に浮かし、引っ繰り返した。
「いや……トンファー関係無いじゃん!」
ツチグモに音撃打を決めながらも、思わず突っ込みを入れる刃鬼。
「まだまだッ!鈎棍拳!鈎棍百烈脚!鈎棍裏拳!鈎棍分身!鈎棍手刀!鈎棍光線!鈎棍延髄斬り!鈎棍頭突き!鈎棍バックドロップ!鈎棍ストンピング嵐!鈎棍イヤーは地獄耳ィィィィ!」
最早何が何だか分からない。と言うかどれもトンファーは関係無い。
満身創痍のツチグモに「海王」を貼り付け、容赦無く音撃打を叩き込む向月鬼。
爆発。だがその時には既に刃鬼も二体のツチグモを清め終えていた。
「……引き分けか。納得がいかんな」
「いや、どうやら延長戦になりそうだぜ。……来るぞッ!」
言うや否やその場から飛び退く刃鬼。さっきまで刃鬼が立っていた場所の地下から、全身が炎に包まれたツチグモが現れた。
「こいつは……」
「カエングモ!」
ツチグモとは四元素のうち「土」の属性を持った魔化魍だ。だが、極稀に「火」の元素を取り込んだ個体が発生する事がある。それがこのカエングモだ。

515 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:38:45 ID:XnyWykAE0
「また珍しいものが……」
「あれを倒した方が勝ちだな」
言うが早いか音撃棒を手に駆け出す刃鬼。負けじと向月鬼もカエングモへと向かっていく。
その巨体に似合わず前脚を巧みに動かして二人の鬼を攻撃するカエングモ。刃鬼が一瞬の隙を衝いて懐に入り込もうとするが。
「うわッ!」
カエングモが口から高熱火炎を吐き出して迎撃してきた。横に跳んで炎を避けるも、前脚に弾き飛ばされてしまう刃鬼。そこへ追撃を仕掛けるカエングモ。
「危ないッ!」
だが間一髪、向月鬼が刃鬼の体を抱えて跳び上がり、カエングモの攻撃を躱した。
「へえ……」
「な、何だ?」
「いや、俺を放っておいて魔化魍を倒すかと思ったのに……。ありがとな」
「な!何を言うか!私は別に貴様を助けたくて助けたわけではないぞ!これはだな……」
そんな二人に向かってカエングモが脚を振り上げて襲い掛かってきた。避けると同時に間合いを詰め、同時にカエングモの左右に音撃鼓を貼り付ける刃鬼と向月鬼。
「行っくぞぉ!国士無双の型ァッッ!」
「音撃打・怒髪天衝ッッ!ぬおおお!」
二人の音撃打が大地を揺るがした。

「ふう……。倒すのに手間取ってしまった。バキさん達はどうなっているだろうか……」
顔の変身を解除したコウキがバキ達の下へと戻ってきた時には、既にカエングモは清められていた。そして。
「何だ?あの二人、やけに意気投合している様に見えるが……」
そこには、コウキ同様顔の変身を解除して談笑しているバキとムカツキの姿があった。

516 :仮面ライダー高鬼「激突する意地」:2007/01/24(水) 00:39:22 ID:XnyWykAE0
翌日、沖縄へと戻る金城とムカツキを見送りに、コウキ達は関西支部、即ち和泉家の旅館前に集合していた。
「結局引き分けに終わったが……次に手合わせする時は必ず私が勝つ!」
「それはどうかな?あんたがどれだけ鍛えても、俺はそれよりずっと先に進んでるぜ」
互いに別れの挨拶を交わす二人。金城も総本部長やあかね達と話をしている。
「時間ですな。では私達はこれで……」
金城が深々と頭を下げた。ムカツキもまた、深々とお辞儀をする。
「バキ、次は君がウチナー(沖縄)に来い。待っているぞ」
「そうだな、いずれ遊びに行かせてもらうよ、ムカツキさん」
互いに笑顔で見せ合うバキとムカツキ。昨日初めて出会った時のぴりぴりした雰囲気が嘘みたいだ。
「沖縄かぁ……。私も一度行ってみたいな。でもまだ九州にも上陸してないしなぁ……」
「まあ余程の事が無い限り、我々は長期休暇なんて取れませんからね」
「そうよねぇ、取れないもんねぇ。私もここで働きだして結構長いし、それぐらいのご褒美はあっても良いと思うんだけどなぁ……」
隣に居る一流に聞こえるよう、わざと大きな声でぼやくあかね。しかしそう言うあかねとコウキは後に九州旅行に行く事になるわけだし、コウキに至っては東北や中四国にも赴く事になるわけだが。
こうして、空と海の島からの来訪者達は関西の地を後にしたのだった。 了

517 :中四国〜作者:2007/01/24(水) 01:56:30 ID:mxESqhdL0
 俺が馬鹿なせいで皆に迷惑かけたり、嫌な思いをさせたりして本当に申し訳なかった。
 結局、俺はSSスレと、それにまつわる一切合切から手を引くことにした。
 まとめサイトや用語集の中で、俺の作品をどう扱うかは、このスレのみんなで決めてくれ。
 こんな形でSSスレと別れたくはなかったが、俺が馬鹿だったのが全ての原因だ。
 お前らと一緒に響鬼の世界を楽しめた時間を糧として、俺は俺のサイトで勝手に頑張るよ。
 それじゃみんな、さよならだ。

518 :名無しより愛をこめて:2007/01/24(水) 14:54:01 ID:0jANOeWHO
皇城さぁ…。帰って来たのは嬉しかったけど、他のスレで恥を晒すのは止めろよ
お前一人の自演のせいで、他の作者さんの人格だって疑われるんだぞ?

519 :名無しより愛をこめて:2007/01/24(水) 21:46:08 ID:1gFHSTnZO
>>518
興味深いから、どこで自演したか誘導してくれ

520 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 12:58:41 ID:fTjtd56d0
とうとう中四国がスレから離れるときが来たか・・・

で、例の用語集ってこれからどうなんの?
中四国関連はまったく入れないか、
中四国がスレに属していた時点までの内容だけ入れるのか、
小説が続く限りそれを追って更新を続けるのか、

まあやりたい奴がやりたいようにやればいいんだけどな

521 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 13:40:34 ID:mu85fF5d0
>>518
http://tv9.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1157114028/
たぶんこれだと思うよりによって……

と思ったけど、流れを見ると少しおかしくないか?
皇城さんが自分の作品はとにかく「見習い」「DA」まで批評に回すか?
なんか皇城の名を語った違う奴なんじゃないのか?
517の中四国もなんかおかしいし。

522 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 14:16:36 ID:Qb1Ziu1K0
だからトリつけろって。
……言った覚えはないな……

まあ、こんな状況でトリップも付けてないんじゃ、自演も成りすましもしょうがないんじゃない?

523 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 14:18:09 ID:uEUOsPTKO
雪風は文が、皇城氏はコテとやはり他作者さんの批評が
疑わしいな!

524 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 15:04:19 ID:mu85fF5d0
>>523
そうだね。雪風は基本的に自分の名前は略さないし、
どんな電波を放っても書き込みは敬語を使うから517の様なタメ口は使わない。
皇城さんが自分の作品を批評して欲しくてあっちに依頼するのはわかるが、
他の作品まで巻き込むとは思えない。しかも「見習い」を持ってくのもおかしい。
申し訳ないが叩かれるのは目に見えている作品だ。(見習いさんゴメンね)

今後、作者さんはトリ推奨かな。

525 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 15:42:37 ID:uEUOsPTKO
>>524氏が良いフリしてくれたので便乗。
見習いさんは確かに叩かれ易いわな。
文の巧拙はともかく、テーマが「成長」だからね。
特撮板としては金八や中学生日記かよって反感かと思う。
でも響鬼ワールドでは重要な要素で、鬼と弟子でなく
明日夢と京介の古典的な異質ライバルに注目したのは評価してる。
対比を強調するためか、泣き虫過ぎかとは思うけど今後に期待してる。

526 :皇城の〜の中の人:2007/01/25(木) 19:28:10 ID:NuVvGLv/0
 皆様ご無沙汰しております。アクセス規制で暫く離れておりました。
 またいつアクセス禁止になるかわかりませんので、思うところを投稿させていただきます。

>>521の件につきまして

 ええと、なんでしょうトリップ先に飛んでみましたが状況がよく飲み込めておりません。あちらは批評がメインの板なのでしょうか。
 的確な批評を頂いているようでうれしいやら悲しいやらでありますが、実のところ私は知人に文筆業をやっていらっしゃる方がおりまして、
批評や添削はそちらの方のご意見を頂戴しておりますので、例えばあちらのような板への依頼は特に必要としておりませんのが現状であります。
 現在挙げられている意見に関しましては、参考になりますのでありがたく頂戴いたしますが。

 こちらの板におきましては、以前にも述べさせていただきましたが投稿しているという立場上、純粋に読者様からのご意見として受け取らせていただいております。

 またもし批評がほしいと思い書き込みをするのでしたら、>>523>>524様の仰るように他の方の作品と比較するような失礼な真似はいたしません。
 それほど自分の文章に自信を持っているわけでもありませんので。 

 以上を私の回答とさせていただきたく思います。
 それでは、失礼いたします。
 
 皇城輩

527 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 19:33:48 ID:a1hl6A2h0
あ、皇城さん一応トリ付けといてください。

だが、あっちのが偽者で良かった。
しかし、一体誰が何のために?

528 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 20:08:22 ID:ACkio/X30
>>526
もしかして、皇城さん、トリップをわかってないとか……
トリップ先て……

529 :皇城の〜の中の人 ◆M4hWSo7coo :2007/01/25(木) 22:46:42 ID:NuVvGLv/0
まだ書けるかな?
暫くこれを使います。

530 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 22:56:06 ID:Gpf8ZTxw0
トリップて何?

531 :名無しより愛をこめて:2007/01/25(木) 23:39:44 ID:LF5eoqwN0
>>530
マジレスすると、2ちゃんのFAQくらい読んでから書き込もうな。
ttp://info.2ch.net/guide/faq.html

532 :見習いメインストーリー:2007/01/27(土) 16:46:42 ID:+rO4Oi8W0
前回は>>501から

三十二之巻「集う邪気」

「多美ちゃんが……生きていただと」
 昼休み、城南高校の屋上で純友の報告を聞くなり、大洋は肩につかみかかってきて言った。
「純友! どういうことだよ!」
「ぼくにもわかんないよぉぉぉ」
 数か月前、魔化魍が出現した地で行方不明となっていた彼女は、猛士の見立てでは魔化魍の
犠牲になったものとされていたが──神戸で見た白いクグツ、あれば彼女本人だったのか、
それとも彼女に似たクグツだったのか、確かなことは何もわからなかった。
「純友、おまえまた二〇枚始末書かいて向こうに行ってこい!」
「やだよ!」
 二泊三日の小暮との研修を思い出して、純友はすかさず叫んだ。
「冗談だ、バカヤロウ。……そうそう、コレ、おまえ直せないか?」
 大洋は、以前に津村努から受け取った壊れた鬼弦を取り出して、その経緯を純友に話した。
「うん……やってみるけど、いいのかなぁ、こんなこと勝手にして」
 躊躇いながら、純友はその壊れた鬼弦を家に持ち帰った。

 一〇月に入り、純友たちの研修内容は、音撃弦と、それに装着する音撃震についてになった。
「たちばな」地下での学科研修では、太鼓や管の時と同様にホワイトボードに写真を張り出して
講義が行われた。
「音撃震を外した状態を剣撃モード、装着した状態を音撃モードと呼んでいます」
 言いながら、みどりはホワイトボードにモード名を書き記していった。
「音撃震を装着すると、本体部分が展開してギターの形状になるものが多いけど、弦楽器って
言ってもいろいろあって……ハープ型とかね。関東の鬼さんのはみんなギター型だけど」

533 :見習いメインストーリー:2007/01/27(土) 16:48:28 ID:+rO4Oi8W0
 張り出した写真の中に、一枚だけ、他の音撃弦と一緒に写った二振りの音撃弦があった。
 後ろの音撃弦との比較から、それが小太刀サイズの武器だということがわかる。
「これが、先月から色々苦心して開発にこぎつけた、サバキさんの新しい音撃武器」
 この新型武器の使用により、弦の鬼の弱点であるスピード不足をカバーする事に成功したが、
今はまだサバキ一人専用という段階だった。
 休憩の後、三人は展示室に移動し、ロッカーから音撃弦を三人分取り出した。みどりはこれも、
先月の音撃管の時と同様に鮮やかに演奏してみせた。
「上手ですね〜」
 純友が言うと、みどりは得意そうに笑って言った。
「さ、君たちも演奏してみて」
 先月の管の時とは違い、大洋は弦に関しては最初からそれなりに演奏してみせた。
「大洋くん、上手ね〜」
「音撃管は鳴らすの苦労したけどな、こっちは何かおれ的にフィットするみてえだ」
 弦をかき鳴らしながら大洋は言った。その隣で純友は、弾き出した途端に弦を切っていた。

 その週の土曜の午後。みどりから、至急来るようにと携帯電話に連絡が入り、純友は「たちばな」に
駆けつけた。店の暖簾は下げられ、入り口には休業中の札がおりていた。
 店に入ると、日菜佳一人が店の片付けをしながら待っていた。
「ああ、純友くん、ここをお願いします。──大洋くんが来たら、戸締りをして猛士の間に来て下さい」
「あ、はい」
 返事をして、店の机の上で所在なげに座っていると、じきに大洋がやってきた。純友は言われた通り
入り口の鍵を閉めてから、大洋と共に地下への階段を降りていった。

534 :見習いメインストーリー:2007/01/27(土) 16:49:38 ID:+rO4Oi8W0
「おれたちなんで呼ばれたんだ?」
「いや、ぼくにもよく……」
 二人が階段を下りて猛士の間に入ると、テーブルに、立花勢地郎、香須実、日菜佳が横並びに、
そして滝澤みどりがその向かいの席についていた。純友と大洋はその隣に腰を下ろした。
「急で申し訳ないが、緊急事態が発生してね」
 勢地郎が口を開いた。
「現在出動中の者を除き、猛士関東支部は、すべての人員を本件のために動かす事にした」
 大洋は、訝しげに訊き返した。
「緊急事態……?」
「君たちは、『童子』と『姫』のことは知っているね」
 童子と姫については、大洋は現場研修で実際に目にしたし、純友も大洋からその話は聞いていた。
「武者童子、鎧姫、乱れ童子……今年になって、クグツによって童子と姫の様々な新種、亜種が
生み出されてきたが──先月また新種の報告があり、我々は『スーパータイプ』と呼ぶことにした」
 日菜佳が、ノートパソコンのディスプレイに、ディスクアニマルによって記録されたらしい、
そのスーパータイプの姿を映し出した。移動中の一瞬だけを切り出したような粗い画像だったが、
黒い烏帽子を被った、鎧装束の童子と姫がそこに映し出されているのがわかった。
「報告によると、彼らはこれまでの童子と姫のように魔化魍を育てる役割を持っているが、
それと同時に、黒クグツ、白クグツを始末する役目を果たしているらしい。
本部の見解としては、彼らの中での『人員整理』であるという結論に達したが……」
 白クグツと聞いて純友と大洋の目がすっと鋭くなり、わずかに目を見交わした。
「ここで、困った問題が起きた。追いつめられたクグツたちが群馬の赤城山に集結して、
自分たちの身を守るため、闇雲に魔化魍を生み出し続けている」

535 :見習いメインストーリー:2007/01/27(土) 16:51:00 ID:+rO4Oi8W0
「クグツ『たち』……?」
 純友が言うと、日菜佳が答えた。
「確認された個体は、黒クグツが四体、白クグツが二体ですが……地元の『歩』からの童子・姫の
目撃情報から推測するに、少なくともあと四体のクグツが潜んでいるものと考えられます」
「全部で一〇体……白クグツが二体以上……」
 純友が呟いた後、勢地郎は続けた。
「幼体・成体の魔化魍を連れた童子・姫が麓へ向かうのを、エイキ君、イブキ君、トドロキ君の三人で
なんとか抑えている状況で、とても根源のクグツを探して元を断てる状況ではない。──そこで、前に君が
消炭鴉を所有していた時に、クグツや『凄・橘』にディスクアニマルが反応したという事例を思い出してね。
その反応を期待して、すでに現場に消炭鴉を持っていってはいるんだが……反応は無い。
 赤城山にいるクグツが結界でも張っているのか、それとも君が持っていないと消炭鴉は反応しないのか、
それはわからないが──君が現地に行けば、あるいは──そう思ってね」
 それから、勢地郎は大洋に向き直った。
「君は、ここに残って後方支援、ということでいいかな? 消炭鴉でクグツの居所を探れるかも
しれない純友君はともかく、君まで行くことはない。それから、私ひとりでここを守るというのも
無理な話でね。君にそのお手伝いをお願いしたいんだが──」
「いや、おれも現場に行くっス。行かせて、ください」
 大洋はすかさず言い、勢地郎に真剣な眼差しを向けた。少し考えてから、勢地郎は言った。
「小菅で遭難した時から、半年も経ってるしねぇ。……では、許可しよう。私のサポートは日菜佳に頼もう」
 大洋も純友も、考えは同じだった。
 ──そこに行けば、橘多美と思われる白クグツが居るかもしれない。

三十二之巻「集う邪気」了

536 :見習いメインストーリー:2007/01/27(土) 16:51:41 ID:+rO4Oi8W0
次回予告

『石割には、避難誘導をやってもらっている。鬼は全員周囲の地形を確認中だ』
(最強の音撃武器)
「ザンキさん、体は大丈夫ですか?」
『頼りにしてるぜ、銀見習い。お前の力が必要だ』

見習いメインストーリー 三十三之巻「果す再会」

537 :見習 ◆7YV.ta6hAI :2007/01/27(土) 16:53:03 ID:+rO4Oi8W0
私もトリップ付けてみました。

538 :凱鬼メイン作者 ◆Gs3iav2u7. :2007/01/27(土) 18:08:11 ID:u8Q8K2PY0
久々に来れたので私もトリップつけとこ。

539 :名無しより愛をこめて:2007/01/27(土) 23:35:29 ID:8RraHShCO
逆ギレの雪風、自演の皇城
鍛えてないなぁ、響鬼ヲタは

540 :名無しより愛をこめて:2007/01/28(日) 00:56:28 ID:/uUDpPikO
皇城さん叩きはスレ違い。
批評ならばいいが、お前の読んだ向こうでやれや!

541 :皇城の〜の中の人 ◆M4hWSo7coo :2007/01/28(日) 02:22:16 ID:nQNEM/4w0
 あちらで挙げていただいた内容のような駄目はすでに頂いているわけでありまして。
 おまけに拙作は短編でなく中編的なスパンで綴っておりますので、あちらで評を頂く形にもなってはいないようですし。
 E判定は完結していないため評外という風に解釈しております。
 

542 :名無しより愛をこめて:2007/01/28(日) 05:35:16 ID:nbkLoBGhO
んで、まとめとか用語集での中四国の扱いはどうする?
作者もスレとの絶縁を宣言したし、私も正直そこまで大人になれそうもないんで、外すべきだと思うんだけど。

543 :名無しより愛をこめて:2007/01/28(日) 07:31:32 ID:rTT2zwIb0
>>542
中四国という作品がかつてスレに存在して、それを楽しんだという事実は消えないからなあ
まとめには今のまま残すのがいいと思う。
用語集は・・・そんな話は用語集をちゃんと機能させてからしようぜ

544 :名無しより愛をこめて:2007/01/28(日) 08:39:59 ID:LrVIt9tN0
>>541
あっちはSSを書く勇気もなく、素人作品を上から目線で叩くだけの
引きこもり特オタの集まりだから気にするな

545 :名無しより愛をこめて:2007/01/28(日) 11:06:26 ID:gjO1k5Sj0
えーと。急展開でびっくりした。

雪風はSSスレとの関係回復が不可能だと悟って、
これ以上自分とSSスレの間に繋ぎを付けるのは、逆に不利益だと悟ったのだと思う。
自分に対してマイナス感情、あるいは対立構図を見せているスレから
自サイトにリンクを貼られていると、いつまでも痛い腹を探られ続けるから。
あちこちのウェブリング、特撮サーチ(どことは言わんが)に
最近雪風が登録した形跡があるので、穿った見方をしたくなる…。

本人がSSスレに対して関係を絶ち、全て委ねると言ってるんだから、
まとめの中の人の判断に任せた方がいいと思う。
あそこはまとめさんの有志で作ったコンテンツなのだから。
残すにしても、残さないにしても、まとめさんの
今までの毅然とした態度に俺は信用を置いている。

546 :名無しより愛をこめて:2007/01/29(月) 09:49:30 ID:BBDTbFIE0
まさかとは思うけど、ここでの見習い叩きや、オリ批評スレでの皇城の名を使った、
批評依頼とかは雪風って事はないよね?もちろん信じたくはないが。
544の発言なんかも張られてたし、「俺を認めないスレなんか消えろ」ってやったのか?
見当たらないんだけど雪風は自分のサイトでここと決別宣言とかしてたの?

547 :名無しより愛をこめて:2007/01/29(月) 13:30:39 ID:pBeWdhBn0
向こうのスレに本人が来てるよ。
直接聞いてみたらわかるんじゃない?

http://ex18.2ch.net/test/read.cgi/net/1164793750/l50

548 :名無しより愛をこめて:2007/01/29(月) 14:40:57 ID:BBDTbFIE0
>>547
オリ批評スレとリンク先見たら、どうも雪風っぽい……
541を貼り付けてこのスレを袋叩きにするつもりだったのか?
まあ批評スレはここを殆ど相手にしてないみたいだけど。

549 :作者:2007/01/29(月) 16:05:00 ID:QBDvBEjt0
黙って聴いてりゃいい加減にしろよ……俺がそんなことして何になるんだ
俺はこのスレには関わらんと言った筈だ
このスレのためには二度と無駄な時間を使わないと、そういう意味だ

何が雪風っぽいだ・・・本当いい加減にしてくれ

550 :名無しより愛をこめて:2007/01/29(月) 16:11:47 ID:iO21CNjGO
>>549
だからトリ付けて、更に自サイトで証明しろっての
カタリやそれっぽい奴がメチャクチャ言っても、あんたの今までの言動からすりゃ、誰も不自然とは思わんよ

551 :皇城の〜の中の人 ◆M4hWSo7coo :2007/01/29(月) 22:44:13 ID:xSD6wmr20
>>549
なれば余計に517以降は沈黙を保っていたほうがよろしかったのでは?

>このスレのためには二度と無駄な時間を使わないと、そういう意味だ

こちらが本音ということですか。それで十分です。よく判りました。
お疲れさまでした。どうぞお下がりください。

552 :名無しより愛をこめて:2007/01/29(月) 23:35:59 ID:RInp+n7X0
別冊用語集の管理人さんにおねがいです。

本家のあつかう作品に「桐矢京介」が追加になりましたので、
別冊のほうのトップページも、それにあわせて変更していただけないでしょうか?
お手数ですが、よろしくおねがいいたします。

553 :別冊用語集”管理”人:2007/01/30(火) 08:15:50 ID:LcF9ikKJ0
>>552
了解。

用語集、本当は俺が率先して更新していかなきゃいけないのに何も出来てなくて申し訳ない。


ところで中四国支部鬼譚の作者さんに質問
>まとめサイトや用語集の中で、俺の作品をどう扱うかは、このスレのみんなで決めてくれ。
これは、まとめサイトや用語集に対して「転載許可」を出されるということですか?
スレから独立されるからには作者さんの許可なく収録はできないですから一応確認です。

554 :名無しより愛をこめて:2007/01/30(火) 11:14:33 ID:tJP8z21S0
>553

自分、作者じゃないけど。
他人の作品について転載だとか加工だとかでこれだけ揉め、
本人が完全に手を引く、関わらないでくれと言ってるのだから、
むしろ今までのログを載せない方がいいと思う。

関係スレを何本も炎上させた挙句、
親身になって相談に乗っていた人達の努力を無駄な時間だと言い放ち、
スレに対して、後足で砂を掛けていくように出ていった人だ。
ケジメを付ける意味でも、こちらでの掲載は止めた方がいいのでは。

本当のところ、もうギスギスした流れに疲れたよ。
二度と来ないで欲しいという要望を無視して、
こっちに残りたいと言っていたのに、それを翻してこの仕打ち。
真面目に雪風が戻れる方向に相談に乗ってあげてた人達が気の毒だ。

555 :別冊用語集”管理”人:2007/01/30(火) 12:46:11 ID:LcF9ikKJ0
>>554
ここの住人全員が一人漏らさず同意見なら、そうするけどなあ。
今までの流れを見てもそんなこと有り得ないと思う。
俺の立場としては、載せて欲しいという人が多少なりともいるなら、他の人が載せるなと言っても掲載を止めることはできない。
いずれにしても作者さん本人が載せてもいいと言うならの話だけど。

556 :名無しより愛をこめて:2007/01/30(火) 14:32:14 ID:rXpRv31JO
>>554に激しく同意だ。
正直、雪風も中四国SSも忘れたい。

向こうも絶縁望んでるんだし、作品だけ残してどうするのさ。
何でここまでされて、あいつの作品誇示の踏台で居続けなきゃならんのだ。

残してほしい人の意見を尊重するのはわかるが、頭から彼の存在を抹消したいほど不快を受けた者の意見も聞いてほしい。

557 :名無しより愛をこめて:2007/01/30(火) 15:05:00 ID:SpueCitv0
絶縁を望んでいるのに用語集に載ってたら、「何勝手に載せてんだよ」ってならないか?
もうさすがに擁護はも色んな意味で現れないだろ。

558 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/01/30(火) 15:05:30 ID:U9aWzU3tO
‥‥何か書こうか?

559 :名無しより愛をこめて:2007/01/30(火) 15:09:30 ID:H2gP9ZKhO
>>558お願いします。
出来れば趣旨と違うかも知れませんが、
裁鬼SSの筆を置いた心情も

560 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/01/30(火) 16:08:16 ID:U9aWzU3tO
書かなかった理由は、伍乃巻の>>509が心情、それプラス、

・響鬼は2年前の作品で賞味期限切れ。今年は豆腐スレでバカやってた。

・塩野勝美のやられボイスにすっかりハマって、ゼクトルーパーに魅入って、派遣スレでバカやってた。

こんな感じ。ちなみにまた書こうとしてる理由は、

・中四国が化けの皮剥いで、その流れが念願の「馴れ合い」に終止符打った。

・裁鬼ストーリーから時間経ったから、今度はまともに批評してもらえるかもしれない。

・自由時間の使い勝手に困ってる。手短に纏めると、ヒマ。

やっぱり、書くのは裁鬼話になる‥‥ と思う。何も考えてない。裁鬼や石割関連に、リクエストあるなら何か言って。
「今更くんな」 と言われたら、もう書き込まない。響鬼SSを調子に乗らせちまったのは謝る。
ごめんなさい、すみません。

561 :名無しより愛をこめて:2007/01/30(火) 16:14:26 ID:NVSA1dmCO
>>557
> 絶縁を望んでいるのに用語集に載ってたら、「何勝手に載せてんだよ」ってならないか?

「無駄でキャラを描かれた俺も被害者」
「俺の作品を読んだこともない奴らに絵を依頼した友人を、怒鳴りつけてやった」
とか言うくらいだからね…


562 :名無しより愛をこめて:2007/01/30(火) 16:52:24 ID:SpueCitv0
>>560
やはり豆腐はお前だったのか。おもしろかった。
今は前とは違う意味でまともに批評されない可能性があるから、
個人的には豆腐みたいな感じの真面目なのかギャグなのか分からない路線がいいな。

563 :名無しより愛をこめて:2007/01/30(火) 17:04:11 ID:H2gP9ZKhO
>>560
私は文章書けないので、と言うか
以前駄文を投下して目一杯後悔しました。
まともな批評なぞ出来る筈も無く、それは他の人に。
私の中で修羅裁鬼を追う辺りで一撃鬼の存在が大きくなり、
響鬼は作者さんにとって終わった話しと書かれた時は
そりゃないよ!と心底残念でした。
以前も書いた気がしますが、
弦楽器でパーカッシブな音を出すベースを一撃鬼に弾いて欲しいです。
ベース使いは現在蛮鬼だけです。
弦による高速音激打とかどうですかね?
私のリクエストなぞ気にせず、再度筆を取ってくれれば結構です。

長文失礼しました。

564 :見習いメインストーリー:2007/01/30(火) 20:36:41 ID:2o6qVTC10
前回は>>532から

三十三之巻「果す再会」

 香須実の運転する車は、関越道を北上し、群馬県の赤城山に向けて走行していた。
 助手席にはみどりが座り、後部座席には純友と大洋が並んで座っていた。二人ともディスクホルダーの
ついたベルトを着け、純友はそこに音叉を、大洋は数枚のディスクを装備していた。そして大洋の左腕には
鬼弦が装着されていた。先月、純友に依頼した壊れた鬼弦の修理を待つまでもなく、思いがけず鬼弦を手に
することができ、大洋は得意そうに腕環を装着した自分の左腕を見ていた。
 ──「たちばな」には今、各地への指示、連絡のために勢地郎と日菜佳だけが残っている。そして、
関東の鬼の総員が、弟子やサポーターを伴っていずれかの地に出動していた。

 純友たちが「たちばな」を出てから約二時間後。日が暮れた頃、一行は、現場の赤城山中に到着した。
砂利の上にロープを打ち付けて区切った駐車場には、すでに数台の車とバイクが停車していた。
 香須実は、純友たちを連れて歩き出した。
「イブキ君たち三人だけじゃ厳しいのはわかっているから、あと四人の鬼をここに呼んであるわ。
みんな先発していたから、私たちが最後みたいね。──落ち合うポイントは、この先だから」
 懐中電灯と地図を手に山道を歩いていった香須実は、開けた平地に着くと足を止めた。
「着いたわ。ここよ」
 香須実の持つ懐中電灯の明かりに気づいて、夜の闇の中を、黒い体に赤い鎧をまとった二本角の鬼が
駆けつけてきた。その背には音撃棒を二本差し、手には短刀型の見慣れぬ武器を持っていた。
『よっ』
 聞き覚えのある声が言い、二本指を立てた手をシュッと差し向ける、見覚えのあるポーズが決められた。
「ヒビキさん!?」
 大洋が気づいて言った。鬼の履歴書ファイルで見た写真とも、全身真紅の強化形態「紅」とも違う、
体の各所を装甲で覆った姿をしていたが、その声とポーズはヒビキのものだった。

565 :見習いメインストーリー:2007/01/30(火) 20:37:46 ID:2o6qVTC10
「そっかぁ、大洋君たちは、装甲響鬼の姿を見るのは初めてだっけ」
 みどりは二人の少年の様子に気づいて言った。
「みどりさん、あの武器は?」
 純友は装甲響鬼の持つ短刀型の武器を指して言った。
「あれは、音撃増幅剣・装甲声刃(アームドセイバー)。小暮さんが開発した、最強の音撃武器よ」
(最強の音撃武器)
 その言葉が、純友の心を揺らした。
(ぼ──ぼく、『銀』になって、ぼくが誰にも負けない武器を造るから)
 数カ月前に大洋に向けて言った自分の言葉を思い出した。
(あの、小暮さんが造った最強の武器──ぼくはあれを──超えるものを造らないと)
「ヒビキくん、他の皆は?」
 みどりの問いに、装甲響鬼は答えた。
『石割には、避難誘導をやってもらっている。鬼は全員周囲の地形を確認中だ。避難経路に問題がなければ、
ベースキャンプはここでいいと思うぜ』
「イシワリって誰?」という大洋の質問に、みどりが小声で「サバキさんのサポーターなの」と答えている
と、そこにまた一人、音撃弦を手にした暗緑色の体に赤銅色の隈取りの一角の鬼が、木陰から現れた。
 みどりが、歩み寄ってきた鬼に、心配そうに声をかけた。
「ザンキさん、体は大丈夫ですか?」
『見習いまで出動しているんだ、俺だけ休んでいるわけにもいくまい。それに、コイツもあるしな』
 斬鬼は一枚のディスクアニマルを取り出して鬼弦を弾いた。ディスクアニマル・黄金狼が展開し、
一度地上に降り立つと、飛び跳ねて斬鬼の右膝に絡みつき、脚の故障を保護する装甲となって定着した。
 その時、一方の木立の中から枝葉の揺れる音がした。

566 :見習いメインストーリー:2007/01/30(火) 20:38:27 ID:2o6qVTC10
 見ると、小太刀二刀流のように小型の音撃弦を両手にした黒い体に赤い四本角の鬼が、弦で枝を切りよけ
ながらその場に走ってくるところだった。純友も鬼の履歴ファイルで見たことのある、裁鬼という鬼だった。
『お疲れです、サバキさん』
 二本指をシュッと差し向けてあいさつをした装甲響鬼に、裁鬼が一方の小型音撃弦をスッと上げて応える。
『あとはダンキだけか』
『俺ならここですよ』
 別方向の木の枝の上から、声がした。そこに、黒い体に青い隈取りの一本角の鬼、弾鬼の姿があった。
──大洋にとっては二ヶ月ぶり、純友にとっては実に半年ぶりの、弾鬼との再会だった。

 背中に音撃棒を装備し、音撃増幅剣を手にした、関東最強の太鼓の鬼、装甲響鬼。
 その左右には、関東一の弦の鬼の座を争った、二刀の小型音撃弦を持つ裁鬼と、ひと振りの音撃弦を
手にした斬鬼がいた。
 そして、そのやや後ろには、腰に音撃棒を装備した、この中ではまだ若手の鬼、弾鬼の姿があった。
 夜を迎えた赤城山中に、四人の鬼が並び立っていた。
 ──皆を見渡し、裁鬼は言った。
『ヒビキは引き続き、消炭鴉を使ってクグツの探索にあたってくれ。俺とザンキとダンキは、エイキ
たちの応援に向かう。残ったメンバーで、ここにキャンプの設営を頼む』
 その指示に従い、香須実とみどりと大洋は、近くに止めてあった車からキャンプの設備を持ち運び、
設営を始めた。
 斬鬼と裁鬼が樹々の中に分け入っていき、弾鬼も別方向に駆け出そうとした時、純友はその背中に
声をかけた。
「ダンキさん!」

567 :見習いメインストーリー:2007/01/30(火) 20:39:18 ID:2o6qVTC10
『オウ、見習いか。久し振りだな』
「はい、半年振りです」
『ちっとは鍛えたか?』
「いや……ぼくはあんまり……で、でも、大洋は、あいつは、凄く鍛えてるんですよ。来てよ、大洋」
 純友に言われて、大洋はためらいがちに弾鬼の前まで歩いてきた。
 二ヶ月前、明日夢を襲った不良を大洋が叩き潰し、やり過ぎたことで叱られ、そして──きつい
一発をもらい、「鬼にも猛士にもなれやしない」と言われてから二ヶ月──
 あのことがあってから、初めて大洋はダンキと再会した。
「……ダンキさん、おれ──」
 そこに、装甲響鬼が近づいてきて言った。
『行くぞ、弾鬼!──飛車見習い、キャンプ設営急げ!』
『はい!』
 言うと、弾鬼はそこを後にして、鋭鬼たちの応援に向かい、大洋はキャンプ設営の作業に戻っていった。
 そして──もう一つの再会があった。装甲響鬼が、ディスクを一枚純友に手渡した。
『頼りにしてるぜ、銀見習い。お前の力が必要だ』
 純友は、二ヶ月ぶりに、懐かしい消炭鴉のディスクを手にして目に涙を浮かべた。
『おいおいおい、そこで泣くなってのホントにもう』
「す、すいません……」
 純友がぐっと我慢して、以前していたように紐を通したディスクを首から下げた時、ピクリと
ディスクが動いた。
「ちょっ……待っ──早速来たあああああ」
 よろめきつつ山道を踏み出していく純友の後を、装甲響鬼はついていった。

三十三之巻「果す再会」了

568 :見習いメインストーリー:2007/01/30(火) 20:39:57 ID:2o6qVTC10
次回予告

『音撃打、必殺必中の型!』
「スーパータイプ……」
「がっ……は──」
『なんだ。やっぱり鬼じゃないのか。鬼にしては弱すぎるな』

見習いメインストーリー 三十四之巻「撃ち放つ銀」

569 :皇城の〜の中の人 ◆M4hWSo7coo :2007/01/30(火) 21:26:33 ID:c0ATMLJz0
 遅ればせながら。
 裁鬼SS職人様おかえりなさいませ。これでスレタイも元に戻せるでしょうか?(苦笑

 新作の投下を心待ちにしております。

570 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/01/30(火) 22:31:52 ID:U9aWzU3tO
>>569

ただいま。前に言った通り、スレタイはこのままでお願い。

こんなの書こうかな〜と思ってるヤツを。

・【音撃戦記 〜鬼、鎮魂〜 】(仮)
舞台は現代よりちょっと先。場所も日本。地域も東京。響鬼、明日夢や京介から裁鬼、石割まで出せるだけ出す。とりあえず、戦争。とりあえず、人類&魔化魍VS鬼。

もう一つ。
・【今週の裁鬼さん(NG)】

第1回

石割「うわぁっ!?」
裁鬼「大丈夫か石割! ここは俺にまかせろ! この野郎ー!」
童子「フン!!」
裁鬼「アッタマきたうわゲフッ!」
石割「‥‥裁鬼さん!?」
裁鬼「‥‥ううっ‥‥」

石割「‥‥バカ! 死ぬつもり!?」
裁鬼「!?( ゚д゚)」
第1回終わり。 つづく

571 :竜宮「明日夢十夜」第七夜:2007/01/31(水) 13:23:57 ID:zaPSnVFf0
明日夢十夜  第七夜「逆巻(さかま)く波」 
 (ZANKIの人様作の「魔化魍異聞録」SS風。)

 こんな夢を見た。
  足元も見えないほど霧がたちこめ、食事をとる部屋までずいぶんとかかった。
ぎしぎしと足元が揺れるから海は荒れているのかもしれない。
だが雨はなくやわらかい靄がおぼろな日の光を映し出し、朝とも昼とも知れない。
 入り口にたどりつき、食事を出させようとすると、そこは信じられないほど広く豪華な部屋だった。
天井には朱塗りの枠が格子模様に張り巡らされ、間には星を司る獣たちが描かれている。
窓は閉じられ、長い机には唐の国でも見たことがないほど豪勢なご馳走が隙間なく並べられている。
こんな広い場所などどこにも無かったはずなのに。
海風にさらされ日焼けした船の厨房の者の代わりに、美貌の男女が一組現れた。
華やかな彫刻を施した椅子を引き、僕を座らせた。男とも女ともわからぬ端正な顔立ちで無言。
男髪を結った青い服の者が茶を入れ、女風の髪を結った桃色の服の女が料理を取り分け盛り付けられた皿をうながした。
食べ飽きた乾物とは違うこうばしい香り。熱い湯気。つばを呑み込み箸に手を伸ばした時、窓が割れた。
「それを食べれば生きて二度と帰れなくなるぞ!」
 激しい風と豪雨が吹き込み料理の皿をかたかたと揺らした。日本角の黒光りする異形の者が机の側に降り立った。
「鬼ね」
「鬼め」
男髪の青服が女の声。女髪の桃色服が男の声。飛び掛ろうとしていた。


572 :竜宮「明日夢十夜」第七夜:2007/01/31(水) 13:26:56 ID:zaPSnVFf0
 ぱんっと手を打ち鳴らす音がした。打ち鳴らす音とともに破片が窓に戻り、何事もなかったかのように元の窓に戻っていた。
誰もいなかったはずの机に老人が座っていた。僕と向き合うように机の反対側に座り、白い長い髭や髪の間から、にっと笑った。
仙人のような風貌。老人の様子に男女がまた無言のまま後ろに退いた。
「鬼殿?なぜ邪魔をされる。」
「我らの心の中の蛭子が悲しむ。我ら鬼は父母神に疎まれた蛭子と異形の角を持つ人の女の血を引く者。
心も知らぬ妖異を海に沈めても海が汚れ、地が汚されるだけだ」
「我が国の与えたものを嬉々と持ち帰る地の果ての者がたいそうな口のききようじゃな。
だが我らとて手こずった妖狐をこのまま潜り込ませた船ごと見逃してしまえば、お前の国とて無事にはすまぬのじゃぞ。
海の藻屑と化してしまえば、災いをなす力は無くなるはずじゃ」
 どうやら妖異のたぐいがこの船にいるらしい。だが、僕を素通りするやり取りは、内容のわからないことばかり。
老人の椅子の陰に、青服と桃色服につかまれた美しい少女が現れた。目からぼろぽろと涙を流し、大きな瞳を頼りなく見開いている。
「お助けください。この船の主様」
 胸を打ち震わせるような切ない声。この少女が妖異と言われれば、たしかに人の心を虜にする魅力。
だが、夢見心地と空腹でもうろうとした頭では、さて、助けて何とする気概もわかない。
ただ、このまま手をこまねいていれば自分も少女もろとも死ぬ運命らしい。
「船一艘で稀代の妖狐が滅ぼせるならば、人にとっても安い対価であろう。それともわしの好きな碁勝負でもするかの?」
 何か、心の中でずしりと忘れていたことが浮かび上がってきそうな気がした。
「俺は碁はわからぬ」
鬼が吐き捨てる。
「ちょっ…、僕だってほとんど分からないですよ!」
「二人一組でかまわぬよ」
 老人の穏やかな笑顔とともに、料理が消え、碁盤と碁石入れが現れた。紅い鳥と青い竜の描かれた赤と青の碁石。
獣達の描かれた蓋を取り机に置き、碁石をじゃらりとつかむ。


573 :竜宮「明日夢十夜」第七夜:2007/01/31(水) 13:31:31 ID:zaPSnVFf0
鬼は窓辺でそっぽを向いている。黒光りする顔や体に鎧のように付いた白銀の模様が白い虎のようにも見える。
これで玄(くろ)い亀がいれば完璧だな、とたわいのないことを考える。とりあえず、亀のようにのろのろと青い碁石を置いてみた。
ぱちりぱちりと碁石が打たれ、なんだかほのぼのとした時が流れた次の一手。
いつの間にか囲まれていた僕の石を老人が取り上げた。
 ガッ!!
振り仰ぐと、鬼が襲い掛かっていた犬型の化け物の体を斬り、くらいついたままの顎を剥がし、血まみれの肩で荒く息をついていた。
「鬼殿!?」
「かまわん!打ち続けろ」
「二人一組ですからの」
 化け物がどこから?振り仰ぐと自分の碁石の取られた箇所と重なる天井の格子模様から獣の絵が消えていた。
他の格子模様の獣達も本性を剥きだすように平べったい絵の向こうから瞳を紅く光らせている。
呆然と老人の顔を見ると、穏やかな笑みだけに恐ろしい。少女は椅子の陰でなおも震えている。
 思いっきり遠くへ打った。陣地を広げ逃げて逃げて、せめて時間をかせいで反撃を!
そう思うのに絡め獲られるようにしなびた指が逃げ場を崩してゆく。取られるたびに獣達が鬼を傷付け食い破ろうとする。
鬼の剣がうなり、時には掲げ持った笛までもが獣達を払うのに使われる。
剣と笛の音の刃は獣達を散らし、天井には白い空間が一つ一つ広がってゆく。


574 :竜宮「明日夢十夜」第七夜:2007/01/31(水) 13:32:54 ID:zaPSnVFf0
だが、わずかな反撃の石が老人の石を取りかけたが、小指と人差し指をはじく間に、鬼が壁に打ち付けられた。
骨まで砕けた音が聞こえたような気がした。
「続けろ……」
 がたがたと全身が震えてきた。打とうとした石が碁盤から滑り、あわてて受け止めた。
その時、するりと天井の獣達が動いて見えた。手の中の碁石が熱く自分の手の中に溶け込む気がした。
 手の中の碁石が滑り床を転がった。老人の足元の向こうに、うつむきしゃがみこむ少女が見えた。
少女の袖で隠された顔が動き、滑る碁石を見てあざけるように微笑んだ。
 何かを思い出しかけている気がした。これは妖(あやか)しの碁。自分は前に碁を打った時どうしていただろう?
ぼんやりとする頭の中で、碁石を拾い立ち上がった。
 逃げ道はまだあった。だがわずかに打てる余地のある一隅は既にシチョウ(征)の形。
かわして逃げても盤隅で追い詰められ挟みこまれる。逃げれば逃げるほど、最後に取られる石の数が多くなる。
取られた石は獣となり、今度こそ鬼と自分の命を断ち切るだろう。
 鬼は立っているのが不思議なほど、生きているのが不思議なほど傷だらけだった。
守ろうとしている少女はあざけるように笑いながら勝負の行方を眺めているというのに。
この勝負に負けても少女は死なないのかもしれない。
美貌と妖力で古代の王をたぶらかし国を滅ぼした妖狐の噂は聞いたことがある。
もし七尾の狐が化けた妖女ならば、退屈しのぎにこの勝負を見守っているだけなのかもしれない。
それとも滅びてもかまわないほど退屈しきっているのかもしれない。


575 :竜宮「明日夢十夜」第七夜:2007/01/31(水) 13:34:35 ID:zaPSnVFf0
「長考じゃの」
老人が笑った。僕はことりと石を置いた。逃げ道をつなぐ場所ではなく、まだ獣達の絵が多く残る盤上の部分に。
「賢明じゃの」
老人がシチョウをふさぐ紅い石を置いた。十字架のように青い石が詰まれた。
「鬼殿。あの石を僕に取ってくれ!」
 鬼が怪訝そうに、それでも吹き矢のように笛の音刃を飛ばし、老人のつまむ碁石を撃った。
宙を舞う石をつかみ、僕はそれを呑み込んだ。食事が食べた者をこの世界に縛り付けるように、碁石が僕を盤上に縛り付ける。
刹那、机に伏せられた二つの碁石入れの蓋をひっくり返した。
刃のように変わってゆく爪で、表に掘り込まれた獣達の姿が鏡のように透き通るまで蓋の裏を磨いた。
総てが止まっているように見えるほど早く動きながら蓋を合わせ、反射しあう蓋の図が八卦の図を描き出すことを確かめた。
八卦図の力を用い鬼のまわりに結界を張った。変わる体はもう人の声を発せない。吐き出す糸で伝えたい意図を文字に形作る。
鬼が頷き、僕の伸ばす糸をつかみ、うごめきだした天井の獣達を打ち破り、老人の前に降り立った。
 青服、桃色服、そして少女が立ち上がった。鬼の清めの剣が彼らをなぎ払った。
「これ以上怨みをまき散らすな!」
 鬼が目鼻の無い顔を老人に向け、悲哀のこもった声で叫んだ。


576 :竜宮「明日夢十夜」第七夜:2007/01/31(水) 13:36:24 ID:zaPSnVFf0
「半端な異形の者に指図されるいわれは無い!!」
 老人が美しい妖女の姿を現わすと、鬼の体に爪と牙をつきたてた。
鬼が深いため息を吐いた。
「分かるさ。人だからこそ怒り憎めば純粋な魔物よりも手に負えないものとなる。体の中で和魂と荒魂が荒れ狂う。
俺も今でも迷っている。
だから、お前をここで消しても清められないことは分かっている!!
お前の体の中にふくれあがる毒を天地にまき散らし死なせるわけにはいかない。お前が清めの音に耳を塞ぐかぎり俺は追い続ける。
俺の大切なものを守るために」
 盤上に溶けてゆくのを感じながら僕は碁を教えてくれた鬼のことを思い出した。
唐の国に渡り、日本に文物を持ち帰ることを望みながら海を渡れずに異国で死に、魂だけが鬼と化した望郷の念を持つ鬼のことを。
そして時には海に沈み、誰一人帰ることのかなわなかった使節としての先人達を。
 窓が破れ蒼い波が部屋に流れ込んできた。
帰リタイ!帰ル!帰ラナケレバ!閉ざされた国の外に世界が広がることを知らせなければ。
守るため、戦うため、生き抜くため、知ることで恐れないために。心を響かせあうために。
小さな荷であろうとこの海を渡り、船を国に帰さなければ!!!
 流れにまかされやすい自分も、どこかあの鬼に感化されてしまっていたのかもしれない。


577 :竜宮「明日夢十夜」第七夜:2007/01/31(水) 13:38:10 ID:zaPSnVFf0
自分の体がまた変化しだした。妖女が波間に消えるのが見えた。鬼を口でひょういとつまみあげ背に乗せた。
波飛沫に出来損ないの獅子のような自分が映っていた。
背に乗せるのは知恵の菩薩には程遠いが、渡海文殊のごとく鬼を乗せ、海を渡りきらなくては。
碁盤に見立てられた格子模様の天井の組入れが波に埋もれてゆくのが見えた。それはさながら空が沈むよう。
光と音が無くなり何も感じなくなった。

                             ◆

 目覚めると、まだ夜だった。差し込む月の光に甲板に出た。話し込む者達。星の解説をする者達。
楽器と共に連れ帰った美しい異人の男女が唐の楽器を奏でていた。笑うように開いた口が二人ともやけに大きく感じられた。
青服と桃色の服の給仕の者達に似ているように感じたのは、まだ夢の名残だろうか。
「おい、国が見えるぞ!」
 酔っ払った者の叫びを聞き流そうとした時、この遣唐使船の側から怪しい光が海の彼方に飛びさってゆくのが見えた。
ぼんやりと船縁に添えた手を顔に近づけた時、ふわりと自分の手から銀の糸が出ていることに気が付いた。
「夢が夢でも本当でも、どうやらあの鬼殿の手伝いをしなければならないようだな」
 困ったな、と思いながら、あの不器用そうな鬼に会いたかった。


578 :竜宮「明日夢十夜」第七夜:2007/01/31(水) 13:40:41 ID:zaPSnVFf0
追記:元ネタは『吉備大臣入唐絵巻(きびのおとどにっとうえまき)』
    帰り損ねて鬼となった安倍仲麻呂に助けられて、中国側の出す難問に回答していく話です。
いろいろ日本に持って帰ったという実在の人物達を基にしたエピソードのおもしろい説話です。
 なんかネットで九尾の狐をこの人が日本に持ち帰ったとかいう説もあるよ、と読んだので。
(どこだったか忘れてしまいましたが)
絵巻の謎解き本が出てるので、そちらの方が読みやすかったです。
天井の組入れで鬼の仲麻呂に特訓してもらって碁を覚えた話。蜘蛛の糸の霊験で読み解けない漢詩
(というよりも予言詩的なもの)を読み解いた話。
でも碁のできない自分には力不足ですいません。
八卦(はっけ)図は、『魂』で、明日夢に魔法陣を張らせてサポートさせる案があったとあったのでアジア風に。
以前出てた烏龍茶のおまけの「満漢全席」海洋堂フィギュアでのお姉さん二人が青い服と桃色の服で可愛かったので。
蜘蛛関連の映画のCM見てたので影響受けてますが、いかせてません。
 「魔化魍異聞録」の続きもいつか書いていただきたいものです。


579 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:44:57 ID:zaPSnVFf0
明日夢十夜 第八夜「始まりの君へ」
 凱鬼SS様のあきらクラリネット設定など演奏描写をお借りしたり参考にさせていただきました。

 こんな夢を見た。

 夏にヒビキさんと山登りをしてから、僕、安達明日夢は吹奏楽部で鍛えてゆくことにしました。
鍛えに鍛え、その年のコンクールは鍛え足りませんでしたが、それでも今年の城南は変ってきたなと言ってもらえました。
仲間の輪が広がり、吹奏楽部顧問の水鬼先生の厳しい指導のもと毎日鍛えてます。
そして翌年の夏、東京都で開催されるスポーツ全国大会のオープニング演技に出演することになりました。
チアリーディング部の持田さんや、小学生から社会人団体まで、他校の吹奏楽部、チアリーディング部、コーラス部。
皆と共に共同演技させてもらうことになりました。



580 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:48:02 ID:zaPSnVFf0
 「1、2、3。1、2、3…」
スタジアムの入場口への廊下に並びながら心臓がどきどきする。
繰り返し体に叩き込んだはずのリズムがふわふわと逃げそうで、呪文のように繰り返す。
「明日夢。お前、往生際が悪すぎるぜ。お前がそんなんだとチビ共まで不安になっちまうだろ」
 近くに並んだ今は城北に通う同期が、中学の部活動の頃のように笑いながら嫌味を言ってくる。
だが、さすがブラスバンド名門の城北で一年鍛えられただけあって、場数を踏んだ落ち着きが憎たらしい口調に落ち着きを与えている。
「いいよ。これが一番俺らしくできるやり方だから。もう皆も慣れてくれてるしね」
「城南でふにゃけちまったかと思ってたけど、お前のとこのブラスバンド顧問、指揮いいよな。美人だし。
あんだけ振れるのに去年まで見かけたことなかったぜ。俺、中学の時、けっこう高校のコンクールとか聞きに行ってたのにさ」
 ほめてるのかふざけてるのかわからないが、おしゃべりに気持ちが落ち着いてくる。
「そうだね」



581 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:49:33 ID:zaPSnVFf0
 本当にそうだったから。ブラスバンド部の顧問は元鬼。
城南高校、城南大学は実は猛士のメンバーの関わる者の多く通う学校。
本当は出席日数などもいざとなれば他の学校よりも融通が利く場所であることを知ったのは夏が終わった頃だった。
部長達は真面目だったが顧問の風見圭子先生は生徒達との間に一線を置いていた。
『猛士にいる子達にもこの部に入る子はいるのよ。そんな子達まで修行の時間を部活動に割かせられる?』
『城南高校のこのブラスバンド部でしかできないことを僕はやりたいんです。
先生がなんと言われても鍛えてもらうまであきらめません!』
 明日夢は自分でも思いがけなかったほど、部員の練習を見てくれるよう頼み込んだ。
食い下がり続ける明日夢に、初めて風見先生の音楽魂の火が点いたのだ。
落ち着いたやさしげな容貌が鬼に見えるようになってからは日々の速かったこと。
朝錬はもちろん、校庭が運動部に占拠される放課後は近所の公園に集められて月が輝くまで楽器と行進の練習もさせられた。
唇が破れるほどホイッスルを吹き、延々と独り教室で拍子を取りながら机相手にリズム打ちを続けた。
三年生が卒業する時、ドラムのスティックが明日夢に与えられた。
『がんばったな安達。がんばれよ』
 部長の前で泣いてしまった時。後でカツオ、キコにしばらく囃し立てられ恥ずかしかったけ。
でも二人は持田や天美さんと一緒にスティック用の手入れ道具をプレゼントしてくれた。


582 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:51:19 ID:zaPSnVFf0
今体に巻きつけた小太鼓、そしてこれから演奏するグランドに据え付けられたドラム。スティックを握りしめる手が震える。
心が飛び出しそうなほどどきどきし、すぐにでも飛び出してゆきたいほど心が舞い上がる。
成績を落とすことは絶対に許されなかったから、お尻に火が点いたように猛勉強して、教科書中にうたた寝のよだれの跡が残った。
予選突破は出来なかったが、コンクール、合宿、定期演奏会で1年生が終わり、2年ももう暑い夏を迎えようとしていた。
 
 そうだね、とうなずいた一瞬、これまでのことが一気に頭をよぎっていった。大変なつもりだったけど楽しかったんだ。
「でも今は楽しいよ。楽しくて仕方ない」
「お前ってほんと、からかいがいの無い奴だよな」
ため息をつき、笑い返してくれた。
 「持田もバトン部に入ってたけど、今日は元演劇部の本領発揮だしな。
楽器持ち以外でも、客席にも中学の頃の同期がいっぱい来てるはずだから、今日はちょっとした同窓会演奏だな」
「そろそろ出るぞ」
 声がかけられ、皆が息を吸い込んだ。アナウンスが流れ、皆がいっせいに足を踏み鳴らした。出陣だ!!



583 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:52:57 ID:zaPSnVFf0
                                ◆


 ひときわ高く鳴り響くファンファーレと共にマーチング・ドリルの開始だ。
囲われ細かく引かれたラインにしたがって、箱庭の中でトランペット、太鼓、クラリネット、さまざまな楽器たちが絡み合う。
鬼達の戦いの始まりをを描き出す。楽器達の競演をハミングやうなるような合唱の人声が支える。
 行進する明日夢達と反対方向から華やかなフラッグ(旗)を振り仰ぐバトン部達の群れに追われる学生服の少年が現れた。
明日夢に扮するひとみだ。
 マーチングドリルは三つ巴の太鼓模様に行進し、かたまり、広がる。
こぶのように学生服のひとみを包む場所で戦闘が演じられ、隊列を乱し、次の場所に移動するたびに、他の演奏が支える。
 フラッグを使い、魔化魍と鬼の戦いが演じられてゆく。戦闘は佳境に入り、少年をめぐり、振り付けも演奏も激しさを増す。
 そしていよいよ明日夢のソロ。
叩こうとして、緊張のあまりスティックを持つ指先の感覚がなくなった時、小さな鳴き声が聞こえた。
ステルス製のDAが明日夢の肩に翼を触れさせた。他の人に気付かれないようにそれは一瞬。
すぐに明日夢でも分からない高みへ紛れた。
「ヒビキさん」
 呟くと、明日夢がドラムを思いっきり叩いた。


584 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:54:30 ID:zaPSnVFf0
ヒビキさん達は今日は現場だ。紅響鬼が夏の化猫に打撃の舞を踊るようにスティックを振るう。
そして今日は同じ場所に何年かぶりの大型魔化魍も出現している。
轟鬼さんも息吹鬼さんも去年の今頃初めて組んだ頃とは別ユニットのような華麗な演舞で巨大魔化魍を倒しているはずだ。
(去年を聞いていないので変化は分からないけど。年末の忘年会では息がぴったりと合っていたそうだし。
イブキさんの高らかな演奏とトドロキさんの切りつけてくるようなリズムにひなかさんがきゃあきゃあはしゃいでいたそうだ)
 横に立つ友と頷きあいながら明日夢がドラムを打ち鳴らす。
友の金属味を帯びた管の音が空気の中で自分の音と一つになり、他の楽器が高らかにファンファーレを奏でる。
独りでは決して出せない音が響き合い、持田が学生服で駆けてゆく。
 色とりどりのフラッグ(旗)を振り、化粧と怪奇風な美しさにデザインされた衣装。
簡素なだが華やかな布をまとい、各団体のバトン部が魔化魍として競技場いっぱいに広がり、学生服の持田を追いかける。
フラッグが時には共に動き、囲い、解き放ち、変化する。
 メドレーや激しい戦闘の曲。音叉の音。
多彩な曲にあわせ、イブキに仕込まれた拳法技を双方が演武する。
バトン部の動きと映えるように組み替えたあきらとひとみの振り付けが演じられてゆく。


585 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:55:55 ID:zaPSnVFf0
 鬼に扮した演奏者達が己が武器と演奏と楽器を武器として、フラッグのバトン部員達と戦いを繰り広げる。
交差し、行進し、計算されつくした足運びで演奏者達が三つ巴の紋を渦巻かせ、陰陽の形へと変えてゆく。
 鬼達と魔化魍の戦いがせめぎあい、一つの輪となった。
クラリネットがすべての終わりを告げるように静けさの中に響いた。
 戦闘が終わった時の穏やかな曲が流れ、鬼達が魔化魍へと歩み寄ってゆく。
                          ◆


586 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:57:12 ID:zaPSnVFf0
「よっしゃ〜!!一丁あがり!!」
 イブキまで加わり、久しぶりの巨大魔化魍と化猫退治を同時にこなした鬼達がキャンプ地まで戻ってきた。
「ヒビキさん、気になるでしょ」
「別に〜」
 わざとかすみに平気な顔をしてみせるヒビキの横にお茶を持ってひなかがすとんと顔を寄せてきた。
「ふっふっふ。ヒビキさん、姉上、とっておきのものがあるんですがご覧になります?」
 ひなかの肩にとまっていたステルス状態のディスクアニマルがぷるると頭を振り、赤と青の混ざった体を震わせた。
壊されてアカネダカとアサギワシとを組み合わせたディスク・アニマル。
「この子、最近また調子が悪いからメンテナンスしてたんですけど、試しにみどりさんの依頼で電波録画させてるんですよ。
今日の明日夢君達、見たいですか?」
「え?そんなことしていいわけ?」


587 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 13:58:38 ID:zaPSnVFf0
「失敬な。ちゃんと吉野の許可を取った実験ですよ。
録画技術だけじゃなく、電波中継もDAができるようになったら、魔化魍の追跡や清めもやりやすいでしょう。
ただし、電波が他の受信機に拾われたら大変だし、妨害電波の実験もうかつにできないから。
明日夢君達の中継だったら何か齟齬があっても誤魔化せるだろうってことで説得したんですよ。
元々今回の演目が通ったのだってそのおかげですよ。
全国の鬼が見たがってなおかつ録画が出回っても鬼の活動に支障がない、ってことで通ったんですよ。
圭子先生とみどりさんと一緒に吉野を説得したんですからね。大変だったんですからね」
「風見先生とみどりさんとでしたら、それは吉野も言い負かされますね。ぜひ見せてください」
さらっと言いながら、あきらが小型テレビをもう机の上に載せている。
「あきらちゃんも持田さんと振り付け考えてたものね。見たいわよね」

                          ◆


588 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 14:00:00 ID:zaPSnVFf0
「少年よ」が流れ、バトン部の皆が魔化魍の衣装を脱ぎ捨て、真っ赤な衣装に早変わりを見せた。
フラッグを置き、持田の体を運んでゆく。高いピラミット形の陣形に送り届けられ、鬼に扮した者達が彼女を頂上へと登らせる。
手の運びやる流れを踊るように伸び上がり、ひとみは制服を脱ぎ、赤と白のユニフォームで両手を高く掲げた。フィナーレ。
昇る朝日を表現。
 心地良い汗を粒を飛ばしながら、明日夢はやわらかくドラムを打つ。始まりの朝のように。学校へ向かう道。見上げる雲。校舎。
クラスメイト達の中へ。こぎみよい切れのあるリズムが深く強まり、「輝」が極まる。鬼達への憧れ。自分を信じる心。
 テレビに向き合っていたあきらが鞄を開き、クラリネットを取り出した。高らかに音が響き合う。
目をつぶり集中して吹く弟子の姿を嬉しそうにイブキ達が見守っていた。
 曲が転調し、明るく違う曲に変わる。
 
小学生達が「おはよう」の歌を歌い掛け声をあげ、楽器を掲げ持ち、ポーズを決めた。
 競技場中から拍手や歓声が上がる皆が汗びっしょりで笑っていた。
「やっぱ城北に来れば良かったんだよ。俺、お前の音けっこう好きなのにな」
「城南大学に来ればいいじゃないか。勉強しなきゃお前じゃ無理だけどな」
「言いやがったな」


589 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 14:02:47 ID:zaPSnVFf0

 群れる金魚のように空気の波に波紋を描き、客席がその色を、音を掬い取る。
競技場で待機するアスリート達も、奏でられ、演じる僕達を見つめている。
 今、この瞬間は僕達がヒーローだ。

 観覧席の手すりにもたれながら勢地郎さんとザンキさんが手を振ってくれているのが見えた気がした。
二人とも紅いスカーフを振ってくれると約束していたから。
「やるもんだねえ。明日夢君達。一糸乱れぬ呼吸ってやつかね。合同練習は数えるほどしかなかったはずなのにねえ」 
「ひなかさんがシュミレーションがんばってくれたようですね。トドから聞きましたよ。すいません、本番見たかったろうに。
俺がまた体の調子が悪くてトドに付いていってもらったんで」
「ザンキさんの公認だって喜んでたよ(乾いた笑い)。
まあ、ヒビキ君も「凱火」壊しちゃってかすみが「不知火」出してるから姉妹同じ現場で楽しいと思うよ。
リハーサルは見てるしね。パソコンであれこれするの、あの子得意だからね」
「鬼の魔化魍退治にもシュミレーション戦術が活かせるんじゃないかって張り切ってくれてるそうです」
「まあ、シュミレーションの変更ごとに即座に楽譜を書き換えてくれる風見先生あってこそだったからね。
現場での実用化はまだまだ試行錯誤だろうけどね」


590 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 14:04:43 ID:zaPSnVFf0
 鬼と魔化魍の戦いに合わせるように合唱パートのハミングや楽器のようにアレンジされた声が響いてくる。
異例のアンコールだ。澄んだ響きを残しながら、ゆっくりと演奏者達が退場してゆく。
耳を澄まし、まぶしそうにザンキが笑った。

「吉野本部からの歌にうるさい方に合唱パートはずいぶんしごかれてたようですね」
「厳しすぎて親から苦情がきたそうだよ。でも親達にも全国から競技のために集まってくれる若者達を祝うのは君達の子供なんだぞ!子供達に力強く勇気を持って生きてもらいたい。心の中で光が輝いてくれるよう。
努力の積み重ねに誇りをもって応えられる演奏できないでどうする!!って結局説得しちゃったそうだよ」
 さもありなん、とザンキがうなずいた。勢地郎は目を細め面白そうに退場してゆく華やかな衣装の彼らを見送っていた。
「黒っぽい鬼達が出目金、赤っぽい魔化魍達が金魚に見えるよね」
「夏の風物ですね。でも金魚掬いもいいですが、また花火見ながら西瓜でも食べましょう」
元鬼の男達が笑いあった。


591 :竜宮「明日夢十夜」第八夜:2007/01/31(水) 14:06:23 ID:zaPSnVFf0

 追記:吉野の歌にうるさい方のセリフは一部「少年よ」を平成17年の歌謡ホールで歌われた時のセリフが入ってます。
(子供達に力強く勇気を持って生きてもらいたい。心の中で光が輝いてくれるよう)
やさしい口調で言われておられましたので、まあパロディということで。
 二十九話風なまま最終回を迎えたとしたらこんなエピソードもありかな、ということで。
マーチングドリルの番組を見て、これなら吹奏楽部とチアリーダー部がほんとに共演できる。
ミュージカル風にもできて面白いなあと思ったので。
でも凱鬼SS様や高鬼SS様、他にも、素晴らしい演奏シーンを描かれるSS作者様方のようにはいきませんでした。


592 :竜宮「明日夢十夜」第九夜:2007/01/31(水) 14:08:37 ID:zaPSnVFf0
「明日夢十夜」第九夜「月のひかり」

 こんなゆめを見た。
  すごくたのしくて、げんきが出るゆめだった。でも目がさめるとおもい出せなくて、どこにいるのかわからなかった。

ゴウゴウとすごい音がする。
(そうだ。ぼくはデンシャにのらなきゃ)
 おきあがろうとして、でもからだがうごかない。
 (カイシャはどこにあるんだろう?)
からだじゅうがおもくて、あたまがぼ〜っとする。
(おとうさんにいわなきゃ。音がくかいでタイコをたたくんだよ、って)
なんだか目をあけているはずなのにすごくくらい。
はいいろがすこしずつもののかたちに見えてきた。
音もここをふいていくカゼ。
(そうだ。デンシャにのってここにきたんだ)


593 :竜宮「明日夢十夜」第九夜:2007/01/31(水) 14:10:21 ID:zaPSnVFf0

 木がいっぱいはえていて、すぐそばの大きな木に男の人と女の人がもたれている。
「わが子や。おたべ」
「おまえのこうぶつだよ」
(子どもにごはんをたべさせてるんだな。おとうさんとおかあさんなのか。
でもふしぎだな。おかあさんとおとうさんのこえがはんたいみたいだ)
 はっぱがいっぱいおちている。どうして青っぽいはいいろにしか見えないんだろ。きいろや赤に見えるはずなのに。
「口をあけておくれ」
おとうさんがやさしくいっている。ぼくもとうさんにおかずをわけてもらうとおいしい。
あの木のあなから見える大きな虫みたいなのが子どもなの?
どうしてあのおかあさんはぼくのクツをあなに入れようとしてるんだろう?
 クツからくろっぽいなにかがはみ出ていた。
からだがおもくて、ねむくて、つめたくてこえが出ない。
「クツをかえしてください。ぼくはカイシャにいかなきゃ。
おとうさんはもうかえってこないからガンバロウ、ってかあさんはなくのをやめてわらってくれたけど、そんなことないから」
 がっこうで、タイコをたたいてください、って先生にいわれたんだよ。
とうさんにいいにいったら、きっといつもみたいにすごくわらって、ぼくをだっこしてドラムをたたかせてくれるよ。


594 :竜宮「明日夢十夜」第九夜:2007/01/31(水) 14:12:07 ID:zaPSnVFf0
そしていっしょにかえって、かあさんをびっくりさせるんだ。
 ちょ金ばこからお金を出して、いつもとうさんがのるデンシャのさいごのエキまでキップをかったんだよ。
おりたら山で、カイシャをさがしていたら、草がにょきにょきはえていたんだ。
ころんだらドロドロの水たまりで、出られなくなって水をのんでしまってくるしくなって…。

手をうごかそうとしたけれど、ちっともうごかない。手があるのかもよくわからない。
気もちわるくて、さむくて、どんどんくらくなるのに、目に虫めがねを入れたみたいにまわりのものがよく見える。
虫のかおもすぐちかくに見える。かわいて白くなって、ばりばりにやぶれそうだった。うごいているように見えたのは風がゆらすため。
ぼくのクツもよく見えた。

  ああ、わかった。あの子はしんでいるんだ。だけどおとうさんとおかあさんはわからずにぼくをごはんにしているんだ。
 ああ、そうか。ぼくはしにそうなんだ。
  このまましんじゃったら、じごくの本で見たみたいに、さいのかわらで石をつんだり、オニにいじわるされたりするのかな?
おかあさんが目だまやきをつくってくれても食べられないのかな?



595 :竜宮「明日夢十夜」第九夜:2007/01/31(水) 14:13:28 ID:zaPSnVFf0
 はっぱがまいあがってぼくのかおに落ちてきた。
「オニだ」
 つのが二本あるふしぎな人が、あのこわいおとうさんとおかあさんをやっつけてくれていた。
こわいかおのついた二本のボウでたたくと、おとうさんとおかあさんも、木の虫もばくはつしてしまった。
月をせなかにしょって木をたたく。ああ、タイコをたたいてるみたいだなあ。
(ぼくもたたきたいなあ)
 目がないふしぎな顔。まっくろな体。ほんとうは色があるのかもしれないけど。これがオニなのかなあ?
「たすけてくれてありがとう」
ぼくはやっぱりこえが出なかった。どんどん目のまえがくらくなってくる。
 オニのかおが、おにいさんのかおにかわった。どうしてぼくのあたまをなでながらなくんだろう。オニの目になみだ?
ゆめの中ではわらっていたのに。

 たのしかったゆめをおもいだした。ぼくがもっと大きくなっていてドラムをたたいていて、
このオニのおにいさんが「じょうずだな」ってほめてくれてた。おにいさんもゆめより子どもみたいに見えるなあ。
ぼくが大きくなってたみたいに、おにいさんもおじさんになってたのかな。

 たのしいゆめがほんとうになるのかな?おにいさん、ぼくはだいじょうぶだよ。
カイシャを見つけてとうさんといっしょに音がくかいのれんしゅうをするからね。
おかあさんとオニのおにいさんがわらって「じょうずだね」っていってくれるようにがんばるからね。
 だからわらってね。
 
 くらいくらいどこかへしずんでいく。ねむくてつめたくてなにもかんじなくなっていく。
ゆびのちかくに音がもどってきた。スティックのリズムがむねをトクトクと打つ。

(ああ、月がとてもきれいだね)


596 :竜宮「明日夢十夜」第十夜:2007/01/31(水) 14:20:49 ID:zaPSnVFf0
「明日夢十夜」第十夜「あすなろう」
(猪は野豚とも書くので、豚の大群の押し寄せる「夢十夜」第十夜にちなんで)

 肌寒い季節の宴会。新年会というには遅すぎるが、今日は特別な祝い。
「オロチ鎮め1周年を祝って、あらためて乾杯〜!!」
 出来上がっている者はべろべろに酔っ払っている。
猛士関係の猪鍋の美味しい旅館で今日は貸切で泊まりの宴会だった。

「助かるよ。うちの鬼共は皆、機械に弱くってね」
選曲や音程のキーをテレビ下の機械で設定していると、勢地郎さんが声をかけてくれた。
ちょうど今「仮面ライダー」を歌い終わったばかりで、まだ息が荒い。
 機械に強い女性陣は一次会が終わると、部屋でのおしゃべりの宴会に華を咲かせていることだろう。
「簡単ですから。大丈夫ですよ。皆さんの歌声が聞けて僕も楽しいですし」
機械音痴の鬼達にかわり、宴会場のカラオケを操作する明日夢。
 目の前は、さながら幼稚園児たちのように次のリクエスト権をめぐって手を上げたり叫ぶ鬼達だ。
まるで夢の島のようにうず高く転がる酒瓶はかなり危険かも。
宴会係の仲居さんもあまりの熱気にとりあえずふすま越しに勢地郎さんに酒だけ渡して退いている。


597 :竜宮「明日夢十夜」第十夜:2007/01/31(水) 14:22:04 ID:zaPSnVFf0
下戸の鬼は雰囲気を楽しみながら美味しそうにキョウスケのフランスみやげのチョコをほおばっている。
「このチョコ、ほんとに美味しいね」
 僕が話しかけるとキョウスケは照れくさそうにそっぽを向いた。
「お世話になってる皆様に食べていただきなさい。って正月ばかみたいにいっぱい持ち帰らされたんで」
 ほんとは自分で選んだくせに、わざと言い訳がましいことを言いながら配っている姿がおかしかった。
「明日夢君、ありがとう。あの子が他の人のことを考えられるように変わらせてくれて」
 電話の向こうのフランスから、お母さんが僕に笑って教えてくれたから。
僕じゃなくってヒビキさん達のおかげです、って伝えといたよ。君には言わないけどね。

大量の牡丹鍋もぺろりと食べ終わり、今は二次会のカラオケ中。
食事の片付けられた宴会用の座敷で鬼達がステージ状の段に上って吼えている。
マイクが二本しかないから、マイク係のキョウスケも大変だ。
だんだん理性の無くなってくる鬼達の間をはらはらと回収し次の歌の者に手渡している。


 だが、だんだんと歌う順番を待つ鬼達の表情が凶暴に変わってきている。


598 :竜宮「明日夢十夜」第十夜:2007/01/31(水) 14:23:38 ID:zaPSnVFf0
「やれやれ、仕方ないね。皆にマイクを渡そうか」
 勢地郎さんが立ち上がった。
(え?でもマイクコードの差込口は2つしかないんですけど)
 どっこらしょっ、と大きな風呂敷包みを部屋隅から持ち帰ってきた。
「キョウスケくん、配るの手伝ってくれるかい」
「え、でも、これオモチャの…」
 いくら酔っ払っていてもオモチャのマイクでは歌えないだろう。
明日夢がまじまじと眺めている中、びくびくとキョウスケがマイクを配っていた。
おもちゃなので当然コードは付いていない。
「このマイク!!」
 鬼の1人が吠えた!
(ああっ!危険だ〜!!)
「皆の分用意してくれるなんて、さすがですね〜!!!支部長、良い人だあ」
うおおおっ、と歓声が上がり、鬼達がいっせいに思い思いの曲をがなりだした。
「劇場版主題歌歌いま〜す!!」
「今こそ光の絆だあ!!」
「「少年よ」は最後に締めで歌うから今はまだダメですよ〜!!」
(だまされてる。だまされてるよ〜。おもちゃのマイクに)

599 :竜宮「明日夢十夜」第十夜:2007/01/31(水) 14:25:07 ID:zaPSnVFf0
歌に付き合わされていたキョウスケがよろよろと逃げてきた。
 意外に美声の鬼。幕間の決め台詞をポーズ付きで決める鬼。
(子供だなあ)
そう思いながらも、実に楽しそうなその雰囲気に心が浮き立つ気がしてきた。
「おい、少年達。お前らも一緒に歌え」
酔ったヒビキさんが陽気に声をかけてきた。
「え?でも」
 キョウスケと顔を見合わせていると勢地郎さんがおもちゃのマイクを2本渡してくれた。
「最後の曲だ。一緒に歌っておいで」
 しらふでおもちゃのマイクは恥ずかしかったが、「少年よ」のイントロが始まりだしていた。
小さな声で歌いだしたつもりが皆につられて、思いっきり叫んでいた。
自分達のそばにヒビキさんがいる。イブキさんもトドロキさんも鬼達皆がいる。
(ヒビキさんにはなれないけれど、僕にも明日なろう、って目指せるものができました)
心の中で呟きながら、「Hit it beat…」の歌詞にさしかかった時、思いっきり叫んだ。
「ヒビキさ〜ん」
 ヒビキさんが笑ってくれたような気がした。
 そして次の瞬間、ぐらりとヒビキさんが傾き、鬼達が全員倒れた。

600 :竜宮「明日夢十夜」第十夜:2007/01/31(水) 14:26:35 ID:zaPSnVFf0
 がご〜、ぐお〜!!すごいイビキをかきながら全員瞬時に夢の中に入っていた。立っているのはイブキさんぐらいなもの。
「皆、お酒弱いからね〜」
「そうですね〜」
 まったりと会話しながら、側の酒瓶を先に片付けていく。
「鬼達も片付けないとね」
「そうですね〜」
 キョウスケが鬼の1人を背負おうとしたが顔を真っ赤にしてもぴくりとも動かない。
勢地郎さんがひょいと片手でその鬼をつかみあげると、ついでにあと1人背負った。イブキさんも細身なのに2〜3人背負っている。
「君も酔っ払っちゃえばいいのに、宗家は真面目だねえ」
軽口を交わしながら、渡り廊下をひょいひょいと渡ってゆく。2階に上がり男部屋の敷かれた布団の上にぽいぽい放り投げる。
とてもかなわないが部屋に置いてあった手荷物を僕とキョウスケもうんうん言いながら一緒に運んだ。
 何度か往復し片付け終わると僕は帰り支度をはじめた。
「泊まっていけばいいのに」
 おやっさんが言ってくれた。キョウスケは不満そうに口をとがらせていた。
「母が遠距離のお客さんを運んだついでに、この近くまで来てくれてるんです。模試も近いし、今日は帰ります。
でも元気をいっぱいもらったから、またお店の手伝いとかあったら声をかけてください」

601 :竜宮「明日夢十夜」第十夜:2007/01/31(水) 14:28:32 ID:zaPSnVFf0
「そうかい?じゃあ、再来週の日曜日、午前中だけでいいから店に出てくれないかい?だいじなお客さんがあるんだ」
勢地郎さんはやさしく言った。
「ええ。再来週」
 僕も笑ってぺこりと頭を下げた。出来ない無理はしない。
でも一年間離れてみて、鬼達から元気をもらうのがどれだけ自分の力になっていたか今は分かっているから。

 旅館を出て母に連絡を取った。
「うん。ちゃんとお礼言って出てきたよ。じゃあ、そこまで出とけばいいんだね」
呼ばれた気がして振り返ると、窓から手すりに身をのばして暗い影が手を振ってくれているのが見えた。
かすみさん、ひなかさん、みどりさん、天美さん達。
「またね」
そう聞こえた気がして僕も答えた。
「また、よろしくお願いします」
                  完


602 :竜宮:2007/01/31(水) 14:46:18 ID:zaPSnVFf0
 投下できるようになっていたので最後まで投下させていただきました。
自分の状況が変わらない限りは響鬼SS投下はこれで最後だと思います。
 このスレッドのSSで響鬼好きなら何でも共存できるのんびりした雰囲気が好きなので
読む方としては時々来させていただきます。
 まとめサイト様、SS職人様方、用語関連のサイト様方、どうもありがとうございました。


603 :竜宮:2007/01/31(水) 14:54:16 ID:zaPSnVFf0
571(第七夜)に表記ミスありました。日本角→二本角でした。すいません。
 激しい風と豪雨が吹き込み料理の皿をかたかたと揺らした。二本角の黒光りする異形の者が机の側に降り立った。



604 :名無しより愛をこめて:2007/01/31(水) 15:25:54 ID:MXG0APVX0
竜宮様
連作投下ありがとうございました。
GJです。
次回作、期待してます。

605 :名無しより愛をこめて:2007/01/31(水) 15:28:35 ID:MXG0APVX0
リロードせずに書き込んでしまいました。
>604の最後の行はスルーしてください。

606 :竜宮:2007/01/31(水) 15:36:50 ID:zaPSnVFf0
579 :竜宮「明日夢十夜」第八夜 もミス有り
 水鬼先生→元鬼先生でした。

仲間の輪が広がり、吹奏楽部顧問の元鬼先生の厳しい指導のもと毎日鍛えてます

 たびたびすいません。

607 :竜宮:2007/01/31(水) 15:43:18 ID:zaPSnVFf0
605さん、ありがとうございました。


608 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/01(木) 18:33:51 ID:EiVQqaieO
光を失った信号機は横たわり、濁った水溜まりを滑る古新聞の1面は、「鬼達の抵抗途絶える 猛士本部跡から」という見出しが千切れていた。
摩天楼と呼ばれた瓦礫達は、助けを求め天へ伸ばした掌だけを残して生命を下敷きにし、今朝から降り始めた小雨に打たれるままになっている無数の躰達も動かない。

そこは、「東京」と呼ばれた場所――

ガラスの破片と砕かれたアスファルトに轍を残し、引き摺りだされた地下鉄が残した奈落の前で、石割生人(いきひと)は、愛車であるホンダワルキューレの改造車・『裁火』を停めた。
ヘルメットを投げ放つ先にあった『影』は、避けも払いもせず、身体に当たって地面に転がるその防具を眺めていた。『影』はあと二つ。
攻撃を免れ、辛うじて直立していた街灯に腰掛けている、一つ。そして、死体を重ねたピラミッドの頂きで、若い女であったモノを投げ捨て、口の周りに固まりかけた血を拭う、一つ。

「‥‥マナーがなってないな。食事の邪魔だぞ」
「あははははっ! ダレかとおもえばぁ、オニだったヤツじゃん! おとなしくしてれば、しぬのがちょ〜っとだけのびたのにぃ、ざんねんだね! オ・ジ・サ・ン♪」
「‥‥姓名・石割生人、コードネーム・一撃鬼、活動期間・1995〜2005(『飛車』)、2006〜2015(『角』) 属性・炎、光 音撃・打、射、斬、拳 過去交戦記録‥‥ 有・ハイキ、1分58秒」
「ねぇねぇ、クジキぃ? また、あたしがヤッちゃっていい?」
「好きにしな。それともサッキ、お前がやるか? ヘルメットぶつけられただろ?」
「‥‥偽装皮膚及び偽装外装、損傷度・0% ‥‥単独戦闘理由、該当・無」
「‥‥だ、そうだ。精々頑張ってくれ、一撃鬼さんよ」

609 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/01(木) 18:39:18 ID:EiVQqaieO
街灯から跳ね上がった『影』は、跳躍の衝撃で先程までの足場を崩し、灰色の空を背にして水色の落雷を受ける。
放電の後、石割に襲い掛かったのは、三日月型の2本角、一の腕と足首、肩、胸の装甲をメタリックスカイブルーに輝かせ、飛び蹴りの体勢をとる。
左胸に赤い鬼石を埋め込み、長い後ろ髪は変身前と変わらず、透き通るような水色だった。
無言のまま、石割は左手首の変身鬼弦『音断』を掻き鳴らすと、跳躍しながら額に変身音波を当てた。
石割の真下では、急降下した『影』が半径1メートルほどのクレーターの中で腰を沈め、再び垂直に跳んだ。
赤い炎をかき消し、腰の装備帯から小型音撃弦『烈光』を両手にする一撃鬼。
その目の前までに迫った『影』もまた、両の手首にあるスリットから薄い刄を伸ばし、落下しながら激しく斬り合いを続けた。

着地の瞬間、一撃鬼は左の拳を、『影』は左の回し蹴りを放ち、互いに同じくらいの距離まで弾け飛ぶ。
水溜まりから立ち上がった一撃鬼の右肩、左の太腿から、汚水と混ざった血が流れ、曲がった鉄骨が付いたままのコンクリートを背にして身体の砂塵を払う『影』は、無傷だった。
「あぁ〜あ、よごれちゃったよぉ。 ムッカツクッ! よわいクセに!!」
苛立つ『影』に、死体のピラミッドから乾いた笑い声が降る。
「遊んでるからそうなるんだよ。どうする? シャワーなんて残ってないかもしれんぜ?」
「む〜っ! いいもんいいもん!! コイツさっさとコロして、まだこわしてないトコにいくもんねぇ〜っだっ!!」

もう一つの『影』は何も言わず、サングラス越しに戦闘内容を記録し続けている。彼の視界であるモニターの左下に表示されているカウントは、00:00:46'52になっていた。
「‥‥音撃斬、『閃光裁き』!!」
掻き鳴らした腰の音撃震『瞬光』から、一撃鬼の胴体、肩、腕を伝って、烈光に清めの音が纏われる。
「‥‥効かねぇよ、そんなもん。 ちょっとは学習しろよオッサン」
手ごろな死体を足元から掴み上げ、『影』は吐き捨てるように言った。

610 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/01(木) 18:43:27 ID:EiVQqaieO
「‥‥離せ」
一撃鬼は、目で追えぬ程のスピードで駆け寄る水色の『影』にではなく、自分を見下ろしている『影』の男に呟いた。
「ん? なんて言った?」
「ちょ〜っと、オジサン! よそみなんてしてる、ヨユーあんの!?」
一瞬で一撃鬼の背後に回り込んだ『影』の腹に、清めの音を纏った右の拳が炸裂する。吹き飛ぶ水色の『影』、見つめ続ける白い『影』、そして、右手に小学生の少年だったモノの首を掴んでいた、赤い『影』。

「‥‥その子を、離せ!!」
一撃鬼の叫びと、薄く輝く烈光が、廃墟に降り注ぐ灰色の雨に、静かに消えていった――

――瞬過終闘 【序 一撃鬼の章 《潰される正義(こどく)》】 
続く

611 :名無しより愛をこめて:2007/02/01(木) 20:41:44 ID:MbU0zxgW0
石割君の下の名前が判明

612 :名無しより愛をこめて:2007/02/02(金) 00:14:58 ID:e8fAhlk7O
スゲェ…
裁鬼さん
あんたやっぱり凄いわ


613 :552:2007/02/02(金) 21:42:00 ID:6UHsMKHR0
>>553

別冊管理人さん、早速のご対応ありがとうございました。

たびたびですみませんが、更に二点ほどおねがいがあります。

・トップページの「用語集サイトさんが掲載しきれない作品、つまり〜」とありますが、
 いま列挙されている作品だけではなく、本家用語集であつかっていない他の作品の
 用語を追加することもあると思いますので、「〜掲載しきれない作品を補完します」
 でよいと思うのですが、どうでしょうか?

・『人名』の注釈に「※まだオフィシャルのものしか収録していません」とありますが、
 すでに『皇城の守護鬼』について追加されていますので、この文言はなくてもよいと
 思うのですが、どうでしょうか?

かさねがさねお手数をおかけしますが、よろしくおねがいいたします。

614 :見習いメインストーリー:2007/02/03(土) 13:10:31 ID:7XKpFpce0
前回は>>564から

三十四之巻「撃ち放つ銀」

 もし、白クグツの姿の橘多美が、自分の行った先にいたらどうしよう──そう心の中で密かに
心配しながら、純友は、首にかけたディスク形態の消炭鴉に引っ張られるまま、装甲響鬼と共に
月明かりの中、夜の山道を進んでいった。
 既に黒クグツを三体、白クグツを一体、装甲響鬼の装甲声刃で仕留めていた。そして──
「ここでじっとしてろ」
 装甲響鬼は、純友に木立の陰に隠れているように言ってから、湖のほとりに佇む白装束の人影に
そっと近づいていった。純友は、陰から白装束の人物に向けて必死に目を凝らした。
 見ると、純友が神戸で見たあの白クグツよりはいくぶん背が高く、肩幅も広く、男のようだった。
(よかった……橘さんじゃない)
 純友がほっとしている間に、早くも装甲響鬼が白クグツに装甲声刃から発した衝撃波を打ち込み、
爆発四散させて自然物に還らせた。
 跡に降り積もった大量の木の葉を見て、純友は、響鬼があの白クグツと遭遇してしまったら
自分はどうするべきか、とまた考えた。

 蘇芳色の体に浅葱色の隈取りの鬼が、跳躍してヌリカベの背に飛び乗って音撃鼓・白緑を貼付けて
叫ぶ。
『音撃打、必殺必中の型!』
 特別に精錬された半透明の鬼石を備えた音撃棒・緑勝を手に、展開した鼓に打撃を重ね、魔化魍の
体内に清めの音を叩き込んでいく。
『せいやッ!』
 ヌリカベの全身に波動が駆け巡り、限界に達した。その体が破裂し、土塊と化して崩れていく。
『──いくらなんでもこの数は、発生しすぎ。しすぎだー! って、発声練習しちゃうぞ』

615 :見習いメインストーリー:2007/02/03(土) 13:11:36 ID:7XKpFpce0
『するな』
 そこに裁鬼がやってきた。
『今日の面子だと管の鬼が不足気味だと思うんだが、こなせてるか?』
『もうこれ以上増えると、捌ききれませんよサバキさん。っていうか、サバキさんが音撃管を
使えばバランス取れませんか?』
 裁鬼が手にした二刀の音撃弦を見て、鋭鬼は言った。裁鬼は少しの間の後に言った。
『スマン、音撃管クルマの中に置いてきた』

 みどりがテントの中でノートパソコンを広げていると、外で香須実の悲鳴が聞こえた。
「どうしたの!?」
 外に出たみどりが目にしたのは、夜の闇を背景にして立つ、黒い烏帽子に鎧装束の男女だった。
 足下には、薪を落として倒れ伏す香須実の姿があった。
「スーパータイプ……」
『人員整理だ』
 童子が無邪気に言う。
『いまここに集まっているあいつらを消しにきた』
 姫の方は、殺気をみなぎらせた声で言った。
『鬼もあいつらも、殺すよ』
『鬼の仲間も殺すよ』
 その時、近くでガラガラと木の枝が地面に落ちる音がした。薪用の枝を抱えてそこに戻ってきた大洋が、
それをすべて放り出し、左手の鬼弦を弾きつつ、腰のディスクホルダーからすべてのディスクを彼らに
向かって放った。茜鷹や瑠璃狼が童子と姫に向かって飛びかかる。

616 :見習いメインストーリー:2007/02/03(土) 13:12:18 ID:7XKpFpce0
「逃げろ! 香須実さん!」
 童子達がディスクアニマルを振り払っている間に、香須実は立ち上がって駆け出した。
「こっちよ!」
 叫ぶみどりに続き、大洋と香須実は駐車場の方へと走っていった。
「皆の車のキー持ってる?」
 走り続けながらみどりが訊くと、香須実は答えた。
「あるけど……」
 駐車場にたどりつくと、みどりは香須実から受け取ったキーで一台の車の鍵を開け、後部座席に
乗り込んだ。そこへ童子が追いすがる。姫は香須実と大洋に襲いかかった。
 大洋は、姫の一撃に容易く吹っ飛ばされたが、地面に落ちた時には確実に受け身をとっていた。
「大洋くんッ! みどりさん!!」
 香須実が叫ぶ。その時、みどりが入った車の中の暗がりから、立て続けに数発の銃撃音が轟き、
直撃を受けた童子が宙高く吹っ飛んだ。
 車の中から、サバキの音撃管を手にしたみどりが出てきた。
 童子は腕があり得ない方向に曲がり、それを見て驚きの声を上げていた。
『うわぁぁ〜、腕が変な方向に曲がっちゃったよぉぉ〜』
 姫は標的を香須実に変えて襲いかかったが、起き上がってきた大洋が間に立ち、今度は姫の攻撃を
腕で受け止めた。更に連続して両手で仕掛ける攻撃を、上段受け、中段受けで的確に捌いていく大洋。
香須実は大洋の成長ぶりを初めて目にして驚きの声をもらした。
「大洋くん……?」
『やるな貴様。鬼か?──鬼ならその血、喰らってやる』
『喰らってやる』

617 :見習いメインストーリー:2007/02/03(土) 13:13:19 ID:7XKpFpce0
 折れた腕をぶらぶらさせながら童子も言った。
「させないわよ」
 車から降り立ったみどりが、音撃管を構えると今度は姫に向けて撃ち放った。胸や胴に圧縮空気弾を
撃ち込まれて姫が衝撃に体を揺らす。その揺らぎが止まってから、ゆっくりと、鋭い目を向けて姫は
みどりに掌を向けた。
『喰らえ!』
 姫から繰り出された破壊光線が迫り、みどりはからくも横に倒れ込んでそれをかわした。サバキの
車に光が直撃し、爆発音と共に炎上し始める。更に掌底を差し向ける姫に、大洋がぶつかっていった。
「させるかテメエ!」
 姫の攻撃をかいくぐり、突きと蹴りを繰り出していく大洋だったが、どの攻撃も姫にダメージを
与えてはいないようだった。やがてかわし切れなかった姫の蹴りが腹部に炸裂し、大洋は体を二つに
折って再び吹っ飛んだ。
「がっ……は──」
『なんだ。やっぱり鬼じゃないのか。鬼にしては弱すぎるな』
 姫は、大洋を蹴り飛ばして再びみどりに向き直った。香須実に助け起こされたみどりは、離れた
地面に落ちた音撃管を拾いに向かおうとしたが、回り込んできた童子がそれを蹴り飛ばした。
『そうはさせないよ〜』
 大洋が、立ち上がりながら言った。
「コノヤロウ、なめんなコラ……! おれは──おれは──」
『死ね』
 姫が、みどりと香須実に破壊光線を発しようと手を向けた。
 その時、大洋の脚が動き──彼は、猛然と駆け出した。

三十四之巻「撃ち放つ銀」了

618 :見習いメインストーリー:2007/02/03(土) 13:14:36 ID:7XKpFpce0
次回予告

「ち、違う……おれは──おれだって──」
『鬼だよ』
『この距離なのに、凄い邪気だ。──あいつらはたぶん──』
『おまえはもういらない子なんだよ。──さあ、おとなしく始末されろ』

見習いメインストーリー 三十五之巻「現る黒幕」

619 :名無しより愛をこめて:2007/02/03(土) 14:04:11 ID:rdh/LwS6O
自分なりの鬼の話を書こうと思っているのですが、響鬼はリアルタイムでざっと見ただけなので『飛車』やら『金』といった猛士の構造や鬼の条件といった細かい設定がいまいち分かりません。
この機会に設定集みたいなものがあれば欲しいのですけど、どの本が一番詳しいのでしょうか?

620 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/03(土) 14:29:06 ID:uEW7XzwQO
――瞬過終闘 【一 闘鬼 《奪われる未来(むすこ)》】

大吟醸『豪快』を入れた酒瓶も軽くなり、木々の合間、名も無き川の流れから頭を出した岩に腰掛けていた先代闘鬼―― 富山利勝はディスク達とテントを片付け始めた。
手先に震えもなく、足取りも素面と変わらない。二日酔いと落胆を経験した事は、43年間で片手の指にも満たなかった。
独り立ちしたばかりの息子・敏樹は、誰に似たのか太鼓の装備で魔化魍に立ち向かう戦士になっていた。
無論、利勝から受け継いだ音撃管『嵐』や音撃鳴『つむじ』を基本装備とし、変身鬼笛『音覇』で変身しているが、今日の様に音撃棒と音撃鼓を腰に戦う日の方が多い。
それでも利勝は、息子のサポーターでありながらも、運転や捜索を一切行なっていない。
大雑把な自身の性格と二代目トウキへの信頼が、魔化魍討伐を最高の肴にしていた。

山の頂上に近い岩場で爆散したヨロイヤマビコから弾け飛んだ『霞鳥(かすとり)』をキャッチしてバックルに、『狩業(しゅごう)』を装備帯の背に戻した闘鬼は、深い息を吐く。
武者童子と鎧姫との戦闘で活躍した、闘鬼専用ディスクアニマル・『タロウ』と『ジロウ』を、右手の親指と人差し指で作った輪から覗いた。父親譲りの、所謂「得意ポーズ」である。
「太鼓も、だいぶ小慣れてきただろ?」
走り回る二体から称賛の鳴き声を貰い、闘鬼は鼻の辺りをヘヘッと掻いた。
「さ、帰ろうか。あんまし待たせると、オヤジのヤツまた寝ちまうからな!」
そう言って、山を降り始める闘鬼の先を行く二体が、突然の銃声と共に弾かれた。
そして、闘鬼を取り囲む数十人の黒い戦闘部隊は、構えた小型ガトリングガンを、鬼に照準を合わせて一斉掃射した。

621 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/03(土) 14:32:21 ID:uEW7XzwQO
40分後。利勝は山の中腹で、弱々しいディスクの鳴き声を耳にした。
勾配を駆け上がったその先には、半壊した音覇を口に、右前足と尾を失いながらも、懸命に歩くタロウが雑音混じりの声を発し続けていた。
「‥‥」
利勝は音覇とタロウを手にすると、ヨロイヤマビコを発見したポイントに急ぐ。
岩場で利勝が目にしたのは、砕け散ったジロウの欠片、折られた狩業、まだ乾いていない鮮血が引き摺られていった跡だった。
その先へ向かうと、謎の集団が5、6台の黒いジープに乗り込もうとしていた。
「お前等、何モンだ!?」
集団は直ちに編隊を組み直し、右手のガトリングガンを構えた。
丸く特徴のないヘルメットに、胸から腹まで凹凸のあるボディーアーマーと紐のないブーツを、革製のスーツに装備している。
「目標発見! 攻撃態勢に入れ!!」
ボイスチェンジャー越しの命令に、集団は利勝を包囲する。
「‥‥」
利勝の眼が、最後尾のジープの荷台に、見慣れた足先を発見した。音覇を握り締める手が震えだし、爪先が地面を離れた。
「敏樹を返しやがれ、今畜生!!」
音覇を吹き鳴らし額に当てる寸前、利勝の身体に無数の弾丸が食い込んだ。
俯せに倒れ臥すと同時に変身を完了した先代闘鬼は、霞む視界に荷台から這い出る、鬼の姿のままの息子を見つける。
「お‥‥オヤジ‥‥」
血に塗れた身体に残る、無数の弾痕は、赤黒い流れを溢れさせ、止まろうとせず、 それは先代闘鬼も同様だった。
這いつくばる親子を、1台目のジープから降りた『影』が見つめている。『影』は灰色の暴風にその身を包むと、左手を上げて集団に更なる攻撃を命じた。
立ち上がろうとした闘鬼―― 敏樹は、再び弾丸を撃ち込まれて膝を着き、天を仰ぐ。
「敏樹ーっ!!」
先代闘鬼―― 利勝の視界が、『影』の指先から敏樹の首へ放たれた、細く輝いた光線と、その直後に敏樹の首から吹き出した、血の雨を鮮明に映し出した。
「‥‥――!!!」

倒れ、二度と起き上がらない敏樹。
自分に向けられた、数十の銃口。
途切れた思考と、声にならぬ音、立ち上がり『影』へ突き進む身体。

『影』の右肩に装備された、電柱程もある太さの大砲が、富山利勝の全てを呑み込み、塵に還していった――
「‥‥目標・排除完了。作戦・終了。 次回目標・コードネーム―― 弾鬼‥‥」

続く

622 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/03(土) 14:40:39 ID:uEW7XzwQO
【今週改め今日の裁鬼さん】

裁鬼「石割、イナバウワーって知ってるか?」
石割「はぁ‥‥(古いよ馬鹿オヤジ)」
裁鬼「見ろ! これが裁鬼必殺の避け方・イナバ‥‥」
童子のローキックが炸裂!!
裁鬼「うわーっ!!」
石割「‥‥('A`)」

今日の裁鬼さん 第2回終わり 続く

>>619
テレ朝と東映の公式ページ見りゃ十分。自分流でいけ。

623 :名無しより愛をこめて:2007/02/03(土) 15:59:33 ID:yzhV2t8WO
新しいライダーが待ち遠しい週末に
見習いSSと裁鬼SSとは嬉しいやw


624 :高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2007/02/03(土) 19:59:00 ID:9NElUe930
お知らせ
今回の話には「バケガラス」が出てきます。
今まで高鬼SSではウィキに書き込まれていた表記を参考にしてバケ「カ」ラスと表記してきました。
が、久々に本編を見てみたらイブキさんがバケ「ガ」ラスと確り発言していたので、今回よりそちらに統一します。
ご了承下さい。

次回は本編を離れて久々に先代ザンキ話を書けたらいいな、と思っております。

625 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:00:31 ID:9NElUe930
1976年。
この年の春先、紀伊半島にある小さな寂れた漁村で事件は起きた。
春の嵐とでも言うのか、突然の突風が村を襲い、漁に出ていた船が何艘も転覆し死者を出すに至った。
これだけなら、まあ有り得ない事ではないだろう。だが本当の問題は、転覆した船から投げ出された後に救助された、ある漁師の一言から起こった。
「怪物を見た……」
村の者達の間でこの発言の是非を巡って議論が巻き起こった。そして、村の長老による鶴の一声で、村の忌まわしい因習が復活する運びとなった。
生け贄である。
沖合にある、地元の人間からは古くから「人食い島」と呼ばれる無人島に生け贄に選ばれた人間を毎月捧げるのだ。嘗て村に天災が降り掛かった時も、こうやっていたのだと言う。
だが、風は止んでも怪物の目撃例は後を絶たず、翌月には倍の人数を、更に翌月にはより多くの人数を生け贄として島に送った。
だが、何も変わらなかった。
村人達が頭を悩ませていたその時、この地へ調査に訪れていた猛士の「歩」が地元の子どもから事情を聞いて関西支部へ連絡した事で、漸くこの件が明るみに出る事となった。
その後も入念な調査が続けられ、結果七人の鬼が人食い島周辺に湧いた水棲魔化魍の討伐に向かう事となった。

626 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:01:58 ID:9NElUe930
「そういう訳だから、コウキくん戻ってきてくれないかな……」
電話口で南雲あかねは、現在遠く離れた四国に出向中のコウキにそう告げた。
「今から……ですか?」
「時間が無いのよ。フェリーで大阪まで行った後、直接和歌山で合流してもらう事になるけど……」
四国支部長には私から後で説明しておくから、とあかねは言った。
コウキ自身も話を聞く限り大きな戦いになるだろうという予感がしていたため、承諾しようとしたその時、急にイブキが電話に割り込んできた。
「もしもし、お電話代わりましたイブキです。今回の件は僕達だけで大丈夫です。コウキさんは自分の任務に専念して下さい」
「しかし……」
「大丈夫です。ではこれで失礼します」
そう言うとイブキは一方的に電話を切ってしまった。
総本部の研究室では、電話を終えたイブキとあかねが向き合って話し合っていた。
「本当に大丈夫なの?相手は大型の個体が多い事で知られる水棲魔化魍よ?しかも具体的な数も把握出来ていないのに……」
「心配要りません。当初の予定通り僕等七人で向かいます。ではこれで」
決めポーズをして立ち去ろうとするイブキをあかねが呼び止める。
「だったらコウキくんの代わりにこれを持って行きなさい」
彼が以前作った物よ。そう言うとあかねは機材が積まれた山の中から、何かを取り出すとイブキに渡したのだった。

627 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:03:34 ID:9NElUe930
話は遡る事少し前。イブキは残り六人の出撃メンバーと共に最後の打ち合わせをしていた。出撃直前まで他の任務に就く者が居るため、全員集まっての打ち合わせが出来るのはこれが最後だった。
「これが『人食い島』周辺の海図です」
机の上に海図を広げてイブキが説明を始める。
集まっているのは彼以外にセイキ、ドキ、バキ、ニシキ、アカツキ、イッキ、そして彼等のサポーター達である。本当はもっと大人数で行く予定だったのだが、諸々の都合で結局出撃する鬼はこの七人となってしまった。
「島の北側は岩礁のせいで上陸が出来ません。東側は絶壁となっていて同じく上陸は不可能です」
「西側と南側は?」
セイキが尋ねた。
「西側は海流の影響で渦潮が発生して危険との事です。だから島への上陸は南側からのみという事になる……」
海図を指差しながらイブキが答える。
「島に上陸し次第、まずは生け贄として連れて来られた人達を保護。その後ベースキャンプを設営して水棲魔化魍との戦いに備えます」
「しかし……生きているのか?最初に生け贄が島に渡ったのは数ヶ月前だと聞いているが……」
アカツキが疑問を口にした。どうやら他の面々も同じ事を考えていたらしい。
「勿論保護するというのは生きている事が前提です。ですから……」
「最悪な場合は覚悟しろって事だね」
「嫌な任務やなぁ……」
バキとニシキがそれぞれ答えた。
「まず僕達七人が島に上陸。魔化魍を殲滅した後、合図を送って勢ちゃん達に迎えの船を出してもらいます」
「じゃあ俺達はどうやって島に渡るんだ?」
「まさか泳いで行けと?」
セイキとニシキが尋ねる。それに対しイブキは。
「万が一襲撃を受けた場合を考慮すると、船に乗って団体で向かうのは得策ではないように思われます」
「それは分かりますが……」
イッキが早く先を言うようイブキを急かした。
「だから僕達は、万が一襲撃を受けても遣り過ごして島に上陸出来るよう小回りの利くものに乗って島に向かいます。既に手配は済ましてありますから」

628 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:06:28 ID:9NElUe930
「成る程、これを使うわけか……」
当日、海岸に次々とメンバーが集まる中、イブキが言っていた「小回りの利くもの」を見てセイキが呟いた。
そこには、七台の水上バイクが用意されていた。だが問題が一つ。
「これは……免許が居るんじゃないのか?」
ドキがぼそりと呟く。
「ボート免許、有りますか?」
サポーターのまつがセイキとドキに尋ねるも、二人とも無言で首を横に振るだけだった。
「おいイブキ!俺達免許なんか無いぞ!良いのか!?」
離れた場所でサポーターの立花勢地郎と何やら打ち合わせをしていたイブキに向かって、セイキが呼びかけた。
「大丈夫です!既に根回しは完了していますから安心して運転して下さい!今勢ちゃんがマニュアルを持っていきますから目を通しておいて下さい!」
イブキがそう言うや否や、勢地郎が水上バイクの取説を持ってセイキ達の方へと向かってきた。
「根回しって何でしょう……」
「……知らん」
ドキが勢地郎から取説を受け取っている間、そんな事を話し合うセイキとまつ。
一方、ニシキはサポーターの石川昭一と一緒に、自身の音撃弦・剣心の塗装作業を行っていた。そこへイッキが歩み寄る。
「塗装作業ですか?」
「そう。昨日まで出撃しててさ、その時の戦いで塗装が剥げちゃったから」
そう言いながら「剣心」を自分のフェイバリットカラーであるオレンジ色に染めていくニシキ。

629 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:09:21 ID:9NElUe930
「ニシキくん、『狂荒(きょうこう)』の方の塗装、バッチリ終わったぞ」
「馬鹿、ちゃんと『レイヴ』って言えよ!」
「あれ?ニシキさんの音撃震の名前は確か『戯言』だったんじゃ……」
イッキが尋ねる。確かニシキの音撃震は「戯言」と書いて「レイヴ」と読ませていた筈だ。
「ほら、これって元々引退した鬼が使ってたやつでしょ?」
そう。ニシキは代々伝わる音撃三角・烈節の使用を拒否し、弦の使用を望んだ。急に新しい物を用意する事も出来ず、結局引退した弦の鬼が使っていた物を引き継ぐ事になったのだ。
「前の人のカラーはなるべく消そうと思って。だから色も変えたし、弦の名前も『剣心』に変えたんだけど音撃震は名称変更届けがなかなか受理されなくってさ……」
つい最近漸く受理されたのだと言う。
前にこの音撃弦を使っていた鬼は、何らかの事情でまだ若いうちに引退し、そのため弦には以前使っていた人物の癖がそんなに付いていないのだとイッキは聞いている。確かその元の持ち主というのは噂では今北陸に居るとか……。
と、「陸震」に乗ったアカツキが海岸にやって来た。
「お早う御座います、アカツキさん」
挨拶をしながらアカツキに駆け寄るイブキ。アカツキは「陸震」から降りると勢地郎に向かって「何処かへ移動させておいてくれ」と鍵を放った。
「相変わらずゴテゴテしたバイクだな」
「陸震」の真っ赤な車体を眺めながらセイキが呟く。
この「陸震」は東北支部の「銀」がアカツキの注文を受けて作った装甲バイクだ。追加装甲による耐久性の上昇と、それに伴う機動力の低下を解消するため大馬力のエンジンが積まれてある。
「同じ改造車でもイッキさんのバイクの方が見た目もスマートですよね。それに比べてあれは原型が分からないし……」
「噂じゃ火器も積んであるらしいぞ。……いつか捕まるんじゃないのか?」
そんな事をひそひそと話すセイキとまつ。一方、石川は羨ましそうに「陸震」を眺めている。まだ乗りたいらしく、勢地郎に「俺に代わってくれ」と詰め寄りだした。

630 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:10:17 ID:9NElUe930
その後、遅れていたバキが到着し、漸く出撃する事となった。
「結局コウキさんは帰ってこないのか……」
周囲を見回してバキがぼやいた。口煩い人ではあるが、その実力は折り紙付きだ。彼が居ると居ないとでは、これからの戦いの難易度も大きく変わるだろう。
「僕が断ったんです。あの人は今四国支部に必要とされていますから、帰ってきてもらうわけにはいきません」
その代わりこんな物を預かってきました、とイブキがあかねから渡された物を一同に見せた。
「何です、それ?」
イッキが尋ねる。それは四角い箱のようなものだった。ただ、レバーやつまみ、更には銃口のようなものまで付いている。
「口で説明するより実際に見てもらった方が早いですから……」
そう言うとイブキは近くの岩場に向かって箱を構えた。照準を合わせ、レバーを引く。
すると、物凄い勢いで銃口から鬼石の塊が飛び出し、岩を砕いた。鬼石は岩に減り込んだまましゅるしゅると音を立てて回転し、煙を上げている。
「……何だそりゃ」
「以前コウキさんが開発した物らしいです。名前は確か『カタストロフくんV世』とか……」
「カタストロフ(悲劇的な結末)……」
凄まじいネーミングセンスである。というか「V世」というのが気になる。まだあと二台あるというのか?
「何かの役に立つかもしれないからってあかねさんが……」
「役に立つのですか、それ?」
イッキの疑問も尤もだ。それに対してイブキは、あかねから聞いたのと同じ説明を始めた。
「鬼投術ってあるじゃないですか。それを参考にコウキさんがサポーターの護身用に開発したらしいんですけど……」
「けど?」
「反動が強すぎて、普通の人が使うと確実に肩が外れるんだそうです」
「駄目じゃねえか!」
セイキが呆れたように告げる。
「かと言ってコウキさん自身は管が使えますし、管の技術を習得していない鬼でも鬼法術や鬼棒術で遠距離戦はカバー出来ますし、つまるところ……」
無用の長物、と言うところか。

631 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:11:58 ID:9NElUe930
「まあ折角ですし念のため持って行くとして、皆さん準備は良いですね?」
イブキは一同を見渡すと、次いで海の方へと視線を向けた。水平線上に、これから乗り込む島が浮かんでいるのがここからでもよく見える。
「じゃあ勢ちゃん、後の事は任せるよ」
「頑張ってきなよ、イブキくん」
火打ち石を鳴らす勢地郎。まつと石川もそれに倣った。
と、バキとドキが嫌な気配を感じ取った。その気配の出所に目をやると。
「あれは!」
海の中から、商人風の小奇麗な身なりをした童子と姫が現れたのだ。
「ヌラリヒョンか……」
「あれが湧いているという事は……」
「ああ。ウミボウズは確定だね」
ウミボウズは稀種魔化魍だ。従って童子と姫が現れる事は普通無い。
だが、物凄く低い確率でウミボウズの童子と姫が発生する事がある。しかも厄介な事にこの童子と姫は海だけでなく人里にまで出張ってくる。結果、猛士ではこの童子と姫をヌラリヒョンと呼んで魔化魍と同じ扱いにしている。
二体のヌラリヒョンがその姿を怪童子、妖姫へと変えていく。蛸のように大きな頭部を持った醜悪な姿だ。
「ぶっ潰す!」
変身鬼弦を鳴らしながらセイキが音撃弦を手に駆け出した。それにドキが続く。
「勢ちゃん達は下がって!」
「イブキさん、僕達も!」
残る五名も、一斉に各々の変身道具を鳴らした。
蛸の触腕と類似した外見の太い触手を複数伸ばし、怪童子が襲い掛かってきた。その攻撃に威吹鬼と壱鬼が近寄れないでいる中、弦を振るいながら聖鬼と西鬼が間合いを詰めていく。
「でえりゃああ!」
「黄金響」の刃が触手を切り裂いた。そして怪童子の腹部に「黄金響」を突き刺す。更にそのまま音撃震を装着し、音撃モードに入った。
「音撃斬・白い奇蹟!」
ピック状の爪を使い、弦を掻き鳴らす聖鬼。演奏が終わり、怪童子は塵芥と化した。
「聖鬼さん、初っ端から音撃斬だなんてノリノリじゃないですか!」
西鬼が傍に駆け寄ってきて言う。
「おうよ。前哨戦だし景気をつけなきゃな。さて、もう一匹は……」
見ると、妖姫の方も触手を使って刃鬼と暁鬼を攻撃していた。だがよく見ると怒鬼の姿が何処にも見当たらない。

632 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:13:03 ID:9NElUe930
と、妖姫の足下に映る影の中から怒鬼が突然現れた。隙を衝かれた妖姫に襲い掛かる怒鬼。
「出たぞ、怒鬼の鬼法術・影隠れだ」
妖姫を殴りつけ、更に上空へと打ち上げると止めを刺すべく構えを取る怒鬼。
「鬼法術・闇飛礫」
怒鬼が手を翳すと同時に、妖姫の周囲から無数の黒い塊が現れてその全身に纏わりついた。闇に飲み込まれた妖姫の体が絶叫と共に爆発し、塵が降り注ぐ。
「怒鬼さんも今日はやけにテンション高いじゃないですか!それ結構体力を消耗する技だって聞いてますよ!?」
西鬼の呼び掛けに対し、怒鬼はただ黙って自分の決めポーズを返すだけだった。
「しかし妙だな。ウミボウズが湧いたにしては時期が違いすぎる……」
暁鬼の言う通り、本来ウミボウズは冬の終わりから梅雨時にかけて現れる魔化魍だ。今は七月、もう梅雨は明けている。
「イレギュラーか?しかしヌラリヒョンまで一緒に出てくるとなると、作為的な何かを感じずにはいられん……」
「しかもまるで見計らったかのようにここへ現れました。僕も暁鬼さんと同じ意見です」
壱鬼もまた、そう答えた。聖鬼達もやはり引っ掛かるようだ。
「皆さん、ここで考えていても始まりません。島へ行きましょう。途中、ウミボウズの襲撃に遭うかもしれません。各人気を付けて下さい」
威吹鬼の号令の下、全員が水上バイクに飛び乗り、島へと向かって全速力で発進していった。

島へと快調に向かっていく七人。鴎の鳴き声が聞こえる。実にのどかだ。
「どうやらウミボウズの襲撃は無かったようですね」
壱鬼が安心したように言う。事実、島まではもうあと少しの距離だ。
「ヌラリヒョンだけ湧いた?確かにそんな事もあるだろうけど、でも……」
刃鬼が一人ごちる。尤も、腑に落ちないでいるのは彼だけではなかったのだが。

633 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:14:57 ID:9NElUe930
と。
「気をつけろ!大きな気配を感じるぞッ!」
「ウミボウズか!?」
刃鬼が叫んだ。その声に反応し聖鬼が周囲を見渡すも、波一つ立っていない海原が続くのみ。
「何処にも居ないじゃないか……」
「いいや居るッ!すぐ近くに居るぞ!」
全員周囲を見回すが何も変わったものは見られない。だが、壱鬼がふと自分達の真下に目をやると。
「居たぞ!下だ!」
「下だって!?」
全員が一斉に真下を見た。水面には、巨大な影が映っていた。
「でかっ!」
「浮上してくるぞ!避けろ!」
聖鬼が叫ぶ。その言葉通り影が急速に浮上してくる。まず巨大な背鰭が現れ、次いで鋭い目が水中から現れて鬼達を睨んだ。
「さ……鮫!?」
影の正体は、あまりにも巨大な鮫の魔化魍だった。(イメージ画像 ttp://image.blog.livedoor.jp/dqnplus/imgs/f/0/f09a0360.jpg)
「そうか、これがイソナデか。主に西日本に現れると聞いていたが……」
暁鬼が感慨深げに呟く。
イソナデは鮫に似た姿の魔化魍だと記されているが、書物には尾鰭の部分しか描かれておらず、そのため全身を見た事のある者は殆どいない幻の魔化魍だ。

634 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:15:59 ID:9NElUe930
イソナデが水面から跳びはねた。その巨体が宙を舞い、落下してくる。
「来るぞ!避けろ!」
間一髪で直撃は避けるも、分断されてしまう。
「刃鬼さん!聖鬼さん!怒鬼さん!」
「こっちは大丈夫だ!島で落ち合おう!」
威吹鬼の呼び掛けに刃鬼が答える。イソナデは再び潜行して飛び出す機会を窺っているようだ。
「どういう意味です!?」
「こいつは俺達が引きつけておくから、威吹鬼さん達は先に島へ!君達も異存は無いよな?」
刃鬼にそう言われて互いに顔を見合わせる怒鬼と聖鬼だったが……。
「是非もなし」
「ま、しょうがないか。威吹鬼さん達、俺達の事は気にせず先へ行ってくれ!」
「だそうだ。さあ早く!二撃目が来るぞッ!」
それでもまだ逡巡する威吹鬼を壱鬼が急かした。
「威吹鬼さん、今は島へ向かいましょう!」
島は目の前なのだ。ここで足止めを喰らっている暇はない。
「……分かった。刃鬼さん達も気を付けて!」
刃鬼達三人を後に残し、威吹鬼、暁鬼、西鬼、壱鬼の四人は全速力で島へと向かっていった。

635 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:18:05 ID:9NElUe930
島へと上陸した四人は、当初の予定通り生け贄にされた人々の保護へと向かう事にした。
「大丈夫でしょうか、刃鬼さん達……」
壱鬼が心配そうに沖の方を振り向いて呟く。再度イソナデの巨体が跳びはねるのが見えた。
「彼等なら大丈夫だよ。生け贄にされた人達の捜索には僕と西鬼さんの二人で行く。壱鬼くんは暁鬼さんと一緒にここで待機していてくれ」
「そう大きな島じゃないし、二人でならすぐさ」
そう告げると、威吹鬼と西鬼はさっさと行ってしまった。残された壱鬼はとりあえず水上バイクから持ってきた荷物を降ろそうとして、ちらりと暁鬼の横顔を窺った。
(参ったなぁ……)
壱鬼は今日まで暁鬼とまともに会話した事が無かった。苦手なのだ、彼の纏っている雰囲気が。だから意図的に避けていた節がある。
(早く戻って来ないかなぁ……)
と、いきなり暁鬼が音撃管・水晶を構えた。壱鬼もまた、異常な気配を感じ取っていた。そして。
海中から物凄い勢いで巨大なうつぼが飛び出してきたのだ!だがその体は鰻にそっくりで、おまけに蛸や烏賊のような吸盤が付いている。
「うおうっ!」
うつぼは大きな口を開けて壱鬼に襲い掛かってきた。間一髪で回避する壱鬼。岩場に頭から突っ込んだうつぼに向かって暁鬼が鬼石を撃ち込む。
「こいつはアヤカシ。主に関東以北に出てくる魔化魍だ。昔東北支部でこれと戦ったという人から話を聞いた事がある」
「えっ、これがアヤカシ!?」
以前刃鬼は蛸だか烏賊の魔化魍と言っていた。確かに蛸の触腕に見えなくもないが、これはどう見てもうつぼ乃至鰻の化け物である。

636 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:19:36 ID:9NElUe930
鬼石を撃ち込まれたアヤカシは、全身から油を撒き散らして暴れ狂っている。油に引火する可能性があるため、壱鬼は電撃技が使えない。
狙いを暁鬼に定め、丸呑みするべく襲い掛かるアヤカシ。それに向かって、体勢を整えた暁鬼が音撃射・雲散霧消を放った。
その音色に油を撒き散らしながら苦しみ悶えるアヤカシ。駄目押しに一際高く奏でられた音色が、アヤカシの頭部を文字通り雲散霧消させた。
「やりましたね!」
「いや、まだだ。今吹き飛んだのはアヤカシの一部でしかない。見ろ」
暁鬼の言う通り、アヤカシは頭部が吹き飛んでいるにも係わらず、そのままするすると海中へ引っ込んでいった。まだ生きているのだ。
「海中に潜って本体に直接音撃を叩き込まねばならない。行ってくる」
「え?ですが……」
壱鬼はやはり刃鬼からアヤカシは太鼓が担当する魔化魍だと聞いていた。その事を暁鬼に告げ、自分が行くと伝えるが。
「お前はアヤカシについて何を知っている?少なくとも俺の方が知識も経験もある」
「しかし暁鬼さん……」
「舐めるなよ、俺は向こうに居た頃は何でも一人でやってきたんだ。何でもな」
そう言うと壱鬼の制止を振り切り、暁鬼は海中へと飛び込んでいった。後には壱鬼だけが残された。

狭い島の中を手分けしてあちらこちら捜索した威吹鬼と西鬼は、一度合流すると唯一残った場所――大きな岩山へとやって来ていた。
「刃鬼さん達、まだ戦ってるみたいですよ」
西鬼が海の方を見ながら威吹鬼に告げた。すると。
「あっ!威吹鬼さん、あれ!」
西鬼が指差す方を見ると、刃鬼達の戦っているすぐ傍にウミボウズが現れたのが確認出来た。
「あれは不味いですよ!かなりの大物だ!」
「今は人々の保護が最優先事項です。行きましょう……」
「それは分かりますけど……。何だかなぁ……」
西鬼は納得がいかないようだ。
岩山を黙々と登り続ける二人。海の方はあえて見ないようにしている。すると目の前に童子と姫が現れた。
「あれは何の童子と姫だ?」
童子と姫は二人の行く手を遮るかのように立っている。おそらく、通したくない何かがこの先にあるのだろう。

637 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:20:45 ID:9NElUe930
すると、巨大な影が二人の頭上を横切った。慌てて上を向くとそこには。
「バケガラス……」
そこそこ大きなバケガラスが悠然と空を飛んでいた。更に、怪童子と妖姫に変身した二体が腕を変化させた翼で羽ばたきながら突撃してきた。
「くっ!」
狭い足場の上でその攻撃を躱すと、怪童子と妖姫に向かって音撃管・烈風を乱射する威吹鬼。西鬼もまた、「剣心」を構えて迎え撃つ体勢を整える。
「鬼法術・高気圧!」
巻き起こる上昇気流に捉えられた怪童子が岩肌に激突した。落ちてくる怪童子に駆け寄り、滅多斬りにする西鬼。そこへバケガラスが爪を使って襲い掛かってくる。
「この野郎!」
「剣心」を振るいバケガラスと戦う西鬼。一方威吹鬼も妖姫に確実に圧縮空気弾を撃ち込み、粉砕する事に成功していた。
「西鬼さん!そいつは僕が……」
だが威吹鬼が言い終わる前に、一瞬の隙を衝かれた西鬼がバケガラスの足に捕まってしまう。
「威吹鬼さん、ここは俺に任せて先へ!」
「しかし!」
「いいから!わざわざこいつらが都合良く出てきた以上、何かある筈!だから早く!」
暫くその場に立ち尽くしていた威吹鬼だったが、意を決して先へと駆けていった。その後ろ姿を見送りながら西鬼が呟く。
「後は頼みましたよ威吹鬼さん。さて、逆襲させてもらうで!鬼法術・夢幻之風!」
西鬼の周囲を様々な風が吹き荒れた。熱い風が身を焼き、凍てつく風が翼を凍らせていく。吹きすさぶ七色の風がバケガラスの全身を包み、弱らせた。思わず西鬼を放してしまうバケガラス。
「よっしゃ!」
だが既に足場は遠く、このままでは重力に従って落ちていくのみ。しかし西鬼はそれを承知の上で技を仕掛けたのだ。それは……。
「行くぞ、鳥野郎!」
何と西鬼が空を飛んでいるではないか!そう、彼は鬼法術の応用で突風を操り自らの体を宙に浮かせているのだ。関西支部所属の鬼の中で最も背が低く体重が軽い彼だからこそ出来る芸当だと言えよう。
バケガラスの背へと華麗に着地すると、刃を展開した「剣心」を突き刺す西鬼。バケガラスは一声高く鳴くと、海の方へと向かって飛んで行こうとする。
「これで終わりだっ!」
西鬼の奏でる音撃斬が、孤島の空に響いた。

638 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:22:02 ID:9NElUe930
暁鬼が行ってしまった後、壱鬼は改めて荷物を降ろそうとしていた。だが。
「……本当に沢山出てくるんだな」
いつの間にかウシオニと、その童子と姫が現れて壱鬼を睨み付けていた。問答無用で童子と姫が変身し襲い掛かってくる。
「ウシオニか。やってみせる!」
音撃棒・霹靂を手に取ると、迎え撃つべく壱鬼は駆け出した。

岩山を登り続ける威吹鬼は、小さな洞穴を見つけた。背を屈めて中へと入ってみる威吹鬼。感じるのだ、穴の中から溢れてくる禍々しい気配を。
一歩、また一歩と奥へ進む毎に禍々しい気配は強くなってくる。いつでも「烈風」を撃てる体勢のまま慎重に進んでいく威吹鬼。
ふいに広い場所へと出た。よく耳を澄ますと水音が聞こえる。どうやらこの岩山は中が空洞になっていて、海へと繋がっているらしい。
「ん?」
見ると、何人かの人が地面に倒れている。生け贄にされた人々だろうか。傍へ駆け寄ろうとする威吹鬼。
と、今まで感じた事も無い程強烈且つ邪悪な気配を威吹鬼は感じ取った。気配は背後からする。だが振り返ろうにも体が言う事を聞かない。
「困るな、勝手に餌場に入ってきちゃ……」
声がした。男の声だ。
「……餌場だと?」
それだけを言い返すのがやっとだった。男の声が答える。
「そう、ここは餌場。我々の育てた大事な大事な子どもの餌場……」
子どもとは外に居る魔化魍達の事だろうか。

639 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:22:58 ID:9NElUe930
「……出会いとは必ず何らかの意味を持っている。ここで君と我々が出会った事にも何らかの意味があるのかな?君はどう思う?」
一方的に男が喋り続ける。気配は明らかに二つ存在している。黙っているもう片方の動向が窺えない分、実に不気味だ。
「……君も、餌になるかい?」
「うわあああ!」
嫌がる体に鞭打ち、強引に後ろを振り返る威吹鬼。そこには和装の男女が立っていた。顔はいつも戦っている童子、姫と同じだ。だが、それ以外は何もかも明らかに違う。
「烈風」の銃口を二人に向けるも、腕が震えて照準が定まらない。そんな威吹鬼の姿を哀れみの篭った目で男女が見つめてくる。
その時、洞穴中に低く大きな唸り声が響いた。対峙する彼等のすぐ横にある大きな縦穴。その底から聞こえてくるのだ。次いで波立つ音が聞こえた。
「どうやら昼寝の時間が終わったらしい」
満足気に男が呟く。
「答えろ!ここには一体何が居るんだ!」
「実際に見てみると良いよ」
男がそう言うや否や、今まで全く言う事を聞かなかった威吹鬼の体が動くようになった。急いで穴を覗き込む威吹鬼。そこには。
「何だ、あの魔化魍は……」
見た事も無い巨大な魚型魔化魍が穴の底の狭い空間の中で蠢いていた。魔化魍が動く度に水面に波が起こる。
「あれはアクルだ。苦労したよ、ここまで育てるのに……」
アクルとは、記紀神話においてヤマトタケルが吉備穴海(現在の岡山平野南部)で退治したとされる大怪魚の事だ。
「何故こんな怪物を……」
威吹鬼が尋ねるも、男女は不気味な笑みを浮かべたまま何も話さなかった。
「もうここは狭くて耐えられないみたい……」
「ああ、そろそろ解き放ってやろう……」
「何だと!?貴様等!」
アクルの咆哮と共に、岩山が大きく揺れた。アクルが暴れているのだ。このままだと間違い無くこの空間は崩れてしまうだろう。
「君達鬼に止められるかな?」
そう言い残すと、和装の男女は静かに威吹鬼の前から立ち去っていった。

640 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:24:37 ID:9NElUe930
「音撃打・電光石火!」
ウシオニの体に貼り付けられた音撃鼓・万雷に向かって、光の矢と化した壱鬼が半ばぶつかるようにして「霹靂」を叩き込んでいく。
縦横に動き回りウシオニに音撃と電撃を決めていく壱鬼。何度目かの打撃でとうとうウシオニの巨体は爆発四散した。
「ふぅ……」
「万雷」を装備帯に戻し、一息吐く。暁鬼は未だ戻ってこない。海上でも刃鬼達と魔化魍の戦いは未だ続けられているようだ。威吹鬼達が戻ってくる様子も無い。
とりあえず近くの岩に腰を下ろす壱鬼。今のところ海から新手が現れる様子は無い。
空を見仰ぐ。風に雲が流されていく。空だけ見れば、実に穏やかだ。実に……。
「ん?」
上空から何かが落ちてくる。よく見るとそれは人の形をしていた。
「西鬼さん!?」
そう、空から音撃弦を抱えて西鬼が落ちてきたのだ。西鬼は地面に向かって鬼法術・高気圧を放つと、落下速度を殺して無事着地する事に成功した……かに見えたが。
「ぐおっ!」
アヤカシが散々撒き散らしていった油に足を取られ、見事にすっ転んでしまったのだ。頭を擦りながら西鬼が起き上がる。
「あ痛たた……。おう、壱鬼。あれ、暁鬼さんは?」
「いや、その、あれ……?」
西鬼の姿と空とを交互に眺める壱鬼。何故彼が空から降ってきたのか理解出来ないようだ。
と、突然島が揺れた。見ると岩山が大きく震えている。
「何が起きてんだ……?」
壱鬼の傍に近寄り、一緒になって岩山を見上げながら西鬼が呟く。一人岩山に向かった威吹鬼の事が心配になってきた。
一際大きな揺れが起こった後、島は再び静かになった。
「何だったんでしょうね、今のは……」
「分かるわけないやろ。大体……」
西鬼の喋りが止まった。どうやら壱鬼の肩越しに何かを目撃したらしい。慌てて壱鬼が振り返ると、そこには。
巨大な魚が泳いでいた。
「何、あの魚……」
「魔化魍……ですよね?」
岩山の中に居たアクルが、外海へと出てきたのだ。アクルの大きな目が二人の姿を捉えるも、気にも留めず悠然と泳いでいこうとする。
「待てぇ!無視すな!」
「あれが人里近くにまで出ていったら大変な事になる……」
潜行を始めるアクル。このまま潜られてはどうする事も出来ない。

641 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:26:24 ID:9NElUe930
「壱鬼!合体攻撃行くで!」
「はい!」
二人の鬼が同時に構えを取った。音を立てながら西鬼の周囲に空気が渦を巻いて集まっていく。壱鬼の握った拳からは電撃が迸った。
「唸れ旋風!」「轟け雷!」
「「双牙竜!!」」
二人の合体鬼法術により発生した雷を纏った竜巻が、今まさに海中に潜らんとしていたアクルの巨体を捉えた。
風と雷により動きを封じられたアクルが大声を上げる。
「あかん、あれだけでかいと動きを止めるだけで精一杯や!」
暁鬼達が戻ってくる様子は無い。かと言ってこのまま動きを抑え続けるのも限界だ。
とうとう二人の放った「双牙竜」の中からアクルが抜け出してしまう。余程腹が立ったのか、さっきまでとは違い壱鬼達の方へとその巨体を向けた。その反動で波が起こり、二人に襲い掛かる。
「うわっぷ!おい、大丈夫か!?」
「大丈夫です。それより第二波が!」
壱鬼の言う通り、アクルが再度波を起こした。心なしか先程よりも大きな波に見える。近くの岩に捕まり耐える二人。
「あいつ、俺達ごと島を水没させる気か!?」
一声吼えるとアグルは再び向きを変えた。どうやら気が済んだらしい。三度目の波を受けて西鬼の「剣心」が流されてしまった。
「あっ!俺の『剣心』が!塗装を終えたばっかりなのに!」
これで今アクルに音撃を決める事が出来るのは壱鬼だけとなってしまった。
一方、そんな苦戦する鬼達の姿を眺める影が二つ。例の男女だ。
「少し遊んでみようか……」
「お戯れを……」
女の方がくすくすと笑う。男が手を翳すと、海中から複数の何かが現れた。その姿を見て西鬼が驚きの声を上げる。
「は、半魚人!?」
二人の前に現れたのは、映画でもお馴染みの半魚人そっくりの姿をした魔化魍だった。この魔化魍の名前はウミニョウボウ。昔、島根県の漁村に現れたという記録が残っている。このウミニョウボウが童子と姫に率いられて大量に現れたのだ。
「夏のやつかよ。不味いな、俺太鼓なんて持ってきてないぞ……」
西鬼がぼやく。結果、アクルも含めて壱鬼一人で対処しなければならない。しかし数が数だけに壱鬼一人というのも無理がある。
じりじりと近寄ってくるウミニョウボウの群れ。西鬼も鬼爪を出して臨戦態勢を取る。

642 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:28:41 ID:9NElUe930
と、おもむろに壱鬼が装備帯の「万雷」に手を掛けた。
「西鬼さん、ちょっと離れていて下さい」
そう言って西鬼を自分の傍から離れさせた壱鬼は、何と「万雷」を勢いよく回しはじめたのだ。それと同時に「万雷」の中に蓄えられていた電気エネルギーが解放され、壱鬼の体を包んでいく。
「お、お前……」
電撃に包まれて壱鬼の全身が発光する様子を呆然と眺める西鬼。その光の中から、白銀に輝く体躯に紫電を纏わせた彼の強化形態が現れた。
「鬼法術・地走り!」
高く掲げた右腕を、まるで突き刺すかのように地面に叩きつける壱鬼強化形態。その瞬間、先程の波で濡れた足場を高圧電流が走り、ウミニョウボウの群れと童子、姫を襲った。
刹那、「霹靂」を構えた壱鬼強化形態が高速で動き、ウミニョウボウの群れに打撃を叩き込んでいく。打撃を受けた箇所に音撃鼓を模った雷が出現し、次々と爆発四散していく魔化魍の群れ。
文字通り電光石火の速さで全ての魔化魍を清め終えた壱鬼強化形態は、再びアクルの方に目を向けた。アクルは再度潜行しようとしている。
「お前、成れたのか……」
西鬼が驚きを隠せないといった感じで壱鬼に向かって尋ねた。隠すつもりは無かったのですが……と申し訳なさそうに壱鬼強化形態が答える。
だが話している間にもアクルの潜行は続いていく。
「間に合うかは分かりませんが、一か八かやってみます!」
そう言ってアクルに向かっていこうとする壱鬼強化形態の脇を、何かが物凄い速さで飛んでいった。何事かと二人が「何か」の飛んでいった先を見ると、アクルが体から血を噴き出して苦しそうに呻き声を上げている。

643 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:30:14 ID:9NElUe930
「何が起きたんだ……?」
「何か」が飛んできた方を見ると、そこには「カタストロフくんV世」を構えた威吹鬼と、彼を支える刃鬼、聖鬼、怒鬼の姿があった
「流石はコウキさんの作った品だ。最大出力だと鬼でも扱うのは難しいや……」
刃鬼達に支えられながら威吹鬼が呟く。
更に威吹鬼は二撃目を発射した。再びアクルの体から血が吹き出す。
「動きが止まった!今だ!」
そう叫んで壱鬼を促す威吹鬼。
「……行ってきます」
そう一言告げると、壱鬼強化形態は自らの体を紫の矢に変え、アクル目掛けて飛び出していった。
自分に向かってくる鬼の気配を敏感に感じ取り、アクルが今までで最大の大きさの津波を引き起こした。それをそのまま貫いてアクルに飛び掛かる壱鬼強化形態。
「ぬおっ!……げほげほ!」
波に攫われないように渾身の力で岩場にしがみつく西鬼。今回の波の勢いは凄まじく、多少離れた位置に居た威吹鬼達も呑み込まれてしまった。
「超電稲妻落としの型ぁぁぁぁ!」
紫の矢が、アクルの背に激突した。その瞬間、閃光が走り海面が蒼白く染まる。そして。
轟音と共にアクルの巨体が消し飛び、文字通り海の藻屑と化した。
波が引き、海草だの何だのが沢山打ち上げられた岩場で、威吹鬼以下五名の鬼達は事の成り行きを見守っていた。
「終わった……」
刃鬼がふぅ、と一息吐いてその場にしゃがみ込んだ。
「威吹鬼さん、生け贄にされた人達は?」
「助けた分は安全な場所に運んであるよ」
「つまり……助けられなかった人も居るんですね?」
西鬼にそう言われ、口篭る威吹鬼。あの時洞穴に乗り込んだ際助ける事が出来たのは僅か数名。残りは既に魔化魍の餌にされていたのだろう。

644 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:31:28 ID:9NElUe930
「しかし驚いたな、壱鬼の奴が夏の強化形態になれるなんて……」
「あ、聖鬼さんも知らなかったんだ。俺も初めて見たよ」
壱鬼の強化形態について聖鬼と刃鬼が話し合う。しかし肝心の壱鬼は……。
「探しに行かなくちゃならんだろうな」
「そう言えば暁鬼さんもさっきから見当たらないんですよ。何処行ったんだろ……」
「俺ならここだ」
そう言いながら海中から暁鬼が出てきた。その手には流された「剣心」が握られている。
「あっ!俺の『剣心』!」
無言で「剣心」を西鬼に放り投げた暁鬼は、一同を見渡すと威吹鬼に向かって尋ねた。
「壱鬼はどうした?」
「それが……」
威吹鬼は暁鬼にさっきまでの出来事を説明した。流石の暁鬼も多少心配になったようだ。
その後、威吹鬼が船を出すよう勢地郎に合図を送ってから、六人で海に潜って壱鬼の捜索が行われた。
「おーい、そっちはどうだぁ!?」
「駄目です!」
既に日は沈みかけている。
「潮に流されちゃったとか?」
「くそっ!何処行っちまったんだ、あいつは!」
「!」
その時、怒鬼が何かに反応した。新手の魔化魍かと、その場に居た者に緊張が走る。

645 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:32:07 ID:9NElUe930
「違う違う、魔化魍じゃない。この気配は……ほら!」
刃鬼が指を差す。その方向には、海を泳いでくるイッキの姿があった。
「イッキ!無事か!?」
「この野郎、心配させやがって!」
六人が一斉に彼の傍に近寄る。
「やったな、イッキ。でも驚いたよ、いつの間に強化形態に変身出来るようになったんだい?」
刃鬼の問いにイッキが答える。
「ほんのつい最近です。でもあの形態は強力な分、僕の体への負担も半端じゃなくって……精々一分持てば良い方なんです」
そう喋るイッキの声は弱々しく掠れている。どうやら予想以上に体への負担は大きいらしい。
「じゃあ頻繁に変身出来るわけじゃないのか……」
「……はい。何より、変身には『万雷』に蓄えてある莫大な量の電気エネルギーを必要としますから……。一度変身すると充電にかなりの時間が……」
まさに切り札という訳か。
「で、あの強化形態には名前はあるのか?コウキさんの『紅』みたいに」
刃鬼の問いにイッキは首を横に振った。
「じゃあさ、俺が名前を付けてやるよ。ええと、見た目からして『白銀』?でもありきたりだよな……」
悩み始める西鬼。他にも、纏っていた電撃の色から「紫電」という名前も挙がったが、やはりしっくり来ない。
「『鳴雷(なるかみ)』か『建雷(たけみかづち)』というのはどうかな?」
威吹鬼がそう提案した。どちらも記紀神話に登場する雷神の名前だ。
「語感を考慮したら『鳴雷』の方が良いかな。どうだい?」
「ああ、悪くないですね。『建雷』の方も何かに使えそうですね……」
にっこりと微笑むイッキ。
「よし、島まで戻ろう。刃鬼さん、イッキを連れていってもらえますか?」
「任せろ。さあ、俺の肩に……」
こうして七人は島へと戻り、その後迎えにやって来た船に乗って本土へと帰っていった。

646 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:33:20 ID:9NElUe930
「以上が事の顛末です」
電話口でニシキがコウキに向かって告げた。
あの後、あかねは四国に居るコウキに事の顛末を告げるべく電話を掛けたのだが、そこへふらりと立ち寄ったニシキが電話を代わり、直接話し始めたのだ。
「いやぁ凄かったですよ、イッキの強化形態は。コウキさんにも見せてあげたかった」
「そんな事よりも私の『カタストロフくんV世』はどうした?」
「はい?」
予想だにしなかったコウキからの質問に、ニシキの喋りが止まる。
「今の話を聞いた限りでは、私の『カタストロフくんV世』のその後が分からないではないか。波に呑まれた後どうしたのかね?」
あの時「カタストロフくんV世」は威吹鬼が持っていた。しかしアクルが起こした津波に呑まれた後、彼の手に「カタストロフくんV世」は無かった。
「ええと……その……」
それからイッキの捜索のために海へと潜り、それが終わった後は島で船が着くまでの間生け贄にされていた人達の介抱をして、それで……。
「どうしたのかね?」
段々コウキの口調がきつくなってくる。

647 :仮面ライダー高鬼「鳴動する孤島」:2007/02/03(土) 20:34:11 ID:9NElUe930
「あの、その、あの後救出した人々はですね……」
「そんな事は聞いていない。あれは改良の余地有りという事で、そちらに帰ってから再調整をするつもりだったのだ。貴様それを……」
今頃「カタストロフくんV世」は海底に沈んでいる事だろう。果たしてそれを正直に言うべきか否か……。
「話は変わるが、私はこっちでも『銀』の方の好意で機械いじりをさせてもらっている。今お仕置きマシーン『カリギュラくん1号』を作っているところだ。正直に言いたまえ」
「カリギュラ……」
カリギュラとは帝政ローマ時代に残虐な公開処刑を行ったとされる第三代皇帝の名前である。それだけで、その発明がどんなに危険なのかが分かると言うものだ。
散々逡巡した挙句、ニシキは一方的に電話を切るという選択を選んでしまった。
「どうしたの?」
あかねが不思議そうにニシキに尋ねる。対するニシキは蒼ざめた顔で一言。
「……すいません。俺、これから旅に出ます」
「は?何言ってるの?」
「ほとぼりが冷めるまで海外にでも身を隠します!」
「ちょっと待ちなさい!海外ってあなた……」
「放して!あ〜今頃かんかんだぞ。俺はもう終わりだ!」
取り乱すニシキを必死で抑えつけるあかね。騒ぎを聞きつけ、スタッフが次々と集まってきてニシキを抑えつけた。
結局、総本部に戻ってきたコウキがニシキを罰したのかどうかは本人達以外誰も知らない。 了

648 :名無しより愛をこめて:2007/02/04(日) 05:26:37 ID:z7zJkfTb0
 コウキさん、お仕置きマシーン『カリギュラくん1号』って(笑)。
次回は先代ですか?!
見習いさん、成長して足りないところに気がついて、がんばれ。
今日の裁鬼さん、石割君の冷めた成長振りが(笑)
 童子&姫や敵側もいろいろで楽しいですね。

649 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/04(日) 17:32:06 ID:POwIC5o3O
――瞬過終闘 「二 滝澤みどり 《疼く記憶(きずあと)》」

<滝澤。話があるんだ‥‥>いつかの自分。どこだったか、忘れた場所。声をかけられたのは――
<滝澤。話があるんだ‥‥>彼女は、黙ってついていった。
知りたかった事。知らなかった事。結局判らなかった事――
<滝澤。話があるんだ‥‥ 仁志の、事で‥‥>
彼女が知った事は、痛みと知りたくなかった思い。
夕暮れだったのを、覚えている。秋の暮れだったのを、覚えている。『誰』だったかは、覚えている。
<ねぇ‥‥? 聞かせて。 日高くんの事‥‥>
<‥‥>
<‥‥お願い! 日高くん、今どこで何をしているの!?>
<‥‥>
<‥‥どうしたの?>
気付いたのは、『彼』の険しい表情と、流れる風の冷たさ。気付かなかったのは、歪んだ思いと悪意。
<‥‥なぜ、黙っているの?>
<‥‥知らないんだよ‥‥‥‥>
<‥‥えっ?>
押し倒された身体が、床が、押さえ付けられた手が、痛かった。
<‥‥何も知ってるワケ、ないだろう? 急に飛び出してったアイツなんか‥‥ いつも俯いて、下ばかり見てたアイツのコトなんか、俺が知ってるはずないさ!>
その時に知った。『彼』の、日高仁志への感情を。
その時に理解した。騙されたという事を。
その時に刻まれた。決して消える事のない、心と体の傷痕を――
『彼』はいつもの仮面(態度)を投げ捨て、ずっと見てきた彼女を、彼女の身体を貪った。
捻曲がった悲願が純粋な願いを壊すまでの時間は、彼女にとって一瞬で終わり、永遠の枷となった。
一人、天井を見つめていた。それは夜空だったかもしれない。
床に残ったのは、小さな血痕。それは地面だった様な気もする。
彼女は抵抗したのか覚えていない。頬を殴られた気がしたが、顔には涙の跡しかなかった気もする。
《日高‥‥ くん‥‥》
何故かは解らない。だが彼女‥‥ 滝澤みどりが、そう呟いた事だけは確かだった‥‥

650 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/04(日) 17:35:47 ID:POwIC5o3O
マンションの自室。ベッドから起き上がり、冷蔵庫から取り出した牛乳をコップに注ぐ。
テーブルに置いてあったチョコの缶から中身を一粒口に入れ、カーテンを開けてベランダに出た。
「‥‥休み明けに、サイアクな目覚ましだなぁ」
背伸びで気怠さと悪夢を吹き飛ばして顔を洗いにいこうとする滝澤みどりは、鳴り響く電話に振り向いた。

「大変だ! ダンキさんがやられた!! ショウキさんも‥‥」
電話はショウキのサポーター・志村忍武からだった。
「落ち着いて、志村くん! 今どこ!? 何があったの!?」
志村はその名前からも解るように、鬼達に協力してきた忍者の子孫であり、些細な事では動揺を見せぬ、寡黙な青年だった。
その志村がひどく慌てふためき、言葉の順序を考える余裕すらなく情報を伝えようと話し続けている。

ダンキが、突然現われた黒い集団と謎の『影』に、魔化魍討伐を終えて帰り支度をしていたところを襲撃された。
陣中見舞いに来ていたショウキも弾鬼の援護に変身し、二人は集団の半数を倒したが、突如現われた白い『影』が、大砲の様な武器で二人を攻撃。
弾鬼は崖から落ちて川の流れに消え、勝鬼も瀕死だという。
「ただヤツ等、俺には攻撃してこなかったんです!」
志村は傍にいた弾鬼が銃撃を受ける直前、近くの樹の枝に飛び乗り緊急回避した。
姿を見られたはずだが、『影』も集団も志村には銃を向ける事もなく、勝鬼を攻撃した後は倒れている戦闘員を回収し、ジープで去っていったという。
みどりは、猛士医療部と通じ『銀』が常駐している病院を志村に連絡すると、一度受話器を置き、すぐに『甘味処 たちばな』に連絡した。

開店前の掃除も終え、立花勢地郎は読み終えた朝刊を居間に置いた。
増えた白髪と皺の原因、老いと深刻な鬼不足に溜息をつきながらも、仕込みを終えて店の奥から出てきたイブキと顔を合わせ、笑顔を作る。
「トウキ君とダンキ、連絡あったかな?」
「いえ、まだですね。 今日はバンキさんが大学で講義だそうですから、弦はデンキに任せるようにします」

651 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/04(日) 17:46:45 ID:POwIC5o3O
頷く勢地郎は、頭を掻いて湯呑みを手にする。猛士の関東支部長を辞したとはいえ、事務局長として鬼の育成に取り組もうとするも、肝心の人材がいない。
ショウキのサポーター・志村や、各地の『歩』達の子供にもそれとなく頼んでいるが、志村はあくまでも自分は『飛車』だといい、『歩』達の反応も芳しくない。
「ま、今は目の前のコトを、一つ一つ片していこうか」
営業時間を迎え、二人は店に戻ろうとする。
2015年現在、各地で日夜戦う音撃戦士鬼は、僅か96人。
約10年前、オロチ決戦の際に集結した鬼達の大半も引退し、関東十一鬼と称された勇者も殆どが『人』に戻った。
現在の関東支部に所属する鬼は、7名。弾鬼、勝鬼、威吹鬼、蛮鬼らベテランに加えて、二代目となる闘鬼、トドロキの弟子・電鬼。そして、今尚戦い続ける、一撃鬼。

みどりからの電話が、彼等の永く、激しい戦いの幕を開けた。

続く

652 :名無しより愛をこめて:2007/02/04(日) 18:33:14 ID:lNRkbgD1O
保守

653 :見習いメインストーリー:2007/02/06(火) 00:11:46 ID:hcz4mUTX0
前回は>>614から

三十五之巻「現る黒幕」

 それは、一瞬の迷いだった。
 大洋の左手には、こちらから向かって右へと破壊光線を放とうとする、鎧装束の姫がいた。
 そして、右手の少し離れたところには──姫が掌を向けた先に──みどりと香須実の姿があった。
 姫に向かってもみどりたちに向かっていっても、どちらにしろ破壊光線の進路に入ることになる。
 ならば──せめて姫に一太刀浴びせて死ぬか、それともみどりたちの盾なり囮なりになって死ぬか。
 どちらにしても死ぬなら──大洋は、みどりたちを「護る」方を選んだ。
「うおおお!!」
 叫びつつ、大洋はみどりたちの前に割って入った。姫の掌が破壊光線を発そうと光を帯びる。
 その光に呑み込まれ、大洋の瞳も輪郭も光の中に消えていき──
『──どぉうりゃァァァ!』
 近くの木の上から黒い影が跳躍し、正面から姫を蹴り飛ばした。
 装備帯の背面に音撃棒を装着した一本角の「鬼」が、大洋たちに背を向けて立っていた。
『うわぁ、本物の鬼が来たぁ』
 童子が慌てて言った。
『やっと鬼が現れたか。ニセモノ相手で物足りなかったところだ。一体なんだ、その弱い奴は』
 姫の言葉を聞いて、大洋は歯噛みしながら言った。
「ち、違う……おれは──おれだって──」
『鬼だよ』
 姫に、蒼い隈取りの入った無貌を向けて弾鬼は言った。
『今の、コイツの人を護ろうとした行動はな』
 みどりと香須実の背後では車が一台炎上し続け、そこにいる者たちを真昼のように照らしていた。
「ダンキくん……グッドタイミング」

654 :見習いメインストーリー:2007/02/06(火) 00:12:51 ID:hcz4mUTX0
 香須実がかけた言葉に、弾鬼は振り返らずに応えた。
「コイツが呼びに来たんだ」
 と言って、自分の肩を指差した。よく見ると、そこに赤いライオン型のディスクアニマル・岩紅獅子
が乗っていた。弾鬼がそれを捕まえて後ろ手に投げると、岩紅獅子は大洋の足下までやってきた。
 みどりがにっこりとして大洋に言った。
「大洋くん。君が助けを呼んだんだよ」
「え?」
「最初にスーパータイプたちが現れた時に、鬼弦でディスクを起動したでしょ? この岩紅獅子には、
あらかじめ助けを呼ぶような設定をしておいたから、あの時に近くの鬼を探しに出てたのよ。前に消炭
鴉が助けを呼んで君たちを救ったことがあったから、その話を参考にしてプログラミングしておいたの」
『さすがみどりちゃん』
 言いながら、弾鬼は背中から音撃棒を取り出して両手で構え持った。
『こっから先は俺に任せてくれ』

『ハアッ!』
 気合いと共に、装甲響鬼は装甲声刃から放たれた衝撃波を遠方の黒クグツに向けて放った。
 鍛えた者ほど邪気の影響を受けやすいことは周知の事実で、装甲響鬼は常に距離を取ってクグツを
掃討する戦法をとっていた。直撃を喰らった黒い影が爆砕して舞い散る。
『おーい見習い、もういいぞ』
 隠れていた純友が樹々の中から出て来て言った。
「今ので七体目の黒クグツですけど……白クグツを三体倒していますから、これで合わせて一〇体です。
日菜佳さんの推測では、全部で一〇体ということだったので……これでもう終わりだと思いますけど」
 幸いにも、女の白クグツは現れなかった。クグツたちに対する装甲響鬼の戦闘力は圧倒的なもので、
あの多美と同じ顔をしたクグツと出会ってしまったら、倒されてしまうことは確実だった。

655 :見習いメインストーリー:2007/02/06(火) 00:14:07 ID:hcz4mUTX0
『いや、推測はあくまでも推測だ。俺も早く魔化魍退治に加わりたいが、もう少し探索を続けよう』
 装甲響鬼に言われ、これ以上ディスクに反応しないでほしいと思いながら、純友は暗い森の中を歩き続けた。
 ──森が途切れ、川のそばに出た時、またもディスクが反応した。
「来、来ました、また」
 ディスクの反応に従い、純友は装甲響鬼と共に川沿いに歩き続けた。月明かりに照らされ、川面が
闇の中で輝いていた。その川を挟んで対岸に、これも月明かりに照らされた白装束姿があった。
(橘さん……?)
 純友はすぐに、川向こうに脚を閉じて立つ白クグツが、神戸で遭遇した者と同一人物であることがわかった。
『まだいたか』
 装甲響鬼が装甲声刃を眼前に垂直に構え、気合いを込め始めた。
「ちょっ……待っ──」
 純友が言いかけたその時、対岸の白クグツの後ろから、童子と姫に良く似た和装の男女が現れた。
同時に純友の持つディスクが今までになく激しく震動した。そして、装甲響鬼の構えがわずかに揺らいだ。
「響鬼さん!?」
『この距離なのに、凄い邪気だ。──あいつらはたぶん──スサ・タチバナ』
 純友は、遠目にも何か異様な雰囲気を醸し出している、和服姿の身なりのいい男女を見た。
 装甲響鬼は、体勢を立て直し、和装の男女──「凄・橘」に向き直って気合いを込めた。
『でやあァーッ!』
 水平に振り出した装甲声刃から放たれた衝撃波が、対岸の「凄・橘」を急襲した。和装の男が、
前に突き出した手を中心にして空中に光の壁を張り出すと、これまでクグツ達を滅殺してきた装甲
声刃の力がその壁に阻まれ、轟音と光が「凄・橘」の手前で拡散した。

656 :見習いメインストーリー:2007/02/06(火) 00:15:14 ID:hcz4mUTX0
『まさか、鬼どもにこうも確実にクグツの居場所を探れる力があるとは思わなかったな』
 和装の男が言った。──随分前に、純友はその声をどこかで聞いているような気がした。
『おまえはもういらない子なんだよ。──さあ、おとなしく始末されろ』
 和装の女の声には従わず、白装束の小柄な姿はその場から離れ、森の奥へと飛び込んでいった。
『待て』
 彼らが白クグツを追おうとした隙を突いて、再び装甲響鬼が音撃増幅剣から衝撃波を放った。
和装の男がそれを辛くも光の壁で避ける。
『よそ見はイケナイぜ』
 装甲響鬼は人差し指を立てて左右に振って言った。
『小癪な!』
 和装の女が輝きを帯びた掌を純友たちのいる対岸に向け、破壊光線を放ってきた。
『うおッ!』
 瞬時に純友を抱え持った装甲響鬼は、そこから跳躍して女の攻撃を避けた。
 光は直前まで純友たちがいた場所に炸裂し、その川岸の地形を大きくえぐって変えていた。
『──行くぞ。今は、鬼よりあのクグツだ』
 女を促し、和装の男は白クグツが消えていった森の中へ向っていった。
 装甲響鬼に連れられ、大木の陰についた時、純友は、ディスクの反応が停止していることに気づいた。
 純友の報告を聞き、装甲響鬼は念のため再び川岸に出て充分に周囲の様子を窺った。先刻までそこに
あった邪気も、すっかり消え去っていた。
『見習い、クグツの探索はここまでだ。一旦ベースキャンプまで戻るぞ』
 二人は夜の山道を、大洋たちの待つキャンプ地に向けて歩き出した。

三十五之巻「現る黒幕」了

657 :見習いメインストーリー:2007/02/06(火) 00:17:33 ID:hcz4mUTX0
次回予告

「あれ……なんだろ。急に力が抜けちまって……」
「大丈夫だから。今は、休ませてあげて」
「アイツは今、揺れている。魔化魍を憎む戦い方と、魔化魍から人を護る戦い方の間でな」
「鬼であるってことは、鬼であっちゃいけないってことなんだって」

見習いメインストーリー 三十六之巻「呼ばれる名前」

658 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/06(火) 21:25:53 ID:WSGIfPDcO
――瞬過終闘 「三 立花勢地郎 《剥がされる秘密(いつわり)》」

「それで、ショウキの様子はどうなんだい?」
「まだ詳しい事は‥‥ ダンキ君も探さなきゃいけないし、他の人達にも連絡しなきゃ」
みどりから志村の報告を聞かされた勢地郎は、事の全容を掴むべく必死だった。
先ず、ダンキとショウキが襲撃された。相手は、黒い装備の戦闘集団。しかし、彼等は『飛車』の志村は襲わない。
戦闘の結果、二人は敗北。ダンキは行方不明、ショウキは重体。その結果に直接作用した、謎の『影』。
志村の話では、『風を纏』って『変身』したらしい。まるで―― 『鬼』の様に。
「皆には、わたしが伝えます。‥‥みどりは取り敢えず、こっちに来てくれるかな」
電話を一度切り、勢地郎はダンキの捜索を頼むべく、ある男の番号を登録してあった短縮ボタンを押した。

「‥‥解りました。すぐに向かいます」
受話器を置いた男が振り向くと、妻がかつての装備を用意していた。
変身音叉『音鋼』、音撃鼓『金剛』、音撃棒『剛力』、そして、小型音撃弦『釈迦』。
「いってらっしゃい‥‥ 気をつけて‥‥」
男は頷いた。既にダンキ達が倒された以上、丸腰での出動は自殺行為だった。
『鬼』を退き、2年半。だが、彼、ゴウキの瞳はあの頃と同じ輝きをしていた。

ゴウキにダンキを任せた勢地郎は、次いでバンキ、デンキ、イチゲキにも連絡して緊急召集を発令した。
トウキに連絡しようとしたが繋がらず、仕方なく実家にいた母親―― 先代トウキの妻に、魔化魍討伐後すぐにたちばなに来てほしいと言付けを頼んだ。
最後に吉野へ報告を済ませると、既に正午近く。店の入り口には臨時休業の貼り紙が風に揺れていた。

659 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/06(火) 21:27:23 ID:WSGIfPDcO
「吉野は、何といってるんです?」
イブキも服を着替え、いつでも出撃出来るよう身構えている。
「いや‥‥ 何も言えない、判らないそうだ‥‥ まさか、『鬼』を攻撃する者達がいるとはね‥‥」
『鬼』は、常に歴史と繁栄の裏に存在した。教科書や記録に遺らぬ、裏の戦いとして。
『鬼』は、皆人々の為に存在した。生命を、未来を守る為、魔化魍と戦い続けてきた。
入り口が開き、みどりとバンキが同時に到着した。
「みどりさんから、話の大筋は聞きました」
「本部は、なんて言ってるの?」
みどりの問いに、勢地郎は先程イブキに応えた内容を繰り返した。
「‥‥そう。 こっちもまだ、断言は出来ないんだけど‥‥ 敵の武器、たぶん、ただの弾丸じゃないと思うの」
その時、電話が鳴った。ある『歩』の老人からで、魔化魍が出た山の山頂付近に、先代トウキの亡骸を見つけたという。
「‥‥」
その時、店の入り口が開かれた。

「この件に関して、総理の意見を聞かせて頂きたい!」
今日も国会では、政治家達が先の見えぬトンネルを堀り進む為だけに、答弁と論議に唾を飛ばしていた。
与党の部下達に推され、渋々マイクの前に立つ総理。マイクと総理の間に現われた『二人』に気付いたのは、先程問題の文章を復唱しただけの大臣だった。
「な‥‥ 何だ!? 君た」
その首が瞬時に身体から離され、転がり落ちる。
「ちは―― カッ‥‥」
『二人』は黒いスーツとドレスに身を包み、ステッキと折り畳んだパラソルを持ち、邪とも純とも言えぬ眼差しを、総理大臣に向けていた。
『男女』の身なりは、他の人間よりも歴史ある議事堂に馴染んでるように見えたが、目の前の総理は凍結し、議員達は自分の存在を示すようにざわめきと絶叫を繰り返していた。
床に転がる大臣の首は、瞬時に切断面を焼き固められ血の一滴も零れていない。
その首を『女』が静かに抱き抱え、『男』が耳をつまんで受け取り、総理の前に置いた。
「‥‥飽きちゃった」
その一言と、軽く首の額を突いた人差し指に、大臣の頭は握り締められた水風船の如く、破裂して周囲に赤いシャワーを撒き散らせた。
身体の芯棒を抜かれた様に崩れ、尻餅を着いた総理大臣は静かに失禁し、『二人』はマイクを自分達に向け、微笑しながら『宣言』した。。
「‥‥もう、要らないよ。 鬼なんて――」

続く

660 :裁鬼作者 ◆7Sc0zX31MU :2007/02/06(火) 21:35:32 ID:WSGIfPDcO
【今日の裁鬼さん】

(後期OP視聴中)
『く〜りっ返〜すぅ 響き♪』

裁鬼「‥‥あれ? 今俺映ってなかった?」
石割「気のせいですよ」
(巻き戻し)
裁鬼「‥‥」
石割「‥‥」
裁鬼「やっぱり俺映ってないじゃねぇか! アレお前だろ! そういや俺収録呼ばれてねぇよ!!」
石割「だから気のせいですって!」
裁鬼「ウソつけ! 右から4番目あきらかに『人』じゃねぇか! この野郎!」
石割「いつもやられてばかりのアンタが悪いんだ!」

○石割 1R 00分03秒 裁鬼●

今日の裁鬼さん 第ニ回終わり つづく

661 :別冊用語集”管理”人:2007/02/06(火) 21:36:45 ID:VQk4yw920
今までに無かったタイプの物語ですね・・・これはwktk

662 :仮面ライダー高鬼番外編「愚痴がきこえる 高知編」:2007/02/06(火) 22:32:00 ID:u3i+Gjcl0
197×年、夏、高知。
「時間だ。じゃあ行くぜ。……それとこれ、俺からの餞別な。また俺達が会えるように祈りを込めて書いたんだ」
そう言って四つ折にした紙片をキリサキに渡すザンキ。
「恥ずかしいから俺が発ってから見てくれ」
そう念を押すと、ザンキは飛行機で東京へと帰っていった。

「……で、キリサキさんは?」
四国支部。
ウズマキと会話しているのは彼同様管を習得しているリョウキ(リョウはシティーハンターの主人公と同じ字)だ。驚異的な空間認識能力を持ち、曲撃ちを得意とする若手のホープである。
但し、野心家の性格が災いしてキリサキとは馬が合わないでいるようだが。
「……行っちゃったよ、東京へ。飛行機代だけでもう財布もすっからかんだろうに……」
「そんなに酷い事が書かれていたんですか?あの外人がくれたっていう紙に」
リョウキが苦々しく言う。彼は、カジガババア退治の翌日、丁度開催中だった高知名物よさこい祭りにザンキを案内するようキリサキに言われて、彼の面倒を見ているのだ。

663 :仮面ライダー高鬼番外編「愚痴がきこえる 高知編」:2007/02/06(火) 22:33:37 ID:u3i+Gjcl0
話は当日に遡る。
キリサキは、一人で特訓をしている筈のリョウキに会うべく、山中を分け入っていた。
銃声が聞こえてきた。
「やってるな……」
そう呟き、音のする方へと進むキリサキ。
少し広い場所では、リョウキが切り株の上に立ててあった空き缶の的に向かって自身の音撃管を構えていた。三つ並んでいた缶は、既に二つ倒れている。
と、リョウキが明後日の方向に向けて鬼石を発射した。鬼石は木の幹に絶妙の角度で当たると跳ね返され、その跳弾が見事に缶を貫いた。
「よう、相変わらずお遊戯に精が出るな」
そう言いながらリョウキに近付いていくキリサキ。
対するリョウキは、自分の技術をお遊戯呼ばわりされて明らかに苛ついている。
「お遊戯は酷いですよ。俺はね、四国支部なんて狭いところで燻る男じゃない。いずれ猛士ナンバーワンの管使いになる男なんですから!」
「だったらまず演奏の練習をしろ。何だかんだで最後に物を言うのは音撃だ。お前の演奏はまだまだ稚拙じゃねえか」
「それは分かっていますが、でも……」
何か言い返そうとするリョウキを制して、キリサキが続ける。
「戦闘技術でもお前より遥かに優れた奴は幾らでも居るぜ。お前も大会議に出て、噂ぐらいは聞いてきてるだろうが」
四国支部一素行が悪いキリサキに説教されているという事実に、悔しさのあまり体を震わせるリョウキ。
「何だっけ、確か北陸には凄腕のスナイパーが居るんだろ?あと二丁拳銃を巧みに操るって鬼は、お前以上の空間認識能力があるそうじゃねえか」
自分は大会議に出席していないくせに、やけに詳しくキリサキが語る。コンペキ辺りから聞いているのか。
「宗家の鬼も、東北の名門の鬼も、みんな管使いじゃねえか。喧嘩売る相手が悪すぎるぜ、お前。あと、関東支部には何をやらせても日本一の鬼が居るとか……」
でもな――そう言いながらリョウキの事をじっと見つめるキリサキ。
「まだ鬼になって二年目だっけ?今年で三年目か?その割にはお前、良くやっているんじゃねえのか?親父がそう言ってたぜ」
その発言もまた、リョウキを不快にさせた。支部長がやけにキリサキを目に掛けている事が前々から気に喰わなかったのだ。

664 :仮面ライダー高鬼番外編「愚痴がきこえる 高知編」:2007/02/06(火) 22:35:25 ID:u3i+Gjcl0
「……何の用です?」
自分の内心がキリサキにばれないように、注意深くそう告げるリョウキ。
「あ〜、実はそれなんだが一つ頼まれてくれねえかな。俺もウズマキも昨日のカジガババアとの戦いで疲れててさ……」
「出撃任務ですか?」
「いや、接待」
「接待?」
不思議そうにそう尋ね返すリョウキ。接待とはどういう事だ?
「よく分かりませんが……何故俺なんです?他の人は?今日は確かコンペキさんが非番だったでしょ?」
「コンペキは少林寺拳法の会合とかで多度津まで行ってて不在なんだよ。だからお前しか残ってないんだ。頼む、やってくれ。つーかやれ!」
最後の「やれ」は最早お願いではなく命令である。しかも物凄くドスの効いた声でそう告げている。
「……何をです?」
渋々といった感じでリョウキが尋ねる。
「お前も聞いてるだろ?関東支部から来た客人。あれを高知市内まで連れて行ってよさこい見せてやってくんねえかな」

665 :仮面ライダー高鬼番外編「愚痴がきこえる 高知編」:2007/02/06(火) 22:36:26 ID:u3i+Gjcl0
と、キリサキの背後から一人の白人男性が満面の笑みを浮かべながら現れた。
「チャオ〜!俺はよさこいとやらが見たいぞ!俺がここに来た時に開催されているなんて、俺に見てくれと言っているようなもんだ。さあ早く連れてってくれ!」
ザンキだ。彼だけは嘘みたいに元気一杯である。
その瞬間、リョウキの思考が一時停止した。彼は性格上、大宴会の席では余所の支部の有力な鬼の観察をしたり噂を集めたりしているのだが……。
(こ、こいつは……毎回大なり小なりの騒動を起こしているイカレた外人野郎じゃないか!)
昨日、支部の壁がオート三輪でぶっ壊されたと聞いた時から嫌な予感はしていた。それが現実に今自分の目の前にあるとは……。
リョウキは逃げ出したい衝動に駆られた。体中に悪寒が走る。おそらく、この場にキリサキが居なかったら確実に泣いていただろう。
(い、嫌だ。助けて、母さん……)
がたがたと震えるリョウキ。しかし鈍感なのか何なのかは分からないが、キリサキもザンキも気に留めた様子は全く無い。
「じゃあ頼んだぜ」
そう言うとキリサキは欠伸をしながら立ち去ってしまった。
「ち、ちがっ!まだ承諾してな……」
目の前にザンキが立ち塞がった。
「おい早くしろよ。俺は気が短いんだ」
これから逃れられるのなら、彼は迷わず鬼である事を捨てただろう。それ程嫌なのだ。生理的に嫌なのだ。
直後、山中にいい歳した大人の泣き声が木霊した。

666 :仮面ライダー高鬼番外編「愚痴がきこえる 高知編」:2007/02/06(火) 22:39:34 ID:u3i+Gjcl0
「……ざまあ見やがれ」
キリサキに対して、ぼそりと呪詛の言葉を吐くリョウキ。
「どうしたの?」
「いや、何でも……」
「そう言えばリョウキくんも苦労したでしょ、ザンキさんのお世話。ごめんね、あの時自分が動けなくって……」
申し訳なさそうにそう言うウズマキを睨みつけながら。
「……苦労なんてもんじゃないですよ。あの人、最初は大人しくアイスクリン舐めながら見物してたんですがね、見ているうちに興奮してきちゃったのかいきなり参加するとか言い出しちゃって……」
彼等はとある高校の校門前で見物していたのだが、駄々を捏ね続けたザンキはその高校の時計台に無断で登り、「躍らせてくれるまで下りない!」と言い出したのだ。
余談だがその高校は、後年スタジオジブリが制作したアニメ「海がきこえる」に出てくる学校のモデルになっている。
「……それで帯屋町筋チームの代表に頭下げに行って、何とか飛び入り参加させてもらったんですよ。この俺が他人に頭を……」
ぶつぶつと怨み言を言い続けるリョウキ。
結局、ザンキが暴走しないように見張るため、リョウキも法被と鳴子を借りて参加したと言う。当然踊りの練習なんかしていないため、散々だったそうだ。
「それでもあの外人は喜んでましたけどね。でも俺は……あんな無様な踊りを……沢山の観光客に……もし母さんに見られたら……」
またもやぶつぶつと言い始めるリョウキ。その姿を見て、ひょっとしてこいつ根暗じゃないのか?とウズマキは思った。
「で、結局ザンキさんは何も問題を起こさなかったんだね?」
「ええ、まあ。変な事は言ってましたがね。詰め所で会った広末って二十代前半ぐらいの人に、『もし君に女の子が生まれたら芸能人になりそうだね』って……」
相変わらずザンキの言動は意味不明である。
「でも先輩、東京まで行ってどうするつもりなんだろう……。あの人の事だから機内で頭を冷やして――なんて事は無いだろうし……」
止められなかった(止めたら殴られた)自分自身を恨みながら、ウズマキは許可無く勝手に東京まで行ってしまったキリサキの身を案じていた。


東京編に続く

667 :名無しより愛をこめて:2007/02/06(火) 23:56:19 ID:msaEl9fP0
次スレ立ててきますね。

668 :名無しより愛をこめて:2007/02/07(水) 00:03:33 ID:xSPXRrq70
次スレ立ててきました。

【響鬼】鬼ストーリー 弐之巻【SS】
http://tv9.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1170773906/


669 :名無しより愛をこめて:2007/02/07(水) 00:23:20 ID:ULy7/cTM0
>>668
乙!ありがとうね。

670 :見習いメインストーリー:2007/02/09(金) 01:31:26 ID:d6EajzA+0
前回は>>653から

三十六之巻「呼ばれる名前」

 腕が自由に効かぬ仲間と一緒では分が悪いと悟った鎧装束の姫は、童子を連れて弾鬼たちの
前から逃げ去っていった。燃え続ける車のそばで、残った一同は息をついた。
 その時、それまで立っていた大洋が、その場で膝を崩して前のめりに倒れた。
「大洋くん!」
 みどりが叫んで駆け寄った。
 上体を抱え起こすと、大洋は薄く目を開いた。
「あれ……なんだろ。急に力が抜けちまって……」
 香須実がやってきて、しばらく様子を見てから言った。
「安心して一気に緊張の糸が切れたのね。ところどころ怪我してるけど、命に別状はないと思う」
 そこに、純友を連れた装甲響鬼がやってきた。
『おう、ダンキ』
 装甲響鬼に声をかけられ、弾鬼は振り返って言った。
『ああ、ヒビキさん。お疲れです』
『ベースキャンプに誰もいなかったから、どうしようかと思ったぜ。
で、こっちの方が明るいから来てみたら……あ〜あ、サバキさんの車が……』
「童子と姫の『スーパータイプ』が現れたの」
 みどりが事の成り行きの説明を始めた。
 純友は、地面に仰向けに寝かされて香須実に介抱を受けている大洋に気づいて駆け寄った。
「大洋ッ!」
 香須実は、人差し指を口の前にあてて小さく言った。
「大丈夫だから。今は、休ませてあげて」
 顔の変身を解除したダンキが、大洋の様子を見にやってきた。

671 :見習いメインストーリー:2007/02/09(金) 01:34:00 ID:d6EajzA+0
 大洋が、それに気づいて、目を薄く開いたまま言った。
「ダンキ……さん……?」
「今は、ゆっくり休め」
 ダンキは微笑しながら言った。
「今日は、おまえの中の『鬼』を見せてもらったぜ。よくやったな──大洋」
 ダンキが、初めて──「見習い」ではなく、「大洋」と名前で呼んでくれた。
「へへ……」
 小さく笑ってから、大洋は目を閉じて意識を失った。
 ダンキは、立ち上がると音叉を額の前で構え、再び無貌に蒼い隈取りの鬼の顔となった。
『行きましょう、ヒビキさん』
『おう。クグツはあらかた片付けたから、これから俺も魔化魍退治に合流する。
見習いはここに置いていくから、頼んだぜ。みどり、香須実』
 言うと、装甲響鬼は弾鬼と共に山道へと駆け入っていった。
 純友は、みどりたちと協力して意識を失った大洋をベースキャンプまで運んでいった。

 赤城山中の魔化魍をすべて退治し終えて鬼たちが全員ベースキャンプに戻ってきたのは、
深夜の二時をまわる頃だった。
 姫の破壊光線により車を失ったサバキとそのサポーターの石割は、ザンキとトドロキの乗る
車に同乗し、都内に向けて出発した。運転は石割がつとめることになった。
 ヒビキとイブキ、エイキは、今回の長時間の戦闘の消耗を考慮して、香須実が運転する
エイキの車に乗って帰っていった。

672 :見習いメインストーリー:2007/02/09(金) 01:35:07 ID:d6EajzA+0
 そして、まだ目の覚めない大洋と共に、純友はみどりの運転する車の後部座席に乗り込み、
山を後にした。
「みどりちゃーん、俺が運転するって」
 助手席に乗るダンキが、運転席に座るみどりに言った。
「ダーメ。今日みたいな長時間の戦いの後に、車の運転ってのは危ないでしょ?
事故があってからじゃ遅いのよ。始末書通り越して、即、本部への出頭になるかもよ」
「……それはカンベン」
 と言って、ダンキはおとなしくなった。
 車が走り出してしばらくしてから、純友はみどりたちに訊いた。
「あの、今日、天美さんがいなかったみたいなんですけど、別の現場だったんですか」
 ベースキャンプの片付けの最中、そこにイブキの弟子である天美あきらの姿は無かった。
「ああ、それな。心の問題とかで、今日は休みだとよ」
 ダンキが振り返って答えた。
「アイツは今、揺れている。魔化魍を憎む戦い方と、魔化魍から人を護る戦い方の間でな」
 夜の関越道を、四人を乗せた車は南下していった。
「俺たち猛士は、人を護るための集団だ。だから、猛士のもとで戦う鬼ってのは、人を護る
戦い方が必要だ。──二か月前、明日夢にからんできた奴を相手に喧嘩をしていた大洋は、
憎む戦い方をしていやがった。今のあきらも、そっち側に行っちまいそうで危ねえんだ」
「前に、ヒビキ君が言ってたんだけどね」
 車の運転を続けながら、みどりが言った。
「鬼であるってことは、鬼であっちゃいけないってことなんだって。──わかる? 純友くん」
「え?──え?」

673 :見習いメインストーリー:2007/02/09(金) 01:36:47 ID:d6EajzA+0
「今、ダンキ君が言っていたのがその答え。魔化魍を憎む戦い方をしていたら、人ではなく、鬼になって
しまう。鬼であるってことは、鬼であっちゃいけない。つまり、人を護る戦い方をしなさいってことなの」
「人を護る戦い方……」
「今日のそいつの戦い方が、一番わかり易かったぜ」
 ダンキは、純友の隣で、毛布をかけられて眠っている大洋を指差して言った。
「俺が岩紅獅子に連れられてその場に駆けつけた時、一瞬、こいつが迷っているのがわかった。
敵に突っ込んでいくか、みどりちゃんたちを助けに行くか、迷ってたんだな、たぶん。
──で、こいつは、助けに行くほうを……人を護る戦い方のほうを、選んだんだ」
 肩越しにニカッと笑顔を見せて、ダンキは言った。
「しばらく見ねえうちに成長してたんだな、こいつも」
 純友は、後部座席からおずおずとダンキに言った。
「あのっ、あのっ、ぼくもそのう、ちょっとは成長したとは思うんですけど──
ほ、ほら、消炭鴉でクグツの居場所探ったりとかして、今回は結構お役にたてたかな……と」
「何が言いたいんだ? 見習い」
「いやその、ぼくも名前で呼んでもらいたいな〜、とか……」
「へ?」
「さっき、現場で大洋のこと、『見習い』じゃなくて名前で呼んでたから……」
「オマエはもうちょっと鍛えてからな」
「いいなぁ、大洋ばっかり……どうせぼくは……」
 夜の関越道を走る車の中で、純友はしくしくと泣き出した。「そんなことで泣くんじゃねえ!」
というダンキの怒鳴り声も、「私が呼んであげるから、泣かないで〜」というみどりの困ったような
声も純友の耳には入らず、泣き声が道路に尾を引いていった。

三十六之巻「呼ばれる名前」了

見習いメインストーリー 三之章「天」完

674 :見習いメインストーリー:2007/02/09(金) 01:38:08 ID:d6EajzA+0
次回予告

 いつまでも一緒に、歩いていけると思っていた。
 隣にいることが、あたりまえになっていた。
 別れの時が、すぐそこまで来ていることにも気づかずに。
 でも大丈夫、遠く離れても二人はいつまでも友達だから──

見習いメインストーリー 最終章「血」

675 :名無しより愛をこめて:2007/02/09(金) 09:53:25 ID:iRW/vbmP0
地味にがんばってる見習いさん乙!

676 :名無しより愛をこめて:2007/02/10(土) 21:03:10 ID:pTrlKqEi0
「S.I.C. SUPER COLLECTION VOL.2」買いマシタ。
ホビージャパン立読み程度だったから、ワタシ的には見所がヽ(゜∀゜)ノイパーイ

名前だけ出て、アトはな〜んも設定の無かった吹雪鬼に対する解釈が、
管の女性鬼っていう点で鋭鬼SSと一致していてナンだかウレシイワァ(n‘∀‘)η

まとめサイトのお絵描き掲示板で作者さんが描かれていた絵を参考にして、
コラとか作ったこともアリマシタけど(コレ→ ttp://www.vipper.org/vip439962.jpg.html)
S.I.C.の作例を見てちょっとはヨッキューフマンがかいしょーされたかなってカンジ。
ワタシのコラ、カラーリングがSSの描写と違ってると思いますが、お許しくだちい。

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